2018年11月15日更新

これからの介護事業経営 第12回 さらに加速する制度改正の動向と拡大する保険外サービスの可能性

小濱介護経営事務所 代表 小濱 道博 氏

消費税増税に関連する動きが加速

安倍総理の表明によって、来年10月の消費税増税が確実視される状況となりました。消費税の増税に伴って、来年10月から介護報酬の基本報酬部分が改定され、区分支給限度額も変更されます。また、新しい介護職員の処遇改善に関する加算も新設されます。その審議はすでに、9月5日からの社会保障審議会介護給付費分科会で始まっていて、今年12月までに結論を取りまとめることになっています。新加算の争点は、従来の介護職員のみを対象とする要件を改めて、看護職やケアマネジャーなどへの支給をどこまで認めるかに掛かってきました。ただし、この支給対象者の拡大は新加算のみが対象とされて、従来の介護職員処遇改善加算には適用されない見通しです。そのため、今回の新加算は従来の介護職員処遇改善加算とは別の形で新設される見通しです。この通りに結論が位置づけられた場合、この新加算を算定出来るか否かが、他の職種の人材確保にも影響を及ぼして行くでしょう。年明けからは2021年度の介護保険法改正の審議が始まり、来年末までに結論が出されて取りまとめられるため、再び息の抜けない時期が始まります。

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事業所のランク付けも加速

来年度からの導入が予定されている新制度に、働きやすさに焦点をあてた「介護事業所の評価・認証制度」があります。その導入に向けて、年内にガイドラインが出されます。この新制度は、事業者の申請によって、「明確な給与・昇給体系」「休暇取得や育児・介護の両立支援」「研修や資格取得支援での人材育成」などの評価項目の達成状況を都道府県が審査します。その審査の結果、「認証事業所」として、ホームページなどで公表するとのことです。これによって介護事業所のランク付けが行われ、人材の確保に大きな影響が出ることが懸念されます。その結果、介護事業所が振り分けられて二極化が加速する事は間違いありません。早急な職場環境の改善と人材育成のノウハウ構築が急務となっています。

通所サービスの保険外サービスの規制緩和

9月28日に厚生労働省から、「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」の通知が発出しました。同日、国土交通省自動車局旅客課からも、「通所介護等に係る送迎に関する道路運送法上の取扱いについて」が発出されました。

まず、「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」の通知を見てみます。

厚労省は、今回、以下1.~4.については、通所介護とは明確に区分されたサービスであるために、一定のルールを遵守する場合には、介護保険外サービスとして提供可能としたのです。

その新たに解禁された保険外サービスとは

  1. 事業所内において、理美容に加え、巡回健診、予防接種を行うこと
  2. 利用者個人の希望により事業所から外出する際に、保険外サービスとして個別に同行支援を行うこと
  3. 物販、移動販売、レンタルサービス
  4. 買い物等代行サービス

の4点です。

1.については、従来から提供時間内に理美容だけが特例としての提供が認められていましたが、今回から採血などの簡単な巡回検診やインフルエンザなどの予防注射の提供も可能とされました。なお、医療法や道路運送法等の各関係法規を遵守する必要があり、例えば、事業所内での訪問診療や鍼灸などの施術は実施できないとされました。

2.は、例えば、提供時間内の利用者がイオンへの買物のための外出を希望して、事業所の職員が付き添って行った場合、その外出支援を行った時間は保険外サービスとして請求することが可能となりました。その場合、外出した時間については当日の介護サービスの提供時間には含める事は出来ません。
3.は、通所サービスでは物の販売を認めていませんでしたが、これを認めるとされました。ただし、高額商品の場合は、事前に家族や担当のケアマネジャーに報告すること。利用者に認知症状が見られる場合は、判断能力が低下しているために高額商品の販売は不可となっています。
4.は、送迎の時間帯などを活用して、買物を依頼された品物を届けるなどの買物代行サービスを言います。

これらを提供する場合の新ルールの概要は

  1. 両サービスを明確に区分して、それぞれ文書で記録すること。
  2. 利用者等に対して、あらかじめ運営規程や重要事項説明書で保険外サービスの内容等を詳細に説明して、同意を得ていること。
  3. 通所介護の利用料とは別に、請求書などで費用を請求すること。通所介護の提供時間には保険外サービスの時間を含めないこと。
  4. 保険外サービスを提供する事業者からの利益収受は禁止。たとえば、予防注射を依頼した病院からのバックマージンの授受などは不可ということです。
  5. 消費者からの苦情・相談窓口の設置等の措置を講じること。
  6. 外部事業者が保険外サービスを提供する場合、事故発生時の対応を明確化すること。
  7. 保険外サービスの提供時間は、介護サービスの勤務時間に含める事が出来ない事。

