2023年02月10日 更新
物流における「2024年問題」とは? 企業が取り組むべき課題・解決策を解説
2024年問題とは、働き方改革関連法によって起こりうるさまざまな問題のことです。2024年問題は物流業界にも大きな影響を与える問題として、注目されています。この記事では、2024年問題とは何なのか、2024年問題が物流業界に与える影響などを解説します。あわせて、企業が実施すべき対策も紹介するため、参考にしてください。
2024年問題とは
2024年問題とは、時間外労働の上限規制などを含んだ、働き方改革関連法の施行によって起こると考えられているさまざまな問題のことです。多くの業界ではすでに時間外労働の上限規制などが適用されていますが、自動車運転の業務など一部業種は適用が猶予されていました。
しかし、2024年4月から適用されるため、物流業界にも大きな影響を及ぼすとされています。たとえば、ドライバーの収入減少や物流業者の売上低下などが懸念されており、2024年問題への対策が求められています。
物流業界に関係する働き方改革関連法のポイント
働き方改革関連法の内容はさまざまです。ここでは、物流業界に関係する働き方改革関連法のポイントを解説します。
時間外労働の上限規制適用
前述したように、多くの業種ではすでに提供されていた時間外労働の上限規制ですが、トラックドライバーなどの自動車運転の業務などについては適用が猶予されていました。しかし、猶予期間は5年間となっており、2024年4月1日からトラックドライバーなどにも、時間外労働の上限規制が適用されます。
上限は原則として月45時間、年360時間となっています。労使間で36協定が合意されていた場合であっても、月100時間未満、年720時間という上限が定められるため注意しましょう。
時間外労働の割増賃金引上げ
労働基準法により、時間外労働に対しては原則として25%以上の割増賃金を支払わなければいけないと定められていました。しかし、働き方改革関連法によって、2023年4月1日以降は月60時間を超える時間外労働に対して、50%以上の割増賃金を支払わなければいけません。
物流業界では残業が多いという事情があり、人件費の負担が大きくなる企業が出てくる可能性も高いでしょう。これにより、収益が減少する可能性があります。
勤務間インターバル制度
勤務間インターバル制度も物流業界に大きな影響を及ぼす制度です。勤務間インターバル制度とは、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に、一定以上の休息時間を確保しなければいけないという制度です。
運送業界における自動車運転手の休息は、これまでは8時間以上と定められていました。しかし、2024年からは休息9時間以上を義務とし、11時間以上を努力義務として定められる可能性があります。ドライバーの健康や安全を守るために必要な制度ですが、勤務間インターバルが長くなると売上減少やドライバー不足につながる恐れがあります。
物流業界が抱えている問題
物流業界にはどのような問題があるのでしょうか。ここでは、物流業界が抱えている問題について解説します。
人材不足・高齢化
物流業界においては、慢性的な人材不足や高齢化が続いており、ドライバー不足が深刻化しているという問題があります。残業が多く低賃金であるため、人材が集まりにくいという課題があるようです。人材不足や高齢化がこのまま解消されずに進んでいくことで、近い将来荷物を運べない状況になりうるかもしれないと危惧されています。
労働時間の長さ
物流業界は、長時間労働が当たり前となっている現状があります。長時間労働が常態化する要因としては、荷待ち時間や荷役時間の長さが大きいとされています。また、渋滞などの交通状態の影響を受けるため、労働時間が予想よりも長くなる場合も多いようです。
「翌日配送」や「送料無料」などを売りにする企業の増加も受け、長時間働かなければいけないケースもあります。
増え続ける物流量
物流業界の人材不足が進む一方、物流量は年々増加の一途をたどっています。インターネットの普及により、通販サイトの利用者は増加傾向にあります。このような通販の需要拡大に伴い、物流量は増加を続けており、労働者の負担が増加しているようです。また、再配達も問題となっており、ドライバーの負担は重くなっています。
2024年問題が物流業界に与える影響
2024年問題により、物流業界はどのような影響を受けると考えられているのでしょうか。
売上・利益が減少する
時間外労働の上限規制や勤務間インターバル制度によって、ドライバーの労働時間が減少する可能性が高いでしょう。1日に運べる荷物の絶対量が減少し、利益が減少につながります。運賃を上げ利益を確保しようとすれば、顧客離れが起こる可能性もあります。
ドライバーの収入が減少する
残業時間の是正により、労働時間が短くなります。これによって、ドライバーの収入減少が予想されるでしょう。ドライバーが収入に不満を持ち離職するリスクがあるため、企業として適切な対策を考える必要があります。
荷主に対する支払運賃が上がる
利益を確保するために運賃を上げるという方法もあります。運賃を上げることで、減少した収入分を補える可能性があるでしょう。しかし、荷主側の物流コストが上がってしまい、負担が増える結果になります。
物流業界における2024年問題の対策とは
