2016年03月04日更新

企業力アップのためのお役立ち 第04回 派遣社員を直接雇用に切り替える前に知っておきたい保険と税の知識

酒井麻里子 氏

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派遣社員の直接雇用は、働く人にとってチャンスである一方、企業にとっては大きな決断となります。派遣社員を直接雇用に切り替えた場合、社会保険や労働保険、税務関係などにまつわるさまざまな手続きが必要になります。また、直接雇用は、条件によっては助成金の対象となる場合もあります。派遣社員を直接雇用するにあたり知っておくべき基本事項についてご紹介します。

派遣社員の直接雇用とは?

2015年9月に可決された改正労働者派遣法によって、派遣社員の雇用に関するルールが変わりました。これまでは「専門26業務」と呼ばれる業務については、派遣社員を使用できる期間に制限はなく、それ以外の業務については、派遣社員を3年以上継続して使うことができませんでした。改正後は、専門26業務もその他の業務についても、同じスタッフを同じ職場の同じ部署に派遣できる上限を3年と定めています。

つまり、もし同じ部署で同じスタッフに引き続き働いてもらいたいという場合は、派遣から直接雇用に切り替える必要があるのです。

直接雇用にあたって必要な手続き

派遣社員の場合、スタッフと雇用関係にあるのは派遣元の会社ですが、直接雇用に切り替えた場合は派遣先企業が新たな雇用主となります。スタッフ側から見ると同じ職場で継続して働くことになりますが、手続き上は派遣元の企業から派遣先企業へ「転職」する形となるため、直接雇用への切り替えを行う際には、さまざまな手続きが発生します。

保険に関する手続き

派遣社員の場合、社会保険や雇用保険などは派遣元企業で加入します。直接雇用への切り替えにあたってはこれらの移行が必要です。手続きは、新規採用時と同様に、社会保険と雇用保険の資格取得届けを作成して届け出を行います。

届出の期限は、健康保険と厚生年金保険については採用日から5日以内、雇用保険の届出は採用月の翌月の10日と異なることにも注意が必要です。なお、労働者災害補償保険については、特に手続きは必要ありません。

税に関する手続き

こちらも中途採用と同様の手続きとなります。税務手続きでは、前職分の源泉徴収票を前の勤務先から受け取り、それを年末調整処理に反映させる処理が必要です。この場合の「前職」は派遣元の企業となるので、派遣元からこれまでの給与支払いについての源泉徴収票を提出してもらいます。

助成金の対象となる場合も

また、派遣社員の直接雇用は、条件によって助成金の対象となる場合があります。これは、非正規雇用の処遇を改善するための支援制度として実施されている「キャリアアップ助成金」というもので、内容によって6つのコースに分かれています。

このうち、「正規雇用等転換コース」は、派遣社員などの非正規雇用者を正規雇用や無期雇用した場合に適用され、「多様な正社員コース」は、勤務地限定正社員や、職務限定正社員、短時間正社員として採用した場合に適用されます。

ここでいわれている「正規雇用」「無期雇用」「短時間正社員」などには、細かく条件が設定されており、助成金を受けるには、それらを満たしている必要があります。また、その企業に「キャリアアップ管理者」を置いていること、「キャリアアップ計画」を作成して、事前に提出することなども必要になります。

ルールを正しく理解しよう

法改正によって同じ派遣社員の長期間の雇用ができなくなったことを機に、直接雇用への切り替えを検討する機会も増えていくかもしれません。スムーズな切り替えを進め、準備不足によるトラブルを防ぐためにも、正しい知識を身につけることが大切です。

著者プロフィール

酒井麻里子 氏

IT系コンテンツを多数手がけるライター。著書に『これからはじめるスマホユーザーのためのLINE Facebook&Twitter安心・かんたんスタートブック』(秀和システム)など。
初心者ユーザーに向けたスマホやPCソフトの使い方から業界最新ニュース、Webマーケティングまで、ITに関することを幅広く扱っています。

酒井麻里子 氏

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