2023年01月27日 更新

食品ロスはなぜ減らない?
理由や食品ロスを改善する取り組みについて解説します  

食品ロスとは、本来は食べられるはずであった食品が捨てられることです。環境や経済に悪影響を及ぼす食品ロスは、世界が危機感を持つ問題です。食品業界をはじめとする多くの団体が、食品ロスの削減に取り組んでいます。

この記事では、食品ロスの概要や、食品ロスが減らない理由、改善のための取り組みなどを解説します。食品ロス削減に向けて参考にしてください。

食品ロスの基礎知識

食品ロスの基礎知識を、言葉の定義や現状、SDGsの目標に触れつつ解説します。

食品ロスとは

日本における食品ロスとは、食べられるはずの食品が捨てられることを指します。食品ロスと似た言葉に「フードロス」がありますが、官公庁や新聞社では一般的に「食品ロス」を使います。フードロスでは、誤解を生む可能性があるためです。

たとえば、英語で「食品ロス」を指す言葉は、フードウェイスト(Food waste)です。一方、フードロス(Food loss)というと、事業で発生する食品ロスに限られます。この記事では、フードウェイストとフードロスの両方を食品ロスとして解説します。

食品ロスの現状

日本では一部改善傾向が見られるものの、いまだに食品ロスは社会課題の1つです。日本での食品ロスは、事業で発生するものと、家庭で発生するものに二分されます。

海外では、先進国を中心に食品ロスが社会問題化しています。また、世界には食糧が不足している国も少なくありません。全世界で食品を無駄にせず、人々に食糧が行きわたるような仕組みづくりが求められています。

食品ロスの削減を目指すSDGs

2015年の国連サミットでSDGsが採択されました。SDGsとは「持続可能な開発目標」であり、2030年までに目指すべき17の目標が定められています。食品ロスに関係する「つくる責任 つかう責任」では、世界の食品ロスを半分にするという目標が掲げられています。

SDGsは全世界の共通目標であり、日本も食品ロスに取り組まなければなりません。特に、企業がSDGsを重視した活動に取り組むと、ビジネスチャンスやイメージアップにつながる可能性があります。

食品ロスはなぜ減らないのか?

食品ロスが減らない理由を、生産者や小売店、家庭や飲食店の視点から解説します。

減らない理由1.食品の過剰生産

需要を超えた量を生産する過剰生産は、食品ロスにつながります。農業や畜産などの生産量は、自然に左右されやすいためです。

小売業者の発注に確実に対応するためにも、過剰生産が起きやすくなります。生産が足りず小売り業者の発注に対応できなければ、ペナルティを要求されるケースも少なくありません。そのため、生産者は必要以上の量を生産し、不足なく納品できるよう対策しています。

減らない理由2.外観品質基準が厳しいため

外観品質基準とは、商品の形・サイズ・重さといった、見栄えに関する品質の基準です。食品を売るには外観品質基準を満たしている必要があり、生産者は規格を守りつつ食品を作ります。

規格外の食品であっても、安全性や味などは通常の食品と変わりません。加工すれば問題なく出荷できるはずです。しかし、加工にはコストがかかるため、利益を得るために食品を廃棄する場合もあります。

減らない理由3.大量陳列による売れ残り

スーパーやコンビニなどの小売店では、さまざまな商品を数多く陳列しています。欠品をおそれて商品を多めに発注している小売店は少なくありません。また、大量陳列は消費者への訴求力が高いため、意図して大量に陳列する小売店も見られます。

しかし、在庫を多く抱えすぎると、販売期間内に捌ききれない場合もあります。まだ実際には食べられる食品だったとしても、賞味期限のルールに則って廃棄しなくてはなりません。

減らない理由4.家庭や飲食店での食品廃棄

家庭や飲食店では、未調理の食品の期限切れや、調理済みの食べ残しや過剰除去などで食品が捨てられています。買い過ぎた食品を使い切れずに腐らせてしまったり、作り過ぎや食べ残しがあったりすると、食品ロスの原因になります。

過剰除去とは食品の食べられる場所を、調理の際に廃棄してしまう行為です。野菜のへたを必要以上に大きく切る、皮を分厚く剥きすぎるなどが過剰除去です。

食品ロスが及ぼす悪影響

食品を廃棄するとゴミの量が増え環境汚染につながります。また、廃棄する食品が増えるほど、経済的損失も大きくなります。

ゴミの処理による環境汚染

食品がゴミとして捨てられると、償却や埋め立てが行われます。焼却によってCO2といった温室効果ガスが発生すると、地球温暖化につながります。

また、ゴミの埋め立て量が多いと、将来的に埋めるための場所が不足しかねません。環境省は、最終処分場の残余年数は2019年時点で約21.4年であると報告しました。食品ロスの問題に取り組むと、処分場の残余年数を伸ばせる可能性があります。

