2018年06月13日更新

リハビリテーションの立場から見た介護経営 第06回 平成30年度介護報酬改定対策①『通所リハビリテーションは短時間化へ』

株式会社メディックプランニング 代表取締役
作業療法士 / リハビリテーション颯 スーパーバイザー 三好貴之 氏

平成30年度(2018年度)介護報酬改定では、2025年に向けて、実質最後の診療報酬改定との同時改定となり、通所リハビリは、前回改定に引き続き、大幅な変更が求められるようになった。前回の改定では、心身機能に偏ったリハビリ提供が指摘され、それまで、通所リハビリがメインサービスとしていた個別リハビリが3か月以内と限定され、その代わりに「リハマネ加算再編」が行われた。
これは、個別リハビリの位置づけとして「リハビリ提供施設」に加えて「リハビリ(生活)マネジメント施設」へと役割が変わったことを意味する。ただし、この時点では、あくまでも加算に対するものであったが、ついに、今回の改定では基本報酬に切り込んできた。

4時間以上が大幅減算

通所リハビリの基本報酬に関して、大幅変更が2点行われた。1点目に、通所介護と同様にサービス提供時間が2時間単位から1時間単位に変更されたことだ。2点目に、そのなかでも4時間以上の基本報酬が大幅に減算されたことである。
平成28年5月24日の介護給付費分科会の「リハビリテーションと機能訓練の機能分化とその在り方に関する調査事業報告書」によれば、6時間以上8時間未満のサービス提供時間を設定している通所リハビリは、要支援者に対しては、通常規模で39.6%、大規模で66.3%、要介護者に対しては、通常規模で70.2%、大規模で86.9%と多くの通所リハビリが6時間から8時間で提供しており、これらの通所リハビリは、このまま6時間から7時間に移行すると大幅減算は免れない。筆者の関係先でも、通常規模型(定員40名)の通所リハビリでは、要支援の減算も合わせて、基本報酬が年間で600万円の減算となる通所リハビリもある。
このように4時間以上のサービスが大幅減算された理由は、通所リハビリでは、個別・集団リハビリ提供とリハビリ(生活)マネジメントを提供するのであれば、「半日もあれば十分」と読み取ることができる。これ以上の「食事」「入浴」「レクリエーション」などは「通所介護と同様」として基本報酬が引き下げられたのではないだろうか。よって、今後、通所リハビリは、通所介護との機能分化を実施し、「短時間化」していかなくてはならない。

短時間通所リハビリのメリット

4時間以上の基本報酬が減算された以上、今後、通所リハビリは、軽度者を中心に短時間に切り替えていく必要がある。(図1)は、筆者のクライアント先の短時間シミュレーションであるが、一番収益性が高くなるのは、「1時間から2時間×3回転」のモデルである。

A通所リハビリ 通常型(6-8時間)定員40人
図1

ここで、短時間通所リハビリのメリットを3点ほど提示する。
第1に、ここに短時間通所リハビリの「基本報酬のメリット」がある。なぜ、この3回転が一番高くなるのかといえば、基本報酬は、6時間から7時間に対して、1時間から2時間は、サービス提供時間は6分の1であるが、基本報酬は、2分の1である。つまり、基本報酬は、「サービス提供時間×単価」ではなく、短時間の方がサービス提供時間に対する単価が高く設定されているため、収益が高くなるのである。つまり、1日の提供時間は、「1時間×3回転=3時間」であるにも関わらず、売上は、6時間から7時間の1.5倍となり時間当たりの収益性は高くなるのである。
第2に、「加算」算定に関してもメリットがみられる。今改定でも再編されたリハビリテーションマネジメント加算(以下、リハマネ加算)は、非常に高単価であるにも関わらず、サービス提供時間に関係なく1時間から2時間でも算定可能である。さらに、事業所評価加算や処遇改善加算も同様である。よって、これらの加算は、「時間」ではなく「利用者1人当たり」についてくるものであり、利用者が増えれば、増えるほど比例して増加できるのである(図2)。

回転数が高まれば、加算割合が増加してくる
図2

第3に、「費用」のメリットである。例えば、定員60名の6時間から8時間であると、職員数や送迎車も60人分が必要である。しかし、ここで1時間から2時間の定員20名×3回転=60名とすれば、職員数や送迎車は20名分となり、費用が大幅に削減できる。特に、職員確保に困っている通所リハビリとっては、少ない職員数で運営できるため、メリットは大きい。さらに、提供時間は合計3時間ほどになるので、残業も発生せず、人件費はかなり圧縮できる。また、細かい部分で言えば、入浴サービスは実施しないため、光熱水費も抑えることができる。

