2023年02月10日 更新

食品ロスによる影響とは?
問題視される理由や削減に向けた取り組み内容を紹介  

食品ロスとは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品のことです。企業や国・地方自治体、消費者が一丸となって取り組むべき課題の1つとして、注目を集めています。

本記事では、食品ロスが与える影響や問題視される理由を解説します。食品ロスを抑えるためにできることや、企業の成功事例も紹介するため、ぜひ参考にしてください。

食品ロスとはなにか

食品ロスとは、まだ食べられる食品が廃棄されてしまうことです。食べ残しや賞味期限切れなどが原因で、食品ロスが発生します。

食品ロスの種類は、事業系と家庭系の2つに大別できます。事業系食品ロスは、事業活動をともなって発生する食品ロスです。家庭系食品ロスとは、料理の作り過ぎによる食べ残しや食材の過剰除去による無駄の発生、未開封のまま捨てる直接廃棄など、一般家庭で生まれる食品ロスを指します。

食品ロスが発生する要因

食品ロスの発生源別にみた、発生要因や年間食品ロス量は、以下の表のとおりです。

食品ロスの発生源 事業系 家庭系
要因 【食品製造業】
  • 規格外品の発生・欠品による廃棄
  • 商品の過剰生産
【食品卸売・小売業】
  • 返品、納品期限切れ・売れ残り・破損
  • クリスマスケーキや恵方巻きなどシーズン商品の大量廃棄
【外食産業】
  • 客の食べ残した料理の廃棄
  • 見込み違いの仕込みによる廃棄
【食べ残し】
  • 食卓で出された食品のうち、作り過ぎによる廃棄
【直接廃棄】
  • 賞味期限切れによる、手つかずのままの廃棄
【過剰除去】
  • 厚くむき過ぎた野菜の皮や茎、葉など、食べられる部分の除去
年間食品ロス量 275万トン 247万トン

家庭系食品ロス量は全体の47%、事業系は53%を占めます。事業系食品ロス量の内訳は、食品製造業が121万トン、食品卸売・小売業が73万トン、外食産業が81万トンです。

参考:食品ロスとは|農林水産省新しいウィンドウで表示
参考:食品ロス削減ガイドブック|消費者庁新しいウィンドウで表示

食品ロスの影響|問題視される理由とは

食品ロスは、世界にどのような影響を及ぼすのでしょうか。食品ロスが問題視される主な理由を解説します。

理由1:食の不均衡

現在、食品ロスが発生する国と、食品が足りず飢餓が起きている国との二極化が進んでおり、将来的な食料不足が世界規模で影響を及ぼす恐れがあると懸念されています。

世界では人口が増え続けていますが、食料不足によって必要な食材が必要な人に行き渡っていません。新型コロナウイルスの影響を受け、栄養不足の人が増加しており、この状況はさらに悪化しています。

理由2:環境への悪影響

日本では不要になった食品を可燃ごみとして処分することが一般的です。廃棄物の運搬や償却時には二酸化炭素を大量に排出するため、食品ロスが生まれることは、環境に悪影響を及ぼす一因となっています。

また、焼却後の灰の埋め立ても、環境にとって大きな負担です。食品ロスは地球温暖化や異常気候に影響するため、廃棄物そのものを減らし、二酸化炭素の排出量を減らす必要があります。

世界と日本における食品ロスの現状

世界と日本の食品ロスは、どのような現状にあるのでしょうか。食品ロスによる影響を解説します。

世界における食品ロスの現状

世界では年間約13億トンの食品が廃棄されています。この量は、人の消費のために1年間生産される食料約40億トンの約3分の1です。

世界中の生産者が懸命に生産した食料の多くが無駄になっている反面、貧困に苦しむ地域は食料不足に苦しんでいます。

国連世界食糧計画(国連WFP)の2018年度の報告書によると、世界の9人に1人が飢餓状態にあるといわれています。食料を無駄に廃棄する国がある一方、健康で活動的な生活を送るために必要な食料が得られず、栄養失調の状況にある人が多いとわかります。

参考:世界の飢餓人口の増加は継続ー最新の国連報告書|国連世界食糧計画(国連WFP)新しいウィンドウで表示

日本における食品ロスの現状

日本では年間約500万トンの食品ロスが発生しています。日本人1人あたりに換算すると1年で約41キログラム、毎日おにぎり1個分の食品を捨てていることになります。

食の多様化・国際化が進み、日本の食料消費量の相当な部分は海外からの輸入食料に依存しています。2021年時点で日本の食料自給率は38%と低く、62%の食料を輸入に頼っているにもかかわらず、多くの食品ロスを生み出しています。将来的に日本が深刻な食料不足に陥らないためにも、食品ロス削減に向けた取り組みが重要です。

参考:日本の食料自給率|農林水産省新しいウィンドウで表示

食品ロスとSDGsの関係

SDGs(Sustainable Development Goals)とは、環境問題や貧困、食料危機など世界中の課題を、2030年までに世界で解決するための計画・目標です。SDGsは2015年9月25日に国連総会で採択され、日本では「持続可能な開発目標」とも呼ばれています。

