2020年02月21日更新

令和の年末調整コラム第02回 令和2年の大改正!配偶者と扶養に関する控除を理解する!

税理士 小島 孝子 氏

令和2年度から始まる所得控除の大改正。これまで、あまり手を付けられていなかった扶養控除等の人的控除に大幅な改正が加えられます。
すでに確定している基礎控除の引き上げやその前提となる給与所得控除の引き下げなどに加え、平成2年度の税制改正大綱で方針が定められた寡婦控除の改正など、給与所得者自身の状況だけでなく、親族の状況も細かく情報をキャッチアップしなければ計算できないような制度になりそうです。
今回はまずこれらの制度をしっかりと理解していきましょう。

(1)令和2年度から適用される改正項目

令和2年度から適用される改正項目は、以下の5つです。

  ① 給与所得控除額の引き下げ
  ② 基礎控除額の引き上げ
  ③ 扶養控除、配偶者控除の基準額の引き上げ
  ④ 所得金額調整控除の新設
  ⑤ 寡婦控除の適用要件の見直し

以下、これらを順番に見ていきましょう。

① 給与所得控除額の引き上げ

サラリーマンなどの給与所得者がもらう給与については、個人事業主などの収入と違い、経費の計上が認められていません。しかし、サラリーマンであってもスーツやビジネスバッグなど、その会社に勤務するためにまったくお金がかかっていないわけではありません。
そのため、所得計算上、収入に応じて一定割合を概算経費として控除することとしています。この控除が「給与所得控除」です。
給与所得控除額は数年おきに改正されていますが、令和2年度からは一律10万円ずつの引き下げとなりました。また、上限金額の適用される収入金額が「1,000万円超」から「850万円超」となっただけでなく、上限額自体も220万円から195万円に引き下げられており、まさに高額所得者に絞った増税となっています。

給与等の収入金額 給与所得控除額 増減額
令和元年度 令和2年以降
180万円以下 収入金額×40%

注)65万円に満たない場合には65万円
収入金額×40%
-10万円
注)55万円に満たない場合には55万円
△10万円
180万円超360万円以下 収入金額×30%
+18万円
収入金額×30%
+8万円
360万円超660万円以下 収入金額×20%
+54万円
収入金額×20%
+44万円
660万円超850万円以下 収入金額×10%
+120万円
収入金額×10%
+110万円
850万円超1,000万円以下 195万円(上限) △10万円

△25万円
1,000万円超 220万円(上限)

② 基礎控除額の引き上げ

給与所得控除額の引き下げの代わりに、納税者すべてに適用される基礎控除額は38万円から48万円となり、10万円の引き上げとなりました。
したがって、①の表のとおり、給与収入金額が850万円以下の給与所得者については、給与所得控除額が10万円減り、基礎控除額が10万円増えるため、課税される所得金額の増減額はゼロということになります。
ただし、給与等の収入金額が2,595万円以下の場合には段階的に控除額が減っていき、収入金額が2,695万円を超えると控除額はゼロになるため、ここでも増税になります。

給与等の収入金額
注)()は合計所得金額
基礎控除額 増差額
令和元年度 令和2年以降
2,595(2,400)万円以下 38万円 48万円 +10万円
2,595(2,400)万円超
2,645(2,450)万円以下
32万円 △6万円
2,645(2,450)万円超
2,695(2,500)万円以下
16万円 △22万円
2,695(2,500)万円超 0円 △38万円
  • 注)
    合計所得金額は、給与所得者の場合には「給与等の収入金額-給与所得控除額(①参照)」で求められます。
(例)給与等の収入金額2,700万円の場合の所得金額
〔改正前〕2,700万円-220万円ⓐ-38万円ⓑ=2,442円
〔改正後〕2,700万円-195万円ⓐ-0円ⓑ=2,505万円(+63万円)
    • 注)
      ⓐ給与所得控除額 ⓑ基礎控除額

③ 扶養控除、配偶者控除の基準額の引き上げ

②の基礎控除額の引き上げに当たり、扶養控除や配偶者控除などの対象親族の所得要件がある控除に関する基準額も引き上げになりました。
基準額が引き上げられた所得控除は以下の6つです。

  • A
    配偶者控除
  • B
    扶養控除
  • C
    障害者控除
  • D
    寡婦控除
  • E
    勤労学生控除
  • F
    配偶者特別別控除

このうち、A~Dについては、それぞれ控除対象配偶者や控除対象扶養親族(寡婦控除の場合は生計を一にする子)がいることが要件となる制度です。
この対象となる配偶者や扶養親族等の合計所得金額の要件が38万円であったのが、48万円と、10万円引き上げられています。
EとFについては、基準となる所得金額がもともとA~Dと異なりますが、A~Dと同様に基準額がそれぞれ10万円引き上げられています。
対象となる基準額の改正前と改正後の金額は、それぞれ以下のとおりです。

《勤労学生控除額》
給与所得者本人の合計所得金額 改正前 改正後
65万円 75万円
《配偶者特別控除額》
給与所得者本人の合計所得金額 改正前 改正後
38万円超
123万円以下
48万円超
133万円以下

