2023年8月更新

BMS(ビルマネジメントシステム)とは?ビルメンテナンスの全体像とBMSのメリット

BMS(ビルマネジメントシステム)は名前を聞いたことがあっても具体的に何をするものなのか、何ができるのかなどは提供している各社によって異なるためなかなか理解しにくいものになります。

今回は概要としてのビルマネジメントシステムを説明してその全体像を掴んでいただき、今後のシステム検討の一助にしていただければと考えています。

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1. BMS(ビルマネジメントシステム)とは

ビルマネジメントシステムの名の通り、ビル全体を管理するためのシステムです。

具体的には電気や空調、照明などの管理に加え、防災(火災やガス漏れ、停電などの検知)や防犯(営業時間外の人感センサー検知)、保全(点検状況の記録等)など多岐に渡るデータを収集、分析、制御し効率的な施設管理をサポートするシステムになります。

ビル全体を集中管理できるようにすることで、少人数で安全に運営を行えるような体制を構築できるようにし、より効率的、より効果的な運用ができるような機能が盛り込まれています。

2. ビルメンテナンスの全体像

全国ビルメンテナンス協会によると、ビルメンテナンス業務は以下のように大別されています。

  • 環境衛生管理業務
    • 清掃管理業務
      • 施設内外の清掃業務
    • 衛生管理業務
      • 空調管理や給水・排水管理、害虫駆除や廃棄物処理等
  • 設備管理業務
    • 電気、空調、給排水、消防、昇降機等の設備管理
  • 建物・設備保全業務
    • 各種構造物、設備の点検調査
  • 警備・防災業務
    • 警備、防災、駐車場管理等
  • その他管理業務
    • 受付や電話交換、メールサービスやビルのマネジメント業務
  • 建築物のエネルギー管理
    • 省エネ計画の立案等に係る業務

参考:https://www.j-bma.or.jp/aboutbm新しいウィンドウで表示

ビルマネジメントシステムは、これらの業務の管理・支援サービスとして活用されています。
近年では各種センサー(温感センサー、人感センサー、湿度センサーなど)と設備連動させることで、ユーザーに対してより快適な空間を提供できるような機能や、エネルギー管理に係るデータの収集・分析機能を搭載して省エネ推進を補助するような機能を搭載しているソリューションもあります。

3. 施設管理と設備管理の違い

ビルマネジメントシステムの疑問点として挙がるのが「設備管理とどう違うのか」という点です。

設備管理は施設内に入っている設備そのものについての管理になっており、空調やボイラー、エレベーター、上下水道の給排水設備などの点検、修繕といった部分を差し、その機能が正しく稼働するかどうかに重点を置いた管理となっています。

対して施設管理はビル全体として目的に合致した機能を提供できているかどうかを見ており、利用者が安全快適に使えるように建物全体の維持管理を行う他保全活動の中長期的な計画を立てたり、省エネ対策の立案を検討したりする部分なども含まれています。

施設管理は設備管理を包括するようなイメージで、より広くビル全体の運営を見ているような形になると考えるとわかりやすいかもしれません。

4. BMS(ビルマネジメントシステム)の役割とメリット

BMSの重要な役割は「ビルの状況の可視化」にあります。

  • 設備に異常が起こっていないか?
  • 停電は発生していないか?
  • 火災は発生していないか?
  • 電力不足に陥っていないか?
  • 点検状況は適正か?
  • 監視システムに異常がないか?

といった情報を収集しダッシュボード化することで、建屋ごとに統合監視することが目的です。
データを分析することで無駄な電力消費個所を見つけ出し省エネ計画立案に活用できるような体制を作ることもでき、IoTを活用し温度・湿度・照度・気圧などのセンシング情報受信する環境センサーと空調・照明を連動させ快適性や生産性の向上を図る取り組みも増えています。

また最近は、前述の通り設備データの分析にAIを活用し、設備故障の未然防止などもできるようなシステムも登場しています。
従来は定期的な補充計画を組んで交換するか、不具合の予兆が見えてから交換するかが主な対応方法でしたが、データを分析することで各設備が故障する前に最適なタイミングで交換できるようになり、コストを抑えつつ不具合を発生させない運用ができるようになっています。

