脱炭素経営で実現する!環境配慮企業が得られる価値と必要な要素
企業には脱炭素経営が求められています。カーボンニュートラルに取り組むことは、投資家や金融機関、消費者などステークホルダーだけでなく、自社にとってもさまざまな価値があります。そこで今回は、カーボンニュートラルに取り組む企業が得られる新しい価値と、脱炭素経営の成功例、脱炭素経営の実現に向けて必要なことについて解説します。
企業が脱炭素経営で得られる4つの価値
企業が脱炭素経営に取り組むことで得られるメリットは主に4つです。
1. 収益が改善する
脱炭素経営の実現には、エネルギーを多く消費する非効率なプロセスの改善や環境に配慮した新しい設備への更新を進める必要があります。新しい設備を導入することによりエネルギーを効率的に利用でき、光熱費削減につながるだけではなく、新しい設備になるとメンテナンス費や機械の交換費用の削減といった効果が期待できます。これらの改善・更新によって、環境負荷の軽減や持続可能な経営への貢献を実現します。
2.市場シェアの獲得に貢献できる
脱炭素経営を推進する企業は、知名度や認知度が高まるといったメリットを享受できます。環境への配慮や持続可能な経営への取り組みは、消費者や取引先などのステークホルダーから高い関心を持たれています。
企業が脱炭素経営を積極的に推進する姿勢を示すことで、環境活動に取り組む先進的な企業としてのブランドイメージが向上し、社会的な信頼を獲得できるでしょう。また、環境配慮企業としてのブランド・地位を確立することにより、消費者・取引先などから選ばれやすくなり市場のシェア獲得にもつながります。
脱炭素経営を積極的に推進する企業であることを示すためには、具体的な数値を公表しカーボンニュートラルにどれだけ貢献したかを明確にすることが重要です。環境への配慮や持続可能性への取り組みを評価し、認証する制度もあります。環境マネジメントシステムの国際規格であるISO 14001やグリーン購入法に基づく認証などは、企業の環境への取り組みを客観的に評価し、信頼性や競争力を高める効果があります。
3. 投資家の信頼を獲得できる
社会的責任の観点や環境への配慮が高まる中、投資家や金融機関はカーボンニュートラル経営に積極的に投資する傾向にあります。投資家は、企業が環境への配慮や持続可能な経営をしているかを評価基準の対象としています。脱炭素経営に取り組むことで、投資の対象として選ばれる可能性が高くなります。
脱炭素経営が投資家の信頼獲得につながる理由として以下が挙げられます。
- 透明性の高い経営を実現し、ステークホルダーとの信頼関係を強化できる
- 持続可能な成長が期待されるため、長期的な投資先として選ばれる
- 気候変動対策の状況が客観的に可視化されるため、自社の脱炭素経営の位置づけが明らかになる
- 環境問題への取り組みが評価され、ESG評価が高まる
資金調達にも影響
脱炭素経営を実践する企業は、投資家だけでなく金融市場からの支持を受けやすくなるため、スムーズな資金調達が可能になります。脱炭素経営の推進は、金融機関にとっても、投資判断における重要な指標のひとつです。脱炭素経営は、結果として好条件での資金調達が実現し、企業の成長や持続可能な発展に繋がります。
補助金が利用できる
日本では、脱炭素経営を促進する補助金や支援制度があります。補助金や支援制度を活用することで、脱炭素経営に必要な設備投資や生産プロセスの改善に役立てることができます。
4. イノベーションの促進につながる
脱炭素経営を実行するために、CO2排出量削減計画をもとに、業務効率化や設備の見直しなどを進めることが必要となってきます。見直しを進めていく中でイノベーションの促進につながっていくことがあります。イノベーションが促進された例として、以下のものが挙げられます。
- AIによる電力有効活用や省エネの推進
- 水素発電や地熱発電などの再生可能エネルギーの技術革新
- 石油や石炭で作られた製品を水素やそれらで作られた電気で代替する技術の確立
- 二酸化炭素を回収・固定する技術の開発
- カーボンニュートラル燃料の活用
- 材料分野におけるカーボンリサイクルやケミカルリサイクルの推進
- 再生可能エネルギーの技術革新
- エネルギー生産性の飛躍的な向上
イノベーションを促進することで得られるビジネスチャンス
