2017年04月14日更新

これからの介護事業経営 第04回 介護職員処遇改善加算の算定のポイント

小濱介護経営事務所 代表 小濱 道博 氏

介護職員処遇改善加算が今年4月より改定された。従来の加算区分であった加算ⅠがⅡへ、加算ⅡがⅢへと一つずつ繰り下がり、新たに常勤換算での介護職員1名当たり月額1万円相当のアップとなる加算Ⅰが新設される。新加算区分Ⅰを算定するために新規で設けられたキャリアパス要件Ⅲは、以下の2点が算定要件である。

図表1:介護職員処遇改善加算の区分に応じた加算率
サービス区分 介護職員処遇改善加算の区分に応じた加算率
加算 I 加算 II (旧 Ⅰ) 加算 III (旧 Ⅱ)
1.(介護予防)訪問介護
2.夜間対応型訪問介護
3.定期巡回・随時対応型
13.7% 10.0% 8.6% 5.5% 4.8%
1.(介護予防)訪問入浴介護 5.8% 4.2% 3.4% 2.3% 1.9%
1.(介護予防)通所介護
2.夜間対応型訪問介護
5.9% 4.3% 4.0% 2.3% 2.2%
1.(介護予防)通所リハビリテーション 4.7% 3.4% 3.4% 1.9% 1.9%
1.(介護予防)特定施設入居者生活介護
2.地域密着型特定施設入居者生活介護
8.2% 6.0% 6.1% 3.3% 3.4%
1.(介護予防)認知症対応型通所介護 10.4% 7.6% 6.8% 4.2% 3.8%
1.(介護予防)小規模多機能型居宅介護
2.看護小規模多機能型居宅介護
10.2% 7.4% 7.6% 4.1% 4.2%
1.(介護予防)認知症対応型共同生活介護 11.1% 8.1% 8.3% 4.5% 4.6%
1.介護老人福祉施設 ・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
2.(介護予防)短期入所生活介護
8.3% 6.0% 5.9% 3.3% 3.3%
1.介護老人保健施設
2.(介護予防)短期入所療養介護(老健)
3.9% 2.9% 2.7% 1.6% 1.5%
1.介護療養型医療施設
2.(介護予防)短期入所療養介護(病院等)
2.6% 1.9% 2.0% 1.0% 1.1%
  • 出典:
    厚生労働省資料

(五) 「介護職員の経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けていること。」
(六) 「(五)の要件について書面をもって作成し、全ての介護職員に周知していること。」

介護職員処遇改善加算の区分

各キャリアパス要件を確認していく。

1,キャリアパス要件Ⅰ

介護職員のキャリアップのために、介護職員が登ることが出来る役職の階段を設けて昇進の仕組みを作ること。その階段毎に得ることが出来る賃金の金額を明確にすることが算定要件である。ポイントは、キャリアパス要件Ⅰでは号俸制のような賃金体系や定期昇給の仕組みは求められてはいないことにある。例えば、最も簡単に算定要件を満たす方法としては、一般職員25万~28万、班長28万~32万、主任32万~36万といった幅のある給与の目安を決めておくだけで良い。ここでは、定期昇給は要件ではないのである。

2,キャリアパス要件Ⅱ

介護職員のスキルアップである。そのプロセスは、

  1. 介護職員と意見交換を行った上で、目標を立てる
  2. その目標を達成するための研修計画などを作る。
  3. 同時に、介護職員が研修を受けやすくするための事業所の協力体制を構築すること。

例えば、研修日には勤務シフトに含めない協力体制や、研修費用や通学交通費の一部助成などの規程を作ることである。

3,キャリアパス要件Ⅲ

下記1~3のうち、ひとつ以上該当していること。

  1. 経験に応じて昇給する仕組みを設けている。
    ~「勤続年数」や「経験年数」などに応じて昇給する仕組みである。
  2. 資格等に応じて昇給する仕組みを設けている。
    ~「介護福祉士」や「実務者研修修了者」などに応じて昇給する仕組みである。
  3. 一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けている。
    ~「実技試験」や「人事評価」などの結果に基づき昇給する仕組みである。ただし、客観的な評価基準や昇給条件が明文化されていることを要する。

さらに、以下にも該当すること。

  1. 4.
    上記2を適用する場合、介護福祉士資格の有無で昇給する仕組みであるとき、介護福祉士資格を有した状態で雇用された者も、更なる昇給の仕組みがあること。
  2. 5.
    昇給の仕組みについて、当該事業所や法人に雇用されるすべての介護職員(パート等非常勤職員含む)が対象となり得るものとなっていること。
  3. 6.
    キャリアパス要件に適合することが就業規則等に明文化されていること。

ここでは、昇級の仕組みと昇進が連動することは求められていないことがお分かりであろうか。必ずしも、介護福祉士を取得したら班長の役職に就くなどの仕組みは必要無い。しかし、昇級の仕組みと昇進が連動することを求める役所の指導も多いと聞く。その原因は、厚労省の説明用のイメージ図が昇級の仕組みと昇進が連動する形を取っていたことが大きな原因である。勿論、昇級と昇進を連動させても間違いでは無いし、可能であれば行うべきであろう。しかし、そこまでを要求した場合、小規模な事業所には荷が重い仕組みで有り、それを理由に算定を回避する事業所も多い。

