2017年07月11日更新

これからの介護事業経営 第07回 平成30年度(2018年度) 介護報酬改定の動向

小濱介護経営事務所 代表 小濱 道博 氏

2017年4月26日からスタートした平成30年度(2018年度)介護報酬改定の審議は、社会保障審議会介護給付費分科会にて一巡目が順調に進んでいる。今後は、7月までに在宅サービス、施設サービスのすべてのサービスに於ける論点が示される。8月以降は2巡目の審議が行われ、11月から12月に掛けては更に議論が必要な項目について3巡目の審議が行われ、12月中旬には最終意見書が取りまとめられて、12月後半に改定率が示される。年が明けて、1月後半には各サービスの報酬単位が答申されて明らかとなる。2月中旬に厚労省全国担当課長会議が開催されて、算定要件である厚労省告示、解釈通知が発出される。3月上旬からQ&Aが順次、発出されていく。

では、今回の介護報酬改定率はプラスか、マイナスか。

結論を言ってしまうと、非常に厳しい改定となり、マイナス査定となる可能性が非常に高いと言わざるを得ない。平成30年の介護報酬改定の参考資料とされる平成28年度介護事業経営概況調査結果(案)が、平成28年12月28日に開催された社会保障審議会給付費分科会に提示されている。介護報酬改定において重視されるのは今年9月に公表される介護事業経営実態調査結果であるが、平成27年度改定以降の収支比率(利益率)の現状を把握するには重要な資料である。平成27年度介護報酬改定の実質4.48%のマイナス査定によって、介護サービス事業全体の平均収支差率は4%程度まで下がったと想定される。この収支差率4%をひとつのラインとして、それを超えた介護サービスは、在宅サービスでは、訪問介護(5.5%)と通所介護(6.3%)の2つである。この調査時点では、通所介護と地域密着型通所介護は区分されていない。小規模型通所介護は前回の改定で実質的に10%近いマイナスであったことを考えると、かなり収支差率は低下していると考えられる。それを含んでも6.3%の収支差率であることは、通常規模以上の通所介護は依然としてかなり高い収支差率を維持していると想定できる。いずれにせよ、訪問介護と通所介護の収支差率が依然として高いことからマイナス査定の可能性が高いと言える。他のサービスは平均的な収支差率を下回っているとは言え、決して楽観出来る状況にはない。介護給付費分科会での審議の行方に注目が集まっている。

では、先の介護保険部会での審議と、4月から5月の介護給付費分科会の審議で示された介護報酬改定における論点を見てみる。

1. 通所リハビリや通所介護、認知症対応型通所介護などについて、共通機能と特徴的な機能を明確化し、一体的・総合的な機能分担・評価体系とする

デイケアとデイサービスの提供内容の類似や、デイサービスでの認知症高齢者の増加と認知症対応型通所介護の利用者の減少といった問題点が指摘されている。特に利用者数が減少している認知症対応型通所介護は、価格に見合ったサービス内容は何か明確にすることが求められる。認知症対応型デイの利用者の減少の理由は、一般の地域密着型デイの利用料金が安く、利用回数を多く出来ることにある。今後は、認知症対応型通所介護の役割を明確にして、軽度と重度での役割の区分など、認知症デイと一般の地域密着型デイとの棲み分けや機能分化が模索される。

一般のデイサービスは、機能訓練を提供しない預かり主体のデイサービスの報酬を引き下げることを財務省が強く主張している。これが何処まで介護報酬に反映されるかが焦点となる。特に通常規模以上のデイサービスの収支差率が高いと予想されるため、大きな引下げとなる可能性がある。今後は、個別機能訓練加算の算定が重要となっていく。

自立支援介護の概念によって、アウトカム評価による介護報酬体系が導入されていく。これからは、機能訓練やリハビリテーションをやれば良い時代から、機能訓練やリハビリテーションの結果、どの課題が、どのように解決されたかという結果が求められる時代に変わっていく。特に介護老人保健施設、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーションの医療系サービスは結果が重要となる。前回の介護報酬改定で導入された社会参加支援加算や生活行為向上リハビリテーション実施加算等がキーワードになっていくと思われる。

