2018年02月13日更新

リハビリテーションの立場から見た介護経営 第05回 通所リハビリにおけるリハマネ加算Ⅱ算定と社会参加支援加算

株式会社メディックプランニング 代表取締役
作業療法士 / リハビリテーション颯 スーパーバイザー 三好貴之 氏

次期改定は、「リハビリマネジメント推進改定」

平成29年11月8日の介護給付費分科会では、次期改定にむけて通所リハビリの改定項目について議論された。
平成27年度介護報酬改定では、通所リハビリに関し、その役割が大きく変わった。改定前までは、医療機関における疾患別リハビリテーションの続きとして、「個別リハビリの提供施設」として機能を果たしてきたが、その内容が心身機能に偏ったもので、活動と参加にもバランスよく働きかけることが重要であると指摘された。
これを受けて、新たにリハビリテーションマネジメント加算Ⅱ(以下、リハマネ加算Ⅱ)が新設された。リハマネ加算Ⅱを算定するためには、居宅訪問、リハビリ会議、医師の説明と同意、リハビリの実施というサイクルを回すことが必要で、通所リハビリ来所時の心身機能訓練だけではなく、自宅での活動や社会参加にダイレクトに働きかける取り組みを奨励した。ここでの特徴は、医師の関与を推進したことで、心身機能、活動と参加も含めたバランスの良いリハビリ提供と共に、以前から議論となっていた通所リハビリと通所介護の機能分化を明確にする意図が伺える。つまり、通所リハビリは、医療機関を退院した後の「早期リハビリ」を担当し、医療的ケアに加え、退院後の在宅生活を軌道に乗せ、通所介護や通いの場等の社会資源へ移行させるための「生活期リハビリ施設の起点」となったわけだ。
前改定から約2年が経過し、平成29年3月13日の介護給付費分科会では、リハマネⅡの届け出施設数は、調査対象の337事業所のうち、4割弱にとどまった。届け出を行っていない事業所の調査では、リハマネ加算Ⅱを算定しない理由として「医師のリハビリ会議への参加が困難」「医師からの説明時間の確保ができない」という医師の時間確保が最大の阻害要因となっているようだ。
これに対し、平成29年11月8日の介護給付費分科会では、医師のリハビリ会議出席はテレビ電話等でも認めることや、医師の指示を受けたリハビリ職が説明しても良いのではという要件緩和が提案された。このことから、厚生労働省は何としてでも医師の関与の下にリハビリが行われるようにしたい意図が伺える。
また、「3時間以上の長時間提供については、通所介護との均衡を考慮しつつ、リハビリ職を手厚く配置し、リハビリマネジメントが行われている場合は評価してはどうか」と提案されている。これは、逆を言えば、リハビリ職も配置せず、リハマネ加算Ⅱの医師の関与もしない場合は、「通所介護」と同等の評価しかしないということで、大幅な基本報酬の減算が予測される。

同じ稼働率で利益が200万円違う2つの通所リハビリ

A通所リハビリは定員40名で稼働率80%と同じように運営している。しかし、A通所リハビリの経営者から筆者に連絡が入り「赤字になったから、一度うちの通所リハビリをみてくれないか」と相談された。実際に現場をみながらデータを分析してみると(表1)、前回改定から2年以上が経過したにも関わらず、「稼働率優先主義」の管理者の意向で、「うちは上手くいっている」と何も対策が取られていなかった。特に6か月以内に1,020単位/月、以降700単位/月と高単価のリハマネ加算Ⅱの算定件数はゼロ件であった。また、前回改定で基本報酬に包括された3か月越えの個別リハビリは以前のまま継続し、毎日、全員に個別リハビリを提供していた。そのため、リハビリ職が常時6名も配置され、これが費用増を招いていた。さらに、要支援者も1日食事、入浴付きのフルサービスを提供していた。A通所リハビリの管理者へ、なぜ前回改定の対策を取っていないのかと聞くと「リハマネ加算Ⅱは医師の協力が得られない」「個別リハビリをやめると利用者からクレームがくる」「要支援を短時間にすると家族が困る」など言い訳ばかりを繰り返した。

(表1)同規模、同稼働利率の2つの通所リハビリの比較

A通所リハビリ B通所リハビリ
定員 40名 40名
稼働率 85% 85%
介護報酬収入(月) 598万円 738万円
利用者単価(日) 8,360円 11,020円
人件費率 75% 50%
利益率 -3% 19%