短時間通所リハビリのデメリット

このように収益面、費用面ともにメリットの大きい短時間通所リハビリではあるが、デメリットもあることを忘れてはいけない。デメリットとして挙げられるのは第1に、「利用者確保」である。そして、第2に、「送迎範囲の狭さ」である。
まず、第1に、利用者確保である。例えば、従来、定員40名6時間から8時間で運営していた通所リハビリの登録者数は、おおよそ120から150名だろう。これを20名×3回転にすると、登録者数は、180から200名以上は必要になる。もし、利用者数が増加できなければ、基本報酬は、2分の1になるので、売上が減少することになる。つまり、利用者確保のためのマーケティング調査と営業活動を行う必要がある。しかし、通所リハビリでは、今までは、営業活動を行ったことが無く、「紹介された利用者をみる」という受け身でやってきたところが多く、筆者の関係先でも「紹介はほぼ100%が、自法人の居宅から」という通所リハビリもある。おそらく、自法人の居宅からの紹介だけでは利用者確保は難しいため地域包括支援センターや居宅への営業活動を行う必要が出てくる。
まず、マーケティング調査において有効なのは、各自治体が出している、「介護保険事業計画」である。これには、今後の人口動態や要介護認定の予測、各介護サービスの利用者予測などが提示されている。短時間通所リハビリのメインユーザーは、要支援から要介護2までの利用者である。この層が減少していくような地域では、利用者を増加していくのは難しく、短時間通所リハビリへの移行はあまりお勧めできないが、比較的都市部で、「これから高齢者もしくは、要介護者が増加する地域」では、好機ではないだろうか。
次に、利用者確保のためには、今まで以上に「営業活動」が必要である。筆者の経験では、最も効果的な営業活動は、「結果を出す」ことである。利用者の目標設定を明確にし、リハマネ加算Ⅱ以上の枠組みを使いながら、リハビリ会議や担当者会議のなかでケアマネに対して、きちんと進捗を説明しながら、目標達成ができれば「あの通所リハビリには、良いリハビリの先生がいる」という評判になるはずだ。確かに、訪問営業やダイレクトメールも必要であるが、最終的には、「リハビリの質」という本業で勝負するべきであろう。
また、第2のデメリットとしては、「送迎範囲の狭さ」が挙げられる。6時間から7時間の1日滞在型であれば、送迎は朝、夕の2回で、片道1時間は送迎可能となる。しかし、1時間から2時間の短時間通所リハビリでは、片道30分くらいしか送迎ができないため、今までの送迎範囲が半減する。よって、片道30分の送迎範囲の人口動態や要介護認定者数などを介護保険事業計画で調査する必要がある。もし、30分では難しい場合は、1時間から2時間ではなく、3時間から4時間の半日型通所リハビリでの検討も必要になる。

専任スタッフとの対話形式
富士通の介護システム WINCARE オンラインデモ

著者プロフィール

株式会社メディックプランニング
代表取締役 / 経営コンサルタント / 作業療法士
株式会社楓の風 リハビリテーション颯 FC事業部 スーパーバイザー
株式会社保健医療福祉サービス研究会 リハビリテーション事業講師

三好 貴之(Takayuki Miyoshi) 氏

株式会社メディックプランニング 代表取締役<br>作業療法士 / リハビリテーション颯 スーパーバイザー 三好 貴之(Takayuki Miyoshi) 氏

専門は、病院・介護施設におけるリハビリテーション機能強化による経営戦略立案で、「人と業績を同時に伸ばす」をモットーに全国多数の病院・介護施設のコンサルティングを実践中。現場の管理者・スタッフとともに業務改善・人材育成を行うことで業績アップに導いている。特に近年は、リハビリテーション機能を強化したなかでの地域包括ケアモデルを提唱し、年間1000名を超える医師・看護師・PT・OT・介護士など病院・介護施設の管理者へのマネジメントやリーダーシップに対する指導とアドバイスも行っている。平成26年5月に単行本「マンガでわかる介護リーダーのしごと」(中央法規出版)より上梓し大ヒットしている。また、平成26年6月に自ら経営するリハビリ特化型デイサービス「リハビリテーション颯(そう)倉敷」、平成27年9月に「リハビリテーション颯高松中央」をオープンしている。

<連載・特集記事>
「看護部長通信」「通所介護&ケア」(日総研出版)「全国自治体病院協議会雑誌」(全国自治体病院協議会)「おはよう21」(中央法規出版)「月刊デイ」(QOLサービス)CBニュースEXCUTIVE(キャリアブレイン)「最新医療経営フェイズスリー」(日本医療企画)「作業療法ジャーナル」(三輪書店)「臨床作業療法」(青海社)等多数
<単行本>
マンガでわかる介護リーダーのしごと(中央法規出版.2014)

ページの先頭へ