2023年01月27日 更新

食品ロスは世界で注目される問題!
世界と日本の現状と発生の原因などを徹底解説  

食品ロスの問題は、日本だけでなく世界中で深刻な問題として考えられています。先進国や発展途上国に関係なく、各国の事情によって食品ロスの課題が発生しているためです。

食品ロスを削減するには、まず個人の意識を高め、世界中の企業がこの課題に対して取り組むことが重要です。

この記事では、世界的に見た食品ロスの現状と日本との比較、原因と対策などについて解説します。

世界で問題視されている食品ロスとは

食品ロスとは、まだ食べられるのに廃棄される食品のことです。気候変動や紛争、貧困などが原因で途上国や後進国では飢餓が深刻化している一方で、先進国では食べられるはずの食品が大量に廃棄されています。

食品ロスは単に「もったいない」だけでなく、環境への負荷や、仕入れ・生産コスト、廃棄コストなどの経済的な影響も問題視されており、世界規模の課題です。国際共通の目標として定められた持続可能な開発目標「SDGs」でも、食品ロスに関する取り組みは取り上げられています。

世界の食品ロスはどれくらい?

世界の食品ロスはどのくらい深刻なのでしょうか。ここでは、世界と日本の食品ロスの現状を具体的に解説します。

世界で出ている食品ロスの現状

世界で出ている食品ロスは、世界で生産されている40億トンの食料のうち、年間13億トンにもおよびます。この現状は、約1/3の食料が廃棄されていることを示します。しかし、コストや労力をかけて生産された食料が無駄になっている一方で、世界では食べるものがなく飢餓に陥る人は少なくありません。

飢餓の深刻化によって、世界の約9人に1人が栄養不足になっています。この問題は、食品ロスによって生産された食料が必要な国に十分に行き渡っていないことが要因の1つです。

また、世界の人口は増加傾向にあり、必要な食料はますます増えていくと考えられます。世界で飢餓をなくすためにも、効率よく無駄のない食品消費をし、食品ロス削減につなげる取り組みが重要です。

参考:食品ロスの現状を知る|農林水産省新しいウィンドウで表示

日本で出ている食品ロスの現状

世界の食品ロスの問題は深刻ですが、日本の食品ロスの現状も待ったなしの状況です。令和2年度の食品ロス発生量は、年間約522万トンにおよぶといわれています。この数値のうち、食品メーカーや飲食店などの企業から出る事業系食品ロスは275万トン、家庭から出る食品ロスは247万トンです。

現状の数値は、食品ロス量の記録を開始した平成24年度から見ると、最も低い量となっています。しかし、食品ロスの数値は、食料を必要とする国や地域に支援している食品量の約2倍にあたるため、すでに相当量の食品ロスが生まれていると考えられています。

日本の現状改善には、個人や企業の垣根を越えて食品ロスへの意識を高めながら、食品ロスを削減するための取り組みを行うことが必要です。

参考:食品ロス削減ガイドブック|消費者庁新しいウィンドウで表示

世界各国の食品ロス発生ランキング

食品廃棄物とは、まだ食べられるのに廃棄した食品と、加工時に出る食べられない食品を合わせたものです。食品廃棄物には食品ロスも含まれます。以下で、世界各国の食品廃棄物量のランキングを紹介します。

世界各国の食品廃棄物発生量ランキング

流通経済研究所の調査によると、世界各国の食品廃棄物発生量のランキングは、以下のようになっています。

1位 中国
2位 アメリカ
3位 日本
4位 英国
5位 ドイツ
6位 フランス
7位 韓国
8位 オランダ

日本は中国とアメリカに次ぐ3位です。国全体の食品廃棄物量は人口に左右される部分が大きいものの、人口1人当たりに換算すると、どの国も多くの食品ロスが生まれているとわかります。

人口1人あたりに換算すると、ヨーロッパ諸国の食品廃棄物量が上位となります。しかし、日本はアジアでワースト1位です。

参考:「海外における食品廃棄物等の発生状況及び再生利用等実施状況調査」|公益財団法人流通経済研究所新しいウィンドウで表示

世界各国の家庭由来の食品廃棄物量ランキング

家庭由来の食品廃棄物とは、各家庭から発生する食品ロスを指します。料理の作り過ぎや食べ残し、食材の過剰除去、未開封のままの廃棄などがその一例です。

世界各国の家庭由来の食品廃棄物量ランキングは、以下のようになっています。

1位 中国
2位 インド
3位 米国
4位 日本
5位 ドイツ
6位 フランス
7位 英国
8位 ロシア
9位 スペイン
10位 豪州

日本は世界のなかで4番目に家庭からの食品廃棄物が多い国です。1人あたりの年間廃棄量は約64キロとなっており、ランキング1位の中国と同程度の廃棄量となっています。

参考:UNEP食品廃棄物指数レポート2021|UNEP(国連環境計画)新しいウィンドウで表示

世界で多くの食品ロスが出る原因

なぜ世界でこれほどまで多くの食品ロスが発生するのでしょうか。ここでは、主な原因を解説します。

需要を超えた過剰生産

買われる数よりも多くの食品が生産され、消費しきれずに廃棄されていることが食品ロスの原因のひとつです。先進国では機会損失を防ぎ、できるだけ多くの顧客に商品を届けるために、需要よりも多い量を生産しているケースがあります。

