2016年09月13日更新

これからの介護事業経営 第01回 地域包括ケアシステムと複数事業化のすすめ

小濱介護経営事務所 代表 小濱 道博 氏

地域包括ケアシステムと社会保障制度改革

2025年には、いわゆる団塊の世代(約700万人)が後期高齢者、すなわち75歳を迎える。日本の高齢化率は30%を超えて、日本人のほぼ3人に一人が65歳以上という超高齢者社会が出現する。現在の社会保障制度は若い世代の負担で高齢者への社会保障を支える仕組みである。年金しかり、介護保険しかり、医療保険しかり。その制度の根幹を支えるバランスが崩れて、若年層が年々減っているのであるから、近い将来において確実に社会保障制度の仕組みは破綻する。そのために社会保障制度を根本から見直す必要に迫られており、その一つのゴールが2025年である。国が進める地域包括ケアシステムの具体的取り組みでは、多職種協働によって在宅医療・介護を一体的に提供できる体制を構築して、高齢者が社会的役割を持ち、生きがいや介護予防にもつなげる取組とされている。主に元気な高齢者がボランティア活動の一環を担い、要介護状態となった高齢者を支援する。すなわち、政府が掲げる一億総活躍社会である。それを如何に実現するかが大きな課題である。

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地域包括ケアシステムの本質

地域包括ケアシステムの真の目的の一つは、国の負担が大きい病院の入院や介護施設の入所を最低限に押さえて、可能な限り重度の要介護状態になっても居宅で暮らして居宅で亡くなる仕組みに替えることである。軽度者の介護は、地域住民のボランティア活動に移行する。在宅で過ごす重度者のケアは、在宅の医療・介護サービスを24時間体制で提供するシステムを構築することで対応する。この役割を担うサービスの一つとして、平成24年(2012年)改正で導入された定期巡回随時対応型訪問介護看護サービスなどがある。近い将来、介護保険の利用対象は要介護3以上の重度者に限定されると考えられ、軽度者は介護保険から外れて市町村の総合事業に移行する。その議論は、社会保障審議会に於いて既にスタートした。要支援者の総合事業への移行はすでに始まっている。在宅型の介護事業は、要介護3以上を対象とする重度者ケアと看取りへの早期の取り組みが必要である。

今、多くの特別養護老人ホームは、大幅な報酬ダウンを避けるために日常生活継続支援加算を算定することから、実質的に要介護4以上の施設に移行している。この加算の主な算定要件は、新規入所者のうち要介護4以上の者が70%以上である。介護老人保健施設は、半年から1年程度で退所となる在宅復帰・在宅強化型への移行が進んでいる。病院に入院しても90日以内に退院させられる。それ以上に、介護保険の自己負担増や、入院・入所の居住費などの負担増で、低・中所得者層の利用が支払能力の問題等で困難になっている。結果的に、一時期は待機者が50万人とも言われた特別養護老人ホームの空きが目立って来た。確実に地域包括ケアが進行している。

介護事業における多角的な「複数事業展開」

介護事業者の多くは、介護保険の対象サービスの一つに偏った、単一的な事業を運営している。一つに集約した事業展開はパワーを集中出来るというメリットがあるものの、許認可事業であるために経営リスクの方が大きいと言える。小規模型デイサービスは、今年4月より地域密着型通所介護に移行となり、介護報酬は平成27年(2015年)度から9%以上の減額であった。その影響は、経費のスリム化、人件費率の見直しに着手する以外には収益改善の方法が無い状態となり、一部では廃業も進んでいる。制度改正で多大な影響を受けるという経営リスクが、許認可事業である介護事業にはある。ひとつのサービス集中するのでは無く、複数の事業を営むことで、経営のリスク分散を図ることが求められる。

介護サービスの基本ビジネスモデルはスケールメリット(規模の利益)の追求にある。事業規模が大きくなるに比例して、収支差率(利益率)も増える。制度改正、介護報酬の最も確実な事前対策は、事業規模の拡大策にある。しかし、一言で事業規模の拡大と言っても、簡単に事業を拡大できるほど甘い業界ではない。例えば、デイサービスは平成27年(2015年)4月集計で42,386事業所であった。同時期のローソン・セブンイレブン・ファミリーマートの店舗総数は、41,085店舗であったので、それ以上のデイサービスが存在していたことになる。確実に飽和状態にあり、独自の路線で差別化を図らないと全体の中に埋没してしまい、事業拡大どころではない。差別化を徹底することで利用者総数が伸び、事業規模の拡大が可能となる。介護保険サービスだけでの差別化が難しい場合は、介護保険外サービスを併設することで差別化が容易になる。

地域包括ケアシステム介護保険制度改革によって、介護保険市場は重度者に特化して縮小している。今後は、介護報酬だけに依存した経営は衰退すると言っても過言ではない。複数事業化と介護保険外サービスの併設によって利用者を囲い込み、事業拡大を図ることが急務である。

保険外サービスの最近の動向・保険外サービスの必要性 など
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著者プロフィール

小濱介護経営事務所 代表
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
C-SR 一般社団法人医療介護経営研究会 専務理事

小濱 道博(こはま みちひろ) 氏

日本全国対応で介護経営支援を手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。
昨年も延20,000人以上の介護事業者を動員。
全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。著書、連載多数。

小濱 道博 氏

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