2023年03月30日 更新

小売業界におけるDXの進行状況や課題は?DXのメリット・3つの成功事例も解説

一般企業だけでなく、小売業でもDXに注目が集まっています。DXとは、AIやデジタル技術を活用して暮らしを豊かにしていくことです。「小売業にDXは必要なのか詳しく知りたい」という人も多いでしょう。この記事では、小売業界のDXの課題やDXに取り組むメリットなどを解説します。小売業界でDXに成功した企業の事例も紹介するため、ぜひ参考にしてください。

小売業界におけるDXの進行状況

東京商工会議所が2021年4月に公開した調査結果によると、新型コロナウイルス感染症の感染拡大をきっかけに、デジタル化やIT活用が増加したと答えた小売業の割合は48.7%でした。全体では43.6%、卸売業は42.6%、サービス業は37.5%に留まっており、小売業でDXが進んでいることがわかります。

参考:中堅・中小流通・サービス業の経営課題に関するアンケート調査結果概要|東京商工会議所

小売業界にDXが求められる理由

小売業界にDXが必要とされる理由は、購買行動や顧客ニーズが多様化しているためです。ここでは、その理由を詳しく解説します。

そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、Digital Transformationの略語です。デジタル技術を活用してビジネスや生活に変革をもたらすことを意味します。経済産業省が公開した「デジタルガバナンス・コード2.0」では、DXを次のように定義しています。

“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。”

ただし、ITツールを導入することだけがDXを意味するわけではありません。DXの本質は、ITツールやデジタル技術を活用し、新しいビジネスモデルを構築することにあります。

引用元:デジタルガバナンス・コード2.0|経済産業省

多様化する購買行動や顧客ニーズへの対応が必要

オンラインでさまざまな情報を収集できるようになり、顧客の購買行動が多様化しています。また、さまざまな価値観が生まれ、顧客ニーズを特定することは簡単ではありません。多様化する購買行動や顧客ニーズに対応するためにはデジタル技術を利用し、市場における自社の優位性を高めておく必要があります。

小売業界におけるDXを阻む3つの課題

小売業がDXに取り組む際に壁となる課題は、主に3つです。それぞれの課題を以下で解説します。

1. 古いシステムではデータを活用できない

既存のシステムが古いとITツールとの連携が難しいため、DXに役立てられるデータを取得できません。DXに取り組む場合は、まずDXに対応できるシステムを改めて導入する必要があります。

2. 新しいシステムの導入が難しい

古いシステムを使い続けている場合、システムの仕組みを知る人材が少ないために、新しいシステムの導入をスムーズに進められない場合があります。また、古いシステムの維持に必要なコストがかかります。多くの企業はIT関連の予算として既存システムの維持費に割いているため、DXを進める際に必要な費用を捻出できません。

3. DXを進められる人材が不足している

少子高齢化が進んでおり、国内の労働人口が不足しています。なかでも、DXの知見を持つIT人材が不足しており、経営課題とする企業は少なくありません。経営者がDXを理解していない場合、「とりあえずITツールを導入しておけば問題ない」というように、DXの本質を踏まえた取り組みができていない企業もあります

小売業がDXに取り組むポイント

小売業がDXに取り組む際に意識しておきたい主なポイントは、3つです。それぞれのポイントを以下で解説します。

経営課題の解決につながるシステムを導入する

新しいシステムを導入する際は、自社の経営課題の解決に役立つものを選びましょう。小売業向けのシステムは専門店向けや量販店向け、ショッピングセンター向けの3つに分けられます。それぞれの業態に特化しているため、自社の業態や経営課題を踏まえてシステムを選ぶことをおすすめします。

DX人材を確保する

DXに取り組むためには、デジタルやITの専門的な知見を持つDX人材の確保が不可欠です。DX人材が不足している場合、外部委託で賄うこともできます。しかし、自社を理解する人材でなければ、経営課題や業務に合ったDXを進められません。中途採用で優秀なDX人材を雇用する、または既存の従業員の人材育成を行うなどの方法で、DX人材を確保しましょう。

OMOを推進する

OMO(Online Merges with Offline)は、「オフラインとオンラインを統合する」という考え方を指します。OMOを推進した場合、顧客データを一元管理できる、顧客体験を向上できるなどのメリットが得られます。ただし、小売業を理解しているDX人材を確保しなければ、自社でOMOを推進するのは難しいでしょう。

販売形態別に見る小売業のDXによるメリット

小売業がDXに取り組むとどのようなメリットがあるのか、ECサイトと店舗販売、OMOの販売形態別に解説します。

オンライン(ECサイト)に関するメリット

ECサイトの開設は、DXの推進につながる取り組みの1つです。ECサイトを開設した場合、24時間利用してもらえるので売り上げの機会損失を最小限に抑えられます。ECサイトはパソコンやスマートフォンなどからアクセスできるため、場所を選ばずに利用してもらえるうえに、非接触で販売できるメリットがあります。

オフライン(店舗販売)に関するメリット

店舗販売にDXを取り入れる主な方法は、無人レジの設置やキャッシュレス決済の導入などがあります。これにより、人員の削減や業務の負担を軽減できるため、店舗の運営を効率化することが可能です。