カーボンニュートラルにおけるイノベーションは世界中の企業が注目し、カーボンニュートラル実現に向けて投資を行っていることもあり、下記のようなビジネスチャンスがあります。
- 市場の変化に対応し、新たな需要を創出できる
- 競争優位性を確立し、業界をリードできる
- コスト削減や業務効率化を実現できる(人材不足や勤務時間の超過などの企業課題の解決)
- 新たな市場やグローバル展開の機会を得られる
- 新製品・新サービスの提供スピードの向上(利益の増加や経済成長の促進)
製造業はどのような脱炭素経営を行っているか
製造業がカーボンニュートラル施策に取り組むことは、非常に重要です。 産業部門から排出される二酸化炭素の9割以上は製造業が占めているため、二酸化炭素排出量の削減は製造業として大きな課題となっております。脱炭素経営への具体的な取り組みとして、以下の例が挙げられます。
- エネルギー効率の向上やクリーンエネルギーの利用
- サプライチェーン全体での環境負荷の低減
- 再生可能エネルギーの活用
- 廃棄物の削減や再利用
- 容器包装の改善
日本製鉄株式会社
日本製鉄株式会社は、2030年までに2013年度対比で30%の二酸化炭素削減を掲げています。そのための施策として、大型電炉での高級鋼の量産製造、水素還元製鉄やCCUSの開発などが挙げられます。積極的な技術開発でカーボンニュートラルを目指しています。
清水建設株式会社
清水建設株式会社では、「エコロジー・ミッション」を策定し、省エネや二酸化炭素排出削減の対応を目指しています。「事業活動により自社が排出するCO2」と、顧客への設計・施工物件の運用時において「顧客が排出するCO2」排出量を、2050年度までにゼロにするという目標を掲げました。
脱炭素経営を実現するための要素
製造業での取り組み内容を基に、脱炭素経営を実現するために必要な要素を2つ紹介します。
具体的なビジョンや中期計画の策定・実行
脱炭素経営を実現するには、長期的なビジョンを明確にし、それを具体的な中期計画に落とし込むことが不可欠です。企業はまず、自社の温室効果ガス排出状況を把握し、2030年・2050年の目標を設定することが求められます。その上で、再生可能エネルギーの導入、省エネ対策、サプライチェーン全体の排出削減など、具体的な施策を策定し、実行する必要があります。
また、目標達成のためにはKPI(重要業績評価指標)を設定し、進捗を定期的に評価・改善することが重要です。企業は、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)やSBT(科学的根拠に基づく目標設定)などの国際基準を活用し、透明性の高い計画を立てることが求められます。これにより、投資家や取引先からの信頼を獲得し、持続可能な経営を実現することができます。
非財務情報の開示
ビジョンや計画の策定・実行に加え、非財務情報の開示も脱炭素経営の実現には重要になってきます。非財務情報とは、企業の経営方針や経営課題、ESGを示す情報全般を指す言葉で、顧客満足度や人材ポートフォリオ、従業員の福利厚生や環境への取り組みなども含まれます。企業の持続可能性や社会的価値を評価するための重要情報として注目を浴びており、国際的には既に非財務情報開示を充実させる動きが活発化しています。
非財務情報を開示することで、企業のビジョンや戦略などを財務データ以外の視点で評価できます。環境への影響やリスク管理、社会的責任など、企業の価値をさまざまな角度から理解、判断する土台としても非財務情報は有効です。また、ステークホルダーは開示された非財務情報から、企業の持続可能性とビジネスモデルの実現可能性を評価するため、企業の信頼性と評判の向上にも役立ちます。公開された情報は、企業の社会的・環境的な効果に対する説明責任を果たす一方で、統計性を高め、企業の信頼性強化にもつながります。
まとめ
企業が脱炭素経営に取り組むことで、収益の改善、市場シェアの獲得、投資家の信頼の向上、イノベーションの促進といった4つの新たな価値を得ることができます。これらを実現するためには、具体的なビジョンや中期計画の策定・実行、非財務情報の開示、透明性の確保が不可欠です。今後の事業成長と競争力強化のためにも、脱炭素経営を積極的に推進し、持続可能な未来を築いていきましょう。
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