2023年06月30日 更新

顧客体験価値を高めるには?
重要性や向上のポイントを解説します  

近年、成熟した市場が増え、商品・サービスの機能面における価値だけでは他社との差別化が図りにくく、コモディティ化が進んでいます。そのため、自社商品やサービスの販売戦略を成功させるためには、顧客体験価値の向上が求められており、マーケティング戦略として多くの企業で注目されています。

この記事では「顧客体験価値」の定義を含め、企業にとって重要な理由やメリット、向上させるためのポイントなどを解説します。ぜひ参考にしてください。

顧客体験価値の基礎知識

自社商品やサービスのマーケティング戦略を立てるうえで、他社との差別化を図るために注目されている「顧客体験価値」とは、何のことを指すのでしょうか。まずは、その基礎知識から解説します。

顧客体験とは

顧客体験とは、商品やサービスを購入したり、利用したりする過程で得られる体験のことです。英語でCustomer Experience(カスタマーエクスペリエンス)のことで、略してCXと呼ばれることもあります。顧客体験には、商品・サービスの認知から購入・利用、アフターフォローという消費者行動の全体が含まれます。

顧客体験価値とは

顧客体験価値とは、顧客体験から得られる価格や機能面などの機能的価値や、顧客が感じる期待や喜び、楽しさなどの心理的価値のことを指します。簡単にいうと、商品の購買プロセスにおいて顧客が体験する付加価値のことです。顧客体験を示す「CX」は、顧客体験価値も含めた意味として使われるケースも多くあります。

混同されがちな用語として「ユーザー体験(UX)」がありますが、ユーザー体験は、商品やサービスの利用から得られる体験・体験価値のことを指し、既存顧客だけを対象にした用語です。顧客体験価値は、商品・サービスを購入・検討する経緯での体験も含まれるため、見込み顧客の体験も対象となります。

顧客体験価値の重要性

近年、顧客体験価値を高めるためにさまざまな戦略を立てる企業が増えています。その主な理由について以下で解説します。

体験の価値が上昇している

成熟した市場では、類似した商品やサービスが多く出回っているため、単に機能面の魅力を伝えるだけでは顧客に選んでもらえません。モノがあふれている市場での消費者行動は、モノ自体の価値よりも、精神的に得られる価値を求める傾向にあります。より多くの顧客を獲得するためにも、顧客体験価値を高めることは必要不可欠です。

ビジネスモデルのトレンド変化

従来のビジネスモデルでは、商品やサービスを購入してもらうことを目的としたビジネスが一般的でした。しかし近年では、継続利用してもらえるリピーターの獲得を目指すことで収益を上げるビジネスモデルが増えています。顧客との関係を長期間にわたって維持する必要があるため、顧客との信頼関係に繋がる顧客体験価値が重要視されているのが現状です。

消費者の発信力が増大した

近年、スマートフォンの普及など情報通信技術の発展により、企業と消費者の情報発信力の差が埋まってきました。消費者の発言力が強まったことで、商品やサービスの購買動機として、口コミなどが重視されるようになっています。

顧客体験価値を高め、消費者との信頼関係を構築できれば、口コミやSNSでの拡散によって、商品やサービスの情報をより多くの人に届けられるでしょう。

顧客体験価値を高めるメリット

顧客体験価値を高めることによって、さまざまなメリットが期待できます。ここからは、顧客体験価値を高める3つのメリットについて解説します。

顧客体験価値によるブランドイメージ向上

顧客体験価値が高まるメリットの1つが、企業やブランドイメージの向上です。企業やブランドイメージが良いと、対象の商品・サービスを購入・利用することに付加価値が生まれ、利益率の向上にも役立ちます。また、消費者自身の情報発信により、新規顧客の獲得も期待できるでしょう。

顧客からの信頼が高まる

顧客体験価値が高まることで、顧客からの信頼も高まります。「この企業の商品・サービスなら信用できる」と思ってもらえれば、購入単価の上昇や継続的に利用するリピーターの獲得につながるでしょう。リピーターや企業に愛着を持ってくれるロイヤルカスタマーの獲得は、収益アップに寄与します。

顧客体験価値による差別化

顧客体験価値を高めることは、競合他社との差別化につながります。経済が成熟していることで差別化が困難となっている国内では、機能面だけを追求しても付加価値を提供するのは難しいのが現状です。とはいえ、質の高い顧客体験が得られるという付加価値があれば消費者に選ばれやすく、かつ既存顧客が他社に流れにくい状態を構築できます。

顧客体験価値を決める要素

顧客体験価値を高めるためには、顧客体験価値に影響する要素について把握しておくことが大切です。以下では、代表的な5つの要素について解説します。

Sense:感覚的価値

Sense(感覚的価値)とは、視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚の五感による経験価値のことです。
たとえば、料理を食べたときのおいしさや、衣類を触ったときの気持ちよさなどがあります。
感覚から得られる良い刺激や体験は、顧客体験価値を決める重要な要素です。

Feel:情緒的価値

Feel(情緒的価値)は、顧客の内面や感情に影響する価値のことです。たとえば、商品やサービスの利用によって得られる「たのしい」「うれしい」などの感情や、感動、安心感、やすらぎなどの経験が挙げられます。心が動かされるような経験は、顧客にとって価値のあるものとなるため、顧客体験価値の要素の一環として重要です。

