2023年03月30日 更新

スマートファクトリー化の課題と6つのメリット│設備導入のポイントや具体例も解説  

一般企業と同じく、製造業でもIoTやAIを活用する動きが見られます。しかし、一般企業のDX化と製造業のスマートファクトリー化では、何が異なるのでしょうか。

本記事では、スマートファクトリー化の概要やメリット、製造業が抱える課題について解説します。スマートファクトリー化に成功した企業の事例も紹介するため、参考にしてください。

スマートファクトリー(スマート工場)の定義

スマートファクトリーとは、製造業がAIやIoTなどの技術を取り入れて、効率化・自動化を実現することです。5Gによる通信技術も、スマートファクトリー化を加速させています。5Gを始めとする技術(テクノロジー)については、のちほど詳しく解説します。

スマートファクトリーは、ドイツ政府が提唱したインダストリー4.0を具現化したものです。インダストリー4.0は、第3次産業革命に続く大きな出来事として世界的に認識されています。

総務省が示すインダストリー4.0の概要

インダストリー4.0について、総務省は以下のように解説しています。

「インダストリー4.0の主眼は、スマート工場を中心としたエコシステムの構築である。人間、機械、その他の企業資源が互いに通信することで、各製品がいつ製造されたか、そしてどこに納品されるべきかといった情報を共有し、製造プロセスをより円滑なものにすること、さらに既存のバリューチェーンの変革や新たなビジネスモデルの構築をもたらすことを目的としている。」

引用:平成30年版 情報通信白書-インダストリー4.0とは|総務省新しいウィンドウで表示

DX(デジタルトランスフォーメーション)とスマートファクトリーの違い

DXとスマートファクトリーの違いは、主に使われている業界です。DXは一般企業で使われる用語で、スマートファクトリーは製造業で使われています。製造工程をDX化したものが、スマートファクトリーといえるでしょう。

スマートファクトリー化を目指す企業が抱える課題

スマートファクトリー化すると、製造業が抱える人材不足や価格競争の激化、技能継承などの課題解消が期待されます。特に食品業界では、生産性の低さが深刻な課題です。食品は品質の基準が高く、品質を担保すると生産性にしわ寄せがいく場合があるためです。スマートファクトリー化すると、食品業界において品質と生産性の両立が期待できます。

スマートファクトリー化する6つのメリット

製造業の課題を解決するスマートファクトリー化について、具体的なメリットを解説します。

1.データの可視化

スマートファクトリー化すると、IoTを組み込んだシステムにより製造現場のデータを収集できます。データで可視化できる対象は、稼働状況や故障状況、作業者の状況などです。現状を可視化できると課題の発見や、以降で紹介する数々のメリットに結びつきます。

2.生産性の向上

データの可視化により分かった課題について効率化や自動化を実行すると、企業の生産性が向上します。例えば、作業者ごとの作業時間を比較すると、効率よく作業する作業者を見つけられます。効率の良い作業者のノウハウを共有すると、生産性の向上が可能です。また、スマートファクトリー化による廃棄量や欠陥品の削減も、生産性向上につながります。

3.商品の品質と安全性の向上

食品業界では特に、商品の品質と安全性が重視されます。スマートファクトリーで導入するシステムは、人間が見逃すレベルの異常を検知可能です。品質にかかわる指標をシステムで定量化して製造時に活用すると、品質と安全性を向上させられます。

また、システムに作業を任せることは、作業者に働いてもらうよりも衛生的です。クリーンルームで作業できるシステムを導入すると、衛生面に配慮して商品を製造していることを、取引先や消費者にアピールできます。

4.人材不足の解消と技術の継承

システムに作業を任せられると、人材不足を解消できます。作業者が増えても、クオリティの高いものづくりができるとは限りません。その点、システムであれば動作を精密に管理できるため、クオリティが高く生産性の高いものづくりにつながります。

ノウハウの継承に悩む製造現場にも、スマートファクトリー化は有効です。ベテランの作業者が作業する様子を撮影したり、作業中の温度や時間などを定量化したりすると、人材育成に役立ちます。

5.設備トラブルの防止

製造業では、日々設備の点検を実施しています。しかし、作業者によってはシステムの微妙な違和感を見逃す恐れがあります。一方、システムは設備の不調をいち早く察知可能です。故障・不具合が発生する前に設備をメンテナンスできると、突発的に生産をストップさせずに済みます。

6.コスト削減

従来の製造業では、詳細にコストを把握することが困難でした。製造コスト(製造原価)を可視化できると、ムダを削減するポイントをつかめます。スマートファクトリー化によって削減できる可能性がある製造コストの一部は、以下の通りです。

  • 労働時間を短縮した分の人件費
  • 補助材料費や工場消耗品、消耗工具備品費
  • 機械やシステムの消耗品費
  • 原材料の仕入れや廃棄にかかる費用
  • 製造現場の水道光熱費

スマートファクトリー化を進めるポイント

スマートファクトリー化を進めるポイントを、テクノロジーの活用やデータ基盤の準備に触れつつ解説します。

最新のテクノロジーを活用する

スマートファクトリー化するためには、IoTにデータ収集を任せ、AIにデータ分析を任せましょう。また、IoTとローカル5Gなどの通信技術を組み合わせると、操作・監視・制御などの遠隔操作が可能になります。

