自動車部品卸業における販売管理のよくある課題とその解決方法

2020年4月17日更新

自動車部品卸業など自動車産業に関連した業種は、「ジャストインタイム」というキーワードで示されるように、何よりも「納期厳守」が厳しく求められます。しかも、取り扱う部品が多品種少量で在庫管理が複雑であること、さらには自動車メーカーの生産状況の変化に応じて出荷量を迅速に調整しなければならないなど、自動車業界特有の業務や商習慣に柔軟に対応することも求められます。本コラムでは、自動車部品卸業における販売管理のよくある課題とその解決方法について説明します。

自動車部品卸業における販売管理システム導入時の課題

一般的に、機械部品や電子部品などを扱う部品卸業では、経営層は「在庫圧縮」、「部品点数削減」、「品番管理の効率化」といった課題の解決に取り組んでいます。自動車部品卸業においても、こうした課題はありますが、何よりも「納期厳守」が求められる業界です。

そこで、自動車卸業には、自動車メーカーからの要求に確実に応えられるように、常に多品種少量部品の在庫を適正に抱え、出荷量や在庫量を柔軟にコントロールすることが求められているのです。自動車部品卸業において販売管理システムを導入するときには、「納期厳守」という業界特有の商習慣への対応が課題となります。

在庫・出荷管理と業界特有「フォーキャスト情報」への対応

ただ「納期厳守」は、自動車業界に限らず、どの業種・業界でも同じように求められています。ところが、自動車関連産業においては、その徹底が厳しく求められるだけでなく、その対応に非常に大きな労力を費やしている企業も多くあります。「納期厳守」への対応が難しいのはなぜでしょうか。

それにはいくつか理由があります。まずは、個別仕様の部品への対応が求められるケースです。個別仕様への対応では、シートなどのいわゆる長尺モノでは巻き取りで在庫を確保し、受注のたびにカットして出荷することもあります。

部品によっては、組み立て加工が必要で入荷時には単純な形状の部品であったものが、加工されて出荷時には荷姿が変わっていることもあります。このように「個別仕様」、「荷姿が変わる」などの部品でも、それぞれの在庫状況をきちんと管理できないとジャストインタイムでの納品が難しくなります。

また、在庫管理だけでなく、出荷においても業界特有の商慣習への対応が求められます。自動車業界では、実際に部品を納品する3~5カ月程度前に自動車メーカーから車の生産状況に応じて必要となる部品数の予測・見込み数値(フォーキャスト情報)が提供されます。

このフォーキャスト情報に基づき自動車部品卸業では、部品を手配して納品に備えますが、納品の1~2週間前になると実際の車の生産状況がより正確にわかってくるため、フォーキャスト情報が修正されるのが一般的です。

さらに、納品直前になると自動車メーカーから「○○工場の○○ラインに部品100個を段ボールに詰めて100箱」というように、ジャストインタイムでしかも荷姿(梱包状況)を指定しての納品指示が送られてきます。例えば、ベアリングではバラでの納品することもあれば、段ボールに詰める、もしくは個別に包装しての納品といった指示になります。

このように、フォーキャスト情報の変更にも柔軟に対応し、在庫・出荷の調整と管理、荷姿の管理が求められるのです。

半期に一度の価格改定への迅速な対応

また、自動車産業では半期に一度の割合で部品等の価格改定が実施されるという商習慣があります。この価格改定に柔軟かつ迅速に対応できないと納期が遅れてしまうことが懸念されます。

とくに多品種で取り扱う部品点数が多いと、手作業で価格を改定していくには膨大な時間がかかってしまいます。こうしたことも「納期厳守」への対応を難しくしている理由のひとつなのです。

さらに自動車業界には、自動車メーカーと直接に取引する「ティア1」と呼ばれる一次サプライヤー、ティア1に部品等を納品する二次サプライヤーの「ティア2」といった区分があります。例えば、ティア2の自動車部品卸業は自動車メーカーに直接、部品を納品することはなく、ティア1の自動車部品メーカーや自動車部品卸業に納品することになります。

自動車メーカーとティア1との間の取引、ティア1とティア2との間の取引は、EDI(電子データ交換)により受発注が管理されていますが、自動車メーカーがEDIのフォーマットを変更すると、それに応じてティア1もティア2もEDIと、EDIに連携する受発注管理、在庫管理、出荷管理などの機能を備えた販売管理システムを改修しなくてはなりません。このことも自動車産業における「納期厳守」を難しくしている理由といえます。

