2023年01月27日 更新

物流コストの内訳と3つの見直しポイント|コスト増加の要因や削減方法とは?  

物流業務を担う企業では、売上を確保するために物流コストを削減する取り組みが欠かせません。物流コストはさまざまなシーンで発生しており、内訳や仕組みを把握することでコスト削減のアイデアが生まれやすくなります。この記事では、物流コストの概要や内訳、削減するためのポイントなどを解説します。具体的な削減案も紹介するため、ぜひ参考にしてください。

物流コストとは

そもそも物流コストとは何なのでしょうか。まずは物流コストの概要を解説します。

物流にかかる費用の総称

物流コストとは、供給者と需要者の間で商品や部品などのモノを移動させる際に発生する費用の総称です。たとえば、商品を送る際の運賃や商品の保管費用など、物流に関わるすべての費用を物流コストと呼びます。

物流コストとして主なものは、システム費や人件費などの「社内物流コスト」と、運送会社や倉庫の管理会社などに支払う「支払い物流コスト」の2つです。なお、国全体の物流コストが上昇すると物価も上昇する傾向にあるため、物流コストはさまざまな業界から注目されています。

物流コストは上昇傾向

売上高のうち、物流コストが占める割合を物流コスト比率と呼びます。日本ロジスティクスシステム協会が公表した「2021年度物流コスト調査報告書」によると、全業種の物流コスト比率は5.7%です。2020年度比で0.32%上昇しており、過去20年間のなかで最も高い水準となっています。

物流業界では、深刻化する人手不足を背景に輸送運賃の値上げが行われていますが、値上げに比例して物流コスト比率も上昇しているのが現状です。何らかの対策をしなければ利益を圧迫してしまうため、物流コスト削減の重要性は高まっています。
参考:「2021年度 物流コスト調査報告書【概要版】」|日本ロジスティクスシステム協会 最近の物流政策について|国土交通省

物流コスト削減は喫緊の課題

物流コスト削減における作業の効率化は、生産性の向上や顧客満足度アップにもつながるといわれています。たとえば、適正な在庫を維持した経営によって管理費の削減が可能です。

在庫の過不足がなくなれば品切れによる販売機会の損失を防ぐことができ、売上の確保につながります。オンラインショッピングのニーズも高まっているため、物流コスト削減は多くの企業に共通する課題です。

物流コストの構成要素

物流コストを構成する要素は大きく分けて5つです。物流コストの構成要素をくわしく解説します。

運送(輸送)費

運送(輸送)費とは、モノを運ぶための費用です。たとえば、宅配便を利用する際の配送料、自社トラックの減価償却費、トラックを動かすためのガソリン代、空輸代、運搬車両の費用など、モノを運ぶ際にかかる費用すべてが含まれます。

物流コストのなかでも割合が高く、可視化しやすい要素です。多くの費用がかかるため、見直しの際には最初に注目したい費用です。

保管費

保管費とは、取り扱っているモノの在庫を保管するための費用です。たとえば、商品などを保管するための倉庫の賃料、保管しているモノの管理費用、火災保険の保険料などが保管費に含まれています。

倉庫を外部から借りるか、自社で運用するかによりコストに差が出る項目です。運送費に次ぐ大きな費用のため、見直しが欠かせません。

荷役費

荷役費とは、荷役作業で発生する費用のことです。荷役作業とは、モノの積み込みや荷下ろしなどの入出庫作業を指します。荷役費の一例として挙げられるのは、入庫や出庫の際にかかる費用、梱包費、ピッキングや検品、仕分けの際の費用などです。

また、商品などにつける値札シールやタグにも費用が発生します。作業量が費用の増減に影響するため、業務効率化により荷役費の削減が可能です。

人件費

人件費とは、物流に関わっている従業員の給与などのことです。人員の増減によって、人件費は大きく変動します。

人員を減らせば人件費はカットできますが、適切な人員を配置しないと現場が回らなくなるため注意が必要です。自社雇用では繁忙期と閑散期での人員調整が難しいため、外部委託を活用して人件費を削減する方法もあります。

管理費

管理費は、物流を管理するために発生する費用です。たとえば、物流システムや受発注システムを導入する際の費用や、運用時にかかるランニングコストなどが含まれます。

システム導入の際には初期費用として大きなコストが発生するため、導入をためらう企業は少なくありません。しかし、システムは全体の作業に関わる要素なので、計画的な見直しや導入の検討が必要です。

物流コストが高くなる3つの要因

物流コストはなぜ高くなってしまうのでしょうか。物流コストが高くなる要因を3つ解説します。

1. 作業工程の管理ができていない

どのような作業を誰がどこでいつ行っているのかなど、作業工程の管理が適切に実行されていないと課題を見つけるのが難しくなります。何を解決すればよいのか明確になっていないため、作業効率化を実現するのは困難でしょう。

