2018年02月19日更新

これからの介護事業経営 第08回 平成30年度介護報酬単位の答申内容の検証

小濱介護経営事務所 代表 小濱 道博 氏

1月26日に平成30年度介護報酬単位が答申された。今回の改定率は+0.54である。これは、同時に改定された診療報酬の薬価分がマイナス査定となり、その余剰分で介護報酬に廻すことでプラス査定となったことによる。薬価の余剰分がなければ確実に介護報酬もマイナス査定であった。今回は、主なサービスの介護報酬単位を検証する。

1. 訪問介護

身体介護が身体Ⅱで+1%、生活援助が生活Ⅲで▲0.9%となった。生活援助サービスは、介護職員を初任者研修修了者以上とする資格制限を外して、アルバイトスタッフでの提供が可能となる。このことを理由として生活援助は大幅なマイナスが予想されていたが、結果として▲1%前後の小幅なマイナスに留まった。これは、アルバイトスタッフでの提供の要件となる新たな研修制度の構築が間に合わなかったことが挙げられる。その新たな研修制度も今年度中に取りまとめるため、次回改定では生活援助は大幅なマイナスもしくは市町村事業への移行を覚悟しなければならない。

いま、身体介護を算定する見守り的援助および生活機能向上連携加算の算定への関心が、急激に高まっている。デイケアが提供するリハビリテーションと、訪問介護が提供する見守り的援助の連携による提供は、相乗的にリハビリテーション効果を高めることが期待出来る。複数の介護サービスの連携によるサービス提供は、今後の事業展開に大きな可能性がある。複数サービス連携の取組の可否によって、今後は訪問介護事業所も二極化に向かうのではないか。

同一建物減算は、建物に事業所が併設している場合で、同一敷地内の利用者数が50人以上の場合、減算率が15%に引き上げられた。また、高齢者住宅に限られていた減算対象が、すべての建物を対象とすることに改められた。居宅介護支援に新設される訪問介護(生活援助中心)の利用回数制限と共に、高齢者住宅の併設事業所への影響が懸念される。

2. 訪問看護

訪問看護ステーション、病院診療所ともにほぼ現状維持となった。しかし、療法士によるサービス単価は、▲2%とマイナス査定である。さらに予防訪問看護の報酬区分が新設されて、療法士区分は▲5.3%と大きなマイナスである。療法士によるサービスは、訪問リハビリテーションが290単位であるのに対して、訪問看護の療法士サービスは296単位となった。

前回の改定で、双方のサービスが同じという理由で報酬単位が同じ単位に統合されたにも関わらず、たった3年でまた差が出たのは何故か。これは、訪問看護の療法士サービスが評価された訳ではない。新たな算定要件で、療法士のサービスへの看護職員の関与要件が急増したことから、その負担分を勘案して高い報酬単位になっただけである。その負担増を考えると、実際は大きなマイナスである。軽度者へのサービス提供が規制に向かった反面、訪問看護の本来業務である重度者ケア、特にターミナルケアには手厚い評価が出された改定となった。

3. 通所介護

通所介護は、基本報酬が据え置きの上で時間区分が変更された。その結果、要介護2で見てみると、3時間以上4時間未満は▲4.8%、5時間以上6時間未満は▲2.4%、7時間以上8時間未満は▲1.8%と、マイナス査定となった。大規模型は、基本報酬が引き下げられた上に時間区分が変更されたことで、ダブルパンチとなった。

新設の加算である生活機能向上連携加算は月200単位、個別機能訓練加算を算定している場合は100単位である。この加算では、連携する通所リハビリテーション等に手数料を支払って療法士の訪問を受けることになるため、収入が増えても利益面ではマイナスとなることが想定される。それ以上に、連携する通所リハビリテーション等を確保することに困難を伴う。

また、自立支援介護を推進する成果型インセンティヴ加算として期待されたADL維持等加算であるが、報酬単位は区分Ⅰで月に3単位、区分Ⅱでも月に6単位に留まった。さらに算定要件として「5時間以上の通所介護費の算定回数が5時間未満の通所介護費の算定回数を上回る利用者」が20人以上いることが必要であるため、リハビリテーション型などの短時間サービス中心の事業所は算定出来ない結果となった。

4. 地域密着型通所介護

前回の改定で10%近いダウン改定となった影響で、収支の悪化が深刻な地域密着型通所介護は総じて基本報酬は現状維持か、若干のプラスとなった。しかし、3時間以上4時間未満の短時間型に限っては、▲4.5%のマイナス査定である。小規模型は、前回の報酬改定でも9%以上のマイナスであったため、2回連続の大幅ダウンへの衝撃が大きい。

通常規模、大規模でも同様に短時間型に限って▲5 %弱のマイナスであったため、これは国の意志と取るべきである。すなわち、通所介護および地域密着型通所介護共に、レスパイト機能を果たさない機能訓練だけの短時間型は、規制強化の方向である。国が考える通所介護に於けるサービス提供時間は、最低でも5時間以上と捉えるべきだ。これは新設のADL維持等加算の算定要件が5時間以上の通所介護費の算定回数を基準とされていることからも明らかだ。通所介護には機能訓練だけでは無く、一定時間のレスパイト機能が求められる方向が明らかとなった改定でもある。