キャリアパス要件Ⅲの算定要件では、昇級と昇進を連動させることは必要無い。この部分を踏まえて、最もリスクを少ない形でキャリアパス要件Ⅲを満たす方法としては、資格手当を段階的に設ける方法がある。

複数の資格手当を作り、職員が新たな資格を取得する度に、手当が積み上がって昇給する仕組みで要件をクリアする。

例えば、

  1. 介護福祉士手当2000円、社会福祉士手当2000円、ケアマネジャー資格手当2000円など、複数の資格手当を作る。
  2. 介護職員は、それぞれを取得するたびに、資格手当が2000円、4000円、6000円と昇給していく仕組みとする。非常勤職員の場合は、日給で一日100円などと規定しても良い。

この方法を用いる事で、介護福祉士を取得した者が入社した後も昇給する仕組みを作ることが出来、かつ、非常勤職員も対象としなければならない要件も、この形でクリアできるために、小規模な事業所でも十分に算定出来る。その資格手当の原資は処遇改善加算であるので、事業所の新たな負担増にもならない。資格手当の該当者が少なく、余った処遇改善加算の部分は、通常通りの配分に含めれば良い。

処遇改善計画書などの届出期限は4月15日であったが、就業規則などを役員会などで承認する必要がある場合、4月15日には暫定規則の提出で良く、正式な就業規則等は6月30日までに差し替えが可能であることはQ&Aで明記されている。すなわち、再検討の時間は残されている。

4,職場環境等要件

平成26年度までは、定量的要件という名称であった。賃金以外の処遇改善の要件である。加算ⅠまたはⅡを算定する場合、給与以外の賃金改善(職場環境等要件)として、平成27年4月から処遇改善計画書を提出する日の属する月の前月までに実施した賃金以外の処遇改善の内容及び、その改善に要した費用の概算額を全ての介護職員に周知することが必要となる。この場合、選択したキャリアパスに関する要件と明らかに重複する事項でないものを1つ以上実施しなければならない。なお、加算Ⅲ以下は従来のとおりである。

5,賃金水準の考え方

新しい加算区分の算定に限らず、介護職員処遇改善加算の算定では賃金水準の考え方が重要となる。賃金改善の比較年度は、最初に加算を算定した前の年度が一般的である。最初に加算を算定した前の年度とは、交付金が加算に変更されたのは平成24年度からで、介護職員処遇改善交付金の時代から算定している場合は、その前年の平成23年度が賃金改善の比較対象年度となる。それ以降に加算を新規で算定した場合は、その前の年度である。

実務面では、加算を算定した平成28年度と基準年の平成23年度を比較する場合、その間の職員の退職や新規雇用者の調整が必要となる。非在籍者の給与手当の金額は、平成23年度の賃金水準の集計から除く必要がある。期間中に新規雇用した職員は、平成23年度に在籍していたと仮定して当時の給与規程などに当てはめて給与手当の金額を見積もり、平成23年度の賃金水準に加える。

これらの修正作業を行って、双方の年度の在籍者数を同じ人数に調整する。次に、残業分の賃金や割増賃金の金額も双方の年度の賃金水準の金額から取り除く。残業分の賃金を含めて集計すると、残業代が賃金改善額に含まれるためである。また、交通費を含めることも誤りである。交通費は、値上げや居住地域の移動で可変するからである。また、兼務で勤務する職員は、その勤務時間などで賃金や賞与の金額を職種毎に按分して集計することを求める地域もあるので注意が必要である。

いずれにしても、財務諸表上の年度毎の賃金手当の総額を単純に比較することは誤りである。Excelなどを活用して、介護職員一名毎の賃金手当集計表を作成し、人数や残業分、交通費などを調整した上で比較する。これらは非常に手間の掛かる作業であるが、将来の実地指導で報酬返還とならないためには、必ず作成しなければならない。

6,全ての介護職員に周知徹底することと支給対象者

毎年の処遇改善計画書や改正した就業規則等は、すべての介護職員に周知徹底することが算定要件である。その方法は、職員用の掲示板に掲示。回覧板方式で回覧。説明会の開催などである。実地指導で指摘される点は、その記録である。記録の方法として、掲示板に掲示した写真、回覧出確認した旨のサインや印鑑、説明会の議事録である。いずれにしても、すべての介護職員に周知した旨の参加者、確認者名簿などが記録として必要となる。

なお、その支給対象者は人員基準上の介護職員として勤務実績がある者だけが支給対象である事も再確認が必要である。法人の役員は介護職員としての勤務実績があっても支給対象では無い。ただし、実質的に使用人として勤務する使用人兼務役員の場合は、その使用人であることが確認出来る記録があることを前提に、支給対象となりえる。また、法人の監査役は商法の規定で兼務が認められないために支給対象外である。

7,最後に

新加算Ⅰを算定したからといって、必ず介護職員1名当たりで1万円がアップされるのではない。加算は請求総額に算定率を掛ける方式のため、稼働率が半分の事業所は1万円では無く、5千円のアップでしか無いことに留意すべきである。

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著者プロフィール

小濱介護経営事務所 代表
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
C-SR 一般社団法人医療介護経営研究会 専務理事

小濱 道博(こはま みちひろ) 氏

日本全国対応で介護経営支援を手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。
昨年も延20,000人以上の介護事業者を動員。
全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。著書、連載多数。

小濱 道博 氏

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