2021年5月14日更新
テレワークで変わる日本の働き方
~求められる社内制度とは?~
第01回 理想的なテレワークの実現へ
~社員を幸せにする社内制度の充実とは何か?~
藤田 喜徳 氏
はじめに
この1年大きな変化、そして深刻な変化の中、私たちの生活を含め様々なことが変わりました。
その一つが私たちの働き方。「テレワーク」という形が一気に広がりました。
今日からの連載は、「テレワークで変わる日本の働き方」と題し、求められる社内制度とは何か?それらをどう整備していけばよいのか?を、私が勤めた4社での実務経験、その間の海外勤務、さらには現在の人的ネットワークの中で議論される課題や発見などを交え、「現場視点」、「社員の視点」でお話したく考えております。
第1回 理想的なテレワークの実現
~社員を幸せにする社内制度の充実とは何か?~
第2回 生産性向上の視点から求められる制度改革とは
第3回 減ったストレス、増えたストレス
~課題から考察する求められる環境と社内制度の充実
第4回 Job型への移行① ~求められる環境と制度整備とは。
第5回 Job型への移行② ~業績、社員の幸せを両立させる評価制度の実現
めざすもの
いつの時代も、そしてどんな会社でも、守らなくてはいけないことがあります。会社において、そして経営において、不安が多い時代だからこそ「社員の幸せ」を守る。社員が安心して生き生きと働けるように、という稲盛和夫さんの経営哲学が思い浮かびます。
経営においてはコーポレート・ガバナンス、そして会社の隅々までコンプライアンスが求められる昨今、人として大切にしなくてはいけないことよりも先に、法的な「制度設計」を優先させる会社、あるいは法的な「制度設計」で精いっぱいになってしまう会社を見てきました。もちろん法的な「制度設計」は必要です。
「ソーシャルディスタンス」、「テレワーク」で物理的距離が求められる世の中だからこそ、社員同士、経営者と社員との相互信頼の原則に立ち戻った制度設計、制度の充実を実現させることも経営者の責務であると考えます。
広義の「社内制度」の充実で真の働き方改革を
会社の制度の一つとして「危険手当」が出た会社があると聞いています。テレワークができずに出社を強いられた人への手当だそうです。
政府等の方針に従い、xx%以下に出社制限をかけるものの、それは正規社員だけであって、非正規社員は出社を強いられているという現状もあります。
確かに長い時間、混んだ電車での通勤は在宅に比べ感染症への感染リスクはあります。よく聞くのは経理の仕事。取引先への支払、有価証券報告書の提出、税務申告と納税、決算の締め等々、期限のある仕事で出社を強いるのは理解できなくもありません。
しかし会社の制度が「規定」や「手当」で終わっては不十分です。
例えば、テレワークを前提にした働き方の実現のために経理は「決算」の制度を見直す。「制度」とはルールだけでなく広義の制度ととらえ、仕事のやり方やシステムを見直すのです。そのためには人が必要になります。組織、人事異動、勤務形態、教育、採用、評価などの制度を見直すことになります。もちろん投資や費用が必要になれば予算制度も見直す。
要はこのコロナ禍、会社のあらゆる制度を見直すよい機会なのです。
パソコンとWifiルーターだけを渡してテレワークを実現するだけではありません。
もちろん会社ごとに実力の違いがあります。しかしやらないよりは何かをやる。できているのならもう一歩進める。少しでも社員の働き方をより良くし、社員の幸せに繋げる。そんな経営者が増えることが日本をより良くすることにも繋がります。
まずは基本から
テレワークの浸透によって通勤時間が減りました。社員のワークライフバランスの改善にもつながっています。しかしこれは経営努力によるものではありません。
その前に、一番大切なこと。しっかり働くためにきちんと休むこと。ドイツ駐在時代、ドイツ人の働き方を目の当たりにしました。私のいた会社では、年初に全員がその年の休暇計画を出します。2週間の連続休暇を年3回です。それに基づき業務設計をし、要員計画を作成するのです。残念ながら日本は違います。
労働基準法で定められた有給休暇ですら、休みづらい、上司に休暇を言いにくい、一緒に働く同僚に迷惑をかけてしまうと有休の取得は進まないのが現状です。そこで2019年4月に施行されたのが年5日の有休取得の義務化と違反した使用者への罰金という制度です。
それでも罰金を逃れるための休暇取得推進という残念な状況が世の中にはあります。これも会社の事情があるでしょう。まずは罰金があるからではなく、社員の幸せのために最低限の5日はクリア。余裕のある会社は、各社の休暇制度にある全日消化を実行ということから始めてみてはいかがでしょうか?
テレワークのお蔭で、仕事を完遂することを前提にして、子育てや親の介護がしやすくなったという方も多くいらっしゃいます。一歩進めて有休を全部使って、会社の外に飛び出し自分磨きを行う。「Job型」に移行すると今以上に実力勝負になることも予想されます。もちろん知識だけではありません。仕事力は、知識×人間力です。人間力を磨くことも社会の中での実力アップになります。また、マネジャーはメンバーがもっと休みやすくなるよう制度改革やさらなる業務改善、システム化に向けて率先垂範する。これが真の働き方改革と社員を幸せにする制度の充実のまず第一歩ではないでしょうか?
次回第2回は、「生産性向上の視点から求められる制度改革とは」と題し、お話させて頂きます。
著者プロフィール
藤田 喜徳 氏
2015年まで花王株式会社に勤務。経営監査室長、グループ会社監査役等歴任。海外駐在を含め、内部統制整備、内部監査、ガバナンス対応やリスクマネジメント等に従事。その後、カゴメ株式会社、三菱自動車工業株式会社で海外事業責任者、株式会社ウェザーニューズ執行役員を歴任。現在はシカゴに本部を置くコンサルティングファームJLEANのVice PresidentとしてJapan Business責任者を務める。
-
WEBでのお問い合わせはこちら入力フォーム
当社はセキュリティ保護の観点からSSL技術を使用しております。
-
お電話でのお問い合わせ
富士通Japan
お客様総合センター0120-835-554受付時間:平日9時~17時30分(土曜・日曜・祝日・当社指定の休業日を除く)