2023年02月10日 更新

食品業界で需要予測を使用する理由とは?
各企業の活用例を紹介  

食品を取り扱う企業においては、正確な需要予測は必要不可欠です。正確な需要予測がされないことで、損失が発生するケースも少なくありません。この記事では、食品業界で需要予測が重要視される理由や需要予測の精度を高めるための方法などを解説します。需要予測システムの活用法も紹介するため、ぜひ役立ててください。

食品を扱う企業が需要予測を使う理由・背景とは

食品を扱う企業が需要予測を使う理由としては、食品ロスの抑制が挙げられます。食品ロスとは、まだ食べられるのに廃棄されてしまう食品のことです。世界では毎年13億トン、日本でも毎年約522万トンもの食料が廃棄されているとされており、食品ロスの削減は全世界的な課題となっています。

このような現状から、2019年10月1日に「食品ロス削減推進法」が施行されました。これにより、食品ロスを削減するための取り組みが企業にも求められています。

食品ロスというと「食べ残し」をイメージする人も多いでしょう。しかしそれだけではなく、欠品を恐れた過剰生産や過剰在庫なども食品ロスの大きな要因です。過剰生産・在庫の見直しを行うためには、需要予測を活用する必要があります。

需要予測の精度が食品ロスにつながる理由とは

過剰生産や過剰在庫が起こる原因としては、予測の属人化や過剰な見込み生産などが考えられます。担当者のこれまでの経験や勘に頼った属人的な需要予測では、正確な需要予測が行えない可能性があります。また、担当者にのみノウハウが蓄積し、企業としてのノウハウにならないといった問題もあるでしょう。

食品業界では、過剰な見込み生産も起こりがちです。欠品を恐れるあまり過剰に生産してしまい、結果として余剰在庫が発生して食品ロスにつながるという悪循環に陥りやすいため注意が必要です。

また、食品の売れ行きは天候や気温によっても左右されます。天候変化を需要予測の判断基準に含めず、需要と供給のミスマッチが起こって食品ロスにつながるケースもあります。

日本における食品ロスの状況

日本では、年間約500万トンもの食品ロスが発生しているとされています。年間500万トンというとイメージしにくい人も多いでしょう。これは、毎日1人あたりおにぎり1個分の食料を捨てている計算になります。

世界では、飢餓が問題となっている国も多くあります。そのようななか、日本は食品の多くを輸入しているにもかかわらず、多くの食品ロスが発生しているという状況にあるなど、食品ロスの削減は喫緊の課題だといえるでしょう。

需要予測の精度を上げるためには?

需要予測の精度を高めるには、3つのポイントを意識しましょう。ここでは、需要予測の精度を高めるポイントを解説します。

営業改革とSCMの改革を一体して行う

需要予測の精度を高めるには、SCM(需給・生産)部門の改革だけに焦点を当てるのではなく、営業改革とSCM部門の改革を一体化して行うことが重要です。

営業部では厳しい戦略目標を立てて販売計画を行う傾向にあります。しかし、SCM部門では売れ残りのリスクを考えて、独自に販売予測を立てて生産計画を立案するなど、営業部門とSCMの計画や考えが一致していないケースが多いようです。

そのため、まずは営業部門の目標とするKPIやターゲティングの変更を行うなど、営業改革に取り組みましょう。変更内容に合わせて、営業のアクション方法やサポートの仕方などの改革につなげていきます。営業部とSCM部門の意識を統一し、共通の目標やKPIを設定することも重要です。

綿密な需要計画を立てる

需給計画とは、在庫数に合わせて仕入数や生産などの計画を立てることを指します。需給計画を立てる際には、人の経験や勘などといったあいまいなものではなく、さまざまな要素・データを考慮して綿密な計画を策定することが重要です。

さまざまなデータをもとにして細かな分析をしたり、正確な予測をしたりするのは人だけでは難しいとされています。そのため、予測システムを用いることが理想的とされています。

高度な需要予測を用いる

正確かつ高度な需要予測をするには、予測システムの活用が効果的だといわれています。担当者の経験や勘に頼った需要予測は正確性が低く、精度の高い需要予測は難しいでしょう。

