2018年02月26日更新
製造現場における構内物流の課題と解決ポイント
株式会社富士通アドバンストエンジニアリング 石垣 光司 氏
1.はじめに
製造業のお客様においては、昨今のものづくり現場の革新やIndustry4.0に代表されるスマート化・デジタル化の中で、様々な課題に直面しています。作業員の高齢化、人手不足、働き方改革の中での効率化・コスト削減、納品先からのトレーサビリティーの要求やリードタイムの短縮。さらには競合他社との差別化のための製品の多様化、品質要求の高まりなど、課題は様々です。
これらに対応するため製造現場においては日々の改善活動はもとより、ここ最近ではIoT化、デジタル化への対応、取り組みが活性化しています。一方で、製造現場周辺の物流に関する業務はまだまだ手付かずの状態であるのではないでしょうか。
本稿では、製造現場における構内物流の中でも、資材の受け入れから製造ラインへの配膳までの作業にスポットを当て、現場で起きている課題と解決ポイント及びその効果について考えてみます。
2.現状の課題
資材の受入れからラインへ配膳するまでの物流業務における課題を各工程別に見てみます。(図1)
(1)受入れ作業
仕入れ先へ発注をした資材が工場内の受け入れ場に入荷されます。受入れ担当者は納品伝票や現品票などの紙による帳票に基づき、発注した資材が正しく入荷されているか入荷検品を行います。これらは帳票と現物が合っているか目視による確認作業であり、ある程度の知識や経験がいる専任の作業者が行う、いわば属人化した作業になってしまっています。また受入れ実績をデータ化するために、検品が終わった帳票を見ながら、ひたすらパソコンへデータを入力する作業も発生しています。これら一連の作業をスムーズに処理しないと、受け入れ場があっというまに物であふれてしまい、どこに何があるのかわからない状態になってしまいます。
(2)入庫・在庫管理
入荷検品が終わった資材は、保管エリアへ移動し、棚へ格納していきます。保管する棚のロケーション管理がされていない場合、担当者は入庫対象となる資材を目視確認し、該当する棚まで移動し格納します。つまり、どの棚に格納するかは作業者の頭の中で管理され、これも専任作業者による属人化した作業になってしまっている場合があります。作業者任せであるため、間違った棚に入庫してしまったり、その場の都合に合わせ好き勝手な場所に置いたり、その結果、作業動線が行ったり来たりで非効率な作業となってしまいます。また、きちんと先入れ先出しやロット別の管理をするためには、入庫ルールや保管方法の工夫も必要になります。
(3)出庫・ピッキング・配膳
生産指示に基づき、出庫表を印刷し、棚から資材をピッキングして行きます。紙をベースとした作業においては、印刷する、配布する、記入する、回収する、捨てるという付帯作業もついて回ります。またロケーション管理されていないと、物を探すというムダな作業が発生。さらに間違ったものをピッキングするミスの可能性も高くなります。ピッキング作業のミスや遅れは、次工程の生産ラインに影響を与え、製造現場全体の問題に発展する可能性もあります。
3.解決ポイントと得られる効果
これまで述べた工程別の課題の共通点は、紙の指示書による作業が中心で、専任担当者任せの属人化した作業であり、結果的に効率が悪く、ミスも発生してしまうという点にあります。効率よく、ミスなく、誰にでもできる作業を構築するには、作業者に対し「考えさせない」「探させない」「歩かせない」指示を出す作業設計が必要となります。
これらの課題を解決するための一つの案として無線端末の活用が挙げられます。各作業者へは無線端末を用いてリアルタイムに指示を出し、最短動線で作業をナビゲートしていきます。さらにバーコードスキャンによるチェックを併用していくことで作業ミスを無くすことが可能となります。各工程でスキャンをすることは、後々のトレーサビリティー管理にもつながっていきます。また、無線端末の活用によりリアルタイムに作業実績が収集され、作業の進捗度合いが見える化し、人員配置の見直し等のアクションが可能になります。さらに蓄積した作業実績データの活用・分析により生産性管理のマネージメントとしても活用ができ、さらなる改善活動につなげることもできます。(図2)
これにより誰にでもできる作業、つまり作業の標準化が実現し、各業務の担当者を固定させることなく流動的な人員配置が可能となり、結果的には全体的な人員削減につながります。
保管・在庫管理に関しては、単品別のロケーション在庫管理により、どこに何が何個あるか、誰にでもわかる状況をつくることが必要です。在庫状況の見える化は余剰在庫の削減や、出荷特性に応じたロケーション配置の見直しにより、入庫・ピッキング作業の効率化にもつながります。また、先入れ先出し、ロット管理を確実にするためフローラックなど、資材の特性に応じた最適な保管設備の選定により、求められる管理レベルも向上していきます。
4.まとめ
製造現場における物流業務の革新はこれまで後回しにされてきました。これは、製造現場の効率化、コスト削減、品質向上を追求するためには、少々物流側で手間がかかってもいいという考えがあったのではないでしょうか。しかし製造現場のIoT化、デジタル化が進む中、いよいよ物流業務にメスを入れ課題解決に取り組む時代となってきました。物流業務の改革は、工場全体の効率化、コスト削減、品質向上につながり、結果的には経営に寄与することができると言えます。
物流業務の改革に当たっては、専門的な知識や経験、ノウハウが必要となってきます。富士通では、製造現場の物流業務革新をサポートすべく、専門技術者によるエンジニアサービスをご用意しております。
著者プロフィール
株式会社富士通アドバンストエンジニアリング
デジタルエンジニアリング本部 エンジニアリングサービス統括部 マネージャー
石垣 光司 氏
2000年4月株式会社FFC(現:富士通アドバンストエンジニアリング)入社。
入社以来、流通業及び製造業の物流センターコンサルティング及びエンジニアリング業務に従事。
物流IEのノウハウをベースに、物流センターの企画コンサルティングから、現場改善、倉庫内の運用設計やレイアウト設計、マテハン選定~導入のエンジニアリングまで、一貫した物流センター構築を得意とする。
物流技術管理士。
石垣 光司 氏 コラム一覧
おすすめコンテンツ
-
WEBでのお問い合わせはこちら入力フォーム
当社はセキュリティ保護の観点からSSL技術を使用しております。
-
お電話でのお問い合わせ
富士通Japan
お客様総合センター0120-835-554受付時間:平日9時~17時30分(土曜・日曜・祝日・当社指定の休業日を除く)