2016年10月14日更新

これからの介護事業経営 第02回 介護保険制度改正の方向と今後の事業経営

小濱介護経営事務所 代表 小濱 道博 氏

今、社会保障審議会介護保険部会に於ける平成30年度介護保険法改正の審議が進んでいる。平成28年(2016年)7月20日の議題は、(1)軽度者への支援のあり方、(2)福祉用具・住宅改修。平成28年(2016年)8月19日の議題は、(1)自己負担のあり方、(2)総報酬割などであった。

軽度者への支援のあり方については、平成28年(2016年)1月20日の読売新聞において、訪問介護から軽度者の生活援助が介護保険外とされる記事が一面トップで踊ったことが記憶に新しい。同様に、福祉用具・住宅改修についても軽度者を介護保険外とする案が浮上している。以前から問題視されている価格のバラツキや極端な外れ値にメスが入ることとなる。

社会保障審議会介護保険部会での議論は、訪問介護の生活援助や福祉用具貸与などに見られるように、要介護1から2までの軽度者を介護給付から切り離して介護保険外とするための議論に移っている。今後、介護保険部会での審議を重ねて、平成28年(2016年)12月までには結論が出される。その結論によって、平成29年1月から始まる通常国会に介護保険法の改正法案が提出され、春までには国会での可決確定の後、平成30年(2018年)4月から施行される。

また、介護保険部会の結論を踏まえて、来年は社会保障審議会給付費分科会において介護報酬改定の審議がスタートする。平成30年(2018年)は、介護保険法の改正、介護報酬改定、さらには診療報酬改定を含めてのトリプル改定である。介護報酬と診療報酬の同時改定の年は、医療と介護で限られた予算を取り合う形と成り、介護報酬にとって不利な改定となるのが慣例である。それに加えて、今回の消費税増税の延期がある。社会保障財源となるべき税収入が2年半にわたって見込めなくなった影響は無いとは言えない。そしてもう一つ、平成29年(2017年)4月に一年前倒しで、介護職員処遇改善加算が介護職員一人あたり1万円程度の引き上げが行われる。これは、2%程度のプラス査定に該当すると思われ、平成30年(2018年)の介護報酬改定はこれを含めて横ばい、昨年同様に実質的にマイナス改定となると予想する。

話を制度改正に戻す。軽度者への介護給付の見直しは、骨太方針に示されている。また、介護人材の不足が問題となる中で、専門性の高い介護福祉士が掃除・洗濯・調理などの生活援助を手がけることの妥当性が問われている。その受け皿となる総合事業は、まだ移行の途上で有り、検証を行わない段階での軽度者の意向には懐疑的な意見も多い。しかし、経団連などの費用負担側を中心として、介護保険制度の維持のためには、制度の見直しは急務であるとの見解が強く主張されている。

平成28年(2016年)8月19日の審議では、高額介護サービス費の見直しがある。現在は37,200円である自己負担の上限を、医療保険同様に44,400円に引き上げるとする案が出された。利用者負担の在り方も同様に、医療保険との整合性が問われた。昨年8月より全体の20%の高所得者が自己負担2割負担となった。しかし、医療保険では、70歳未満は3割負担。74歳未満は2割負担に移行途上で、75歳以上は1割負担である。これに合わせるという意見が出されている。すなわち、近い将来に於いて、介護保険自己負担3割という方向性が、今回の審議に於いて現実味を帯びてきたのである。いずれにしても、自己負担2割の対象者の拡大によって利用控えが加速する。結果的に、利用者一人あたりのサービス提供量が減少するために、利用者数の拡大が急務となる。

国民の負担に関する項目では、総報酬割りの導入がある。現在は、年収や資産に関わらず40才以上の国民が負担する介護保険料の負担は一律の金額が給与などから差し引かれている。これを、加入する保険組合などの資産状況を反映して、介護保険料の負担金額に差額を持たせるのが総報酬割である。

また、居宅介護支援事業所の自己負担1割も検討項目に上がっている。平成30年(2018年)4月からは居宅介護支援事業所の指定権限が都道府県から市町村に移行され、実地指導も市町村が実施する。集中減算が省令に移行する可能性を含めて、今回はケアマネジャーにとっても大変革が起きる可能性が高い。

大改正が間近に迫っている。早期に情報を収集して対策を講じることが重要となる。小規模な事業者は一層の企業努力が求められ、経費のスリム化、人件費率の見直しに着手することが急務となる。一部では廃業や統廃合も進んでいく。介護保険制度にだけ頼っていては、経営の安定化は難しい時代となった。利用者を増やし続け、事業規模の拡大策を早急に取ると共に、介護保険外サービスをもう一つの経営の柱とするなど、介護保険に依存しない体制作りが求められている。

平成27年(2015年)の制度改正と報酬改定以降、事業所数の伸びが確実に鈍化している。小規模デイサービスに至っては、月によっては前月より減少するという状態が起きている。事業所数の伸びが止まっている中で、確実に高齢者は増加し、それに比例して介護サービスの利用者は増加の一途である。これは、既存の事業者にとっては大きな利用者拡大のチャンスが到来していることを意味する。また、持ちこたえられなくなった事業所の利用者と職員は、残った事業所に移ることになる。制度改正を起因とする経営環境は確かに厳しさを増している。しかし、同時に大きなチャンスが到来していることに気づいているだろうか。

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著者プロフィール

小濱介護経営事務所 代表
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
C-SR 一般社団法人医療介護経営研究会 専務理事

小濱 道博(こはま みちひろ) 氏

日本全国対応で介護経営支援を手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。
昨年も延20,000人以上の介護事業者を動員。
全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。著書、連載多数。

小濱 道博 氏

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