2020年03月18日更新

管理会計コラム第04回 製造業の管理会計

公認会計士 広川敬祐氏

製造業でメインとなる管理会計

戦後社会での高度経済成長時代には、大量生産による利益追求(生産規模が大きくなるほど1個あたりの費用が安くなる)をするという規模の経済の時代でありました。ただし、規模の経済にも限界がありますし(生産規模が一定を超えると、1個あたりの費用が下がりにくくなる)、昨今では売上の拡大を望むことができない時代になりました。
このような時代に製造業に求められるのは、原価を抑えることですし、効率性を追求していくことです。効率化というと5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の徹底やムリ・ムダ・ムラを省くことが言われますが、それだけでなく、効率性を定量的(数値)に評価していける仕組みをご紹介します。

原価計算の精度を高める

原価計算が正確に行えておらず経営判断が後手になっている、取引先との価格交渉の為の十分な原価情報がない、儲かっている商品と儲かっていない商品を把握出来ていない、といういわゆる“どんぶり勘定”、つまり“製品ごとの儲けを把握できていない”、“ 値決めは担当者の経験則任せ”、“原価計算の結果を経営に活用できていない”、という状況であれば改善が必要です。
儲かっている会社と儲かっていない会社では、原価計算の方法と活用度合いが大きく違います。原価計算の精度を高め、儲かるような販売価格の決定や、生産性・効率性向上を通して原価低減活動に結びつけることが大切です。

歩留まりを高める

歩留まりは、製造など生産全般において、「原料(素材)の投入量から期待される生産量に対して、実際に得られた製品生産数(量)比率」のことです。歩留まり率は、生産性や効率性の優劣を量る目安となり、歩留まりが高いほど原料の質が高く、かつ製造ラインとしては優秀と言えるものです。
歩留まり率が低いものの一つに半導体製品がありますが、かつて、トランジスタがクリーンルームもなく手作業で製造されていた頃には、天候や湿度によっても歩留まり率が大きく変化したと言われます。半導体に関する物性が解明され、次第に不良になる原因が特定されて対策が講じられる様になり、クリーンルームで厳密な製造管理を行えば歩留まり率も向上していきますが、それでも製造時の状況のばらつきや微細な塵芥の混入によって歩留まりに影響を与えているようです。

不良率を低下させる

不良率は、1ヶ所でも欠陥のあったサンプル品の割合またはパーセンテージのことです。そうすると歩留まりとどう違うのかとの疑問が起こりますが、歩留まり率は、良品数/製造数(生産量/原材料使用量)で計算される投入に対する完成品(に転化したもの)の割合で、材料をどれだけ有効活用できているか、ムダをしていないか、を測る指標です。
これに対して不良率は、完成品に対する良品と不良品の比率のことで、完成したはずのものの中にどれだけ不良品が含まれているか、というもので、販売先に対する信用度とも言えるもので、「メーカーにとってわずかな不良率でも、買った顧客にとっては100%だ」という至言があります。

クレーム率を低下させる

クレームとは、購入した商品に意見や不満をもつ顧客がそれを提供した企業に対して問題点を指摘したり苦情を述べる行為で、当然クレーム率は低いのが良いとされます。
ここで、有名なハインリッヒの法則を元にクレーム率を考えます。ハインリッヒの法則は「1件の重大災害の裏には、29件のかすり傷程度の軽災害があり、その裏にはケガはないがヒヤっとした300件の体験がある」というものですが、これをクレームで考えると、1件の大失敗の裏には29件の顧客から寄せられたクレーム、苦情で明らかになった失敗があり、さらにその裏には、300件の社員が「しまった」と思っているが外部の苦情がないため見逃しているケース、つまり認識された潜在的失敗があることになります。
顧客は必ずクレームを言うとは限りません。1件のクレームがあると、その約10倍(29件と300件)の潜在的クレームがあると認識しておく方が得策です。

労働分配率の適正水準を維持する

労働分配率とは、付加価値に占める人件費の割合を示す経営指標です。付加価値は、会計での利益のように、ズバリと計算されるものではありませんが、総生産額から原材料費・燃料費・減価償却費などを差し引いた額で求められるものであり、企業が生産によって生み出した価値のことです。
この付加価値に対する人件費の割合が労働分配率ですが、人件費が大半を占めている状態は好ましくないとされるのが一般的ですが、人件費が少なすぎる場合も良い状態と言えないことがあります。
労働分配率が低い場合は、付加価値に占める人件費の割合が低いため、それだけ効率よく利益を出している収益性の高い会社と言えますが、その一方で満足な人件費が払えていない状況にあり、従業員の士気が低下している可能性を考えなければいけません。労働分配率が低すぎるといわゆるブラック企業のような労働環境になってしまいますので、労働分配率を適正な水準で維持することが求められます。

製造業の効率性を測るチェックシート

本稿では、製造業の効率性に関する5つの指標を説明してきました。その指標毎にチェックシートを作りましたので、自社がどのくらいのレベルにあるのか、検証のご参考にしていただければと思います。
各項目4つの設問があり、設問ごとに5段階評価の5点満点で答えていくと、設問ごとの満点が20点、総合計が100点満点の内容になっています。
採点の目安は以下のレベルを参考にして下さい。

5点:問題なくできている
4点:ほぼ問題ないが、絶対に大丈夫というほどでもない
3点:まあまあ
2点:書かれることはわかるが、行動にまで至っていない
1点:書かれていること自体がわからない、初耳

管理会計(製造業編)のポイントとは?
『管理会計(製造業編)チェックシート』

著者プロフィール

ヒロ・ビジネス株式会社 代表取締役
日本公認会計士協会東京会幹事

広川 敬祐 氏

複数の大手外資系会計事務所で会計監査や株式公開コンサルティングなどを経験した後、外資系ERPベンダーに転職し会計システム導入プロジェクトなどに従事。その後、フリーコンサルタントとして、多くのERP導入や会計システムの構築に関わる。

広川 敬祐 氏

ページの先頭へ