2023年02月10日 更新

食品ロスの削減を推進する方法とは?
日本の現状や関連法も紹介  

食品ロスとは、食べ残しや賞味期限切れの食品の廃棄などによって、食べられるにもかかわらず捨てられてしまう食品のことです。食品ロスはさまざまな社会問題を引き起こす要因になります。この問題を解決するには、企業や国・自治体、消費者が一丸となって対策をとることが必要です。

本記事では食品メーカーの経営者や経営企画部門の担当者に向け、食品ロス削減を推進する方法を解説します。

世界と日本における食品ロスの現状

世界と日本では、どのような食品ロスの現状があるのでしょうか。以下でそれぞれの現状を解説します。

世界の食品ロス

世界では年間約13億トンの食品ロスが生まれています。この量は、1年間に生産される食料約40億トンの1/3です。世界的に見ると、特に経済発展がめざましい中国やインドなどで、食品ロスが多い傾向にあります。またアメリカやフランス、イギリスなど先進国でもこの傾向は顕著です。

近年は新型コロナウイルスの影響を受け、各種イベントの中止や、飲食店の斉臨時休業などがあり、活用するはずだった食品が未使用で廃棄される状況に拍車がかかっています。

日本の食品ロス

日本の食品ロス量は年間約500万トンです。会社や飲食店などから出る「事業系」と、一般家庭から出る「家庭系」の2つに食品ロスは大別されます。日本の事業系食品ロスは約275万トン、家庭系は約247万トンです。事業系の食品ロスが家庭系を少し上回っています。この量を1人あたりに換算すると、毎日おにぎり1個分です。

日本は食料自給率が低く、食卓にあがる食材の多くを海外からの輸入に頼っているにもかかわらず、大量の食品ロスが生まれている現状があります。

食品ロスが問題視されるきっかけ・理由

なぜ食品ロスは、これほどまで問題視されているのでしょうか。以下でそのきっかけと理由を解説します。

日本でのきっかけは「見切り販売」

日本で食品ロスが問題視されるきっかけとして、2009年に起きたコンビニチェーンの見切り販売問題があげられます。このコンビニチェーンでは、賞味期限間近の商品を安く販売することを本部が制限しており、独占禁止法の優越的地位の濫用にあたるとして、裁判所から排除措置命令が出されました。

また、2011年には国際連合食糧農業機関(FAO)から、食品ロスと食品廃棄物に関するレポートが発表されたこともあり、食品ロスなどの言葉が広く知られるようになりました。

SDGsでも取り上げられている

SDGs(Sustainable Development Goals)とは、2015年9月25日に国連総会で採択された、持続可能な開発のための17の国際目標です。日本では「持続可能な開発目標」とも呼ばれます。

安定的な地球環境や社会を守るためには、2030年までに世界中にある環境問題や差別、貧困、人権などの課題を解決する必要があります。食品ロスはSDGsの目標12「つくる責任つかう責任」と、目標2「飢餓をゼロに」で取り上げられています。

日本で食品ロスが発生する原因とは

なぜ日本では大量の食品ロスが発生するのでしょうか。以下で主な原因を解説します。

事業系は「3分の1ルール」が背景にある

食品製造業や卸売業では、「3分の1ルール」という商慣習が食品ロスに大きな影響を与えています。3分の1ルールとは、製造日から賞味期限までの期間を3分の1ずつ均等に、食品メーカー・卸業者・小売業者で分けるルールです。

このルールは、新鮮で安全な食品を消費者に届けられることや、スーパーやコンビニなどの小売店で、できるだけ賞味期限の長い商品を置けるメリットがあります。一方で納期が遅れた場合、賞味期限に余裕があって品質に問題がなくても、メーカーへ返品・廃棄されるため、食品ロスが大量に発生する原因にもなっています。