食品ロスへの影響部分はSDGs目標12「つくる責任つかう責任」です。具体的には、以下の内容が目標に盛り込まれています。

  • 2030年までに小売・消費レベルで、世界全体の1人当たりの食料の廃棄を半減させる
  • 収穫後損失など生産・サプライチェーンでの食料損失の減少させる

上記の目標を達成するためには、消費者だけでなく国や自治体、企業など社会全体が一丸となって協力し、食品ロス削減に向けて取り組む必要があります。

企業ができる食品ロス削減に向けた取り組み

食品ロス削減に向け、企業はどう対応すればよいのでしょうか。具体的な取り組みを解説します。

3分の1ルールの見直し

3分の1ルールとは、食品メーカーやスーパーなど小売店の間に存在しているルール・商習慣です。食品の流通過程において、製造業者・販販売者・消費者の3者が、製造日から賞味期限までの期間を3分の1ずつ均等に分け合い、期限が3分の1になる前に納品することを指します。

期限に間に合わなかった商品は廃棄されます。この3分の1ルールによって、年間に500万トン〜800万トンもの食品ロスが発生していることから、農林水産省を中心にルールの緩和が進められています。

廃棄野菜の再利用

廃棄野菜とは、形が悪かったり傷がついていたりする野菜や、大きさ・色・品質などが規格に適合しない野菜です。例えば熱回収や肥料、飼料として使われることがあります。近年では、廃棄野菜の繊維を使った洋服の開発、コンクリートの作成なども進められています。

国・自治体における食品ロス削減に向けた取り組み

国・自治体も一丸となって、日本の食品ロス削減を推進するために取り組んでいます。

「食品ロスの削減の推進に関する法律(食品ロス削減推進法)」は、食品ロスの削減に関し、国・地方自治体の責務を明らかにすることを目的として制定された法律です。

基本方針の策定や食品ロス削減に関する施策の基本事項を定め、総合的に推進させるための内容を定めています。食品ロスの定義や食品ロス削減を推進するための施策、基本的な方針なども盛り込まれています。

また、先述した3分の1ルールを、2分の1ルールに改める取り組みも行っています。そのほか食料自給率を向上させる方針の打ち出しや、府省庁による関連プロジェクトの展開なども実施しています。

家庭でできる食品ロス対策

家庭での取り組みも、食品ロス削減に影響力があります。以下では、家庭でできる食品ロス対策について解説します。

買い物はこまめに行く

買いだめすると、賞味期限を見逃しやすくなり、腐らせたり食べ残したりして、食品廃棄につながります。食品の食べ残しや直接廃棄を防ぐには、その日に使う予定の食品をリストアップした買い物メモを作り、足りない食材を必要な分だけ購入することが大切です。

食材を工夫して保存する

食材を長持ちさせるには、食材の特性を理解し、その特性に合わせて保存方法を工夫することが大切です。例えば、野菜を冷蔵する場合は立てて保存する、肉は下味をつけラップで密閉して冷凍するといったように、食材管理を徹底します。

事例:販売情報と生産管理の一元管理で食品ロスを解決

弊社の提供するPROFOURSは販売・需要・製造・調達など、あらゆる業務のプランニングを総合的に管理できるツールとして、食品ロス削減に活用されています。例えばB社では、販売・生産・購買の各部門がそれぞれの経験や情報をもとに手配しており、連携が取れない状態が課題でした。

しかし、販売と生産の情報を一元管理できるPROFOURSを導入したことで、各部門の情報をもとに各工程の生産数を決定し、原料や資材の過不足を可視化する仕組みを構築できるようになりました。

各部門が共通の在庫情報を利用して、より精緻な生産計画を策定できた結果、B社では食品ロスを5割削減させることに成功しています。

まとめ

食品ロスは将来的な食料不足や、地球環境の悪化などに影響する、深刻な問題です。この悪影響を防ぐは、国・自治体・家庭が一丸となって食品ロス削減に取り組む必要があります。

富士通Japanは、お客様の経営課題の解決に真摯に向き合いながら、多数の導入実績のなかで得られた業種・業務ノウハウを活用している企業です。SuccessFrontierをとおして、持続可能な社会を実現するため、さまざまな社会問題を解決するためのアクションを起こしています。

ICT業界の最前線で培ったテクノロジーに関し、富士通グループの知見を結集させ、全社をあげて課題の解決に取り組んでいます。

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著者プロフィール

富士通Japan株式会社
流通ソリューションビジネス統括部
沖津 里枝

【事業内容】
流通業における準大手、中堅・中小企業向けのソリューション・SI、パッケージの開発から運用までの一貫したサービス提供。
AIやクラウドサービス、ローカル5Gなどを活用したDXビジネスの推進。

富士通Japan株式会社

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