2023年02月10日 更新

物流業界が抱える課題とは?
効率化が求められる背景や具体的な方法を解説  

物流業界の人手不足が深刻化するなかで、個人向け需要が上昇し、従業員はさらに過酷な労働状況を強いられています。物流業務を効率化するために、どのような対策が取れるのでしょうか。

本記事では、物流関係の経営者や経営企画部門の担当者に向け、物流業界の現状や課題、課題解決の方法を解説します。企業の事例もあわせて、ぜひ役立ててください。

効率化が求められる物流業界の現状とは

日本の物流業界は、「人手不足」と「個人向け需要の上昇」に直面しています。それぞれの詳細を以下で解説します。

人手が不足している

物流業界では、人手不足が年々深刻化しています。この問題の背景にあるのが、少子高齢化です。また物流業界に対し、3K(きつい・汚い・危険)のような、ネガティブなイメージをもたれやすいことも、労働力が集まらない原因となっています。

迫る2024年問題

2024年問題とは、働き方改革関連法の適用にともない、物流業界で懸念されているさまざまな問題を指します。人手不足が解消されないなか、働き方改革法関連の適用により、960時間を超えて時間外労働していたドライバーは、2024年から収入が減少する恐れがあります。

時間外労働時間の制限を受け、ドライバー不足になると、業務がスムーズに回らなくなります。従来と同量の業務を受注できなくなる事態を防ぐには、業務の効率化が急務です。

ドライバーの高齢化

高齢化社会が進む日本で、物流業界は主な労働力を高齢者に依存しています。なかでも特に、道路貨物運送業の従業員の高齢化が顕著です。

国土交通省の2020年の報告書によると、トラックドライバーは全産業平均以上のペースで高齢化が進んでおり、高齢層の退職や早期離職などで、労働力不足がさらに深刻化するリスクがあるといいます。

この事態を解決すべく、若いドライバーや女性ドライバーの積極雇用が進められています。しかし成果が出るまでには、まだ時間がかかるでしょう。安定的な労働力を保つためには、今後さらに高齢化が加速することを見越し、業務の効率化を進めることが不可欠です。
参考:物流を取り巻く動向について|国土交通省新しいウィンドウで表示

個人向け需要の上昇

EC市場が伸長し、個人向け需要が上昇したことも、物流業界の効率化が進められる要因の1つです。配達量の増加や再配達による負担増加、サービスの煩雑化などにより、業務量が増加している現状があります。

積載率の減少

個人宅に配達する小口配送は、積載量が少ない車で行われるケースがほとんどです。迅速な配達ができるメリットがある一方、トラックの積載率が減少するデメリットがあります。積載率が低下すると、効率の良い輸送ができません。

再配達の増加

個人向け需要が増加し、取り扱いが増加した一方で、再配達の数も増えています。国土交通省の調査によると、令和3年10月時点の宅配便再配達率は約11.9%となっており、置き配の導入や時間帯指定の活用などの推進が必要です。

物流業界の環境変化も影響している

ITの進歩や環境問題など、外部の環境変化に対応するうえで、物流業界の変革が求められています。以下で詳細を解説します。

デジタルトランスフォーメーション(DX)

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、デジタルテクノロジーを活用して、サービスやビジネスモデルなどを変革させることです。

物流業界でも、DXに向けた取り組みが進められています。例えば企業のなかには、バース予約・受付システムを活用し、乗務員の待機時間削減やバース・倉庫内貨物の効率回転を実現しています。

物流業界が抱えるさまざまな課題解決のために、DXを用いた物流プロセス全体の徹底的な最適化が必要です。

SDGs

SDGsは、Sustainable Development Goalsの頭文字を取った略称です。世界中の環境問題や差別、貧困、人権問題などの課題を、世界のみんなで2030年までに解決することを目指した、17の国際目標で、「持続可能な開発目標」とも呼ばれます。

物流関連企業は、事業活動を通じて大量の包装廃棄物を出します。したがって、輸送時の二酸化炭素排出量を削減させるための「低炭素化」や、「脱炭素化」への取り組みが、SDGsの行動目標でも期待されています。

物流総合効率化法について確認

物流業務の効率化を推進する事業者に対し、政府はさまざまな支援を行っています。物流総合効率法は、国が補助金やコストを補助し、物流の効率化を幅広く実現するための取り組みを支援しています。

この法律では、一定の条件を満たしたうえで、物流業務の効率化・合理化に関する輸送計画や事業計画を国に提出し、認可が下りると、税制面での優遇措置を受けられます。事業許可の一括取得や、事業に関する補助金や費用の負担など、事業経費の一部補助を得ることが可能です。

効率化を行うメリットとは

物流効率化にはさまざまなメリットがあります。以下で、主なメリットを解説します。

コスト削減につながる

1つ目のメリットは、物流全体の効率化を行うことで、大幅なコスト削減が見込める点です。物流業界は、倉庫の管理コストや人件費、配車費用など範囲が広いため、効率化を行うと連鎖的に効果が大きくなります。

サービスの品質がアップする

2つ目のメリットは、効率化によって物流業務が円滑に進むと、サービスの品質向上が期待できる点です。正確かつ迅速な配送が実現すれば、顧客からの信頼が向上し、競合他社との差別化につながります。