2. ケアマネ管理者の役割の明確化、特定事業所集中減算の見直しなどの運営基準の見直し

昨年3月25日に会計検査院が居宅介護支援事業所の特定事業所集中減算の問題点を指摘したことから、集中減算の算定要件の見直しが論点となる。現時点における方向性は、集中減算の廃止の方向が強いとされているが、今後の審議の行方によっては予断を許さない。また、仮に廃止されたとしても、地域ケア会議や実地指導でのケアプラン点検の強化などによって、ケアマネジャーへの指導が強化される方向があるため、お世話型のケアマネジメントは縮小の方向に向かわざるを得ないと思われる。

3. 「通所リハビリにおけるリハビリ専門職の配置促進、短時間サービス提供の充実」「退院後早期のリハビリ介入の促進」「職種間・介護事業所間の連携強化」などを図る

デイケアとデイサービスの違いは何か。二つのサービス内容が非常に類似しているとの指摘が介護保険部会に於いてなされている。平成30年度以降、医療保険の回復期リハビリテーションが介護保険に移行されることもあり、デイサービスは短時間化への政策誘導が進むと思われる。1~3時間の提供時間の中で一定数の利用者のリハビリテーションを行う為には、今まで以上にリハビリ専門職の配置促進が求められる。短時間単位での報酬の増額や、リハビリテーション専門職の複数配置加算等が想定される。また、デイケアと訪問リハビリテーションには病院と連携して退院患者への早期のリハビリテーションの実施が課題となる。今回の介護報酬改定では、短時間のデイケアの報酬が優遇され、医療との連携加算などが充実すると思われる。

4. 小規模多機能型居宅介護や看護小規模多機能型居宅介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護における人員要件や利用者定員の見直しを検討(機能強化や効率化)

定期巡回・随時対応型サービスでは、専門職としてのオペレーターの専従配置については前回の改正で夜間の兼務が可能となっている。今回は更に日中の配置要件が簡素化される方向である。定期巡回・随時対応型サービスは、高齢者住宅との併設で効率が高まるため、周辺部へのサービス提供が進まない。如何に地域全体にサービスを拡大するかが論点となる。集合住宅減算の適用の強化なども論点である。

小規模多機能型居宅介護については、登録者以外の者に対する訪問サービスの提供を可能にすることが検討される。職員配置については、前回の制度改正でデイサービスの看護職員は、訪問看護ステーションや病院等と提携して、朝のバイタルチェックの時間帯などに看護師を派遣して貰うことで、他の時間帯は迅速な対応が出来る状態をキープすることを条件としてデイサービスの看護職員の配置を不要とする緩和措置が執られた。これと同じ条件をもって、小規模多機能型居宅介護の看護職員の配置の緩和が議論される。

また、昨年の介護保険部会から引き継がれた論点として、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが小規模多機能型居宅介護のケアプランを作成することを認める是非についての議論が始まる。介護保険部会でこの論点が提示された経緯は、小規模多機能型居宅介護の普及拡大に於いて、何が支障になっているかの検討を行った結果、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが利用者を小規模多機能型居宅介護に紹介した場合、ケアマネジャーは自分の利用者を手放す事となるため、積極的に紹介しないことが原因の一つであるとされたことにある。であれば、引き続き居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当を継続できる制度に緩和することで、小規模多機能型居宅介護の普及が拡大されるというのが緩和の理由である。ただし、居宅介護支援事業所のケアマネジャーに拡大する緩和措置については、厚労省は無理に緩和を進めない方向であると予想する。

5. 特別養護老人ホーム内での医療ニーズや看取りにより一層対応できる仕組みを構築する

前回の改正で、特別養護老人ホームの利用は要介護3以上に限定された。さらに日常生活支援加算を算定する場合、新規入居の70%以上が要介護4以上であることが求められる。重度化した施設には、医療行為や看取りのニーズが急増する。医師や看護師の配置促進が重要となる。これらへの対応を求める加算などの新設や増額が検討される。

