貿易における販売管理の「化成品や穀物などの特殊な課題」とは?
2020年5月15日更新
貿易で扱われる製品・部品・原材料などの商材は、種類も形状も様々です。国際間の取引においては、化成品や穀物など扱う品目によって、ポンドやオンス、ヤードといった独特の単位が使用されるため、キログラム、グラム、メートルなどへと単位を変換しなくてはならないことを前回のコラムで説明しました。
また、発注時にはトンやキログラムなど重量の単位で計上していても、在庫して出荷する時点になると例えば「10キロ缶を30個」というように荷姿が変化する場合もあります。このように重量の単位を変換しなくてはならない商材や荷姿が変わる品目も多く、本コラムでは、貿易における販売管理ではこうした特殊性に柔軟に対応することについて説明します。
化成品や穀物などの貿易業務のよくある課題
製品・部品・原材料など商品を売買するという視点に立てば、国内での取引も貿易も大きな違いはないといえます。ただし、貿易は国や地域をまたがる国際間での取引となるため、国内取引とは多くの点で違いがあります。例えば、言語や通貨、商慣習、法制度の違いをはじめ、製品や原材料の重量の単位が国や扱う品目によって異なる場合もあります。
また、貿易は国をまたがる取引のため、扱う製品・部品・原材料の輸送距離が長く、輸送に時間がかかることも、国内取引との違いの一つです。化成品や穀物などの貿易における販売管理の特殊な課題について確認していきましょう。
国や地域、品目によって重量「単位」が異なる
貿易業務では製品・部品・原材料の長さや重さを示す単位が、国や地域、取り扱う品目の形状や状態によって異なることがあります。例えば、粉状や液状の化成品、小豆や大豆、コーンなどの穀物類などでは、ポンドやオンス、ガロンなどの単位が用いられることも多いのです。モノの長さや重さは、一般的にはメートルやグラムを基準とした単位で示されますが、なかには商慣習上、ヤード・ポンド法による単位で長さや重さが示されることがあるのです。
貿易業務における販売管理では、こうしたモノの単位の特殊性への対応が求められます。こうしたケースでは、海外のサプライヤーに原材料を注文するときには、ポンドとドルで手配し、日本国内の需要家にはキログラムに換算して日本円で販売するといった対応が必要になります。
しかも、ヤードやポンド、オンス、ガロンといった長さや重量の単位をメートルやグラムを基準とした単位に換算するといった対応だけではありません。例えば、「海外から300ポンドの化成品を仕入れ、国内の需要家に30キログラム販売した」といった取引では、在庫管理を「キログラムと円」でできるように、重量と為替の両方を換算して計上しなくてはなりません。さらに、重量の単位や為替を換算するときに発生する誤差をどう処理するかも問題になります。
図1 発注金額誤差
例えば、1ポンドで100ドルの原材料を100ポンド分、海外から調達した場合、発注する単位は「100ポンド×100ドル=10000ドル」となります。この取引で実際に原材料が入荷した場合には1ポンド(1bs)を約0.453592kgで換算し、約45.36キログラムを在庫に計上します。この在庫管理の単位である約45.36キログラムは約9999.61ドルとなるので、発注単位の10000ドルとは誤差がでてしまうのです。
貿易業務における販売管理では、「発注する単位」と「在庫管理する単位」の違いに柔軟に対応し、それぞれを管理できる機能が求められます。
発注から入荷、在庫、出荷の過程で「荷姿」が変わる
また、粉状や液体状の原材料や化成品では、発注から入荷、在庫、出荷という過程で「荷姿」が変わることもあります。例えば、液体状の原材料100ポンドを発注し、入荷した後に10キロ入りの缶に分けて国内の需要家に出荷するといった取引です。この場合、在庫として保管されているときにはコンテナで、出荷時には10キロ缶に詰められてというように荷姿が変わります。
こうした取引では、「海外向けの発注はポンド」で、入荷後の国内での「在庫管理はキログラム」で、そこから出荷するときには、原材料を入れる容器の大きさである「入り目単位」で何缶、出荷されたのか管理が必要になります。このように荷姿の変化に応じた細かい管理が必要となるのも貿易の特殊性のひとつといえるでしょう。
図2 荷姿の変化と在庫
さらに、100ポンドは、約45.36キログラムなので、入り目10キログラムで出荷すると、4缶で約5.36キログラムが在庫として残ることになります。この例のように粉状や液状の原材料や化成品の場合、入り目単位で出荷した後に端数の在庫分(ここでは約5.36キログラム)が発生しても、例えば、次の入荷分の100ポンド=約45.36キログラムを加えて、合計50.72キログラムの在庫があると管理することができます。
しかし、取り扱う製品によっては食品のように消費期限がある場合や、シート状で一定の長さに満たないと使い道がない場合には、在庫として計上することができません。荷姿の変化への対応とあわせて、荷姿が変わることで発生する端数を在庫として計上できるかできないか、そういった細かな対応が貿易業務における販売管理には必要です。
輸送に時間がかかり、月次決算のタイミングで「未着」が発生する
貿易は国をまたがる取引です。海外との取引となるために製品・部品・原材料など扱う品物や、空輸や海上輸送かといった輸送方法によって、発注から入荷までに時間がかかることがあります。こうした取引では、月次の決算処理のタイミングで発注した製品・部品・原材料が未着となってしまいます。
日本国内からの発注に応じて海外から船積み・発送され、製品・部品・原材料などの所有権が発注側に移転してはいるが海上輸送中で未着の場合、「自社の製品でありながら仕入れや在庫として計上されず、自社のどこにも存在していない」状態となってしまいます。
また、日本国内の港に入荷はしているものの、まだ、通関手続きが済んでいないために、指定の倉庫などに到着せずに仕入れ・在庫として計上できないこともあります。このような未着状態にどのように対処するかも、貿易業務における販売管理には求められます。
こうした場合では、海外からの船積み・発送と所有権の移転に合わせて、未着の製品・部品・原材料を把握し、月末時点での未着商品を帳票で確認できる仕組みを構築することが必要になるのです。
貿易における販売管理の課題まとめ
前回のコラム、今回のコラムでご紹介した課題の内容をまとめます。
- 貿易業務が「属人化」し、業務プロセスが標準化されていない
- 既存のシステムと貿易のシステムを連携できない
- 貿易業務の拡大に既存のシステムでは追いつかない
- 化成品など扱う品目によっては在庫を正確に管理するのが難しい
(ア)国や地域、品目によって重量「単位」が異なる
(イ)発注から入荷、在庫、出荷の過程で「荷姿」が変わる
(ウ)輸送に時間がかかり、月次決算のタイミングで「未着」が発生する
それでは、次回コラムではこのような貿易管理をどのように行うのが良いかを説明します。
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著者プロフィール
富士通Japan株式会社
東京ソリューション営業本部 東京GLOVIAソリューション統括営業部
課長代理 井上 康
1997年、富士通ビジネスシステム株式会社入社。様々な業種の基幹システム導入を営業として実施。
2016年 富士通ERPシステムであるGLOVIA iZシリーズの専任ソリューション営業として、システム面から顧客の企業価値を高める活動に注力している。
※本コラム中に記載の部署名、役職は掲載日現在のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。
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