販売管理システムの選び方「エクセル、スクラッチ、パッケージ、クラウドの比較とメリット・デメリット」その2
2020年3月13日更新
企業が事業を展開していくうえで重要な業務が販売業務です。商品やサービスを販売し、代金を回収するまでの一連の流れが販売業務であり、その流れを整理・管理するのが販売管理システムです。しかし、実際には、各社で業務が異なることもあり自社に合った販売管理システムを選ぶのは簡単ではありません。
前回のコラムでは「エクセル」と「スクラッチ」に焦点を充て、そのメリットとデメリットについて説明しました。
本コラムでは、「パッケージ型販売管理システム」と「クラウド型販売管理システム」に焦点を充て、そのメリットとデメリットについて説明していきます。
販売管理システムをパッケージ導入する場合のメリット・デメリット
スクラッチ開発による販売管理システムは、自社の業務に則したシステムを導入しやすい反面、長期的にみると保守やメンテナンスなどの問題があります。実際にスクラッチで販売管理システムを構築し、何年か経った後にメンテナンスや機能の改修ができないことや、更新に高額な費用がかかり困った企業の多くが、次に検討するのがパッケージ型の販売管理システムです。ここでは、販売管理システムをパッケージ導入する場合のメリット・デメリットについて説明します。
販売管理システムをパッケージ導入する場合のメリット
販売管理システムのパッケージ製品は、すでに一定数の企業に実際に使用されている実績があり、多くの企業からの要望やノウハウが機能に反映されていることもあります。その意味では、パッケージ型の販売管理システムには多くの企業の最大公約数的な業務フローやノウハウが凝縮されているとも言え、自社の独特の業務のやり方をパッケージ型の販売管理システムの業務フローや標準機能に合わせることで業務改善につながる可能性があるのがメリットと言えます。パッケージ製品の導入ベンダーから、業務改善提案を受けながら、現場の混乱を抑えつつ、業務効率化につながる方法で販売管理システムを導入することができるのです。
既製品とはいえ、販売管理システムのパッケージ製品の多くは、カスタマイズも可能です。パッケージシステムには合わない自社の業務の部分は、カスタマイズで対応するなどして、無理なくシステム導入することができるでしょう。
また、パッケージ型の販売管理システムの多くは、会計システムや物流システム、SFA(Sales Force Automation)などと連携することもできます。販売管理業務だけを効率化するという部分最適ではなく、会計や物流、SFAなどと連携し企業としての全体最適を実現しやすいという特長もあります。
メンテナンス性の高さも、販売管理システムの大きなメリットです。法制度の変更やセキュリティ機能強化、販売管理機能の追加に応じて、販売管理システムの多くは定期的にバージョンアップされます。パッケージ型販売管理システムの製造元やベンダーなどによる組織的なサポート体制が整備されているため、充実した保守サービスを長期間にわたり受けることもできるでしょう。
販売管理システムをパッケージ導入する場合のデメリット
販売管理システムのデメリットは、パッケージの機能を理解し使いこなすことができないと、「宝の持ち腐れ」になってしまうことです。いくらパッケージ製品の導入ベンダーから、業務改善提案を受けることができても、現場の担当者が理解し、業務改善に取り組まないとパッケージの機能を使いこなすことはできません。
また、自社に合わない販売管理システムを導入してしまうと、現場が混乱し、業務改善どころか、むしろ業務効率が低下してしまうこともあります。数ある販売管理システムの中から、最適なパッケージ商品を選定しなければならないのです。
オンプレミス型の販売管理システムであれば、サーバーやOSを準備し、それをメンテナンスする必要もあります。多くの場合、販売管理システムは販売業務の根幹を担うシステムとなり、システムが止まれば業務が止まるという位置づけになるはずです。そうなると、システム全体の管理負担は大きくなり、専任の担当者をアサインするなどコスト負担も大きくなります。
販売管理システムをクラウドで導入する場合のメリット・デメリット
クラウドファーストという言葉に代表されるように、システムのクラウド化は当たり前となっており、販売管理システムもその例外ではありません。販売管理システムには重要データが格納され、カスタマイズ性も求められることからクラウド化は遅れていましたが、近年ではクラウドを利用することも選択肢に入ってきました。
販売管理システムをクラウドで導入する場合のメリット
販売管理システムのクラウド化のメリットは、トータルコストの軽減とセキュリティに大別されます。
クラウドのコストメリットは、ハードウェアやソフトウェアの初期コストを抑えるだけではありません。システムのメンテナンスする専任の担当者をアサインする必要がなく、システムのリプレイス負担がなくなるなど、目に見えないコストを含めたトータルコストを削減できることにあります。システムを資産に計上せずに、身軽に企業運営できることも大きなメリットであるといえます。
クラウド事業者が提供するセキュリティの恩恵を受けることできることも大きなメリットとなります。自社単独ではとても契約することができないデータセンターの中で、自社の販売管理システムは守られることになります。さらに、ワールドワイドな規模で、データの冗長性が確保され、ほとんど止まることがないという可用性も実現できます。
近年では、働き方改革の流れや異常気象を鑑み、テレワークが進展しています。2020年に東京で開催される国際的なスポーツイベントの期間には、在宅勤務が奨励されているように、今後もテレワークは注目されるでしょう。このような、いつでもどこでも仕事ができる環境を、クラウド型の販売管理システムであれば実現しやすい、というメリットもあります。
販売管理システムをクラウドで導入する場合のデメリット
ほかの多くのシステムと同様に、販売管理システムにも多くの恩恵をもたらすクラウドですが、デメリットがある点も見逃せません。
販売管理は、企業によって業務の進め方が異なるため、カスタマイズ需要が大きいという性質があります。クラウドの場合は、自社の資産ではないという都合上、カスタマイズ対応が難しい場合が多いのです。自社の業務の特殊性が強い場合は、カスタマイズに確実に対応できるクラウド型の販売管理システムを選定する必要があるといえそうです。
販売管理システムの場合は、WebEDIやFAXといった通信手段との連携が求められることがあります。このような、通信手段との連携が、クラウドの場合は難しいというデメリットもあります。
ネットワーク負荷がかかりやすいというクラウドシステムの特徴にも注意が必要です。印刷などを頻繁におこなう場合は、大量のデータがインターネット回線を圧迫します。必要に応じて、回線を増強し、通常業務に影響が出ないように配慮する必要もあるでしょう。
販売管理システムの選び方「エクセル、スクラッチ、パッケージ、クラウドの比較表」
ここまで解説してきたように、エクセル、スクラッチ、パッケージ、クラウドには一長一短があり、どれが最適化は、その会社の業務の進め方や企業規模によっても異なります。しかし、販売管理システムは、その企業の根幹をなすシステムであり、間違った方法を選択すれば、業務効率は向上するどころか、現場の混乱を招いてしまうこともあり得ます。以下のように、エクセル、スクラッチ、パッケージ、クラウドの比較表を作成しましたので、参考にして自社に最適な販売管理システムを選ぶようにしてください。
図版1 販売管理システムの選び方「エクセル、スクラッチ、パッケージ、クラウドの比較表」
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著者プロフィール
富士通Japan株式会社
東京ソリューション営業本部 東京GLOVIAソリューション統括営業部
課長代理 井上 康
1997年、富士通ビジネスシステム株式会社入社。様々な業種の基幹システム導入を営業として実施。
2016年 富士通ERPシステムであるGLOVIA iZシリーズの専任ソリューション営業として、システム面から顧客の企業価値を高める活動に注力している。
※本コラム中に記載の部署名、役職は掲載日現在のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。
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