2017年04月07日更新
企業力アップのためのお役立ち 第16回 働き方改革で、企業はどのように変わるのか?
酒井麻里子 氏
日本の労働をとりまく問題は、数多くあります。これらの問題を解決に導くキーワードとして今、注目されているのが「働き方改革」です。なぜ、働き方を変える必要があるのでしょうか? そして、働き方改革を実施することによって、企業はどのように変わるのでしょうか?
なぜ、働き方改革が必要なのか?
少子高齢化による働き手の減少や、保育園不足、介護離職の増加など、労働に関するさまざまな課題が、日々ニュースで話題になっています。これらの問題と向き合い、多くの人にとって働きやすい社会を実現するためには、これまでの日本企業の働き方では限界があると言われています。
そこで、柔軟な勤務体制を可能にしたり、在宅勤務を認めたりといった、新しい働き方を企業が取り入れていくことが求められているのです。
どのような目標が掲げられているのか?
2016年11月、政府は「一億総活躍国民会議」の中で「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策」を公表しました。この対策では、「新・三本の矢」として、「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」の3点が目標として掲げられました。
このうち、1つ目の「希望を生み出す強い経済」では、最低賃金や賃金を引き上げることによる消費の喚起や、女性や若者、高齢者、障害者の活躍を促進することに加え、ITを活用した中堅・中小企業の生産性向上や新事業促進を支援することなどが挙げられています。
また、2つ目の「夢をつむぐ子育て支援」では、若者の就職支援や非正規労働者の正社員転換や待遇改善、妊娠や出産、育児休業を取得した人の不利益な扱いを防止する法制度の検討をはじめとした、結婚や子育てをしやすい環境をつくるための対策が掲げられています。
そして、3つ目の「安心につながる社会保障」では、介護施設などの整備量の拡大や介護サービスを提供する人材の育成や確保、介護に取り組む家族のための相談機能を強化することなどによって、介護のために仕事を辞める「介護離職」をゼロにすることを目標としています。
企業での取り組みとその成果
各企業でも、実際にさまざまな取り組みが行われています。
このうち、1つ目の「希望を生み出す強い経済」では、最低賃金や賃金を引き上げることによる消費の喚起や、女性や若者、高齢者、障害者の活躍を促進することに加え、ITを活用した中堅・中小企業の生産性向上や新事業促進を支援することなどが挙げられています。
たとえば、トヨタ紡織株式会社では、育児休暇を子どもが3歳になるまで利用可能とし、さらに、育児短時間勤務制度を事務・技術部門は子どもが8歳になるまで、技能部門では3歳になるまで利用可能とするなどの制度を導入。その結果、2010年度は73名だった育児休業制度の利用者が2014年度は127名に、育児短時間勤務制度の利用者も2010年度の39名から2014年度の72名に増加するなどの成果をあげています。
柔軟な働き方を可能にすることは、能力のある社員が出産や育児・介護などで退職することの防止にもつながります。また、ノー残業デーや有給休暇の促進といったメリハリのある働き方の促進は、業務の効率化や生産性向上につながることも期待されています。
定年制廃止による変化にも期待
また、定年制の廃止も、従来の働き方に変化をもたらすものとして期待されています。2006年に改正された高齢者雇用安定法では、「定年の引き上げ」「継続雇用制度の導入」「定年の廃止」のいずれかを企業に義務づけられました。
経験豊富なシニア社員が業務に関わり続けることで、これまでの業務で培ってきた技術を後進に継承しやすくなることや、人材不足の解消につながること、社員の安心感につながることなどのメリットがあると言われています。
働き方改革は、多くの可能性を秘めている
働き方改革にはさまざまなアプローチがあり、どの方法がふさわしいかは、それぞれの企業によっても異なるでしょう。これまでの仕事のあり方を変えることには、決断が必要ですが、その分多くの可能性も秘めています。自社でできることを探し、小さなことから取り組んでみてはいかがでしょうか?
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著者プロフィール
酒井麻里子 氏
IT系コンテンツを多数手がけるライター。著書に『これからはじめるスマホユーザーのためのLINE Facebook&Twitter安心・かんたんスタートブック』(秀和システム)など。
初心者ユーザーに向けたスマホやPCソフトの使い方から業界最新ニュース、Webマーケティングまで、ITに関することを幅広く扱っています。
酒井 麻里子 氏コラム一覧
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