2017年06月05日更新

企業力アップのためのお役立ち 第18回 「企業は人なり」―企業の存続・成長を支える人財開発のポイント

丸の内とら 氏

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企業の継続的な成長のためには、優秀な人材の採用・育成が必要不可欠だといえます。というのも、企業というのは、結局は人で成り立つものだからです。

昨今では「人こそが企業の財産である」という考え方にもとづき、能力の高い社員=人財の育成に注目が集まっています。この記事では人財育成について解説します。

「人財開発」とは

「じんざい」という言葉には二種類の漢字をあてることができます。
一つは「人材」、そしてもう一つは「人財」。どちらの「じんざい」も、企業が自社で働く従業員を表すのに用いられますが、両者には微妙なニュアンスの違いがあるようです。

人的リソースを表す語として従来から用いられていたのは「人材」で、デジタル大辞泉には「才能があり、役に立つ人。有能な人物」と定義されています。一方の「人財」方は、比較的最近になって使われるようになった言葉です。
では、「人財開発」とはなんでしょうか? 先に述べたとおり「優秀な人物こそが組織の財産である」という思想の広まりとともに「人財」という語が市民権を獲得しつつありますが、本質的には「人材」も「人財」もほぼ同じ意味だと考えてよいでしょう。従って、「人財開発」という名の特殊な活動があるわけではなく、その内容は従来から行われている人材開発と、ほぼ同じであるといえます。

強いて言えば、近年になって「人こそ財産」の考え方が定着するにつれ、企業における人材開発に対する取り組みの姿勢が変化してきています。従業員育成にかける意気込みや熱意の表現として、あえて「人財開発」という語を用いるケースもあるのかもしれません。

人財開発における具体的な活動

人財開発では、社員の能力を高めることを目的として、業務遂行に必要となる知識やスキルを習得するための体制を整え、教育や訓練を実施します。たとえば、社内における講習会や外部研修などを実施したり、eラーニングで仕事に役立つ知識を身に付けたりといった取り組みが行われています。

人財開発に熱心に取り組む花王株式会社では、一人当たり年間約7万円の費用(注1)をかけて人材開発に取り組んでいます。グローバルに活躍できる人材を育成するため、国籍や人種、性別にかかわらず優秀な人材が活躍できる社内基盤を構築するとともに、リーダー育成のための研修や管理職層のスキルアップ研修、eラーニングやインターネットを用いた語学学習などにも力を入れているといいます。

  • 注1:
    2015年度の社員1人当たり教育訓練費(連結)

人財開発のポイント

人財開発における重要なポイントのひとつは、自社の経営戦略や事業戦略などを踏まえたうえで、戦略的に取り組んでいくということです。

どのような人が「優秀」であるかは、企業のカラーや事業内容によっても大きく異なります。自社が成長していくためにはどのような人財が必要なのかをあらかじめ明確にしたうえで、それに沿って中長期的・短期的な視野の両軸で育成計画を立てましょう。

また、人材育成計画は社内外に公開し、自社が人材開発にかける思いや熱意を、従業員をはじめとした人々と共有することも大切です。
前述の花王株式会社は、ホームページ上で人材開発への取り組み姿勢や活動内容などを公開しています。このような活動は企業のイメージ向上に貢献するとともに、採用活動にもよい影響を与えます。

有能な人財がすぐれた企業を作る

以上、人財開発の概要と、人材開発に取り組む際に念頭に置いておくべきポイントについて解説しました。

企業が存続し、継続的に成果を上げ続けていくためには、「人の育成」が最重要課題であるといえます。
人材育成にはコストがかかるうえ、投資結果の可視化・数値化が容易ではないということもあり、つい取り組みの優先度を下げてしまいがちですが、こうした見えにくい部分への投資姿勢が、長期的には大きな差となって現れてきます。

同業他社の取り組みなどを参考に、まずはできるところから人財開発に取り組んでみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール

丸の内とら 氏

フリーライター歴20年。IT関連を中心に執筆活動を展開し、20冊を超える著書を出版。
ソフトウェアハウス、独立系SIerを経て、現在はIT系サービス企業の経営戦略部に所属。
マーケティング、プロダクトマネジメント、開発などに幅広く関与しています。
システム開発は上流から下流までほぼ一通り経験しましたが、もっとも得意とするのは品質検証。
「三度の飯よりテストが好き!」で、独学でJSTQBを取得した変わりものでもあります。

丸の内とら 氏

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