2016年12月15日更新

これからの介護事業経営 第03回 介護保険制度改正の審議状況と解説

小濱介護経営事務所 代表 小濱 道博 氏

介護保険制度改正の審議状況について

平成30年度(2018年度)介護保険法改正は、社会保障審議会介護保険部会で審議中である。審議自体は平成28年(2016年)12月までに終了。平成29年(2017年)1月からの通常国会で改正介護保険法案が審議の上、平成29年(2017年)4月から5月にかけて可決確定のうえ成立の見通しである。介護保険法の本法の表現は非常に漠然としたもので、その詳細は省令で定められる。よって、細部の規程などは平成29年(2017年)6月頃に発出される省令通知を待たねばならない。また、法案成立後は、焦点は新法上での介護報酬に行方に移る。

介護保険法改正審議においては、平成30年度(2018年度)介護保険法改正の具体的な方向が見えてきた。その審議状況を見ていく。

要介護認定の更新期間延長

部会審議で承認されて確定とされるものでは、要介護認定の更新期間の延長がある。要介護認定の更新は現在の24ヶ月から最大36ヶ月となり、状態安定者は二次審査が省略される。これは、今後に急増する高齢者への自治体の負担軽減が目的である。実施は早ければ、平成29年度(2017年度)からとなる。

自治体の評価

また、高齢者の要介護度が改善した自治体を財政支援するインセンティブの導入が実施される。インセンティブとは、要介護度1以上の利用者について、運動機能訓練などで要介護度を改善または長期間同じ要介護度の維持を達成した自治体を評価する仕組みである。厚労省がその達成基準となる要介護度平均値などの改善評価指標を定める。その成果に応じて国が財源を配分して、基準を達成した自治体に対して報奨金を支払うシステムである。審議する委員の中からは、自治体の作為的な介護度の引き下げなどの認定操作を危惧する声も聞かれ、そのチェック機能が求められる。

地域密着型通所介護の総量規制

さらに地域密着型通所介護が総量規制の対象となる。すなわち新規の許認可が公募となる。近い将来、通所介護は定員19人以上の通常規模以外は、新規許認可を受けることが出来なくなると思われる。急成長してきたFC事業や、高齢者住宅に通所介護を併設するなどの小規模型を活用してのビジネスモデルは大きな転機を迎える。

訪問介護の生活援助サービスと総合事業

平成28年(2016年)10月12日の介護保険部会に於いて厚労省は、平成30年(2018年)度から訪問介護の生活援助サービスを市町村の総合事業への移行を延期するとした。理由は、その受け皿となる総合事業を検証する必要を挙げた。訪問介護事業者はこの決定の安堵出来るのか。答えは否である。生活援助サービスの総合事業への移行を延期するとともに、生活援助の介護報酬の引き下げを行うとした。報酬引下げは、人件費に直結するため、人員基準を緩和して新たな担い手を活用してのサービス提供を認める方向が検討される。介護報酬の引下げや人員基準の緩和の内容については、来年春から始まる、社会保障審議会給付費分科会の審議に委ねられる。そのような中で、初任者研修修了者資格よりも簡素で入門的資格を創設する検討が福祉部会で始まっている。介護人材のすそ野を拡げ、介護未経験者の参入を促進するとして、元気な高齢者や学生などの新たな担い手が対象とされる。過去に存在したホームヘルパー3級資格の復活である。

利用者の自己負担割合の見直し

続く平成28年(2016年)10月19日は、利用者の自己負担割合の見直しが審議された。現在の見直しの方向は3つ。1つは、現在の所得基準での2割負担枠の拡大である。高所得者の一部を3割負担とする方向も囁かれている。2つは、医療保険と同じく年齢基準の移行する方法。医療保険では、69歳までが3割、74歳までが2割、75歳以上が1割である。3つが、介護度を基準とする案である。要介護1と2の利用者全員を2割負担とする。この何れかの基準になると思われる。ただし、介護保険法の記されるのは、どの方法にするかであって、その基準などの詳細は来年の法案成立後の省令を待たなければならない。また、自己負担の上限である高額介護サービス費については、医療保険同様の44,400円に落ち着く見込である。

介護療養病床について

介護療養病床の廃止と、新しい医療内包型と医療外つけ型への移行は3年間の経過措置を設けて実施。一部屋の面積は8㎡の方向が出されている。

福祉用具貸与の価格

福祉用具貸与については、異常な高値の外れ値対策として、国が標準価格を定めて、それを超えて値段設定する場合は役所との事前協議と承認を必要とする方向性が出されている。

居宅介護支援事業所における議論

居宅介護支援事業所は、自己負担一割化の議論が進んでいるが、反対意見も多く予断を許さない状況が続く。また、平成28年(2016年)3月25日に会計検査院の指導への対応として討議される特定事業所集中減算についても、減算自体の廃止を含めて議論が進められている。同時に社会保障審議会給付費分科会においても集中減算への審議が進み、緊急で居宅介護支援事業所の実態調査が行われることが決まっている。問題は、給付費分科会と介護保険部会の双方で審議が行われている点である。今後は、集中減算が廃止され、何らかの形で省令として組み込まれる可能性を捨て切れない。省令となった場合は、報酬の減収では済まずに行政処分の対象とされることになる。昨年度の介護保険法改正で確定している、平成30年(2018年)の指定権限の市町村への移管を含めて、居宅介護支援事業所にとって非常に大きな制度改正の可能性が高まっている。

その他

その他にも、現在の介護保険部会においては介護保険外サービスとの混合介護への対応、障害福祉サービスとの共生型サービスの創設などが論点にあがっている。

まとめ

今回の制度改正に於いては、介護保険制度のスリム化によって介護保険の対象業務が縮小させると共に、介護保険制度の枠を超えての複合型サービスに業態を変貌させようとしていることが見て取れる。これは、大きなビジネスチャンスが生まれる可能性を秘めており、これまで以上に異業種からの参入が促進されることが予想される。

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著者プロフィール

小濱介護経営事務所 代表
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
C-SR 一般社団法人医療介護経営研究会 専務理事

小濱 道博(こはま みちひろ) 氏

日本全国対応で介護経営支援を手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。
昨年も延20,000人以上の介護事業者を動員。
全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。著書、連載多数。

小濱 道博 氏

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