2020年10月9日更新
データ×AIでビジネスに変革を -真のDXに必要なものとは- 第01回 データ×AI時代、社会で起きている変化、自分の現在位置を確認しよう
株式会社Rejoui 代表取締役 菅 由紀子(カン ユキコ) 氏
新たなる移動通信システム 超高速・超大容量のデータ通信 - 5G
2020年4月はデータ×AIの業界に身を置く者として、5Gのサービス提供開始をとても楽しみにしていました。しかし、4月は新型コロナウイルスの感染拡大がニュースの殆どを占め、5Gは通信キャリアがサービスを開始していましたが、大きな話題にはなりませんでした。また、人が移動を制約されている現在、5Gの通信システムから本来人が得られるはずだったメリットは先送りにされています。とはいえ、人が動かなくなったぶん「モノ」は移動をしています。5Gは、超大容量・超高速・超低遅延・超大量接続を実現するとされています。非対面・非接触の技術と5Gの通信によって、まずは物流の世界から劇的な革新がもたらされることでしょう。5Gの始まりによって、データを活用するあらゆるサービスに変革が起きようとしています。始まりは静かでしたが、その変化は確実にやって来ます。
取得されるデータはより細かく ― IoTはさらなる先へ
IoT:Internet of Things(モノのインターネット)を応用した技術はこの数年で飛躍的に進化しました。今やあらゆる「モノ」に通信機能が搭載され、リアルタイムにデータが取得されています。とりわけ各種センサーなどを用いて取得される情報はデータの粒度は、より細かくなっており、そのため蓄積されるデータの量も増えています。さらには、IoTデバイスはウェアラブルデバイスとして「身につける」時代から「体内に組み込む」時代へ変化を遂げようとしています。インプランタブルデバイスと呼ばれるこれらのデバイスから得られたデータは、機械学習・AIの技術と組み合わせることで様々な疾病への罹患リスクを未然に防ぐことが期待されています。
AIは誰もが使う時代に ― AIの民主化
AIのベースとなる機械学習の技法を使いこなすためには、かつてはある程度のプログラミング、データエンジニアリングのスキル、そして機械学習の理論を理解していることが必要とされました。現在は、 プログラミング言語のソースコードを書けなくとも、UI上から操作して機械学習を実行できるツールが数多く登場しています。AmazonやGoogleなどのクラウドサービスには、ありとあらゆる機械学習・AIのライブラリが用意されており、多少のプログラミングスキルがあれば簡単な画像認識や音声認識は行うことができるばかりか、制約はありますがこれらのライブラリの一部は無料で利用することができます。また、専門知識がなくとも高品質・高精度な機械学習モデルを構築することのできる「AutoML」と呼ばれる技術も浸透してきています。2020年現在は、こういったAIを構成する統計・機械学習ライブラリを「誰しもが使える時代」であると言えます。一方で、データは前述の通り超大容量になっているわけですから、それを処理するには膨大なマシンパワーが求められます。そうであっても ”量子コンピュータ” の登場、そしてその実用化が現実味を帯びてきているため、高品質/高精度な機械学習・AIを構築することを、誰もが気軽に行える時代は確実に近づいています。
教育の変革 AI関連スキルのリテラシー教育スタート
平成30年改訂の指導要領において高等教育の「情報Ⅱ」では”情報とデータサイエンス”領域において、AIの社会適用についてや、それを形作る技術である機械学習の基本にふれることが指定されました。大学教育においては”数理・データサイエンス教育強化拠点コンソーシアム” により「数理・データサイエンス・AI(リテラシーレベル)モデルカリキュラム」がとりまとめられ、今後は各大学においてこれをベースとしたカリキュラムが開始されます。リテラシーとしてデータ×AIのスキルを得た人たちが社会で活躍するのも、もう間もなくです。まさに「誰もがAIを駆使できる時代」になってきています。
現在位置の確認を ― AI-Ready化ガイドラインをチェック
このように劇的な革新のときにあって、伝統的なビジネス領域(Old Economy)産業が自らのサービス・製品をどのように変革させていくのか、それにはまず自身が身を置いている「現在位置」を確認することが不可欠です。経団連でまとめられた提言「AI 活用戦略 〜AI-Readyな社会の実現に向けて〜」にあるAI-Ready化ガイドラインには、AIを活用して事業を推進していくレベルが経営・マネジメント層、専門家、従業員、システムレベル・データなどの立場ごとにまとめられており、現在位置を確認するために大変有用です。これを参照し、ぜひ自社のAI-Ready「現在位置」を把握してください。
データ×AIを扱う人間に必要な倫理観を − データバイアス、アルゴリズムバイアス
データは指数関数的に増え、AIの浸透で技術は日進月歩の革新をしています。まさに激流ともいえる、そんな時代に忘れてはならないものがあります。それは「倫理」です。「AIによる非公平性や差別」はしばしば大きな問題として報じられています。Amazonの採用AIや、Googleフォトの分類のケースは、事例としてたいへん有名ですが、データに偏りがあるかどうかを考慮して意思決定ができるか、AIにインプットするデータを様々な視点から偏り無い状態で用意することができるか。データ×AI領域のリテラシーは決して技術面の理解だけでなく、倫理観も伴うものでることを私達は忘れてはなりません。
データの整備状況や人材の理解度合いを確認し、現在位置の把握しつつ、変化に伴って公平性や倫理を保つことが不可欠であると認識すること、それが「社会で起きている変化」を真に理解するということではないでしょうか。
- データ×AIでビジネスに変革を -真のDXに必要なものとは- 【連載記事】
著者プロフィール
株式会社Rejoui
代表取締役
菅 由紀子(カン ユキコ) 氏
データサイエンティスト協会 スキル定義委員
関西学院大学大学院 兼任講師
アナリティクスアソシエーション プログラム委員
2004年株式会社サイバーエージェント入社。2006年3月に株式会社ALBERTに転じ、データ分析業務を担当。顧客行動分析やAI構築アドバイザリー等多数のプロジェクトを担当。2016年9月に株式会社Rejouiを創立し、企業におけるデータ×AI活用、同領域の人材育成を支援。2019年、米国スタンフォード大学ICME発のデータサイエンス人材育成シンポジウム『WiDS』アンバサダーに就任。データ×AIに関する女性・若手人材育成にも尽力している。
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