自動車部品卸業における販売管理システム選びの3つのポイント

ここまで説明してきたように自動車部品卸業には、ジャストインタイムというキーワードで示されるように「納期厳守」への厳格な対応が求められます。そして、こうした要求への対応を難しくしている理由として、多品種・個別仕様や半期に一度の価格改定など自動車業界特有の商慣習があります。

このように特殊な事情が多い自動車部品卸業の販売管理システムには、柔軟性と拡張性が求められます。その視点に立って販売管理システム選びのポイントを説明します。

在庫状況をリアルタイムに更新・確認できる機能があるか

自動車部品卸業では、「これからどれだけの発注があるのか」を予測し、迅速に対応できる在庫・出荷の体制を整えておかなくてはなりません。そこで大切となるのが、リアルタイムで在庫状況を確認できる機能です。

在庫管理の機能については、日次の締め処理も夜間バッヂ処理もしないで、リアルタイムで更新される機能が必要です。さらに、リアルタイムの在庫状況とフォーキャスト情報を含めてシミュレーションができる仕組みも求められます。とりわけ自動車産業に独特な「フォーキャスト情報」は「正式な受注」ではないため、販売管理システムにおいて受注情報として処理することはできません。受注情報として入力して処理してしまうと、受注していないのに「受注した」ことになってしまい、経営判断に影響を及ぼすことも考えられます。

フォーキャスト情報は、いわば「仮受注」のような状態なのですが、とはいえこの情報を受注システムに入れておかないと、その部品を発注することができないため、結果的にフォーキャスト情報に見合うだけの部品を確保することができません。こうした事情から「今の販売管理システムではフォーキャスト情報を活用できない」といった声を耳にすることもあります。

リアルタイムに在庫状況を更新し、今後の在庫状況をシミュレーションできる機能があれば、その情報を根拠にしてフォーキャスト情報に対応するための「先行発注書」を作成することも可能になります。正式受注ではないが先行しての発注が必要という説得材料としても活用できます。

半期に一度の価格改定に迅速に対応できる機能があるか

半期に一度の割合で価格改定も自動車産業の商慣習です。販売管理システムには、価格改定に迅速に対応できる機能が求められます。まずは、商品マスターに登録されている部品ごとに「単価の履歴」を記録できる機能が必要です。履歴の機能がないと、いくらからいくらに改定されたのか、単価の推移がわかりにくくなってしまいます。

また、多品種少量、個別仕様などの事情で取り扱う部品点数が多くても価格を一括変換できる機能が必須です。さらに、「○月○日から価格が改定される」となった場合、あらかじめ先日付で販売管理システム内の価格を改定しておき、当日になったら適用するといった運用ができる機能も重要です。商品マスターの修正にもすぐに対応でき、価格改定にも一括変換で対応できる機能を備えた販売管理システムを選ぶようにしましょう。

自動車産業の構造改革も視野に柔軟性と拡張性のあるシステムを

自動車部品卸業は、需要予測が立てにくい業種とされています。「納期厳守」が大前提で、しかも自動車メーカーの生産状況やフォーキャスト情報に応じて柔軟かつ迅速な在庫・出荷の調整と管理が求められます。経営的な視点では、在庫の適正化と粗利率の確保が重要となります。この視点に立つと販売管理システムには、在庫の状況をリアルタイムに確認できる機能、価格改定にも素早く対応し部品ごとの単価、原価、粗利率を確認できる機能が求められます。

さて、自動車産業は今、100年に一度の大転換を迎えているとされています。自動運転、MaaS(Mobility as a Service)の進展など自動車産業を取り巻く環境が大きく変化している中にあって、自動車部品卸業など自動車産業で必要とされるシステムには「変化に対応できる」機能が求められるといえるでしょう。今後、自動車産業の構造改革も視野に入れ、柔軟性と拡張性のあるシステムを検討する時期にきているのではないでしょうか。

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著者プロフィール

富士通Japan株式会社
東京ソリューション営業本部 東京GLOVIAソリューション統括営業部
課長代理 井上 康

1997年、富士通ビジネスシステム株式会社入社。様々な業種の基幹システム導入を営業として実施。
2016年 富士通ERPシステムであるGLOVIA iZシリーズの専任ソリューション営業として、システム面から顧客の企業価値を高める活動に注力している。

※本コラム中に記載の部署名、役職は掲載日現在のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。

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