参考:一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和元年度)について│報道発表資料│環境省新しいウィンドウで表示

廃棄による経済的損失

食品ロスにより、経済的な損失も懸念されます。ゴミの廃棄処理には費用がかかり、税金によって負担されています。環境省は、2019年度のゴミ処理事業経費は約2兆885 億円であると報告しました。

また、食費は家計の多くを占めます。無計画な購入などによって生じた食品ロスは、家計の圧迫にもつながりかねません。企業でも、食品ロスは大きな経済損失を生みます。たとえば、飲食店が大量に食材を仕入れても、お客が少なければ食材を腐らせてしまうでしょう。的確な需要予測や適切な在庫管理などで食品ロスを防ぎ、経済的損失を抑える必要があります。

参考:一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和元年度)について│報道発表資料│環境省新しいウィンドウで表示

食品ロスを改善する取り組み

フードバンク活動のように、団体や企業、個人が食品ロスに取り組んでいます。食品ロスを改善する取り組みを紹介します。

フードバンク活動での食品寄付

フードバンク活動とは、品質に問題が無いにもかかわらず、通常の販売が困難な食品を福祉施設などに寄付する活動です。また、フードバンクとはフードバンク活動の架け橋となる団体です。

自分たちで食品を収集して必要な場所に運搬する団体もあれば、オンライン上で食品のマッチングサイトを運営する団体もあります。また、フードバンク活動の対象となる食品は、米・パン・めん類・生鮮食品・菓子・飲料・調味料・インスタント食品など多岐にわたります。

販売期限や賞味期限の取り組み

賞味期限とは「食品をおいしく食べられる期限」です。消費期限と賞味期限は異なるため、賞味期限を過ぎた食品でも食べられる場合があります。しかし、食品業界には、賞味期限が3分の2を過ぎた食品は売り場から撤去する「3分の1ルール」という慣習があります。

賞味期限を柔軟に捉えると、食品ロスの削減は可能です。農林水産省では、賞味期限の表示を年月日表示から年月や日まとめで表示する「大括り化」を推進しています。たとえば、賞味期限が3か月を超える食品は、賞味期限を「年月」で表示できます。

賞味期限の大括り化以外にも、販売期間の延長や見切り品の積極的な販促なども、食品ロスの削減に有効です。

参考:食品ロス削減に向けた賞味期限表示の大括り化事例|公益財団法人 流通経済研究所新しいウィンドウで表示

廃棄予定の食品のシェアリング

フードシェアリングは、余った食品を必要としている人にシェアする活動です。フードバンクと比較するとフードシェアリングの対象範囲は広く、チャリティー目的の活動もあれば、営利目的の活動も見られます。

近年では、フードシェアリングのマッチングアプリも登場しました。飲食店・小売店と個人がBtoCでマッチングする場合もあれば、生産者と個人がCtoCでマッチングする場合もあります。また、企業がフードシェアリングに積極的に参加すれば、認知度向上や顧客獲得が期待できます。

家庭では必要な分だけ買う

家庭で食品ロスに取り組むには、必要な食品のみを買うことがポイントです。買い物の前には冷蔵庫や食品庫を確認して必要な食品を調べます。まとめ買いも、計画的に行わなければなりません。

なお、陳列されている食品のうち、賞味期限・消費期限が長いものを選んで買う人が見られます。長持ちする食品は、家庭での食品ロス削減に効果を発揮するかもしれません。しかし、店舗側としては、期限の短い食品から売れていったほうが食品ロスを削減しやすくなります。

食品ロスは、家庭の範囲を超えた大きな問題です。期限の短いものから購入して使い切るなど、広い視野を持つことがトータルでの食品ロス削減をもたらします。

まとめ

食品ロスは、全世界で取り組むべき課題です。食品業界が食品ロスに取り組むには、受発注や在庫管理といったシステムの導入がおすすめです。

食品業界に多数の導入実績のある富士通Japanは、お客様の経営課題の解決に真摯に向き合います。課題に向き合うなかで得られた業種・業務ノウハウ、ICT業界の最前線で培ったテクノロジーを使い、富士通グループの知見を結集させ、全社をあげて課題の解決に取り組みます。富士通Japanの食品ロス対策について、詳しくはこちらをご覧ください。

解決策ご紹介資料のダウンロードはこちら

著者プロフィール

富士通Japan株式会社
流通ソリューションビジネス統括部
沖津 里枝

【事業内容】
流通業における準大手、中堅・中小企業向けのソリューション・SI、パッケージの開発から運用までの一貫したサービス提供。
AIやクラウドサービス、ローカル5Gなどを活用したDXビジネスの推進。

富士通Japan株式会社

ページの先頭へ