2020年03月18日更新

管理会計コラム第03回 卸売業の管理会計

公認会計士 広川敬祐氏

卸売業でメインとなる管理会計

企業の多くは業績目標を達成するための管理を行っています。その業績目標の多くは売上と利益ですが、卸売業の場合には、仕入商品の価格を下げることが限界に達していますので、業績管理の手法は売上目標を管理することが主流となっています。
そこで、良くないと思われる状況が、月次の経営会議や支店長会議などで、未達の場合には胃が痛くなることを何とか乗り越えられないかと企み、問いただす方はパワワラと訴えられないかとビクビクしながら問い詰め、タラレバの結果論に終始し、「こんどは頑張ります!」と張り切り、「もう今度はないぞ」と脅かされるような局面です。
と、このようなドラマのような場面はないのでしょうが、大なり小なり似た状況があるのではないかと思われます。そうならないよう、本稿では次の内容をご紹介いたします。

  • 目標を達成しようとイキイキと行動できていますか
  • 身の丈にあった目標になっていますか
  • 強み、弱みを認識した目標になっていますか
  • 商品を売る方法ばかり考えていませんか
  • 目標は具体的にそして細かく

目標を達成しようとイキイキと行動できていますか

目標は数値目標だけを掲げ、ビジョンが欠けていることがありませんか?ビジョンは、目標達成に向けて動機づけていくもので、将来像や将来の夢とでも言えるもので、魅力あるもの、面白いもの、絵やグラフのように視覚的に表現できているビジョンが必要で、これがない場合にはやらされ感が充満し、目標を達成していこうとの意識が生まれず、その結果として、担当者の知恵・工夫が創造されないので目標達成の方向に向かなくなります。

身の丈にあった目標になっていますか

日本の優秀企業研究(日本経済新聞社刊)という経済産業研究所(経産省の外郭団体)がまとめた調査文献があり、不況下でも成功を続ける30社の「事実」を徹底検証したものがあり、その条件を次の6つとしています。

  1. 分からないことは分けること
  2. 自分の頭で考えて考え抜くこと
  3. 客観的に眺め不合理な点を見つけられること
  4. 危機をもって企業のチャンスに転化すること
  5. 身の丈にあった成長を図り、事業リスクを直視すること
  6. 世のため、人のためという自発性の企業文化を埋め込んでいること

そして、結局最後にたどりついた優秀企業のイメージが、「直に、まじめに、自分がわかる事業をやたら広げずに、きちんと考え抜いて、情熱をもって、取り組んでいる企業!」いうものであり、背伸びをし過ぎず、身の丈に合う成長を遂げてくことが求められます。

強み、弱みを認識した目標になっていますか

時折、「繁華街にある居酒屋の店長になったらどうやって売上を伸ばしますか?」との譬え話を問いかけることがあります。そして何らかの答えが返ってくるのですが、それは大抵他の店でも行っている施策です。自分が思い描く行動でなく、他社との競争に勝っていかなくてはなりません。
そのためには、教科書的ですが、まずは企業外部の環境分析、内部の経営資源分析のSWOT分析を基本とし、弱み、チャンス、脅威などを明確にした上で目標を立てていくことが必要です。

商品を売る方法ばかり考えていませんか

どうやったら売れるか、「カン、感性、感覚」ばかりに頼っていませんか?世の中には多くのマーケティング理論がありますので、参考にしない手はありません。
例えば、売る側(プロダクトアウト)の視点だけの4P(製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販促(Promotion))を考える(どんな製品を作るか、価格はいくらか、流通チャネルをどうするか、販売促進はどうか)だけでなく、顧客側の視点の4C(顧客価値(Customer Value)、顧客にとっての経費(Cost)、顧客利便性(Convenience)、顧客とのコミュニケーション(Communication)をどうするかの視点で考えてみることです。

目標は具体的にそして細かく

目標は具体的に、そして細かく立てておくべきです。よく目標はSMART(痩せているとのスマートだけでなく、賢いという意味もある)にと言われますが、そのスマートは次のことです。

Specific:テーマは具体的か?
Measurable:測定可能か?
Agreed upon:同意されているか?
Realistic:現実的であるか?
Time-sensitive:期限があるか?

そして、KPIについて多くの誤解があるようなので、ここで説明いたします。KPIとはKey Performance Indicatorの略で、重要業績評価指標のことですが、多くの人がこの指標を目標そのものと勘違いしています。目標値はKGI(Key Goal Indicator)といって、KPIはこの目標を達成するための中間指標というものです。
この関係を図にすると以下のようになり、売上を達成していくための要因を細かく分解し、その分解したレベルで目標値をたてていくものです。

イメージ

まとめ

本稿では、卸売業の管理会計として求められることを「業績管理」、なかんずく売上の目標管理に焦点を当てて、5つの視点に分けて説明してきました。
その視点毎にチェックシートを作りましたので、自社がどのくらいのレベルにあるのか、検証のご参考にしていただければと思います。各項目4つの設問があり、設問ごとに5段階評価の5点満点で答えていくと、設問ごとの満点が20点、総合計が100点満点の内容になっています。
採点の目安は以下のレベルを参考にして下さい。

5点:問題なくできている
4点:ほぼ問題ないが、絶対に大丈夫というほどでもない
3点:まあまあ
2点:内容は行うべきだと思うが、行動にまで行っていない
1点:内容自体が初耳

次回は、製造業の管理会計になります。製造業については売上を伸ばすことより、原価管理に重点が置かれますので、その内容について記載していきます。

管理会計(卸売業編)のポイントとは?
『管理会計(卸売業編)チェックシート』

著者プロフィール

ヒロ・ビジネス株式会社 代表取締役
日本公認会計士協会東京会幹事

広川 敬祐 氏

複数の大手外資系会計事務所で会計監査や株式公開コンサルティングなどを経験した後、外資系ERPベンダーに転職し会計システム導入プロジェクトなどに従事。その後、フリーコンサルタントとして、多くのERP導入や会計システムの構築に関わる。

広川 敬祐 氏

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