6. 共生型サービスの指定基準などを検討する

新設される共生型サービスの指定基準と報酬体系が審議される。共生型サービスとは、介護保険サービスと障害福祉サービスの同一事業所における一体的な提供を可能とすることをいう。介護保健サービス分野の指定基準と報酬体系は介護給付費分科会で、障害福祉サービス部分の報酬体系は障害者部会で、それぞれ審議される。

7. 介護ロボットやICT化を進める事業所に対する報酬や人員・設備基準の見直しを検討する。

介護ロボットやICTの導入促進に向けた加算の新設や人員基準の緩和が検討される。

8. 軽度者への生活援助サービスにおける人員基準の緩和を検討する。

訪問介護サービスから軽度者の生活援助サービスを市町村の地域支援事業に移行することについては、結論が平成32年3月まで延期された。それにともない、生活援助サービスの人員基準を緩和する。すなわち、生活援助サービスに限って、現在求められている初任者研修修了者の資格要件を除外する。それによって、地域の専業主婦、学生、高齢者などをアルバイトスタッフとして雇用して生活援助サービスを担当させることが検討される。その場合、現在の生活援助サービスを担当する有資格者であるヘルパー職員と、今後の担当となるアルバイトスタッフとでは、時給が大きく異なる。アルバイトスタッフの人件費が低い分について、生活援助サービスの基本報酬が減額されることになる。今後は、訪問介護においては、従来通りに有資格者の雇用を進めると共に、地域のアルバイトスタッフの確保も急務となる。

9. 介護医療院の報酬や施設基準などを検討する。

介護医療院の報酬や施設基準が審議される。介護療養病床からの転換を促進するために、当初の介護医療院の報酬は手厚く設定されることとなる。

10. 高齢者住宅関連

今回の介護報酬改定審議に於いては、全ての在宅サービス共通の問題として高齢者住宅の囲い込みへの批判が挙がっており、何らかの対策が実施されると思われる。前回の改定でも集合住宅減算が拡大され、小規模多機能などは基本報酬で減額された。診療報酬に於いても、訪問診療が大きく減額されたこともあり、囲い込み対策と集合住宅減算などの更なる拡大が懸念される。

11. 認知症施策関連

グループホームにおいては、年々入居者が重度化していることで医療行為のニーズが拡大している。医療連携体制加算の算定も76%を超えるが、事業所側が医療行為の拡大に対応出来ない現状があるため、入居者の退居理由にも繋がっている。この現状にどう対応するかが論点として挙げられた。これについては、看護職員の配置を義務づける案と、かかりつけ医や訪問看護ステーション等の外付けサービスとの業務連携を認める案が焦点となる。また入院予防の観点では口腔機能の向上も重要であることから、歯科衛生士の配置促進などが焦点となる。新たな配置加算の新設も考えられる。福祉用具の利用については、現在はまるめで基本報酬に包括されているが、一定の福祉用具の提供体制を有する事業所に対して体制加算を設ける点が論点となる。

認知症関連加算では、認知症加算の算定のためには、認知症リーダー研修などの認知症関連講習の受講者が必要であるが、これらの講習会は全国的に満員状態が続き、グループホームなどが優先されて一般のデイサービスなどは余程のことが無い限り受講は難しい。早急な講習定員の増員や開催回数の増加への対策が必要であることが指摘されている。各サービスにおける認知症関連の加算の在り方も論点となる。状況によっては、多数有る加算を集約して算定要件を厳格化して給付抑制することも考えられる。

平成30年度介護報酬改定の行方は余談を許さない。

著者プロフィール

小濱介護経営事務所 代表
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
C-SR 一般社団法人医療介護経営研究会 専務理事

小濱 道博(こはま みちひろ) 氏

日本全国対応で介護経営支援を手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。
昨年も延20,000人以上の介護事業者を動員。
全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。著書、連載多数。

小濱 道博 氏

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