また、農家では不作の事態を考慮し、あえて需要より多めに農作物を生産することもあるため、需要と供給の調整は難しい現状があります。

先進国での高い外観品質基準

外観品質基準とは、商品の汚れやキズなどに対する判断基準のことです。先進国では、小売店で商品の形やサイズ、重さなどに高い基準を設けていることが多く、少しでも規格外になると商品が廃棄されるケースがあります。

見た目が規格外であっても、味や品質は問題なく食べられる食品がほとんどです。このような基準による食品の廃棄は食品ロスの原因になると考えられています。

小売店での幅広い品ぞろえと大量陳列

先進国の小売店では、大量の品が陳列されているのが一般的です。大量に生産された商品のなかには消費期限までに売り切れずに廃棄されることになり、結果的に食品ロスの原因となります。

企業側が必要な分だけ販売する意識が低く、商品の在庫切れを回避するために多めに生産しているため、大量の食品ロスにつながっています。

途上国のインフラ未整備による腐敗

発展途上国では、収穫した食物の輸送や貯蔵する際のインフラが十分に整備されておらず、食料の腐敗や廃棄につながるケースが少なくありません。

また、技術不足によって農作物が収穫できない問題もあり、出荷前に廃棄になるケースが約4割も発生しています。商品を販売できないと消費者に食品が十分に届かないため、飢餓の原因にもなっています。

食品ロス削減に対する世界の目標

2015年の国連サミットで採択された、持続可能な開発目標「SDGs」では、17のゴールと169のターゲットが示されており、世界共通の目標として食品ロスの取り組みが進んでいます。

食品ロスについて言及されている項目は、目標12「つくる責任つかう責任」です。この目標のなかでは、具体的な内容として以下を盛り込んでいます。

  • 2030年までに、小売・消費レベルの世界全体1人当たりの食料の廃棄を半減させる
  • 収穫損失による生産・サプライチェーンの損失を減少させる など

参考:食品ロスの現状を知る|農林水産省新しいウィンドウで表示

食品ロスに対して世界で実行されている取り組み

食品ロスの問題に対し、世界でいろいろな取り組み実行されています。ここでは、主な取り組みを解説します。

ドギーバッグの活用

ドギーバッグとは、飲食店で食べ残したものを持ち帰るための容器です。別名「グルメバック」とも呼ばれています。アメリカでは、飲食店でドギーバッグが用意されたり、自分で容器を用意して持っていったりする取り組みが一般的に進んでいます。

注文した人が残した食べ物を持ち帰り、自身が食べられるタイミングで消費してもらうことによって店側の食品廃棄の量を減らすことが取り組みの目的です。

まだ食べられる廃棄食品の活用

食品廃棄物の多いヨーロッパでは、廃棄対象の食品のうち、まだ食べられるものを取り扱ったスーパーや飲食店が増えています。この取り組みは、日本の企業でも徐々に浸透しています。

賞味期限が迫っている商品や、すでに賞味期限切れになったけれど食べられるものを安く販売するスーパーも見られるようになりました。なかには、売上を食品ロス削減活動に活用している企業もあります。

フードシェアリングの活用

フードシェアリングサービスとは、飲食店や小売店で廃棄予定となった料理や商品を、消費者が安く購入できる取り組みのことです。たとえば、レストランの廃棄料理を注文できるデンマーク発のアプリケーションは、イギリスをはじめとしたヨーロッパ諸国で広まっています。

この取り組みを通し、今までは廃棄するしか道がなかった食品や料理の積極的な消費が可能になりました。

フードバンクの活用

フードバンクとは、さまざまな理由で販売できなくなった食品を企業や生産者が寄付し、食べ物の支援が必要な家庭や団体に無償で提供することです。

たとえば、賞味期限までの期間が短い商品や、パッケージに汚れがある食料などが提供されます。企業だけでなく、個人による寄付も可能です。

この取り組みは1967年からアメリカで積極的に進められており、日本でも徐々に広まりつつあります。

まとめ

日本は世界的に見ても、食品ロスの多い国です。現状の改善には、今回紹介したドギーバッグや廃棄食品、フードシェアリング、フードバンクの活用などを実践する必要があります。個人の意識を高めるだけでなく、企業が一丸となってこの課題に取り組むことが重要です。

富士通Japanでは、サステナビリティ・トランスフォーメーションを通して、社会課題の解決に向けたアクションにつなげています。お客様の経営課題の解決に真摯に向き合い、多数の導入実績のなかで得られた業種・業務ノウハウをもっている点が強みです。ICT業界の最前線で培ったテクノロジーに関し、富士通グループの知見を結集させ、全社をあげて課題の解決に取り組んでいます。

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著者プロフィール

富士通Japan株式会社
流通ソリューションビジネス統括部
沖津 里枝

【事業内容】
流通業における準大手、中堅・中小企業向けのソリューション・SI、パッケージの開発から運用までの一貫したサービス提供。
AIやクラウドサービス、ローカル5Gなどを活用したDXビジネスの推進。

富士通Japan株式会社

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