2019年12月20日更新

管理会計コラム第02回 管理会計とは

公認会計士 広川敬祐氏

管理会計とは何を管理するものか

「管理がなってないな」「もっと管理をしっかりしよう」とよく耳にしますが、では「何」を管理するものでしょうか?
こう質問すると答えに窮する人が多いのではないかと察します。ただし、この「何」を管理するものか、目的がはっきりしてないと【管理】をしようにも露頭に迷ってしまいます。
管理会計は、社内の経営管理者向けに行うものですから「経営管理」とも言い換えることができます。経営管理という言葉は辞書によると「組織における人間の諸活動を意図的に調整・総括し,その目標の効率的な達成をはかること」(ブリタニカ国際大百科事典)とあります。つまり、目標を立ててそれを達成するための活動を調整・総括することが【管理】といえ、それはPDCAサイクルを実行していくこととも言えることでしょう。

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よく見かける目標の達成状況管理

目標の達成状況を管理することとして、売上や利益といった主要業績指標の進捗状況を月次の経営会議などで、予算(目標)比、前年比、x%増減という報告をよく見かけます。
そして、そういう報告をする場合は、なぜそうなったのか、との内訳を分析することが求められ、その作業を毎月行うことが憂鬱になっている人がいらっしゃるかもしれません。
そうなっているとすれば、その原因の1つに、その作業をエクセルで行っていることがあり得ます。エクセルは表計算ソフトとして大変便利なツールですが、2次元(縦と横)のスプレッドシートのため、多次元の切り口での分析作業には限界が生じるのです。
また、多くの人で共有したり、一次予算、二次予算、というように数値が進化していく経緯を管理する場合には煩わしくもなりますので、次のような欠点があることも否めません。

内容 発生する課題
ワークフロー化できない 電子メールでのコミュニケーションが限界
エラーに気付きにくい ゼロと0、入力項目をマスタ化できない
簡単に詳細まで作れてしまう 属人化し、他人がメンテできない
履歴管理ができない ファイル数がネズミ講的に増加
エクセルファイルが分散化 誰が何をやっているかわからない
多くのエクセルシートが存在 シート間の整合性をとるのが困難
簡単にコピーできる セキュリティ上問題が。外部流出の可能性が大きい
予算の達成進捗管理ができない 都度、エクセルで作業が発生
多次元分析ができない 期間比較、予測・見込・計画比較
マクロの属人化 誰もメンテナンスできなくなる、病気や配置転換でのリスク
組織変更・品目追加等には対応が困難 エクセルの限界

こうしたことがあるため、データを共有する人が多い場合や、多次元のデータ分析、数値の進化過程などを管理する場合には何らかの経営管理システムを導入することが望ましいと言えます。エクセルは便利なツールですが、いわゆるブラックボックス化になりがちです。

結果分析だけでなく要因分析が必要

月次の経営会議などで、売上の増減理由を「〇〇地域の売上が多かった(少なかった)」、「〇〇製品の売上が多かった(少なかった)」というような報告をするとします。こういう報告は厳しく言えば、報告内容を細かくしているに過ぎません。
全社合計の結果報告だけでは物足りないのは皆がわかっていることは当たり前ですが、全社の数値を細かくする結果を分析するだけでなく増減理由を分析することが必要です。どのような要因で売上が減っているのか、利益を達成できたのは何が良かったのか、ということがない限り、結果の良し悪しの分析が「タラレバ」の言い訳のようになり、次回に良くなるとの期待もできない消化不良のような思いになってしまいます。
例えば、スポーツで負けた時に「自分達の試合ができなかった」というインタビューを聞くことがありますが、何がどのように悪かったのかの分析がない限り、釈然としないものです。

結果分析だけでなく要因分析を

これから、細かな結果分析だけでなく、その要因分析が大切であることに言及していきます。もし、要因分析が大変であるという場合には、目標を達成するためのプロセスが確立されていない状況であると言えます。
例えば、10の売上目標を達成するために100の顧客訪問を行うとプロセスを定めたとします。売上目標が達成できていない場合、顧客訪問が100に満たなければそれが原因とすぐわかります。
目標達成のためのプロセスを実行したか否かはすぐにわかるはずで、要因分析は簡単なはずです。プロセスが確立されていない場合には、事後的に要因を分析することになるので、その分析に時間がかかったり、的を得ないものになりかねません。そして、目標を達成できない根本原因は効果的なプロセスが確立されていないことにあるものです。

プロセスを管理するためのKPI

目標を達成するためには、目標達成までのプロセスを具体化していく必要があります。
例えば「売上を前期比で30%伸ばす」という目標達成のために、「新規顧客を○件増やす」「既存顧客からの受注を○件増やす」「単価の高い商品を販売する」などの中間目標を設定し、より目標達成を確実に、要因を細かく明確化していくものです。
時折、KPIを目標管理と勘違いされることがありますが、KPIは目標達成のための各プロセスにおいて、その達成度合いを計測・評価するための中間指標であり、そのKPIを数値化・視覚化し、達成率を管理することを「KPI管理」と呼びます。
適切なKPI指標の設計/目標設定/管理を行うことで、目標達成までの問題点や改善点を明確化することができ、社員全員で問題を共有することによって、会社全体で目標に向けての活動躍進することが期待できます。
経営管理の多くは、KPI管理を行うことと言っても過言ではありません。次回以降のコラムでは、卸売業や製造業の場合に、どのようなKPI管理を行っていくべきかを具体的に解説いたします。

著者プロフィール

ヒロ・ビジネス株式会社 代表取締役
日本公認会計士協会東京会幹事

広川 敬祐 氏

複数の大手外資系会計事務所で会計監査や株式公開コンサルティングなどを経験した後、外資系ERPベンダーに転職し会計システム導入プロジェクトなどに従事。その後、フリーコンサルタントとして、多くのERP導入や会計システムの構築に関わる。

広川 敬祐 氏

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