2022年7月8日更新

2024年に迫る医師の働き方改革 何が変わり何を実践すべきか 第02回 タスクシェア/タスクシフト推進のために現状を正しく知る
労働時間の削減には音声入力など最新のITが有効  

富士通Japan株式会社

様々な専門職種が働く医療現場において働き方改革を実践するためには、多職種の連携が欠かせない。それを推進するためには、適切にタスクシェアやタスクシフトを行い、チームとして医療の質を高める必要があるだろう。多職種連携を図りながらマネジメントを行う社会医療法人恒貴会訪問看護ステーション愛美園の中島由美子所長(兼看護副部長)と、米国・呼吸療法士資格を取得するなど米国の事情も知る東京西徳洲会病院看護師の戎初代氏に、医療現場での働き方の課題や適正な時間管理やマネジメントのために必要な取り組み、ITに対する期待などについて聞いた。


中島由美子氏(左)と戎初代氏(撮影:清水盟貴)

タスクシフト/タスクシェアの実践にはスキル管理が重要

―― 一般企業にやや遅れて医療現場でも働き方改革の取り組みが叫ばれるようになりました。お二人の働く医療現場では、現状どのような働き方の課題がありますか?

中島氏:2年後に迫った「医師の働き方改革」開始に伴うタスクシフト/タスクシェアへの準備が、現在、働き方にも影響を与えています。

医師の働き方改革が施行されると、医師が働く時間を大きく減らすことを考えなくてはなりません。これを実践するには医師にしかできない仕事をしっかりと把握し業務整理を行った上で、他職種へのタスクシフト/タスクシェアをする必要があります。そのための方策として、これまでの看護師に対する特定行為だけでなく、診療放射線技師や臨床検査技師、臨床工学技士といった職種にもタスクシフト/タスクシェアできる行為が厚生労働省から示されました。しかし、これを進める過程では、看護師にさらなる業務が増える可能性があることを危惧しています。

というのは、診療放射線技師などに対するタスクシフト/タスクシェア行為の技能指導を、看護師が担うケースが多いと考えられるからです。実際、理学療法士は特定行為として喀たん吸引が行えますが、その指導は主に看護師が行っており、そういった業務が負担になっていることもあります。タスクシフト/タスクシェアはもちろん必要ですが、そのための技能の習得などは、それぞれの職種で責任を持って行える環境を作って欲しいと思います。

―― 指導は何でも看護師に依頼するのではなく、それぞれの職種内でスキルを持った人が他の人に指導するべきだということですね。そうなると個人のスキル管理が一つのカギになるように思います。

戎氏:私もスキル管理の重要性は感じます。特定行為は、サポート体制を整えないと、安全に広げていけないと思います。特定行為の中には、侵襲性の高い行為もあります。そういった行為は特定行為研修を終了した後で、実施件数などの実績の確認や実際のスキルの評価を行った上で、病院などの事業者が各人に「お墨付き」を与えるような、スキル管理のシステムの構築が不可欠です。できることとできないことを、病院とスタッフ自身が知り、契約の下で行うことで、適切なタスクシフト/タスクシェアが可能になると思います。

中島氏:そうしたスキルを身につけるには、組織としてもバックアップ体制を整える必要があります。現在、私たちの訪問看護ステーションでは、看護師10人のうち3人が特定行為研修を修了した認定看護師です。より多くの人に特定行為研修を受けてほしいと考えており、修了するための全面的なサポート体制をとっています。例えば、毎日2時間、勤務時間内に研修のための勉強時間を設けているのに加え、試験前には有休が取得できるようにしています。

加えて、修了後には技術を活かせるように実際の現場で実践しますが、私たちと同じ法人の医師には手順書を出してもらいます。さらに、法人以外の医師のところには特定行為研修修了者と私で訪問し、その看護師に何ができるかを詳細に説明し、理解を得たうえで実践できるような努力をしています。地域で特定行為を拡大することは、利用者の利益になるだけでなく、医療の質の向上にも繋がり、ステーション自体の評価アップにもなります。

ただ、やってみてわかったのが、長く続けていると医師が看護師による特定行為をタスクシェアでなく、タスクシフトだと思ってしまい、その行為を自分の業務の範疇ではないと考えることがあることです。そうなると、特定行為ができる看護師が不在の場合に業務が滞る可能性があります。それを防ぐ意味でもタスクシェアできる人材をより多く育成する必要があり、そしてそのスキルをしっかり管理することがリスクマネジメントに繋がると思います。

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2024年に迫る医師の働き方改革 何が変わり何を実践すべきか

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