5. 通所リハビリテーション

通所リハビリテーションは介護事業経営実態調査結果で収支差率が5.1%と高かったため、4時間以上の時間区分で引き下げとなった。特に4時間以上5時間未満と6時間以上7時間未満が通常規模、大規模共に▲10%前後である。この時間帯は、通所介護同様に多くの事業所が設けている時間帯であるため、マイナスの影響は大きい。現実的に通所介護と200単位以上の差があった報酬差が、一気に100単位程度の差に縮まったため、非常に差別化が難しい時間区分となった。それに対して、5時間以上6時間未満は100%、7時間以上8時間未満は96%前後であった。2時間~4時間の時間区分は100%である。しかし、この時間帯に変更して1時間の時間延長を行った場合は、人件費が増加する。対策に苦慮する部分である。

今回の基本報酬の改定の結果として、長時間型は引き下げ、短時間型は現状維持とされたことになる。通所介護には一定の長時間のレスパイト機能を求め、通所リハビリテーションは短時間でのリハビリテーションを求めるという役割分担が明確となった。

リハビリテーションマネジメント加算は現在の2区分から4区分に変更された。現在のIはそのままに、ⅡをⅢに変更して、療法士がリハビリテーション計画を説明する区分Ⅱを新設。厚労省のリハビリテーションデータ収集事業のVISITへデータ提供を行う場合のⅣも新設された。ただし、区分Ⅳは3ヶ月に一度の算定となり、それ以外の月はⅢを算定する。

通常の人員基準による100人に1人の療法士の配置を、利用者25人に1人の配置とする場合に算定が可能となるリハビリテーション提供体制加算が新設された。予防通所リハビリテーションには新たな加算として、予防リハビリテーションマネジメント加算と予防生活行為向上リハビリテーション実施加算が創設されている。

6. 居宅介護支援

居宅介護支援の報酬は+1%である。管理者が主任ケアマネジャーであることも確定した。これによって既存の事業所も3年以内の資格取得が必要となった。特定事業所加算には、従来のⅠ~Ⅲの上乗せ加算である新区分Ⅳ(125単位)が創設された。その要件は、退院退所加算を年間で35回、新設のターミナルケアマネジメント加算を5回以上算定することである。平成30年度は回数の蓄積に費やされ、実際の算定は平成31年度からである。その新設のターミナルケアマネジメント加算は、400単位となった。この加算は、在宅で亡くなった末期癌の患者に対して、通常は月1回のモニタリング訪問を2回実施し、その状況を主治医と居宅事業者に提供した場合に算定出来る。

そして、訪問介護の生活援助中心への利用回数制限の導入である。介護度別に厚労省が利用回数の上限回数を示す。その上限を超えた場合は、ケアプランを役所に提出した上で、地域ケア会議などでその是非を問う審議を行い、その結果で可否が決まる。上限回数は4月頃に厚労省から提示され、半年の告知期間を経た上で、今年10月から実施される。なお上限回数は、月30回程度を想定している。

7. 介護老人保健施設

介護老人保健施設は、基本報酬自体は、退所前訪問指導加算(460単位)と退所後訪問指導加算(460単位)が基本報酬にまるめられた結果、現状維持に留まっている。施設区分が変更され、現在の在宅復帰・在宅療養支援機能を有する事業所が基本とされ、報酬体系は5つの区分に分けられた。その基準は10項目のポイントで判定される。

問題は、遂に「その他」に分類されてしまった、特養化した長期滞在型の従来型介護老人保健施設である。報酬区分では、新設のⅣ:特別介護保健施設サービス費となった。従来の区分Ⅰから区分Ⅳに変更されて特別の文字が冠された意味は大きい。なんと言っても区分Ⅳでは、加算の多くが算定出来ないのだ。新設の加算は全滅である。短期集中リハビリテーション実施加算など、既存の加算の多くも算定不可となっている。基本報酬のマイナスが少なくても、加算算定が無くなれば実質的に減収となる。この区分Ⅳでは、将来性がまったく感じられない。しかも、この区分Ⅳへの移行対象である従来型老健は全体の50%に及ぶ。

今回新設された超在宅強化型老健との収入差を試算したところ、要介護3の利用者が100人という単純計算で、年間の収入差はで4,745万円となった。実際は区分Ⅳでは、もはや加算すら取れない状態なので差は更に拡大する。このような事態となっても、長期滞在者を追い出すことは出来ないと言っている施設が多いことに驚く。早期に基本型の算定を実現する事が最重要だ。少なくとも基本型では、多くの加算を算定することが出来るからだ。施設の経営能力が問われている。

著者プロフィール

小濱介護経営事務所 代表
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
C-SR 一般社団法人医療介護経営研究会 専務理事

小濱 道博(こはま みちひろ) 氏

日本全国対応で介護経営支援を手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。
昨年も延20,000人以上の介護事業者を動員。
全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。著書、連載多数。

小濱 道博 氏

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