④ 所得金額調整控除の新設

ここまで確認してきたように、今回の法改正は高額所得者に対する税負担が高くなる制度が中心です。しかし、これらの人の中でも、特別な事情により重度な税負担を強いることが難しい人もいます。そのため、給与等の収入金額が850万円を超える者で、下記の要件のいずれか該当する人に対する所得税の計算については、「所得金額調整控除」という新設の制度で税負担の調整を行っています。

  • 1
    給与所得者本人が特別障害者である場合
  • 2
    23歳未満の扶養親族がいる場合
  • 3
    特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族がいる場合

上記に該当する場合には、給与所得の金額からさらに下記の算式で求めた金額を控除します。

(給与等の収入金額(注)-800万円)×10%
注)給与等の収入金額が1,000万円を超える場合には1,000万円
(例)給与等の収入金額2,700万円の場合の所得金額
〔改正前〕2,700万円-220万円ⓐ-38万円ⓑ=2,442円
〔改正後〕2,700万円-195万円ⓐ-0円ⓑ-20万円ⓒ=2,485万円
  ⓒ(1,000万円-800万円)×10%=20万円
注)ⓐ給与所得控除額 ⓑ基礎控除額 ⓒ給与所得金額調整控除

⑤ 寡婦(夫)控除の見直し

寡婦(夫)控除とは、子育て世代の納税者の中で離婚や死別等によりひとり親となってしまった人について、税負担を調整する制度です。
これまでの制度は法律婚を前提とした制度であり、未婚のひとり親については対象とされておらず、また、男性のひとり親と女性のひとり親では要件が異なりこれらが問題とされていました。しかし、令和2年度の税制改正大綱において、この部分の見直しが行われ、一定の整備が行われました。
具体的な変更点は以下のとおりです。

改正前 改正後
寡婦控除 (要件1)夫と死別し、又は離婚後婚姻をしていない者
(要件2)扶養親族又は生計を一にする子(合計所得金額38万円以下)を有する

控除額 27万円

(要件1)夫と死別し、又は離婚後婚姻をしていない者
(要件2)扶養親族又は生計を一にする子(合計所得金額48万円以下)を有する
(要件3)本人の合計所得金額が500万円以下である(新設)

控除額 27万円

寡夫控除 (要件1)妻と死別し又は離婚後、婚姻をしていない者
(要件2)生計を一にする子(合計所得金額38万円以下)を有する
(要件3)本人の合計所得金額が500万円以下である

控除額 27万円

(要件1)妻と死別し又は離婚後、婚姻をしていない者
(要件2)生計を一にする子(合計所得金額48万円以下)を有する
(要件3)本人の合計所得金額が500万円以下である

控除額 35万円

特別の寡婦 (要件1)寡婦控除の要件に該当する
(要件2)生計を一にする子(合計所得金額38万円以下)を有する
(要件3)本人の合計所得金額が500万円以下である

控除額 35万円

(要件1)変更なし
(要件2)生計を一にする子(合計所得金額48万円以下)を有する
(要件3)変更なし
未婚のひとり親 適用なし (要件1)未婚のひとり親である者
(要件2)生計を一にする子(合計所得金額48万円以下)を有する
(要件3)本人の合計所得金額が500万円以下である

控除額 35万円

なお、これらの制度の対象者から「事実婚」である者が除かれることが明確化されました。事実婚の判断は住民票に「未届けの夫」又は「未届けの妻」の記載があるか否かで行います。

この5つの改正により、これまでの画一的な控除額から、世帯構成や収入、扶養親族の状況に応じて細かな基準になったのは現代の多様性のある生活スタイルにより合わせた税制に変えていくための方法なのかもしれません。とはいえ、制度の複雑さは格段に上がり、また、扶養親族や婚姻関係などプライベートな部分にも言及した内容になっており、こうした事実の確認に時間が取られることも想定されます。
令和2年度の年末調整に関しては、制度の内容の理解だけでなく、各種要件の確認方法などもしっかりと理解したうえで早めに対応する必要があるでしょう。
次回はこれらの要件の確認方法について見ていきます。

著者プロフィール

小島 孝子 氏

神奈川県出身。税理士。
早稲田大学在学中から地元会計事務所に勤務。その後、都内税理士法人、大手税理士受験対策校講師、大手企業経理部に勤務したのち2010年に小島孝子税理士事務所を設立。幅広い実務経験と、講師経験から実務家向けセミナー講師多数担当。「実務」と「教えるプロ」の両面に基づいたわかりやすい解説に定評がある。実務においては、街歩き、旅行好きの趣味を生かし、日本全国さまざまな地域にクライアントを持つ、自称、旅する税理士。
【著作】3年後に必ず差が出る20代から知っておきたい経理の教科書(翔泳社)、税理士試験計算プラクティス 消費税法:出題パターン別解法の極意(中央経済社)簿記試験合格者のためのはじめての経理実務(税務経理協会)

小島 孝子 氏

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