2019年12月20日更新

令和の年末調整コラム第01回 年末調整の基礎と令和元年度までの所得控除をマスターしよう!

税理士 小島 孝子 氏

年末調整の季節です。1年に1度であるにも関わらず年々増える書類やルールに「何から手を付けていいのか思い出すのも大変・・・」という担当者の方も多いでしょう。さらに、昨年の配偶者控除の改正に加え、2020年度は基礎控除の改正などの大幅改正が入ることも決まっており、さらなる混乱が予想されます。
このコラムでは、3回に分けて所得控除の大改正を確認していきたいと思います。
第1回では、改正点の理解を深めるため、現行の制度を整理して行きましょう。

(1)年末調整にはどういう意味があるのか?

そもそも年末調整にはどのような意味があるのでしょうか?
給与所得者は、給与の支払いを受ける際にその年分の所得税の見積額で税金が天引きされ、徴収されます。この給与から天引きされる税金を「源泉徴収税額」といいます。
この源泉徴収税額は正しい税額でなく、あくまでも概算計算による仮徴収です。
というのも、所得税は年間の収入や年末時点での扶養親族等の状況により各種控除額が計算されるため、月々の給与の支払い時点では、正しい税額の算定ができないからです。
そのため、この仮徴収された税額を年内最後の給与の支払いの時点で税額を確定させ、差額の精算を行います。この手続きを「年末調整」といいます。

年末調整

なお、計算された差額分は、その年最後の支給期の給与とともに従業員に返金しなければなりませんが、徴収した源泉所得税は11月までにすでに税務署へ納付済みとなっているので、会社は返金した金額を過大納付額として12月分の源泉所得税の納付時(翌年1/20期限)に納付額から差し引いて納付します。

(2)年末調整の対象者

年末調整を受けることができるのは、以下の条件に該当する役員、従業員等でパート、アルバイトも対象になります。この条件に当てはまらない人は年末調整による差額精算は行わず、その給与所得者本人が税務署に確定申告を行う必要があります。
なお、年の中途で就職した人については、前職の所得分も含めて年末調整を行うことができますが、その際に前職の「源泉徴収票」を就職先の会社に提出しなければなりません。

《年末調整を行うことができる人》

  1. 1年を通じて勤務している人
  2. 年の途中で就職し、年末まで勤務している人
  3. 年の途中で退職した人のうち、次の条件に該当する人
  • イ 死亡により退職した人
  • ロ 著しい心身の障害のため退職した人で、本年中に再就職ができないと見込まれる人
  • ハ 支給期が12月の給与の支払を受けた後に退職した人
  • ニ パートタイマーなどが退職した場合で、その年中に支払を受ける給与の総額が103万円以下である人(退職後本年中に他の勤務先等から給与の支払いを受ける人を除く)
  • 4.
    年の途中で、海外の支店へ転勤したことなどの理由により、非居住者となった人

なお、上記要件を満たす者であっても、次に該当する者は年末調整を受けることができません。

《年末調整が受けられない者》

  1. 給与の収入金額が2,000万円を超える人
  2. 災害により被害を受けた人で「災害減免法」の規定により、給与の所得税の徴収猶予や還付を受けた人
  3. 2か所以上から給与の支払を受けている人で、他の給与の支払者に『扶養控除等(異動)申告書』を提出している人
  4. 年末調整を行うときまでに『給与所得者の扶養控除等(異動)申告書』を提出していない人(乙欄徴収適用者)
  5. 非居住者
  6. 日雇い労働者(丙欄徴収適用者)

(3)年末調整でやること

年末調整の作業で行うことは主に下記の5つがあります。特に作業①の従業員の還付額の計算を行うため、各種申告書とこれに必要な証明書類を回収しなければなりません。そのため、膨大な作業が必要となることから、各作業をいつまでに行う必要があるのか理解したうえで作業を行わなければなりません。

《作業内容》

  • 作業① 年末調整での各従業員の還付金(不足額)の計算
  • 作業② 源泉徴収票の発行
  • 作業③ 12月分源泉所得税の納付(年末調整超過額控除後)
  • 作業④ 法定調書(法定調書合計表を含む)の作成・送付
  • 作業⑤ 給与支払報告書の送付(各市町村)

年末調整のスケジュール

(4)年末調整で行うことができる所得控除

年末調整では、その年の給与所得額から所得控除を差し引いて正確な所得税額の算定を行いますが、年末調整でできない所得控除もあります。
下記の表の「年末調整でできない所得控除」に該当する所得控除がある場合には、別途確定申告を行わなければなりません。

年末調整でできる所得控除 年末調整でできない所得控除
・ 社会保険料控除
・ 生命保険料控除
・ 地震保険料控除
・ 小規模企業共済等掛金控除
・ 障害者控除
・勤労学生控除
・寡婦(夫)控除
・ 扶養控除
・ 配偶者控除
・ 配偶者特別控除
・ 基礎控除
・ 雑損控除 (自然災害や盗難などの損失)
・ 医療費控除 (多額の医療費が生じた)
・ 寄付金控除 (ふるさと納税などの寄付を行った)