家庭では3つの原因が食品ロスにつながっている

家庭では「直接廃棄」「食べ残し」「過剰除去」の3つが、食品ロスの原因です。

直接廃棄とは、賞味期限や消費期限を超えた食材を未使用のまま捨てることです。特に果物の直接廃棄が多い傾向にあります。食べ残しとは、食べられずに残した料理や食材のことです。魚介類が多い傾向があります。過剰除去は野菜に多く、調理の際に野菜の皮を厚くむく、食べられる部分まで捨てるなどを指します。

食品ロスを減らすために出された日本の関連法案

食品ロス削減のために、日本ではさまざまな関連法が制定されています。以下で主な関連法を解説します。

食品リサイクル法

食品リサイクル法とは、食品関連事業者に向けて、食品廃棄物の発生抑制や減量化、循環資源の再利用を促進するための法律です。

例えば、食品の売れ残りや製造過程で発生する食品廃棄物の減少や、野菜くずを飼料・肥料などを、原材料に再生利用することなどが求められています。家庭から出る生ごみは、この食品リサイクル法の対象にはなりません。

再生飼料・再生肥料のような、食品循環資源を製造している事業者のうち、基準を満たした業者は「再利用登録事業者」の登録が可能です。再利用登録事業者は、廃棄物処理法や肥料取締法・肥料安全法の特例を受けられます。

食品ロス削減推進法

食品ロス削減推進法とは、企業や自治体、消費者がフードロス削減を推進することを目的として制定された法律です。この法律は、消費者庁が中心となって管理しています。この推進法では、「国民運動として、食品ロスの課題に取り組むべき」と言及している点が特徴です。企業だけでなく、消費者も含めた食品ロス関連となっています。

食品ロス削減推進法について詳しく解説

食品ロス削減推進法に関し、その目的や取り組んでいる内容を、以下でさらに詳しく解説します。

食品ロス削減推進法の目的とは

食品ロス削減推進法の目的は、まだ食べられる食品の大量廃棄の解決を目指すことです。先述した食品リサイクル法は、事業者のみが対象の法律です。しかし、この食品ロス削減推進法は、国・地方自治体、事業者、消費者などさまざまな立場の人が対象になっています。

政府が取り組んでいる内容とは

政府は食品ロス削減を推進するため、さまざまな取り組みを行っています。例えば消費者庁のWebサイトでは、食品ロス削減レシピを募集し、食材を有効活用するための情報を発信しています。

また、経済産業省と日本気象協会が連携して気象情報を活用し、需要を予測することで、サプライチェーンの無駄削減や、売れ残りによる食品ロス削減の実現が可能になっています。そのほか、容器包装を工夫することで、鮮度保持や賞味期限の延長、食べ残しの防止などを図っています。

【企業編】食品ロスの削減を推進するための方法

食品ロス削減を推進するために、企業は何ができるのでしょうか。以下で主な取り組みを解説します。

「3分の1ルール」からの脱却を目指す

食品業界では、今まで商慣習上のルールだった、3分の1ルールからの脱却を目指しています。農林水産省では、食品メーカーや卸売業、流通業界が連携する場として「食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチーム」を立ち上げ、納品期限を2分の1まで緩和することを、企業に推進しています。

例えば、カップ麺は購入から消費までのサイクルが短い商品です。このような商品についても、大手企業を中心に納品期限緩和が実施されています。大手企業では3分の1ルール脱却が進められています。今後は、地方の食品スーパーや小売店の対応が課題です。地方では緩和の対象食品もいまだ限定的なため、企業全体で納品期限緩和の対象商品拡大が求められています。

賞味期限の表示方法を変える

納品期限の緩和とだけでなく、賞味期限の表示についても、緩和が推進されています。大手企業では、賞味期限の表示方法を現状の「年月日方式」から、「年月方式」へ切り替えています。

この変更により、今まで賞味期限が1日短い理由で納品できなかった商品が納品できるようになり、廃棄量の削減が可能になりました。例えば今までは在庫が余っている拠点から、在庫不足の拠点に商品を移行する際、日付が逆転するため転送できない状況がありました。