需要予測の精度を高めるには、過去の販売実績などのデータ分析、社外のデータ、SNSなどのビッグデータなどさまざまなデータを取り入れた高度な解析手法を用いることが求められます。また、複数の予測手法を組み合わせて活用できる予測システムを使えば、より予測精度が高められるでしょう。

実際に、気象データを用いた需要予測によって、誤差を30%も削減できたという事例もあります。

【需要予測システムの活用例】スーパーの場合

需要予測システムを活用することで、どのような効果が得られるのでしょうか。ここでは、スーパーでの活用例を紹介します。

抱えていた課題

スーパーでは、需要予測システムを導入していたものの、思ったような効果が出ないという課題がありました。システムの指示通りに発注しても在庫が過剰になってしまうなど、需要予測の精度が低く、結果として過剰在庫を抱えるケースが多くなっていたようです。

需要予測システムの活用による成果

そこで、過剰在庫を解消するために、需要予測システムのアップグレードを行いました。これにより、複合的なデータ分析が行えるようになり、発注量のコントロールもしやすくなっています。結果として、在庫量の削減につながるなど効果が出ています。

【需要予測システムの活用例】食品製造業の場合

ここでは、食品製造業における需要予測システムの活用例について解説します。

抱えていた課題

ある日配品メーカーでは、食品ロスに悩んでいました。日配品は足が早い食品も多く、見込み生産によって食品ロスが発生しやすいという要因があります。また、機会損失にも悩んでいるなど、需要予測を必要としていました。

需要予測システムの活用による成果

そこで、気象情報を取り入れた需要予測を開始し、食品ロス削減に乗り出します。当初は気象状況と需要との関連性が見つからず、需要予測の活用は滞っていました。しかし、予測を繰り返して分析を行うなかで、売れ行きと気温が連動していることが判明し、売れやすさを「指数」として表しました。

そこから、気象予測を活用した高度な需要予測システムを用いて、生産計画を立てています。気象協会から配信される指数をもとにして発注数を決定した結果、需要予測の精度が30%も向上するなど、食品ロスの削減につながっています。

【需要予測システムの活用例】飲食店の場合

飲食店では、どのように需要予測システムを活用しているのでしょうか。ここでは、飲食店の活用例を紹介します。

抱えていた課題

飲食店では、人気のある料理や廃棄率などを分析する必要があります。しかし、メニュー数や顧客などが多い飲食店の場合、即座にデータを分析したり活用したりすることが難しい状態にあるという課題がありました。

需要予測システムの活用による成果

そこである飲食店では、過去数年分のビッグデータをAIによって解析し、最適な供給量にコントロールできるシステムを構築しました。店舗ごとにデータが把握できるため立地や顧客層、店内の混在状況や平均利用時間などに合わせて、適切な供給量にコントロールできるようになっています。

結果として、無駄な供給が減り、食品ロスの削減が実現しました。また、食品を廃棄して損失となることも減り、廃棄にかかる費用なども削減できるため、収支の改善にもつながっているなど、大きな効果が出ているようです。

まとめ

食品業界においては、食品ロスを防ぐために正確な需要予測が必要となります。需要予測の精度を高めるには、需要予測システムを活用するとよいでしょう。さまざまなデータをもとにした分析が行えるため、人による予測よりも精度が高く正確な需要予測が行えます。

SuccessFrontierでは、多数の導入実績のある富士通Japanがお客様の経営課題の解決に真摯に向き合ったなかで得られた業種・業務ノウハウや、ICT業界の最前線で培ったテクノロジーに関して、富士通グループの知見を結集させ、全社をあげて課題の解決に取り組んでいます。需要予測システムの活用をお考えなら、お気軽にお問い合わせください。

[注] 本文中の活用例については弊社導入事例でないものもございます。

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著者プロフィール

富士通Japan株式会社
流通ソリューションビジネス統括部
沖津 里枝

【事業内容】
流通業における準大手、中堅・中小企業向けのソリューション・SI、パッケージの開発から運用までの一貫したサービス提供。
AIやクラウドサービス、ローカル5Gなどを活用したDXビジネスの推進。

富士通Japan株式会社

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