2018年05月15日更新

これからの介護事業経営 第09回 次期2021年介護保険法改正への動き

小濱介護経営事務所 代表 小濱 道博 氏

平成30年度介護報酬改定も一段落して日常業務に邁進されている時期である。しかし、すでに次期2021年介護保険法改正への動きが出てきた。本格的な社会保障審議会介護保険部会での介護保険法の改正審議は年明けの来年2月頃から始まるが、4月11日に開催された財務省の財政制度分科会において、社会保障制度改革への論点と対応策案が出された。今後は、この内容に沿って政府内で検討が進み、年明けの介護保険部会に繋がっていく。今回は、財政制度分科会で示された内容を見ていく。なお、これはあくまでも財務省の見解であって厚労省のものではない。しかし、財務省の影響力を勘案すると今後の改正審議に大きな影響を及ぼすものである。

1. ケアマネジメントの質の向上と利用者負担について

現在の居宅介護支援報酬では利用者負担はゼロである。自己負担がないために、利用者にはケアマネジャーにお世話になっているという意識が働き、ケアマネジャーの業務の質に関して利用者からのチェック機能が働きにくい。利用者負担を設けても、大きな障害にはならず、ケアマネジャーの業務の質へのチェック機能が期待出来る。そのため、改革の方向としては、保険者のケアプランチェックと利用者からの質のチェック機能の相乗効果を図るために、居宅介護支援に利用者負担を設ける必要があるとした。

2. 軽度者へのサービスの地域支援事業への移行について

要介護1~2の軽度者は生活援助のニーズが高い。そのため、国の一律の基準よりも、地域の実情にあった地域の多様なサービスでの提供が望ましい。しかし、現状は総合事業に移行した後も、移行前と同様の国の基準に基づくサービスの実施に留まっている。改革の方向としては、一定の時期までに現行相当サービス(第一号事業)を、サービスA(緩和型)およびサービスB(住民主体)に移行するとの方針を国が定めるべきである。さらに要介護1~2の軽度者については、訪問介護の生活援助サービスを地域支援事業への移行を進めるべきとした。

3. 在宅と施設の公平性の確保(多床室の室料負担)

平成27年改定で、特別養護老人ホームは、多床室の室料を基本サービス費から除いた。しかし、介護老人保健施設、療養病床、介護医療院では変更はされていない。そのため、改革の方向としては、それらの施設の基本サービス費から多床室の室料を除外する見直しを行うべきとした。

4. 保険者機能強化のためのインセンティブの活用

平成30年度予算で、都道府県・市町村の保険者機能強化のための新たな交付金を創設している(保険者機能強化推進交付金 30年度予算額:200億円)。改革の方向としては、自治体の達成状況について「見える化」を実施して、達成状況がよい自治体の取組を分析して全国展開する。達成状況がよくない自治体は原因分析して都道府県・市町村の取組を支援すべき。さらに保険者機能強化を進めるため、第8期介護保険事業計画期間の始期である平成33年度から調整交付金のインセンティブとしての活用を進めるべきとした。

5. 頻回のサービス利用についてのケアプランチェックとサービスの標準化

平成30年度介護報酬改定では、平均を大きく上回る訪問介護の生活援助サービスに対して上限回数制限を設け、ケアプランを自治体に届出を義務づけ、地域ケア会議での検証を行って不適切事例を是正する仕組みを取り入れた。今後の改革の方向としては、今年10月からの制度のスタートまでに、保険者によるケアプランチェックの指針を早急に策定して周知する。さらに利用者の状況に応じたサービスの利用回数や内容についての標準化を進める必要があるとした。

6. 在宅サービスについての保険者等の関与の在り方

訪問介護と通所介護の一人あたり給付費は、全国平均と最大値との間で3倍の差がある。一方で、居宅サービスには自治体がサービス供給量をコントロールする仕組み(総量規制や公募制)が不十分である。改革の方向としては、保険者機能を強化して、在宅サービスにも総量規制や公募制などの仕組みを導入すべきとした。

7. 介護事業所・施設の経営の効率化について

介護サービス事業所では、経営規模が大きいほど経費の効率化が進み経営状態も良好である。一部では、経営主体の合併などで規模の拡大も図られている。しかし、全体では小規模な法人が多いのが現状である。改革の方向としては、経営の効率化・安定化と共に、今後も担い手が減少していく中での人材の確保と有効活用やキャリアパスによるサービスの質の向上などから、介護サービスの経営主体の統合・再編等を促すための施策を講じていくべきとした。

大規模化の参考としては、介護サービス事業を行う複数の法人が、人材育成・採用などの本部機能を統合・法人化することによって、ケア品質の底上げや研修・ 採用活動のコスト減を図るなどの取組が存在するとして、

①、介護サービス事業の人事や経営管理の統合・連携事業を自治体が目標を定めるなどして進める。

②、一定の経営規模の事業者の経営状況を介護報酬などの決定にあたって勘案することで経営主体自体の合併・再編を促す。

③、経営主体について一定の経営規模を有することや、小規模法人については人事や経営管理等の統合・連携事業への参加を指定・更新の要件とする。

といったことも考えられるとした。

財務省の提言については、従来と変わらずに介護給付費の削減有りきではあるが、今回はより一層、具体化が進んでいる。1~6については既定路線として周知の論点である。問題は7で、行政主導での業界再編成を進める方向が示されていることだ。特に許認可の指定・更新の要件に財産要件を設けることが、上記③において出されたことは重要である。財産要件とは、指定基準に一定の資産額や自己資本比率、職員数、拠点数などを設定することを言う。介護事業は許認可事業であるので、指定を受けなければ事業を営むことが出来ない。国内に許認可事業は多々あるが、その殆どに財産要件が許認可基準に設定されている。しかし、介護事業は介護保険法施行当初の目的が事業所数の確保であったため、あえて設けられてはいなかった。しかし、介護事業所数が飽和状態である現在においては、財産要件の導入は必然であろう。経営の安定と収益率の向上と共に、事業規模の拡大策が急務となったと言える。しかし、過当競争の中での短期間での事業規模の拡大は難しい。今後はM&Aなども加速するであろうし、介護保険外サービスや共生型サービスの導入などでの事業拡大策をとることが重要となったと言える。具体的な審議は年明けであるが、政府の方針を中心に引き続き、情報収集を急ぐ必要がある。

著者プロフィール

小濱介護経営事務所 代表
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
C-SR 一般社団法人医療介護経営研究会 専務理事

小濱 道博(こはま みちひろ) 氏

日本全国対応で介護経営支援を手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。
昨年も延20,000人以上の介護事業者を動員。
全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。著書、連載多数。

小濱 道博 氏

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