工程管理をするためには、全行程の状況を管理できるシステムを導入するなどして作業の可視化を図り、改善することが重要です。

2. 人為的ミスが増えている

ヒューマンエラーが増えていることも、物流コストが増加する要因です。たとえば、ピッキングミスや誤配送などのヒューマンエラーが発生するのは避けられません。

しかし、人為的ミスの頻度が高いと、再配送やクレーム対応、返送費用などが掛かってしまうため、無駄な費用が増加します。非効率的で余計な費用がかかるだけでなく、手間や労力もかかるため注意が必要です。

3. 無駄・無理・ムラが多い

自社のキャパシティを超えている、キャパシティが合っていないなど、無駄や無理が多いと作業効率が悪くなり、生産性は低下します。また、無駄な状況と無理な状況が繰り返されることでムラが発生してしまい、余計なコスト増となっているケースも少なくありません。

無駄・無理・ムラを解消するには、作業の平準化や自社のキャパシティに合った環境の整備などが重要なポイントです。適切な対策によって配送がスムーズになるうえ、ミスの防止につながるため物流コストの削減が可能です。

物流コストの削減を目指す3つのポイント

物流コストの削減を目指すには3つのポイントを意識しましょう。人件費・倉庫保管費・情報処理費の削減について、ポイントをくわしく解説します。

1. 人件費の削減

作業の効率化を図ることで人件費の削減が可能になります。作業の効率化を図るには、自社の現状を把握することが重要です。作業の効率性や品質の高さなどを客観的に把握しましょう。

自社で人材を雇用する場合の人件費は固定費となりますが、アウトソーシングでの人件費は変動費に振り分けられます。固定費は必要人員を削減しても減らすことが困難です。繁忙期や閑散期などで作業量が変動する場合は、余剰人員が出ないように作業を外注する方法もあります。

2. 倉庫保管費の削減

倉庫を効率的に使うことで倉庫保管費の削減が実現できます。適正在庫を維持する、光熱費を削減するなどの対策を実行しましょう。

コスト削減には、倉庫の大きさと物流量を比較することも重要です。広すぎる倉庫は作業効率が悪くなるうえに余計な賃料が発生する要因となるため、適正な大きさかどうか見直しを行いましょう。

3. 情報処理費の削減

仕入れや在庫管理などの商品管理にかかる情報処理費の削減も、重要なポイントです。たとえば、AIによる予測を活用し、仕入れや在庫管理を最適化できる管理システムの導入はコスト削減につながります。

また、ハンディターミナルを導入した商品管理への切り替えにより、入出荷やピッキング作業の効率化が可能です。人員削減や在庫処理費などを削減でき、物流コストの圧縮につながります。

物流コスト削減につながる具体案

ここでは、物流コスト削減の具体案を5つ紹介します。自社に合ったコスト削減案を取り入れるための参考にしてください。

分散拠点の集約

拠点が分散している場合、集約することで倉庫の賃料や保管料、人件費などの削減につながります。拠点を集約することで荷物が一度に多く積めるようになり、運送費の削減も期待できるでしょう。

ただし、拠点を集約した結果、移動距離が長くなり運賃が高くなるケースもあります。場合によってはコスト削減とはならないため、事前に費用対効果を検証しましょう。

庫内作業のルール化

物流コスト削減を実現するためには、作業効率アップが欠かせません。できるだけコストを抑えて作業効率を向上させるには、庫内作業のルール決めが効果的です。

ルール化されていない現場は状況によって管理の仕方が異なってしまい、課題を把握しにくくなります。ルールを決めて作業を可視化し、その都度見直していくことが大切です。

物流管理システムでの一元管理

物流管理システムの導入もコスト削減につながる方法です。作業を一元管理できるため、適正な管理が行えるとともに、作業効率化やミスの防止が可能となります。

ただし、システムを運用するには、保守管理費や点検費用などのランニングコストがかかるため、長期的に見て費用対効果が高いかどうかをしっかり検討しましょう。

物流業務のアウトソーシング

アウトソーシングをすることで、人件費や倉庫管理費の削減につながります。業務ごとに発生している費用を可視化できるため、自社の課題を見つけやすくなるでしょう。

物流管理を専門に行っている企業に任せることで、自社のコア業務に集中できる点もメリットです。ただし、委託料がかかるため費用対効果を見極めましょう。

配車システム導入による配送コストの削減

配車システムの導入により、物流コストのなかでも大きな割合を占める運送費を抑えられます。システムによって積載率・実車率を向上させられるため、輸送品質の向上や車両台数の削減が可能です。

また、ノウハウを可視化できるため配車業務の属人化が防げるほか、集中配車の実現によって無駄な車両手配を防げるなど、配送コストの削減も実現できます。

まとめ

物流コストは上昇傾向にあり、売上や利益を確保するという意味でも物流コストの削減が重要です。物流コストの削減には、人件費や倉庫保管費の削減、情報処理費の削減などを行うほか、システムの導入も検討しましょう。

富士通Japanは、お客様の経営課題の解決に真摯に向き合うなかで得られた業種・業務ノウハウや、ICT業界の最前線で培ったテクノロジーに関して、富士通グループの知見を結集させ、全社をあげて課題の解決に取り組んでいます。物流コストの削減を目指すためにも、ぜひお問い合わせください。/p>

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