などが条件とされました

なお、この新規定は、通所介護、通所リハビリテーション、認知症対応型通所介護、地域密着型通所介護が対象となります。

訪問介護での保険外サービスの一部緩和

訪問介護においては、従来通り

  1. 介護保険サービス提供時間に保険外サービスを同時に提供する事は出来ないこと
  2. 介護職員の指名料や、提供時間を優先的に指定する場合の指定料を別途に請求することは認められないこと
  3. 保険外サービスを提供する場合は、事前に利用者に対して重要事項を説明し、同意を得ること。
  4. 保険外サービスの提供時間は、介護サービスの勤務時間に含める事が出来ないこと
  5. 保険サービスの会計処理と、保険外サービスの会計処理は別々に行うこと

などの基本ルールが再確認されています。

また、従来は常勤専従の規定があるサービス提供責任者は保険外サービスを担当することを認めない指導が一般的でしたが、今回の通知では、サービス提供責任者の業務に支障が無い場合については、保険外サービスを提供することを認めることが明記されて、一部の規制緩和も盛り込まれています。

通所サービスの送迎に関する規制の再確認

同日に発出された国土交通省自動車局旅客課の通知では、通所サービスの送迎について、タクシー業の許認可を必要とするケースが改めて確認された内容になっています。

通所サービスはその基本報酬に送迎費用が含まれているために、送迎を行わない場合については、送迎費用相当分を送迎減算として減額しています。すなわち、通所サービスは送迎費用を利用者から徴収しての有償送迎を行っているのです。本来、有償の送迎を行う場合は、タクシー業の許認可が必要です。許認可無くして有償の送迎を行った場合は、いわゆる白タク行為として処罰されます。

長年の厚生労働省と国土交通省の協議の結果、通所サービス事業所と利用者の自宅間の通常の送迎コースにおいては、特例として有償の送迎を認めるという取り決めになっています。今回の通知は、この部分についての再確認が行われています。例えば、通常の送迎コースを外れて、病院やスーパーマーケットまで利用者をお送りする場合は、タクシー業の許認可を必要とすること。通常の送迎コースの途中に病院やスーパーマーケットが有って、途中下車させることは認められること。通所サービス以外の、たとえば保険外サービスで送迎費用を請求することは認められないことなどです。今後は実地指導等においても、送迎状況が確認されていくと思われますので注意が必要です。

更なる規制緩和のために

今回は、厚生労働省と国土交通省の二つの通知で、保険外サービスの取扱と送迎の取扱が改めて確認されました。これらの通知が出された背景には、これまで規制改革会議などで保険外サービスの規制緩和を審議してきた中で、現行の制度に於ける介護保険サービスと保険外サービスの境界線を明確にしない限り、規制緩和の審議が進まないという指摘があります。

そのため、厚生労働省と国土交通省は、今回の通知で、その境界線を明確にしたのです。現時点において、保険外サービスで出来ることと、出来ない事が明確にされたことで、今後はさらに、保険外サービスの緩和措置の審議が進むことが期待されています。

今年8月から東京都豊島区で、訪問介護サービスの提供時間に保険外サービスを同時一体的に提供する、いわゆる混合介護のモデル事業が始まっています。さらに豊島区では、通所サービスの保険外サービスの一環として、送迎費用を取っての移動支援や同行援助を行うモデル事業の実施の検討に入りました。これは現時点においては、白タク行為として取り締まりの対象になっています。同時に、規制緩和の一環として規制緩和が期待されているサービスの一つです。また、通所サービスの送迎時間以外の、送迎車両のレンタルサービスなども検討が始まっています。今後は、保険外サービスが一層の拡大されることが期待されていて、それが現実となりつつあります。もはや、介護事業者が利用者1割負担のサービスだけを提供する時代ではなくなっているのです。

著者プロフィール

小濱介護経営事務所 代表
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
C-SR 一般社団法人医療介護経営研究会 専務理事

小濱 道博(こはま みちひろ) 氏

日本全国対応で介護経営支援を手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。
昨年も延20,000人以上の介護事業者を動員。
全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。著書、連載多数。

小濱 道博 氏

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