【物流業界向け】効率化を実現するための方法

物流業界の業務効率化を実現させるために、何ができるのでしょうか。以下で主な方法を解説します。

共同配送

共同配送とは、届け先が共通する複数の企業が互いに荷物を持ち寄り、荷物の混載や倉庫を共有化し、配送業務を共同で行うことです。特定エリアの配送業務を共同で行うと、トラックの積載効率が高まり、コスト削減が実現します。

また大型トラックや船舶、鉄道などを利用し、一度に多くの荷物を輸送することは、ドライバーの人手不足や労働問題の改善にも有効です。特に過疎化が進む地域では、配送コストが課題になっています。共同配送を行えば、貨物の集配効率の低下を防ぎ、サービス最適化の実現につながります。

モーダルシフト

モーダルシフトとは、トラックをはじめとした自動車で行われる、貨物輸送の輸送ルートを見直し、船便や鉄道便など環境負荷の小さい手段の利用に転換・併用することです。この方法は特に遠方地域への配送に効果があるといわれており、コスト低減の可能性が高まります。

荷物を輸送する際、鉄道や船便を用いると、小口配送よりも大幅なCO2排出量抑制が可能です。地球温暖化の対策にも、効果があります。また、輸送量に対して最小限の人員で輸送が可能になるため、ドライバーの労働力不足の解消や働き方改革の観点からも、注目を集めています。

物流拠点・輸送網を集約

物流拠点・輸送網が複数あると、人件費やトラックの稼働台数が増えるなどの問題が発生します。倉庫や物流センターなど拠点を集約できれば、人件費や設備コストが減るだけでなく、工場・店舗・支店など社内の拠点間での商品移送も減ります。

スムーズな拠点集約には、配送管理システムの導入が不可欠です。また、リスクの分散やリードタイム短縮が難しいなど懸念事項もあります。しかし、輸送ルートが減る、配送効率が上がる、在庫管理が容易になるなど、メリットの多さから注目を集めている手法です。

作業フローの見直し

システムの見直しに大規模な投資ができない場合は、当たり前になっている作業を1つ1つ見直すことから始めます。具体的には以下の2点を洗い出して、見直します。

  • 倉庫や物流センターでの作業手順
  • 無駄な工程

ポイントは現場作業の単純化です。例えばピッキング作業の場合、ピッキングすべき商品の保管場所を細分化し、1つの場所に1つの商品を保管するスタイルに変えることで、作業を単純化できます。

現状の作業が本当に必要な作業か判断し、必要であれば省略、別の方法に変えるなどの改善が必要です。状況に応じて倉庫のレイアウトの最適化や、ロケーション管理の徹底なども役立ちます。

IT技術システムを導入

WMS(倉庫管理システム)をはじめとしたIT技術システムの導入は、根本的な業務の効率化を図るうえで有効です。WMSとは、物流センター内の一連の作業を一元的に管理するソフトウェアです。

具体的には、入荷・在庫・流通加工・帳票類の発行・出荷・棚卸などの業務を効率化します。あわせて、検品や配送ルートの立案などの効率化も可能です。ITシステムの導入は、物流業務全体の手間・コスト削減にもつながります。近年は、在庫の履歴管理や温度管理などを、リアルタイムで管理できる機能も増えています。

物流業務をアウトソーシング

自社で物流業務を行わず、専門業者への依頼も可能です。繁忙期は多くの企業で、先を見据えた人材の配置や保管場所の増設など対応が必要になります。しかし、物流業務をアウトソーシングすれば、物流業務に割いていた時間をコア業務に充てられます。また、物流にかかるコストを明確にできる点もメリットです。

ただし、ある程度の料金がかかるため、本格的な導入を視野に入れる場合は、費用対効果を踏まえた慎重な検討が必要です。

配車支援システムの導入で効率化・コスト削減を実現した事例

富士通Japanの「FUJITSUロジスティクスソリューション Logifit TM-配車」は、物流業界の業務改善に役立つシステムです。

親鶏の飼育から採卵、包装、出荷を手がける企業では、最適な配送ルートの立案には専門知識・スキルが不可欠だったため、担当者以外では効率よく作業を進められない状態が課題でした。

しかし、「FUJITSUロジスティクスソリューション Logifit TM-配車」を導入し、配送ルート組みを自動化できるようになったことで、最適な配送ルート立案に要する時間が大幅に短縮しました。また、経験の浅いスタッフでも、1日程度で最適なコースを選定できるようになりました。

システム導入によって、配送コストを可視化できるようになったことは、配送の効率化やコスト削減にもつながっています。

まとめ

物流業界では、人手不足や個人向け需要の上昇など、さまざまな課題を抱えています。これから先も安定的な質の高いサービスを提供するには、業務の効率化が欠かせません。

富士通Japanは、お客様の経営課題の解決に真摯に向き合いながら、多数の導入実績のなかで得られた業種・業務ノウハウを活用している企業です。SuccessFrontierをとおし、持続可能な社会を実現するため、さまざまな社会問題を解決するためのアクションを起こしています。

ICT業界の最前線で培ったテクノロジーに関して、富士通グループの知見を結集させ、全社をあげて課題の解決に取り組んでいます。

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