個別受注生産における生産管理システムの選定ポイント「生産管理の3つの課題とその解決策」 前編
2021年4月21日更新
製造業においては、QCD(Quality:品質・Cost:コスト・Delivery:納期)が競争力を決定づける重要な要素です。とりわけ、多様化する顧客ニーズへの対応が求められるような組立製造業ではQCDを維持・コントールするために、生産管理の重要性がますます高まっています。そこで、組立製造業の現場における課題と、それを解決するための生産管理システムについて解説します。
個別受注生産型の組立製造業におけるQCD対策の実情
製造業の中でも、例えば大型工作機械のメーカーといった組立製造業は、顧客ニーズに合わせて多種多様な部品を調達・製造し、それらを組み立てて製品に仕上げています。こうした組立製造業では、「一品一様」の個別受注生産への対応が求められます。
個別受注生産では、顧客ごとに異なる製品仕様に対応する必要があるため、汎用品を大量生産するのと比べると、システム化して生産効率を高めることが難しいといった課題があります。個別受注生産型の組立製造業が市場で競争優位を確保するには、顧客ニーズを確実に満たすことはもちろんのこと、受注生産の効率性をできるかぎり高めなければなりません。
また、個別受注生産型の組立製造業では、部品点数が多くなりやすいといったことも指摘されています。部品を自社で内製して調達する場合もあれば、外注する場合もあり、いずれの場合でも、製品の生産計画に基づき、必要個数を確保しなければなりません。完成品の生産計画に合わせて、すべての部品の生産・調達計画を立案しなければならないという難しさもあるのです。
さらに、「一品一様のものづくり」を実践すると原価管理も複雑になりがちです。個別受注生産の場合は、原材料の見込みから見積もりを提示する必要があるため、原材料の価格変動や人件費を含めた見込みの甘さがあれば、「ふたを開けてみれば赤字だった」という事態にもなりかねないのです。
生産管理の現場で起きている「3つの課題」
このように、個別受注生産型の組立製造業が生産性を高めて市場における競争力を向上させることは簡単なことではありません。ここからは、生産管理の現場で起きている課題を詳しく見ていきましょう。
課題1:部品共通化により生産効率を高めたいが、既存のシステムでは対応できない
個別受注生産型の組立製造業は、製品自体は個別受注生産の方式をとりながらも、生産効率を高めるために、部品類はできる限り共通化して部品中心生産(注)・見込量産により対応しようとします。この場合、生産の現場では、個別受注生産と見込量産が混在します。
しかし、生産管理システムに目を向けると、実際の製造の現場では、見込量産型の生産管理システムで個別受注生産に対応させている、あるいは個別受注生産向けのシステムが見込量産品に対応できず苦慮している、といったことがよく見受けられます。
これが、個別受注生産型の組立製造業の生産効率向上を妨げている要因のひとつです。つまりどちらかの生産形態に偏ったシステムを利用しているということ。生産効率を高めるためには、個別受注生産と部品中心生産・見込量産の混在を意識し、柔軟に対応できる生産管理システムの導入・活用が必要となります。
注:部品中心生産とは設計を標準化し共通性の高いユニット/部品を見込で生産し在庫しておくことで受注生産のリードタイムを短縮する生産方式。
課題2:顧客仕様を可能な限り取り込みたいが、それでは納期に間に合わない
個別受注生産では、生産開始となる直前まで顧客ニーズを取り込もうと、設計変更が繰り返されることもよくあります。設計段階での「すり合わせ」が長期化する可能性が高まるのです。顧客ニーズ、仕様の変更に応え続けると、生産に着手できるタイミングが遅れ、納期が間に合わない事態にも陥りかねません。
そういった事態を回避するため生産の現場では、コンカレントエンジニアリングにより複数の工程を同時並行的に進めています。そのため、すでに確定した仕様から順次手配を行う「さみだれ手配」により、部品の発注や生産を前倒しで進めることが求められています。
このように設計や仕様の変更・確定状況の管理、先行手配による生産状況の管理を、いかに効率的に、かつ正確に実行するかが、組立製造業の現場では重要です。そのため、生産管理システムにも、確定した設計や仕様に基づいての先行手配や生産状況を管理できる機能、設計や仕様の変更に伴うものづくりの現場への影響を把握できる機能が必要となります。
課題3:生産過程の原価状況が把握できないので、原価率が悪化していてもすぐに対処できない
設計から納品にいたる一連の生産過程において、現場の従業員は納期や品質を重視するばかりに、なかなか原価までは目が行き届かないのが現状です。しかも、個別受注生産では、生産過程で顧客の仕様変更が発生したり、原材料費の高騰が発生したりして、想定以上に原価が膨れ上がることも少なくありません。つまり、原価率が悪化していても、すぐに気がつかない、すぐに対処できないといったことが課題となっています。
こうした課題を解消し、個別受注生産型の組立製造業の収益性を高めるためには、受注生産する製品の製番ごとに原価を把握することが欠かせません。生産管理システムには、原価が上がる兆候を早期にとらえて対策を打つために、リアルタイムに原価の変動を「見える化」する機能が求められています。
課題を解決する生産システムとは
ここまで、個別受注生産型の組立製造業の現場における課題と、生産管理システムに求められる機能について説明しました。
「一品一様のものづくり」が求められる組立製造業の現場では、多様化する顧客ニーズに対応するには、品質や機能を向上させるだけではなく、生産性を高めて短納期化する、適切に原価を管理しコストを抑えるといった取り組みが不可欠です。
そして、それらの課題を解消するには、受注生産と見込生産の両方に対応可能な「ハイブリッド型生産管理システム」の導入・活用が効果的です。ハイブリッド型生産管理システムについては、次回のコラムで詳しくご紹介します。
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著者プロフィール
富士通Japan株式会社
ソリューションビジネス本部 産業ソリューションビジネス統括部
圓藤 倫久
富士通ERPシステムであるGLOVIA iZシリーズの開発・拡販に従事。
製造現場の業務効率化や生産管理システムの効果的な活用法などシステム面から顧客の企業価値を高める活動に注力している。
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