2020年02月21日更新

令和の年末調整コラム第03回 問い合わせ殺到?!申告書の確認事項と想定される問い合わせへの対応

税理士 小島 孝子 氏

これまで、あまり手を付けられていなかった令和2年度から始まる所得控除の大改正。
ライフスタイルの多様化により、これまでの画一的な制度から個々の家族関係や収入状況に応じた制度へと変わっていくこととなりました。
しかし、年末調整は従業員を雇う会社に義務付けられた制度です。そのため、従業員個人からさまざまな情報を収集しなければなりません。
今回は、経理・総務部門が行っていく申告書の確認作業について見ていきましょう。

年末調整に必要な申告書

第1回で確認した年末調整の申告書ですが、今回の法改正を受けてその内容も一部変更されています。それでは、再度適用対象者を含めて確認していきましょう。

① 給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書【NEW】

イメージ1 (参照URL:https://www.nta.go.jp/users/gensen/nenmatsu/pdf/03.pdfpdf

手続き上の最も大きなトピックが、令和2年度から適用される新制度に関する情報などを収集するための新しい申告書が作られたことです。
令和元年度までは、「配偶者控除等申告書」であったものが、これに新制度に関する申告内容を加え1枚の申告書となります。
3つの制度のうち基礎控除はすべての人が受ける制度なので、年末調整を受ける全員が提出する必要があります。なお、具体的な制度の内容は第2回を参照してください。

イメージ2

「A 給与所得者の基礎控除申告書」「B 給与所得者の配偶者控除等申告書」「C 所得金額調整控除申告書」の3つの欄にわかれていて、BやCは該当者のみ記載します。
「自分の記載すべき場所がわからない」という問い合わせが想定されますので、パターン別の記載箇所の書き方の説明をつけてあげるとよいでしょう。
また、3つの規定は「所得」での判定になりますが、一般的に「所得」という概念はあまり知られていません。配偶者や親族の所得を確認する際、「所得≠収入」であることを説明したうえで収入から所得を算出する方法を説明する資料を用意するとよいでしょう。
なお、こちらのサイトで収入から所得への自動計算ができるようになっています。

(参照URL:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm新しいウィンドウで表示

② 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

イメージ3 (参照URL:https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/pdf/r2bun_01.pdfpdf

納税者自身や配偶者、扶養親族の氏名、住所、生年月日などを記載する用紙です。
各欄の記載内容を見ていきましょう。

■扶養親族等に関する記載事項等(A・B)

イメージ4

チェック項目①:配偶者・親族の生年月日・同居の有無等

配偶者控除や扶養控除は対象者の年齢によって控除額が異なるため、これらの記載漏れがないかをチェックします。
また、扶養親族のうち、納税者の父母等については、同居しているかどうかによっても控除額が異なりますので、別居の場合は住所等の記載に漏れがないかも確認します。

チェック項目②:配偶者・親族の所得の見込額

配偶者控除や扶養控除の適用にあたり、問題となるのが親族の所得の状況です。
年末調整の資料収集は通常11月頃行われます。しかし、当然のことながら配偶者控除や扶養控除の対象となる親族自身も同様に自分の会社で年末調整が行われ、そこで年間の収入金額が確定するわけですから、先に正しい金額を書くことはできません。
そこで、「見込額」ベースでこれらの者の所得を記載してもらいます。
結果として見込み以上の金額になってしまったとしても、会社に追徴税額の請求が来てしまいますので、できる限り正確な情報を求める必要があります。
そのため、一部の大手企業においては扶養親族の勤める会社から「収入証明書」を作成してもらうよう指示されるケースもあります。

■障害者・寡婦・寡夫・勤労学生控除に関する記載事項等(C)

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これらの制度のうち該当する制度のチェックボックスにチェックを入れ、さらに、障害者控除については、自身や親族の状況に当てはまる欄にチェックを入れます。
障害者については、障害者手帳を、勤労学生控除の適用を受ける学生については、学生証を確認します。
「左記の内容」欄には、たとえば障害者であれば、障害者手帳の等級など、勤労学生であれば学校名など、寡婦や寡夫はその事実が生じた原因などを記載します。

■他の所得者が控除を受ける扶養親族等

共働き世帯など、控除を適用できる者が2人以上いる場合であってもそれぞれの計算で同じ親族を重複して扶養親族とすることはできないため、控除を受けない場合にはD欄に記載します。たとえば、夫婦に二人の子供がいる場合に子Aを夫の扶養に、子Bを妻の扶養とすることも可能です。