2024年問題により物流業界ではさまざまな影響を受けます。そのため、しっかりと対策しておくことが重要です。
対策1:労働環境の改善
まずは、労働環境の見直しや改善を行いましょう。物流業界では人手不足が深刻化しているため、人材確保は喫緊の課題です。人材採用・育成・定着を強化するためにも、労働環境の改善をして働きやすい環境づくりを心がけましょう。
特に、これ以上の賃金低下は防がなければいけません。残業時間の減少によって、社員の収入が減ることが予想されます。しかし、賃金低下に不満を抱き、離職する社員が増加する可能性もあるため注意しましょう。
対策2:荷待ち時間の削減
荷待ち時間を削減することも重要です。荷待ち時間は、ドライバーの拘束時間を増やす大きな要因となっているといわれています。荷待ち時間が1時間を超えるケースも珍しくありません。荷待ち時間を削減することにより時間を有効活用でき、今までよりも短い時間で輸送することも可能となります。
そのため、先着順の荷下ろしをやめる、柔軟に時間を指定できるようにするなどしましょう。この対策には、荷主側による協力が必要です。
対策3:荷役時間の削減
荷役時間の削減も行いましょう。荷物の積み下ろしや積み込みなどの荷役作業は、拘束時間を増やす要因の1つです。また、これらの作業はドライバーの本業ではありません。あくまで、輸送の際に付随する業務という位置づけのため、できるだけドライバーに負担がかからないようにしましょう。
たとえば、荷役機械を導入したりパレットを活用したりします。着荷主企業のスタッフに協力してもらうなどの対策も効果的です。
対策4:検品時間の削減
検品が必要な納品物の場合、検品が終了するまでドライバーが待機することになります。検品時間を削減することにより、ドライバーが待っているだけの無駄な時間を減らすことができます。しかし、検品をなくせないという場合も多いでしょう。
その場合には、あらかじめQRコードなどで内容物を登録し管理するシステムを構築する、食品業界の3分の1ルールを見直すなどの対策が効果的です。検品にかかる時間を削減し、待機時間を減らしましょう。
対策5:運行計画の見直し
運行計画の見直しも、2024年問題への対策としては効果があります。同じ場所に荷物を輸送する場合でも、通るルートによっては時間が大きく異なります。たとえば、高速道路を活用することで一般道を走るよりも時間は短縮可能です。高速料金と高速道路を利用するメリットを比較して、ルートを考えましょう。
また、できるだけ空車にしないルートを考えることも重要です。適切な運行計画を立てることで、ドライバーの稼働時間が削減され、負担が減ります。
対策6:IT化・デジタル化
2024年問題への対策として、IT化やデジタル化を進めることも重要です。IT化やデジタル化を進めることにより、これまでドライバーに負担がかかっていた業務を効率化できる、客観的かつ確実性のある管理が行えるなどのメリットがあります。
たとえば、配車や輸送計画のデジタル化などが挙げられます。輸配送管理システムなどを導入することによって、人の経験や勘だけに頼らずデータをもとにして、最適な配車、輸送計画が立てられます。
伝票のデータ化なども効果があります。物流業界では紙が主流ですが、仕様が企業によって違うなど業務が煩雑化していました。伝票をデータ化することで、業務の負担が減り生産性向上が見込めます。IT化やデジタル化にはコストがかかりますが、長期的な目で見ると業務効率の改善が期待でき、費用対効果も高まるでしょう。
迫りくる2024年問題に向けて対策している企業の事例
実際に2024年問題に向けて、どのような対策が行われているのでしょうか。ここでは、対策している企業の事例を紹介します。
配送ルート立案業務を効率化し、コストも削減
ある企業では、配車支援システムを導入し、配送ルートの立案を自動化しています。これにより、配送コストの削減を実現しました。
配車支援システム導入前は、専門的なスキル・知識を有した担当者しか効率的に作業ができず、配車業務が属人化しているという課題がありました。また、最適な配送ルートの立案に1か月もの時間がかかっていましたが、システム導入により1日に大幅短縮しています。
まとめ
2024年問題とは、働き方改革関連法の施行によって起こりうる諸問題のことで、物流業界にも大きな影響を与えます。そのため、労働環境の見直しや荷待ち・荷役時間の短縮などの対策が重要です。2024年問題への対策としては、IT化やデジタル化により業務効率化を図ることもポイントです。
富士通JapanのSuccessFrontierは、お客様の経営課題の解決に真摯に向き合ったなかで得られたノウハウやICT業界の最前線で培ったテクノロジーに関して、富士通グループの知見を結集させ、全社をあげて課題の解決に取り組んでいます。物流における課題解決をお考えなら、お気軽にご相談ください。
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著者プロフィール
富士通Japan株式会社
流通ソリューションビジネス統括部
沖津 里枝
【事業内容】
流通業における準大手、中堅・中小企業向けのソリューション・SI、パッケージの開発から運用までの一貫したサービス提供。
AIやクラウドサービス、ローカル5Gなどを活用したDXビジネスの推進。
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