5. BMSを入れるべき規模とは

従来BMSといえば大規模なビル・商業施設などに限定されるイメージでした。
これは主にオンプレミス型のシステムだったため初期投資に多額の費用がかかることが主な要因です。
しかも、機能追加時はカスタマイズ費用として多額の改修費用が発生してしまうため、中小規模のビルではコストを賄いきれず人力での運用となってしまうケースが数多くありました。

しかし現在はクラウド型のシステムなども提供されていることから、小規模~中規模のビルでも活用できるような状況になってきました。
複数棟の監視業務をまとめることにより省エネ・省人化にもつなげられコスト削減の手段として活用されるケースも出てきました。

そのため現在は管理コストを減らしつつ入居者の満足度を挙げるためのソリューションとしてBMSの導入が活発になってきています。

6. ビル管理コスト削減のための省エネ対策方法とは

ビルの管理コスト削減を行う際、最初に挙がるのが省エネ対策ではないでしょうか。
その中でもよく挙がるのが、電灯のLED化や空調のこまめな消灯などですが、実際にビル内で効率化が必要なのはより上流から見た全館の電源管理と空調管理における全体最適化です。

例えば電気室の総変圧容量がオーバースペックで無駄な電力消費が発生しているケースがあります。
これをLED化と合わせることで、LED化による省エネ化に加えて電源のスペック見直しによるコスト削減も見込めるためより大きな単位での省エネが実現できます。
同様に空調において冷温水循環ポンプにインバータが導入されていないために電動弁で圧力制御がなく常に過大な消費が発生しているケースやボイラーの放熱ロスなど、設備面も同時に見直すことでビル全体での省エネ対策が可能になります。

こうした設備面での省エネ対策は専門的な知識が必要ですが、同時に長期的な省エネ対策にもなるため長い目で見ると非常に効果的な対策にもなります。

一方で、こうした情報の収集・管理はBMSの得意とするところでもあります。
更新時期に合わせた上記のような検討を行う際、BMSを導入しているかどうかで検討から実行までに必要なスケジュール感が大きく変わってきます。

加えてこうしたデータを持ったうえで専門業者の手を借りることで空調の稼働効率を抑制しつつ空間快適度を向上させるなどの省エネにとどまらないビルの価値向上施策になるケースも出てくることがあります。
つまりコスト削減だけではなく中長期的なビルの価値向上に貢献できる場合もあるのです。

7. まとめ:BMS導入は効率・省人化と同時に省エネ対策の促進に効果的

BMSはデータの見える化によって快適な施設の維持管理に大きな貢献を果たすソリューションです。
同時に複数の施設に導入して省人化を達成したり、電気や空調の無駄を発見したりと、省エネ活動にも活用ができます。

サスティナビリティへの取り組みが求められる中、ビル管理システムで可視化されたエネルギー利用量を基に最適化を進めることはSDGsの観点での成果となりますが、同時に取得したデータの分析についてノウハウが必要となるケースも多く、知識を持ったうえでの対応を検討しなければ省エネは達成したが快適度が下がったなどのクレームに発展してしまう懸念もあります。

中小規模のビルにおいてもBMSの導入は進めるべきではありますが、同時に効率的な活用に際してはケースに必要に応じて外部の協力も仰ぎながら進めるのが最適ではないでしょうか。

また、ビル管理に求められる省エネ対策として設備面のムリ/ムダ/ムラを発見し効率改善と品質向上を目的として専門業者によるコンサルティングを行うケースも増えています。
BMSによって蓄積されたデータはこうした改善施策検討の際にも活用することが可能です。

中長期的なビル品質の維持を考慮しBMSの導入と専門業者による支援について検討を進めるのもよいかもしれません。

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著者プロフィール

富士通Japan株式会社

富士通グループの社会における存在意義であるパーパス「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」を国内サービス市場において具現化し、One Fujitsuとして取り組み、富士通Japanは、日本のために何ができるかを考え「日本を強くする会社」として、お客様や社会の課題を解決することで、日本の持続的な成長を支援します。

富士通Japan株式会社

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