2023年06月30日 更新
製造業における品質管理のポイントは?
重要性や課題など基礎知識を解説
製造業における品質管理には、いくつかのポイントがあります。効果的に品質管理できないと、安定的な事業成果につながらないため注意が必要です。この記事では「製造業における品質管理」の定義を含め、製造業における品質管理の重要性や課題、ポイントを解説します。製造業における品質管理の課題を解決するためにも、ぜひ参考にしてください。
製造業における品質管理の基礎知識
製造業の品質管理を円滑に進めるためにも、まずは品質管理の概要を確認しておきましょう。
品質管理とは
品質管理とは、製造現場の工程が一定の品質を備えていることを検証することです。別名「QC(Quality Control)」とも呼ばれます。品質管理と混同されやすい言葉に「品質保証」があります。しかし、両者の言葉は意味が異なります。品質保証は、顧客に売った製品の品質保証に関する業務のことです。一方で品質管理は、製品を製造する工程における品質管理を指します。
製造業における品質管理
製造業における品質管理の考え方の根本は、顧客の要求に合った品質の製品を確実かつ効率的に生産する点にあります。その際には、コストをかけず効率的に品質の高い製品をつくる視点も必要です。品質管理を適切に行えば、品質の異常を早期発見し、顧客からのクレームや納期遅れを防げます。製造業の品質管理は、企業の信用問題にも関わる重要な役割があります。
品質管理の重要性
顧客満足度を高めることは、企業経営の命題です。そして顧客満足度に必須なのが、製品の品質管理でしょう。品質管理が適切にできないと不良品の発生率が高くなり、納期の遅延が発生する可能性も高まります。結果として顧客からの信頼が失墜してしまうと、企業の発展や存続にも影響が出るのは避けられません。
特に食品や自動車、医療の製造分野では、製品の品質に欠陥がかると大きな問題に発展しかねないため注意が必要です。
製造業における品質管理の課題
製造業における品質管理は、さまざまな課題に直面しています。製造業が抱えている主な課題を2つ解説します。
人材不足
多くの企業では、慢性的な人手不足が続いています。少子高齢化といった社会背景が人材不足の原因です。現在、製造業における労働力不足の現状をふまえ、解決策の1つとしてデジタル技術の活用が進められています。たとえば、AIやIoTなどのデジタル技術の導入によって、業務効率の改善や労働生産性の向上を図っています。
正確性
従来、品質管理の業務は人の目で行われ、製品に欠陥がないか1つずつ検査をしていました。しかし、人の目に頼った品質検証はどうしても、ミスやチェック漏れが生じる可能性があり、そのリスクが問題視されてきました。
近年では、品質管理のデジタル化が進み、人間の目では検出できないような不具合も、最新のIT技術を活用するシステムによって即座に検知できるようになっています。品質検証の正確性の向上は、製造業にデジタル技術を取り入れるメリットの1つといえるでしょう。
製造業における品質管理のポイント
製造業における品質管理には複数の項目があります。多岐にわたる項目のなかでも、特に重要なポイントは以下の3つです。
- 工程管理
- 品質検証
- 品質改善
これら3つのポイントは具体的にどのような業務を行うのでしょうか。以下の章から、それぞれの業務内容を詳しく解説します。
製造業の品質管理1.工程管理のポイント
工程管理とは、製造工程を管理する作業のことです。工程管理のポイントを詳しく解説します。
作業手順のマニュアル化
製造業では、期日までに顧客に納入することが重要です。遅延なく納入するには、作業手順をマニュアル化し、ヒューマンエラーを低減させる必要があります。マニュアル化されていないと、作業者ごとに品質や作業時間にばらつきが生まれかねません。作業手順書を作成し、ノウハウを共有すると生産スピードや品質を保ちやすくなります。
現場の工数低減
作業手順のマニュアル化以外にも、現場の工数を減らすことで生産性の向上を図れます。生産性の向上を図るには、現場の課題や工程内で生じているムダを洗い出すことがポイントです。現場の課題やムダが明らかになったら、適した施策によって現場の工数を減らし、生産性の効率化を進めます。
設備の維持管理
設備の維持管理も、製造業の品質管理に欠かせません。設備を日常点検することで、設備の異常をいち早く発見できます。また、機器の些細な状態の違いにも気づきやすくなるため、摩耗・劣化した部品の速やかな修理・交換をすることが可能です。
設備の維持管理は人の目でも行えます。しかし近年は、デジタル技術を使った異常の可視化が進み、作業ミスや工程飛びなどのリスク低減につながっています。
製造業の品質管理2.品質検証のポイント
品質検証は、製品の質や製造工程に問題がないことを検証する作業です。品質検証のポイントを詳しく解説します。
品質検証をする検査
品質検証で行う検査内容は以下のとおりです。