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■住民税に関する事項

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住民税の非課税基準額の判定についての申告欄です。該当する箇所に記載します。年末調整に関する項目には直接影響しません。

■収集時期に関する注意点

この用紙は、他の申告書と異なり既存の従業員は年初、新入社員は入社時に収集する必要があります。申告書の提出の有無が月々徴収する源泉徴収税額にも影響するためです。
そのため、既存の従業員からは年末調整時に翌年分の申告書を収集しますが、特に注意が必要なのが新入社員です。年末にまとめて集めようとすると、年の中途で辞めてしいまった人から収集できていないケースもあり、税務調査で問題になる場合もありますから注意が必要です。

③ 給与所得者の保険料控除申告書

イメージ8 (参照URL:https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/pdf/r1bun_06.pdfpdf

■生命保険料控除に係る注意点

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チェック項目①:保険の種類

控除の対象となる生命保険には3種類あり、それぞれ4万円×3=12万円が限度額です。どれに該当するかは必ず控除証明書に記載があるので確認しましょう。
保険の種類に「年金」の文字が入っていても個人年金に当たらないケースもあるので注意が必要です。

チェック項目②:「新」「旧」の別

生命保険料控除のうち「一般の保険」と「個人年金」は、保険の加入時期によって控除額が異なります。これは、法改正の影響で、改正前に加入した「旧」保険については改正前の控除額(控除限度額5万円)がそのまま適用されるからです。(改正後の「新」保険は控除限度額4万円)
なお、「介護医療保険」の控除については、この改正後にできた制度であるため、すべて「新」制度に該当します。
どちらの保険に該当するかは控除証明書に記載がありますから、これも必ずチェックしましょう。

■地震保険料控除に係る注意点

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チェック項目①:損害保険の種類

地震保険料控除の対象となるは「地震保険」だけです。地震保険は通常「火災保険」とセットで加入します。そのため、控除証明書に両者の金額が記載されているケースもありますが、地震保険の金額のみを記載します。

チェック項目②:旧長期損害保険

生命保険料控除と同様に法改正によって廃止された傷害保険に関する契約が引き続き残っていた場合に控除ができる制度です。地震保険と異なり控除額の一部しか控除できないため注意が必要です。

■社会保険料控除の注意点

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入社前に国民健康保険や国民年金などの支払いがあった場合に記載します。
国民健康保険については必ずしも自治体から証明書が発行されるわけではないので、年間の支払総額の記載があれば問題ありません。
これに対し、国民年金は控除証明書がなければ控除が認められないため、国民年金の記載がある場合には、証明書の有無を必ず確認しましょう。

■小規模企業共済等掛金控除の注意点

一般的に中小企業の役員が加入する退職金共済で、独立行政法人中小企業基盤整備機構が行っている共済を指します。こちらも控除証明書がなければ控除できません。また、確定拠出年金に関する年金の掛金も対象となります。

このほか、住宅ローン控除の適用を受けたい人は第1回を参照してください。

このように、制度が複雑さを増すことにより、提出する書類もより複雑になっていきます。また、普段聞きなれない言葉が多いだけでなく、自分がどれに該当するのかも分かりづらくなっています。まずはこれらの制度を経理や総務に携わる一人一人が理解し、説明できる体制を年末までに作っていくことが重要です。

著者プロフィール

小島 孝子 氏

神奈川県出身。税理士。
早稲田大学在学中から地元会計事務所に勤務。その後、都内税理士法人、大手税理士受験対策校講師、大手企業経理部に勤務したのち2010年に小島孝子税理士事務所を設立。幅広い実務経験と、講師経験から実務家向けセミナー講師多数担当。「実務」と「教えるプロ」の両面に基づいたわかりやすい解説に定評がある。実務においては、街歩き、旅行好きの趣味を生かし、日本全国さまざまな地域にクライアントを持つ、自称、旅する税理士。
【著作】3年後に必ず差が出る20代から知っておきたい経理の教科書(翔泳社)、税理士試験計算プラクティス 消費税法:出題パターン別解法の極意(中央経済社)簿記試験合格者のためのはじめての経理実務(税務経理協会)

小島 孝子 氏

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