2020年05月20日更新

これからの介護事業経営 第21回 介護職員処遇改善加算及び介護職員等特定処遇改善加算の変更点

小濱介護経営事務所 代表 小濱 道博 氏

1. 計画書の提出は最大で7月末まで

3月5日に厚生労働省から通知「介護職員処遇改善加算及び介護職員等特定処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」が発出されました。これによって、従来には別々に設けられていた計画書と実績報告書のひな型が一本化され、その基準期間や計算方法が変更されています。

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計画書自体は、4月15日の提出期限で、すでに提出済みかと思いますが、特例として4月9日の通知において、「新型コロナウイルス感染症への対応により、期限までの提出が難しい場合、指定権者に対し、4月 15 日までに、新型コロナウイルス感染症への対応により期限までの計画書の提出が難しいこと。要件を満たし算定を行う介護職員処遇改善加算又は特定処遇改善加算の区分。の二点を説明することで、4月サービス提供分より算定が可能であり、本年7月末までに計画書を提出すること。」とされたことから、この特例を活用される事業所・施設もあるかと思います。

今回は、変更された基準期間や計算方法について確認をしていきます。

2. 令和元年度からの変更点

  • (1)介護職員処遇改善計画書と介護職員等特定処遇改善計画書が一本化されました。
  • (2)「賃金改善の見込額」の比較対象となる年度は、「初めて加算を取得する(した)前年度の4月から3月」から「(申請の)前年度の1月から12月」に変更となりました。
  • (3)特定加算の平均賃金改善額について、計算方法が変更されました。
  • (4)複数事業所を一括して申請する際の指定権者別・都道府県別一覧表は不要となりました。
  • (5)根拠書類の提出は、保管の有無をチェックリストで確認することで原則不要です。
  • (6)法人印の押印が不要となったため、前年度と加算区分に変更がない場合には、メールでの提出が可能となりました。

3. 比較対象年度の変更

賃金改善を比較する対象年度が、「初めて加算を取得する(した)前年度」から「(申請の)前年度」に変更となりました。また、従来の4月から翌年3月の基準から、1月から12月に変更となっています。

これは、たとえば令和2年度の比較対象年度は令和元年となりますが、従来の令和元年4月から令和2年3月で集計した場合、令和2年度の計画の提出期限が2月末であることから、令和2年2月と3月の集計が出来ない事からの変更となります。

この変更は、「一月当たりの介護報酬総単位数」「前年度の賃金の総額」の計算に影響が出ます。なお、前年度の賃金の総額については、12月に満たない場合は、12月に換算して計算します。また、共生型サービスや障害福祉サービスを兼務している職員の場合、それぞれの勤務時間による常勤換算による按分で賃金を集計します。

4. 独自の賃金改善額

従来の比較対象年度は「初めて加算を取得する(した)前年度」でした。介護職員等特定処遇改善を最初から算定する事業所の場合は、平成23年度が比較対象年度でしたので、平成23年度と算定年度を比較した差額が賃金改善額とされてきました。そのため、平成24年以降に、処遇改善加算の支給とは別に実施した定期昇給額、新たな手当の新設額、賞与の増額などについては賃金改善額として計算することが出来たのです。

ところが、比較対象年度が「(申請の)前年度」となったことで、加算の支給とは別に実施した金額が賃金改善額として反映されなくなりました。そのため、相当金額については独自の賃金改善額として前年度の総額からさらに差し引くことを可能としたのです。その場合、計画書に具体的な取組内容と算定根拠を記載する必要があり、その集計資料や内訳については事業所で保管して実地指導等で確認されることとなります。

5. 介護職員等特定処遇改善加算の平均賃金改善額

計画書における3つのグループごとの平均賃金改善額の計算方法は、

特定加算の見込額÷前年度の一月当たり常勤換算職員数(小数点第2位以下切り捨て)÷賃金改善実施期間

で計算されます。この時の前年度の一月当たり常勤換算職員数とは、計画書を提出した前月の常勤換算職員数を言います。1年分の常勤換算職員数を計算して12ヶ月で割った数字ではありませんので注意が必要です。

6. 介護職員等特定処遇改善加算の見える化要件

見える化要件とは、令和2年度から適用される算定要件です。特定処遇改善加算の算定状況と職場環境等要件を情報公表システムまたは事業所のホームページに記載することで満たします。しかし、情報公表システムで記載欄の整備が遅れていることから令和2年4月1日時点で記載出来ない状態が続いています。そのため、今年度の計画においては、情報公表システムで記載する予定であることにチェックを入れることで要件を満たすとされています。

7. 実績報告書のひな型

3月5日に厚生労働省から通知には、新たに一枚に統合された実績報告書のひな型とその記載方法が示されています。この新様式は、今年7月の提出ではなく、来年7月の提出から使用します。今年7月の実績報告書の様式は旧様式で、介護職員処遇改善加算と介護職員等特定処遇改善加算、それぞれの実績報告を別々の様式で2枚提出しますので注意が必要です。

8. 特別な事情に係る届出書

介護職員処遇改善加算と介護職員等特定処遇改善加算ともに、支給期間中の賃金水準の引き下げは認められません。しかし、急な業績の悪化などやむを得ない場合については特例として届出を提出することで、状況が改善されるまでの間について賃金水準を認めるとされています。

注意が必要なのは、あくまでも賃金水準の引下げを認めるに留まり、処遇改善加算の支給自体を免除したり猶予するものではないということにあります。今回のコロナウイルス被害によって収入が激減して5月または6月での特別賞与としての支給が出来なかった場合は、加算の算定要件を満たさないとして全額が返還となります。

9. 処遇改善加算は今後、どうなっていくのか

介護職員処遇改善加算は、交付金の時代を含めると、10年が経とうとしています。当初は一人あたり15,000円程度の金額であったものが、現在は37,000円相当まで増額となり、介護職員等特定処遇改善加算が昨年10月から始まっています。2021年介護報酬改定ではケアマネジャー対象の新たな処遇改善加算が論点となりそうです。
今後は、3本となるであろう処遇改善加算の統合などが検討される可能性も捨て切れません。訪問介護の有効求人倍率が15倍になろうとする現在において、処遇改善加算の重要性は日に日に増しています。今回の新しい基準を理解されて、今後の実地指導等に備えていただければ幸いです。

著者プロフィール

小濱介護経営事務所 代表
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
C-SR 一般社団法人医療介護経営研究会 専務理事

小濱 道博(こはま みちひろ) 氏

日本全国対応で介護経営支援を手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。
昨年も延20,000人以上の介護事業者を動員。
全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。著書、連載多数。

小濱 道博 氏

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