- 受け入れ検査:製品の原材料・部品をチェック
- 工程内検査:生産工程での不良品チェック
- 最終検査:完成品の合否判定
- 出荷検査:倉庫製品の出荷時の検査
そのほか、品質マネジメントシステムの運用・管理の適切性を確認・監視する業務も、品質検証に含まれます。これらの検査を行うことで、不適合製品の発生リスクを低減させることが可能です。一定水準を満たした製品を安定的に納入できれば、顧客からの信頼と安心を得られます。
製造時の不良を減らす
不良品を顧客に納入すると、企業としての信頼を損なう可能性があります。品質検証では、ヒューマンエラーによるチェック漏れやミスの発生により、欠陥製品を納入しないよう特に注意しなければなりません。
人の目だけでなく、デジタル技術の活用が品質検証の段階でも有用です。デジタル技術を取り入れながら、ヒューマンエラーが起こりにくい環境を整備していきましょう。
製造業の品質管理3.品質改善のポイント
品質改善は、不良品の発生防止を目的に製品を改善する作業です。品質改善のポイントを詳しく解説します。
データの収集・整理・分析
品質改善は、客観的な事実に裏付けされたデータが重要です。データの収集や整理、分析に活用される統計的手法には、以下の7つがあります。
- パレート図:不具合の原因を可視化
- 特性要因図:課題や問題の要因を分析
- グラフ:数値の変化や比較を可視化
- ヒストグラム:データの分布を量的に可視化
- 散布図:2データの関連性を分析
- 管理図:バラツキを判断し、工程を管理
- チェックシート:データ記入用のシート
作業者の技能レベル向上
1人の作業者が1つの工程を担当することを「単能工」といいます。単能工は業務負荷の集中が起きやすく、イレギュラーな事態に弱い点が懸念されてきました。このような単能工のデメリットを回避するためは、1人で複数の工程や業務をこなす「多能工化」を進めることが重要です。
多能工化の実現には、業務内容やローテーションを可視化し、内容の継続的な改善が求められます。
製造業の品質管理を高めるポイント
製造業の品質管理を高めるためには、どのような点に配慮すればよいのでしょうか。最後に、製造業の品質管理を高めるポイントを解説します。
5Sの理解と徹底が必要
製造業の品質管理を高めるためには、5Sの理解と徹底が必要です。5Sとは、以下の5つの「S」から始まる用語を指します。
- 整理(Seiri):不必要なものの排除
- 整頓(Seiton):置き場所の工夫
- 清掃(Seisou):きれいな状態に工場を保持するための掃除
- 清潔(Seiketsu):適切な整理・整頓・清掃の実施
- しつけ(Shitsuke):工場内での、整理・整頓・清掃・清潔の習慣化
5Sを日常的に意識し、規律を重んじることでヒューマンエラーの削減につながります。
4Mで原因を明確にする
4Mとは、工場内において製品を生産する際に管理が必要となる4つの事柄です。具体的には、以下の4つの「M」から始まる用語を指します。
- 人(Man):従業員の適材適所
- 設備(Machine):製品を生産する設備の管理
- 方法(Method):正しい手順での継続的な製品生産
- 材料、製品(Material):製品製造に必要な原材料や部品などの管理
4Mをベースに考えると、製品の不適合の原因が見つかりやすくなります。
品質管理のDX化を進める
多くの業界で、データや最新のIT技術を活かした、DX(デジタルトランスフォーメーション)と呼ばれる革新的なビジネスの推進が行われています。近年では、製造業でもDX化が推進されており、データや最新の技術を活用する動きが顕著です。このようなデジタル技術を製造工程に取り入れることは、品質管理の向上にも通じると考えられています。
まとめ
製造業における品質管理では、工程管理や品質検証、品質改善のポイントを押さえることが重要です。今回紹介した、5Sや4M、DX化の推進などの要素を取り入れながら、自社の品質管理を継続的に高めていきましょう。
富士通Japan株式会社では、製造業における品質管理について、課題を抱える企業のサポートに取り組んでいます。これまでに培った業種・業務ノウハウや、ICT業界の最前線で培ったテクノロジーに関し、富士通グループの知見を結集させ、経営課題の解決に取り組みます。製造業における品質管理について課題を抱えている担当者の方は、ぜひご相談ください。
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著者プロフィール
富士通Japan株式会社
流通ソリューションビジネス統括部
沖津 里枝
【事業内容】
流通業における準大手、中堅・中小企業向けのソリューション・SI、パッケージの開発から運用までの一貫したサービス提供。
AIやクラウドサービス、ローカル5Gなどを活用したDXビジネスの推進。
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