Think:創造的・知的価値

Think(創造的・知的価値)は、顧客が創造的・知的な部分で感じる経験価値のことです。たとえば、興味がわく、知的好奇心が満たされるなどがあります。創造性や知的欲求を刺激するような体験は、商品・サービスの付加価値として評価されやすく、顧客体験価値を高めるために欠かせません。

Act:行動・ライフスタイルにかかわる価値

Act(行動・ライフスタイルに関わる価値)は、人生観を変化させる新たな価値のことです。たとえば、体験型のアクティビティや新技術に接する経験などがあります。顧客にとって新しい価値が得られる体験であるかどうかというのも、顧客体験価値に影響する大事な要素です。

Relate:準拠集団への帰属価値・社会的経験価値

Relate(準拠集団への帰属価値・社会的経験価値)は、特定の集団などに属して得られる経験価値のことです。たとえば、会員限定イベントへの参加など、その団体に所属することでしか得られない特別感などが挙げられます。他では得られないような体験ができるということが、顧客体験価値の向上につながります。

顧客体験価値を高めるポイント

企業の成長につなげるために、顧客体験価値を高めるには何をすればよいのでしょうか。ここでは、顧客体験価値を高めるために欠かせないポイントについて解説します。

DXを推進する

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を用いてビジネスモデルを変革することです。コストダウンや生産性向上といったパフォーマンス面のために取り入れられることが多くありますが、顧客体験価値の向上にもつながります。DXによって顧客データを蓄積・分析・活用できるようになれば、より良い顧客体験が実現可能です。

OMOを導入する

OMOとは「Online Merges with Offline」の略で、オンラインとオフラインを融合したビジネスモデルのことです。OMOが注目されているのは、インターネットで商品やサービスの情報を収集して購入・利用を決定するなど、消費者行動にオンラインが用いられるようになったことが要因です。

ビジネスでもオンラインとオフラインを融合させた施策を取り入れることが重要となりました。OMOの導入では、顧客データの収集も容易になるため、商品・サービスの改善に活用でき、顧客体験価値を高めることにつながります。

全社的に取り組む

顧客体験価値の向上は、全社的に取り組むことが重要です。特定の部門だけが顧客体験価値の向上に取り組んでも効果は表れにくいでしょう。効果的な施策を実施するには、顧客を中心とした価値を提供するための取り組みや顧客体験に関するビジョンについて、社内全体で共有しておくことが大切です。

顧客体験価値を向上させる手順

企業が自社商品やサービスの顧客体験価値を向上させるためには、以下のような手順で実行すると効果的です。

1. 現状の課題を明確にする

まずは、顧客体験における課題を明確にすることが大事です。商品・サービスを購入・利用する際に不便な点や、不足している点などを洗い出します。消費者のなかでも、自社の顧客となりえる潜在的なターゲットを定めて課題を考えると、より効果的な施策の実施につながります。

2. 自社の顧客体験を分析する

課題が明確になったら、次に自社の顧客体験についてデータを収集し、分析を行います。顧客体験のデータは、既存顧客に対してアンケートやヒアリングなどでリサーチすると良いでしょう。アンケートやヒアリングを実施するタイミングは、カスタマーサポートへの問い合わせ後や購入から3か月後を目安にするのが一般的です。

3. 解決策を実施する

自社の課題や顧客体験の現状を分析した結果から、解決策を検討します。ここでは、顧客接点ごとに解決策を策定するとよいでしょう。顧客接点は、商品・サービスの情報を得たタイミングやきっかけから、購入・利用後の行動まで、カスタマージャーニーを描くことで見えてきます。

たとえば、情報収集にSNSが活用されているケースが多いのであれば、SNSの活用や広告などの対策が必要です。ECサイトからの購入が多ければ、ECサイトの利便性向上を図ります。自社商品・サービスの課題や顧客体験の現状に合わせて解決策を練り、実行しましょう。

4. 効果を検証する

最後に、実施した解決策や施策が効果的であるかを検証します。検証結果に基づいて改善し、再度実行するなど、PDCAサイクルを回すことが重要です。定期的に効果検証をしながら、改善を続けることで顧客体験価値の高まりが期待できます。

まとめ

顧客体験価値は、企業と顧客の関係性をより良いものにし、企業の成長につなげるために欠かせない要素です。そのため、企業は高い顧客体験価値を維持できるように、常に顧客体験の状況把握や分析、改善が必要となります。

顧客体験の現状を把握するためにはDXやOMOの導入が有効ですが、より円滑に進めるためには社外の専門的なサポートを受けることも検討しましょう。

富士通Japan株式会社では、これまでICT業界の最前線で培ったテクノロジーに関する知見を結集させ、全社をあげて課題の解決に取り組みます。顧客体験価値向上のためのDXやOMO導入でお困りの方は、ぜひご相談ください。

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著者プロフィール

富士通Japan株式会社
流通ソリューションビジネス統括部
沖津 里枝

【事業内容】
流通業における準大手、中堅・中小企業向けのソリューション・SI、パッケージの開発から運用までの一貫したサービス提供。
AIやクラウドサービス、ローカル5Gなどを活用したDXビジネスの推進。

富士通Japan株式会社

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