2021年7月14日更新
テレワークで変わる日本の働き方
~求められる社内制度とは?~
第04回 Job型への移行①
~求められる環境と制度整備とは
藤田 喜徳 氏
前回のお話
「テレワークで変わる日本の働き方」第3回は、「減ったストレス、増えたストレス ~課題から考察する求められる環境と制度整備とは」と題し、出社制限やテレワークによる仕事環境の変化から来るストレスと正しく付き合い、会社による画一的な制度整備に頼ることなく自身の健康維持に努めることの大切さを書かせて頂きました。
「Job型」ってそもそも何?
昨年突如起こった新型コロナウィルス感染症の問題。その対策として出社制限が起き、それまでは台風が来ても、地震が起きても必死に会社に行っていた昭和世代の我々すら、会社に行くことなく、メールやZOOMなどを駆使して家から仕事をすることになりました。
しかし、会社の事業内容の違いや企業規模の違い、また都心と地方の違いなどその状況は様々、テレワークに全てが変わり、それに伴って「Job型」の雇用形態が進んでいるというのは早計だと感じております。
いったい「Job型」って何でしょう?
「Job型」に対して今までの日本人の働き方は「メンバーシップ型」と言われています。
それは、毎年新卒者の一括採用をしているとか、仕事が決まっていない(多様な仕事へのローテーションがあるという意味)とか、転勤や単身赴任があるとか、その定義というよりも働き方の要素をおっしゃられる方が多いように感じます。
長期間の安定雇用により社員ひとりひとりがその能力や経験を最大限に発揮し、中長期の視点に立って社会のため、お客様のため、会社の成長のために毎日をより良くしようと働くことが、巡り巡って自分自身の成長に至る、経験やキャリアを積むことになる。もちろんチームでも最大の成果が期待できる働き方であることには間違いありません。
一方「Job型」とは?
「職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)」があること。雇用契約時にその職務や勤務条件が明確かつ具体的に提示され、会社と社員が合意の上で働く、どちらかというと欧米での一般的な雇用形態とされております。日本も雇用の流動化が進み、転職、エグゼクティブ・リサーチなどを介しての転職の場合はこれがほとんどでしょう。
あるオーケストラの求人広告
ある日「働き方改革フィルハーモニー・オーケストラ」がヴァイオリン奏者を募集する求人広告を目にしました。ヴァイオリンと特定されていますから、これは間違いなく「Job型」の雇用形態になります。一方、オーケストラの花形ヴァイオリンといえども、作曲家やその曲により出番はまちまち。もちろんヴァイオリン奏者一人だけが自己主張してもベートーヴェンの曲は成り立ちません。編成の大きさも時代や曲によって違いますし、ヴァイオリンはソロ奏者として登場する場もあれば、オーケストラよりも小さなアンサンブル、トリオやカルテットなどの演奏の場も多くあります。
これってもしかしたら「メンバーシップ型」の良い所を活かした組織の例ともいえませんか?
そもそもオーケストラは、組織運営の視点では「メンバーシップ型」が本質的には当てはまります。専門家が集まり音の調和を作る。それによって聴衆に大きな感動を与えることができるのです。それでひとりひとりの奏者はますます腕を磨きます。
要はどちらが良いとか、どちらからどちらにという環境の変化が起きているとかではなく、会社という組織においては、経営者や社員が奏でるハーモニーが重要ということではないでしょうか?
「Job型」は個々人のやる気を最大限に発揮するチャンス!
定義や解釈の議論はそこまでにして、せっかく起きている環境の変化を、会社や社会を良くするチャンスと捉え前向きに取り組みたいものです。
前章をお読みいただき、あまり「型」にとらわれる必要がないことがご理解いただけました。後は「Job型」の良い所を使うだけです。
業種や会社の規模にかかわらず働くということは社会の一員として何らかの大切な役割を担っているということですから、それを見えるようにして、目標を明確にして、それが実現できた時には仲間で讃え合うというプロセスが大切です。
そのためにまずいわゆる「職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)」、つまり社会、会社の中での「役割宣言書」をつくることは非常に大きな意味を持つことと思います。人は社会における自分の役割を知ると自然に頑張れるものです。生産性も上がることでしょう。そしてひとりひとりが分担された役割を果たし、仲間で総合力にしていく。それによって目指す会社の役割を果たし、社会の中でのその会社の存在価値が大きくなります。人と人のつながり、会社と会社のつながりによって社会全体が良くなるのが実感できるようになります。
コロナ禍で少し暗くなってしまった社会は、「Job型」の導入ということよりも、「Job型」のうまい活用で明るくすることができるのかもしれません。
コンサルタントを使って完璧な「職務記述書」を作ってもらうことよりも、社内で「小集団活動」(ワークショップ)をやってみましょう!
中には「Job型」を一種の流行りのようにとらえ、一生懸命に「職務記述書」を作ることだけを進める会社があると聞きます。もちろん大切なことではあります。
あるいは、別のアプローチもあります。例えば、・・・。
ひとりひとりの「役割宣言書」を木の絵に貼っていくと、ひとつひとつの葉っぱの広がりができ、1本の大きな木が出来上がります。もちろん一番上にはその会社の目指す目標があって、それを実現することで社会の中での大きな役割を果たすことが描けることになります。
時には枝が1本足りないことに気づいたり、栄養が足りない葉っぱに気づいたり、雇用形態の議論よりも自分の会社の強弱が見つかり、「Job型」で人を採用するだけでなく、人財育成のポイントが認識できたりもします。
また「人」に頼ってばかりではなく、業務プロセス(第1回でも触れました)やシステムの弱さにも気づき、このコロナ禍で少し社会の動きがスローになった今こそ改善の手を打って、社会が回復した時に一気に攻勢に転ずることすらできるチャンスとも考えられます。
もちろん社員のやる気や生産性の向上にもつながることでしょう。
求められる環境整備と社内制度
ひとつの会社に長く勤め、そしてその後いくつかの会社で経験を重ねる中で様々な経営者を見てきました。さらには他の会社の経営者の方々とのご縁から学びの機会を頂戴しました。そのような中で感じることは、経営者自身が自らの人格形成のために勉強を続け、かつ行動をしている姿を見て育った社員が集う会社には、社内制度の改革を口にせずとも、社員が生き生きと生き甲斐を感じながら働き、もちろん実績も生むという環境ができているということです。
「Job型」と「メンバーシップ型」の両方の良い点を理解し、そして活用する。社員が職業的専門性だけに偏ることなく、こつこつと積み重ねた業務経験、社会経験を合わせて次のステップの仕事に取り組める。もちろんチーム全体の総合力で目標達成につなげるといった会社環境の整備にリーダーは努めたいものです。
営業、経理、ITなどといった専門性に特化した人財も大切ですが、併せて所謂ゼネラリストといった会社全体を俯瞰して見ることができる人財の育成も絶対に必要です。
皆さんの調和のとれた取組みが強い組織づくり、強い会社づくりにつながります。
著者プロフィール
藤田 喜徳 氏
2015年まで花王株式会社に勤務。経営監査室長、グループ会社監査役等歴任。海外駐在を含め、内部統制整備、内部監査、ガバナンス対応やリスクマネジメント等に従事。その後、カゴメ株式会社、三菱自動車工業株式会社で海外事業責任者、株式会社ウェザーニューズ執行役員を歴任。現在はシカゴに本部を置くコンサルティングファームJLEANのVice PresidentとしてJapan Business責任者を務める。
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