上記表中の太字の控除は、従業員本人やその親族の収入状況によって控除額が決まっていますが、近年この部分の法改正が行われました。特に令和2年(2020年)度は大改正と言われるほどの大幅な改正が入ります。この改正の内容は第2回以降にゆずり、今回は令和元年(2019年)度までの制度を確認しましょう。

(5)年末調整で行うことができる所得控除等

年末調整で行うことができる扶養控除は、各種申告書の記載内容によって計算します。
そのため、該当する控除に関する申告書を従業員に事前に記載してもらい、回収しなければなりません。どの申告書がどのような控除に必要なのか確認しましょう。

① 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」

→ 障害者控除、勤労学生控除、寡婦(夫)控除、扶養控除、配偶者控除、基礎控除

これらの所得控除の対象者となる親族等の生年月日、同居・別居の別、所得の状況などを記載します。なお、障害者控除は障害者手帳、勤労学生控除は学生証などの証明書類で要件を満たしているか否か確認します。
この申告書の提出は年末調整を受けるための要件となっている(上記2参照)ため、原則として従業員全員から回収する必要があります。

② 「給与所得者の配偶者控除申告書」

→ 配偶者控除、配偶者特別控除

平成30年(2018年)度分の申告書から、配偶者控除、配偶者特別控除の控除額の基準が変更されたことに伴い、同年から適用者に提出が求められるようになった申告書です。申告者本人や配偶者の所得の年末見積額をもとにこれらの控除額を計算します。
なお、配偶者本人の所得が85万円(給与収入150万円)以下までが定額の控除ができる配偶者控除、所得85万円(給与収入150万円)超123万円以下は段階的に控除額が減っていく配偶者特別控除となります。
それぞれの控除額は以下のとおりです。なお、申告者本人の所得が1,000万円を超える場合又は配偶者の所得が123万円を超える場合にはどちらの控除も適用できません。

【控除額表】
控除額表

(区分Ⅰ) 申告者本人の所得
A 900万円以下、B 900万円超950万円以下、C 950万円超1,000万円以下
(区分Ⅱ) 配偶者の所得

  1. 38万円以下かつ年齢70歳以上
  2. 38万円以下かつ年齢70歳未満
  3. 38万円超85万円以下
  4. 85万円超123万円以下

③ 「給与所得者の保険料等控除申告書」

→ 社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除

これらの対象となる制度の掛金を支払った場合に一定の金額が控除されます。
なお、給与から天引きされる社会保険料、国民健康保険料以外は各機関が発行する「控除証明書」を会社に提出しなければなりません。

  • (注)
    令和2年度からは、これらの証明に係る電子化の制度も始まります。

④ 「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」

→ 住宅借入金(住宅ローン)控除で適用2年目以降

住宅ローンを組んで住宅を購入した場合に、そのローンの年末残高をもとに、一定の割合で所得税が控除されます。
なお、控除率や控除期間は住宅の取得年により異なるので確認が必要です。
また、要件確認のための書類がいる適用初年度は確定申告が必要であり、その申告内容をもとに税務署から適用年度分の申告書がまとめて送られてきます。
このほかに金融機関から送られてくる「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」が必要です。

(6)法定調書合計表及び給与支払報告書の提出

年末調整で各従業員の所得が確定したら、従業員本人に「源泉徴収票」」を作成し手渡しますが、これを税務署や従業員本人の居住する市区町村に送付します。
このときに、税務署に送付する分は年間の支払額の集計を記載した「法定調書合計表」とともに提出します。これには、このほかに報酬や不動産使用料などの「支払調書」も添付します。
市区町村へは源泉徴収票の内容と同様の「給与支払報告書」というフォーマットの用紙で提出します。これにより、各自治体が住民税を計算し、徴収します。

ここまでの内容だけでも理解することが多く、また、様々な書類の提出が必要になります。計算については細かな注意点が多く、手計算では計算できない状況になってきていますので、市販のソフトなどを利用するとよいでしょう。
しかし、必要書類の収集については、チェックリストなどを作成し、漏れがないようにしましょう。
次回はいよいよ、来年(令和2年)における改正点を見ていきましょう。

著者プロフィール

小島 孝子 氏

神奈川県出身。税理士。
早稲田大学在学中から地元会計事務所に勤務。その後、都内税理士法人、大手税理士受験対策校講師、大手企業経理部に勤務したのち2010年に小島孝子税理士事務所を設立。幅広い実務経験と、講師経験から実務家向けセミナー講師多数担当。「実務」と「教えるプロ」の両面に基づいたわかりやすい解説に定評がある。実務においては、街歩き、旅行好きの趣味を生かし、日本全国さまざまな地域にクライアントを持つ、自称、旅する税理士。
【著作】3年後に必ず差が出る20代から知っておきたい経理の教科書(翔泳社)、税理士試験計算プラクティス 消費税法:出題パターン別解法の極意(中央経済社)簿記試験合格者のためのはじめての経理実務(税務経理協会)

小島 孝子 氏

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