そこで筆者は、同規模で運営しているB通所リハビリのデータを提示した。B通所リハビリは、全員にリハマネ加算Ⅱ算定を行い、3か月越えの個別リハビリは最小にとどめ、集団リハビリを中心に提供している。また、要支援者は、1-2時時間、もしくは3-4時間の短時間へと移行し、1日2単位から3単位で運営している。
収益差をみてみると、A通所リハビリは、月600万円だが、B通所リハビリは700万円と100万円以上の差があった。稼働率は同じであるが、利用者単価は、A通所リハビリが約8千円に対し、B通所リハビリは1万円を超えていた。この売上や単価を引き上げていたのは、リハマネ加算Ⅱである。特に算定開始から2年が経過すると6か月以上の700単位/月利用者の割合が増えてきており、これが単価を引き上げ、さらに売上げを上げていた。B通所リハビリの管理者からは「確かに、6か月以内は、居宅訪問やリハビリ会議など大変だが、6か月を超えると3か月に1回で良くなり、これで700単位/月は良い報酬だと思います」と言っている。さらに、このリハマネ加算Ⅱの取り組みによって、活動と参加の目標設定を行うことで利用者が個別リハビリに執着しなくなり、今では集団リハビリ中心に行っている。よって、リハビリ職は2名のみの配置で、費用はA通所リハビリより100万円以上も低い。つまり、売上と費用の両面を考慮すれば、同規模、同稼働率でも利益は、200万円も違っているのだ。
今後、現行のリハマネ加算Ⅱに加え、VISITとデータベースへのデータ提出とフィードバックを取り入れる新たなリハマネ加算の新設が予測され、通所リハビリの基本的機能としてのリハビリマネジメントについては、さらに重要性を増してくる。

社会参加支援加算算定には短時間と通所介護

また、こちらも前改定で新設された社会参加支援加算であるが、この算定要件は、「平均利用月数」と「通所リハビリからの卒業」である。一言で言えば「回転率を上げ、社会資源につなげる」というものだ。こちらも、通所リハビリと通所介護の機能分化の象徴的加算であり、通所リハビリは、「永遠に利用し続ける施設」ではなく、一定の利用者に対しては「良くして卒業」させるというアウトカム(結果)評価としての加算である。
2017年6月21日の介護給付費分科会によると、この社会参加支援加算の届け出を行っているのは、11.4%と非常に少ない。届け出を行っていない理由としては、「利用者や家族の継続希望が強い」とのことだが、今後は、利用者や家族の気持ちよりも、利用者の状態に合わせたサービス提供が必要となるだろう。
C通所リハビリは、平均利用月数は、「35か月」、終了した利用者のうち社会資源へ移行した割合は「20%」といずれも、基準を大きく上回っている。C通所リハビリは、平成27年度の介護報酬改定を機に、1-2時間の提供時間を新たに設定した。さらに、この1-2時間の利用者は、あらかじめ利用期間を3か月、6か月と期間を設定し、目標を達成すれば終了という仕組みで始めた。ただ、やはりここでも「継続希望」が多く、なかなか思うように終了者が出なかったため、近隣に3-5時間の通所介護を設置した。3-5時間の通所介護では、食事やお風呂は行わず、リハビリのみに専念し、短時間通所リハビリの受け皿とした。この作戦は見事に的中し、リハビリの継続を希望する利用者のほとんどがこの通所介護へ移行した。また、既存の6-8時間の利用者でも毎月、数名がこの3-5時間通所介護へ移行しており、徐々に6-8時間は重度および認知症対応、1-2時間は軽度者の期間設定利用、その後、3-5時間通所介護で自立支援という流れができつつあった。この流れは、介護部門全体の利用者数増加をもたらし、その利用者が自院の入院患者となるケースもみられ、結果、法人全体の売り上げを上げる要因となっている。

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著者プロフィール

株式会社メディックプランニング
代表取締役 / 経営コンサルタント / 作業療法士
株式会社楓の風 リハビリテーション颯 FC事業部 スーパーバイザー
株式会社保健医療福祉サービス研究会 リハビリテーション事業講師

三好 貴之(Takayuki Miyoshi) 氏

株式会社メディックプランニング 代表取締役<br>作業療法士 / リハビリテーション颯 スーパーバイザー 三好 貴之(Takayuki Miyoshi) 氏

専門は、病院・介護施設におけるリハビリテーション機能強化による経営戦略立案で、「人と業績を同時に伸ばす」をモットーに全国多数の病院・介護施設のコンサルティングを実践中。現場の管理者・スタッフとともに業務改善・人材育成を行うことで業績アップに導いている。特に近年は、リハビリテーション機能を強化したなかでの地域包括ケアモデルを提唱し、年間1000名を超える医師・看護師・PT・OT・介護士など病院・介護施設の管理者へのマネジメントやリーダーシップに対する指導とアドバイスも行っている。平成26年5月に単行本「マンガでわかる介護リーダーのしごと」(中央法規出版)より上梓し大ヒットしている。また、平成26年6月に自ら経営するリハビリ特化型デイサービス「リハビリテーション颯(そう)倉敷」、平成27年9月に「リハビリテーション颯高松中央」をオープンしている。

<連載・特集記事>
「看護部長通信」「通所介護&ケア」(日総研出版)「全国自治体病院協議会雑誌」(全国自治体病院協議会)「おはよう21」(中央法規出版)「月刊デイ」(QOLサービス)CBニュースEXCUTIVE(キャリアブレイン)「最新医療経営フェイズスリー」(日本医療企画)「作業療法ジャーナル」(三輪書店)「臨床作業療法」(青海社)等多数
<単行本>
マンガでわかる介護リーダーのしごと(中央法規出版.2014)

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