しかし賞味期限を年月表示にすると、期間内に製造された商品は同じ扱いで卸し、販売することが可能です。販売側にとっては、日単位から月単位で管理できるため、柔軟に在庫層品を転送できるようになり業務効率が良くなります。

防災備蓄用の食品や飲料水の賞味期限など把握する

防災備蓄用の食品や飲料水は、賞味期限を迎えるたびに更新が必要です。従業員への配布もできますが、更新時にそのまま廃棄されるケースも少なくありません。

賞味期限が近くなった備蓄食料は、廃棄せずに有効活用が可能です。更新時期があらかじめ定められている点に加え、調理が簡単でそのまま食べられるものあります。フードパントリーや子ども食堂へ寄付しても喜ばれるでしょう。

防災備蓄用の食品や飲料水の賞味期限などの把握は、食品業界以外の企業にとっても重要です。食品ロス削減だけでなく、有事の際に従業員の命を守るためにも、防災備蓄品の管理は欠かせません。

食品リサイクル法を推進する

食品リサイクル法に基づき、食品関連事業者による食品廃棄物の発生を抑制し、再生利用する取り組みが進められています。食品リサイクル法では、再利用の優先順位が定められています。

優先順位は以下のとおりです。

  1. 発生を抑制:食品廃棄物そのもの減らす
  2. 再生利用:再資源化できるものの飼料や肥料、メタン化
  3. 熱回収:再生利用が難しい場合に行う
  4. 減量:熱回収が難しい場合に脱水、乾燥し、適正に処理・加工する

企業は食品の製造・流通・消費、それぞれの段階で、業種全体の再生利用等実施率の目標を定めており、その目標数値の達成を目指しています。また企業のなかには、上記で示した再利用以外に、食品企業の製造工程で発生する、規格外品をフードバンクに寄付するケースもあります。

【国・地方公共団体編】食品ロスの削減を推進するための方法

先述の食品ロス削減推進法で示されたとおり、食品ロス削減が進むような施策を実行することが必要です。国や地方公共団体も、この法律の示す内容について責務を負います。

例えば、防災備蓄品や学校給食による食品廃棄物など、しっかり管理することが大切です。単純に廃棄を回避するだけでなく、食品ロス削減の取り組みをとおして、子どもたちと一緒に食べ物の大切さや食品ロスを考える、きっかけの1つとして活用できるでしょう。

食品ロス削減の認識の浸透や適正な管理・活用が行われるよう、国・地方自治体による取り組みの推進が重要です。

【家庭編】食品ロスを減らすためにできること

ここでは最後に、家庭でできる食品ロス削減の取り組みを解説します。

食品を買いすぎない

食品は食べられる分だけ購入することがポイントです。もし買いすぎた場合は、近所の人や家族などで分けましょう。

最適な保存方法を知る

食材を下処理してから冷凍保存する、冷暗所で保管するなど、食品に記載されている保存方法に従って、食品を保存しましょう。

まとめ

食品ロスの削減を推進するには、日本の現状や関連法を踏まえ、企業や国・自治体、消費者が一丸となって問題に取り組む必要があります。

富士通Japanは、お客様の経営課題の解決に真摯に向き合いながら、多数の導入実績のなかで得られた業種・業務ノウハウを活用している企業です。SuccessFrontierをとおし、持続可能な社会を実現するため、さまざまな社会問題を解決するためのアクションを起こしています。

ICT業界の最前線で培ったテクノロジーに関し、富士通グループの知見を結集させ、全社をあげて課題の解決に取り組んでいます。

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著者プロフィール

富士通Japan株式会社
流通ソリューションビジネス統括部
沖津 里枝

【事業内容】
流通業における準大手、中堅・中小企業向けのソリューション・SI、パッケージの開発から運用までの一貫したサービス提供。
AIやクラウドサービス、ローカル5Gなどを活用したDXビジネスの推進。

富士通Japan株式会社

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