AIを活用して在庫管理を行うといった技術は、ECサイトだけでなく店舗販売にも役立ちます。また、スムーズな決済の実現によって、顧客に新しい購買体験を提供できることもメリットの1つです。

OMOに関するメリット

OMOは上述したように、オフラインとオンラインを統合させた考え方です。小売業におけるOMOは、オフラインとオンラインの両方から顧客にアプローチするマーケティング施策を指します。

たとえば、実店舗で商品を購入した顧客の情報をECサイトに反映させれば、顧客と紐づけられた関連商品を表示させることも可能です。OMOは、オフラインとオンラインを区別せずに購買体験を提供できるため、売り上げアップや顧客満足度の向上が期待できます。

業務別に見る小売業のDXによるメリット

小売業にDXを取り入れると、業務ごとにメリットがあります。以下では、マーケティングとその他の業務に分けて解説します。

マーケティングに関するメリット

マーケティングにDXを取り入れると顧客情報と購買履歴を紐づけられるため、戦略を立案するときに役立ちます。ECサイトやPOSレジ、ネットワークカメラなどを活用することで、顧客情報や購買履歴などの情報を収集できます。

POSレジとは、POS機能を搭載するレジのことです。POSはPoints of Salesの略語で、販売地点情報管理を意味します。POSレジを利用すると集計作業を自動化でき、購買履歴の収集にも便利です。ネットワークカメラは、AIが搭載された高性能なカメラを指します。

その他業務に関するメリット

DXは、その他の業務にも業務効率化や人的ミスの削減などのメリットがあります。たとえば、物流倉庫内の作業にロボットを起用することで、業務効率化や人手不足の解消につながります。

また、在庫管理と発注業務の一部をロボットが行うと、発注ミスや過剰在庫などの人的ミスも減らせるでしょう。チャットボットの導入により、顧客からの問い合わせ対応の自動化も可能です。

社会課題に関する小売業のDXによるメリット

小売業では、DXを進めて社会的な課題の解決に取り組む企業も見られます。SDGsといった社会的な課題の解決に向けた取り組みを積極的に行うことで、企業のイメージアップを図れます。

小売業のDX成功事例3選

小売業でDXの推進に成功した事例を紹介します。他社の事例は、自社でDXに取り組む際の参考になるでしょう。

株式会社ローソン様の事例

DXを積極的に推進している株式会社ローソン様では、全店舗に自動釣銭機付きのPOSレジを導入しています。従業員による現金の受け渡しでの間違いが減り、金銭管理の効率化を実現しました。

複雑なレジ操作も必要ないため、新人や外国人の従業員でも負担なく現金での決済業務に対応可能です。さらに、レジを介さずに支払いができるという新しい購買体験の提供に成功しています。

参考:<参考資料>タブレット端末と新型POSレジ・自動釣銭機を導入|ローソン公式サイト新しいウィンドウで表示

株式会社ノジマ様の事例

株式会社ノジマ様は全国の店舗に電子棚札システムを導入し、DX化を進めています。電子棚札システムとは、店舗販売の業務効率化をサポートするためのシステムです。

たとえば、価格の更新を一括で行ったり、商品情報を提示したりする機能が搭載されており、店舗の運営業務の効率化を図れます。また、棚札の価格を正確に表示できるため、消費税率の引き上げの際も棚札を切り替える作業時間の削減に成功しています。

参考:国内初ノジマがパナソニックの「電子棚札システム」を全184店舗に導入完了消費税率10%の増税価格への切替もスムーズに|株式会社ノジマ新しいウィンドウで表示

株式会社ユニクロ様の事例

株式会社ユニクロ様では、OMOサービスのORDER & PICKを全国の店舗に展開しています。ORDER & PICKとは、ユニクロのオンラインショップで商品を購入し、指定先の店舗で商品を受け取れるサービスです。

顧客は自宅や外出先での空いた時間を利用して商品を購入でき、レジに並ばずに商品を受け取れる点が魅力です。株式会社ユニクロはOMOサービスの展開により、新しい購買体験を顧客に提供することに成功しています。

参考:ユニクロ ORDER & PICK|ユニクロ新しいウィンドウで表示

まとめ

小売業界では、DXが注目されています。新型コロナウイルス感染症の感染拡大を機に、デジタル化やIT活用を進める小売業も増えています。既存システムの老朽化や人材不足などが、小売業でDXを進める際に障害となり得る課題です。しかし、自社の経営課題の解決につながるシステムを導入してDX人材を確保することで、DX並びにOMOを推進できます。

富士通Japanは、お客様の経営課題の解決に取り組む会社です。多数の導入実績で得られた業種・業務のノウハウや、ICT業界の最前線で培ったテクノロジーなどの知見を結集し、お客様の課題の解決に取り組みます。

  • (注)
    本文中の活用例については弊社導入事例でないものもございます。

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著者プロフィール

富士通Japan株式会社
流通ソリューションビジネス統括部
石垣 淳

【事業内容】
流通業における準大手、中堅・中小企業向けのソリューション・SI、パッケージの開発から運用までの一貫したサービス提供。
AIやクラウドサービス、ローカル5Gなどを活用したDXビジネスの推進。

富士通Japan株式会社

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