5Gとは「第5世代移動通信システム」のことです。5Gを導入すると、大容量のデータを安定的に高速でやりとりでき、多端末の同時接続が可能となります。ローカル5Gでは、社内や工場内などエリアを限定して5Gネットワークを形成します。

適切なデータ基盤を用意する

データ基盤とは、データを収集加工し、蓄積するシステムです。スマートファクトリー化にあたり、製造現場では膨大なデータを一元管理する必要があります。加えて、導入するデータ基盤と、IoTやAIとの連動性を確認しておきましょう。

セキュリティ対策をする

IoTを利用するには、ネットワークの利用が前提です。ローカル5Gを利用している製造現場でも、外部に接続する予定があればセキュリティが脅かされる恐れがあります。例えばOSが更新されていないような状態では、セキュリティ面に不備があるといえます。生産が忙しい現場でも、OSやアプリケーションの更新を怠ってはなりません。

スマートファクトリー化の手順

スマートファクトリー化の手順を解説します。まずは設備導入から着手しましょう。

1.設備導入・データ収集

スマートファクトリー化する目的を明確にしてから、目的に合ったシステムを導入してデータを収集し始めましょう。設備投資には費用がかかるため、小規模でのスタートをおすすめします。主力製品のような稼働率が高いラインから始めると、スマートファクトリーの効果が分かりやすくなります。

2.データ分析

設備を導入してデータを取得するだけでは、スマートファクトリーに成功したとはいえません。データを分析する際にはノウハウが必要です。データサイエンティストのようなスペシャリストがいると、的確にデータを活用できる可能性が高まります。

3.運用

データ分析により可視化された課題を解決するために、PDCAサイクルを回して成功事例を増やしましょう。似たような工程に成功事例を展開すると、スマートファクトリー化の効果をより高められます。

スマートファクトリー化の進行状況

「2020年ものづくり白書」では、ものづくりの工程・活動における、デジタル技術の活用状況について解説されています。デジタル技術を活用している、またはスマートファクトリー化が進んでいると回答した企業は、全体の半数程度でした。

また、製造業でデジタル技術を活用している、またはスマートファクトリー化が進んでいると回答した企業の割合は、中小企業が53.1%であるのに対して大企業では76.3%でした。製造業では、企業規模が大きいほどスマートファクトリー化が進んでいるといえるでしょう。

参考:令和元年度第201回国会(常会)提出 ものづくり基盤技術の振興施策|経済産業省新しいウィンドウで表示

スマートファクトリーの具体例

製造業において、スマートファクトリー化に成功した企業を紹介します。企業の課題や導入した設備の特徴、設備導入の効果など、ぜひ参考にしてください。

カネハツ食品株式会社様の事例

カネハツ食品株式会社様では、食品の少量多品種化に苦戦していました。食品は消費期限が短く、原価管理と在庫管理の高精度化が求められます。同社が導入したシステムは、食品業界に特化したシステムです。従来の独自システムと、管理項目・操作感などが似ていた点がシステム導入の決め手となりました。

独自システムから新システムへの移行はスムーズに進み、原価や在庫の正確な状態を把握し、経営判断を迅速に下せるようになりました。また、食品の廃棄量を削減できたことで、コスト削減にもつながっています。

参考:「FUJITSU Enterprise Application GLOVIA smart FoodCORE」導入事例 カネハツ食品株式会社 様 : 富士通Japan株式会社

はごろもフーズ株式会社様の事例

はごろもフーズ株式会社様では、情報共有に課題を抱えていました。従来のグループウェアではコミュニケーションに使える機能が少なく、アイディアをスムーズに共有できませんでした。

同社は、クラウド型のグループウェアを導入し、従業員同士がリアルタイムに情報共有できる環境を構築しました。クラウド型のグループウェアであれば、場所を問わずにアクセスしてコミュニケーションを取れます。また、従業員同士の予定を共有できるため、会議の日程を調整する手間を削減できました。

参考:「FUJITSU Enterprise Application AZCLOUD SaaS まるっとOffice 365」導入事例 はごろもフーズ株式会社 様 : 富士通Japan株式会社

まとめ

スマートファクトリー化に取り組むと、製造現場の状況を可視化できます。製造現場の課題を解決するために、スマートファクトリー化に取り組みましょう。

富士通Japan株式会社は、スマートファクトリー化をはじめとしてお客さまの課題を解決します。業種・業務ノウハウやICT業界の最前線で培ったテクノロジーを武器に、富士通グループの知見を結集させて課題解決に取り組みます。スマートファクトリー化をお考えの人は、ぜひお問い合わせください。

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著者プロフィール

富士通Japan株式会社
流通ソリューションビジネス統括部
沖津 里枝

【事業内容】
流通業における準大手、中堅・中小企業向けのソリューション・SI、パッケージの開発から運用までの一貫したサービス提供。
AIやクラウドサービス、ローカル5Gなどを活用したDXビジネスの推進。

富士通Japan株式会社

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