人事システムを導入する際に比較すべき3つの項目と選び方
2020年1月10日更新
働き方への注目度の高まりを背景に、人事システムの役割も変化してきました。企業がその人的資源活用を最大化するためには、人事システムを有効に活用する視点が欠かせません。定型的な労務管理が主要業務となっていた人事部門にも戦略的人事という役割を担うことが求められています。本コラムでは、働き方改革が重要な経営課題となる今こそ必要な人事システムについて解説します。
人事システムとは
人事システムは、従業員の人事情報を集中的に管理し、人事考課や人材配置、人材採用、給与計算などに利用するためのシステムです。人事システムを利用する部門は、文字通り人事部門であることがほとんどです。人事部門が労務管理をおこなう上で必要な情報が格納されているのが人事システムであると捉えてもよいでしょう。
人事システムには、一般の従業員がみることが許されない、個人情報や給与体系などが含まれます。このため、人事システムを導入する際には情報システム部門が関わりにくいという側面があり、人事部門が主体的にシステムを導入するケースがよくあります。当然、管理や運用についても人事部門がおこなう必要があるため、管理の負担を減らすためにクラウド型の人事システムを導入することが望ましいといえます。従来であれば、従業員の個人情報を含む重要データを社外に置くことに対し、抵抗のあった企業も多いでしょう。しかし、クラウド事業者のセキュリティ対策は、自社で実行可能なセキュリティ対策よりも強固で安全性が高く、個人情報を含む重要データだからこそ、クラウドにデータを保管するべきという考え方が主流になってきました。
クラウドによる人事システムは、管理運用面からのメリットだけではなく、頻繁に変更される所得税や社会保険の料率変更に対応しやすいというメリットもあります。こうした法改正に対し、自社で情報を把握し、適切にシステムに反映させることは容易ではありません。クラウド型の人事システムであれば、システムベンダーが自動的に情報を反映してくれるので、人事部門の負担を減らすことができます。
働き方改革が人事部門や人事システムにもたらすこと
これまで、人事部門は、定型的な人事情報管理や給与計算といった労務管理業務がメインとなっていました。しかし、人手不足が深刻化する中、企業における人的資源活用の最大化が求められるようになり、人事部門は単純な労務管理業務を担う部署ではなくなりました。戦略的な人員配置や人材育成が重要視されるようになっているのです。働き方改革は人事部門にも変革を促しており、企業の戦略の立案や戦略の実行にあたり、人事面から経営に関わることが求められています。
このような戦略的人事部門を支えるために、人事システムの側にも変化が求められるようになっています。戦略的な人事部門は、従業員や組織を様々な角度から俯瞰し、分析する必要があります。人事システムは単なるデータを格納するデータベースではなく、従業員にまつわる現状はもちろんのこと、今後の未来の組織の姿をも見える化し、分析する機能が求められているのです。
人事システムの目的
働き方改革は、テレワークやテレビ会議といったICTツールの活用を企業に迫っています。どこでも仕事ができる環境を会社が作り、従業員はそれを選択できるようになりました。しかし、戦略なくしては、ICTは本来の機能を発揮できません。企業の目指すべき方向性があり、そのための手段としてICTがあります。そしてICTの導入とともに、改革に見合う制度の変更が必要となります。
このような人事制度を立案するためには、組織の状況を俯瞰的に把握し、上司や部下の関係性といった細部にも目を向ける必要があります。離職率や退職年齢を考慮に入れて、将来的な組織の状況まで考慮に入れる必要があるかもしれません。人事システム上でこのような情報を把握し分析することができれば、将来に向けて今、何をしなければならないのかについて、重要な手掛かりを与えてくれるかでしょう。
近年では、人的資源の最適配置にフォーカスをおいたタレントマネジメントシステムにも注目が集まっています。人事システムの機能をタレントマネジメントシステムに代用させる例も出てきました。しかし、タレントマネジメントシステムには従業員の家族構成や通勤経路といった基礎情報は、一般的には含まれません。タレントマネジメントの分析機能はいったん設定したら変更が難しいのが一般的で、変化の速い経営環境においては人事システムを軸に情報管理を行うことがよいでしょう。
人事システムを導入する際に比較すべき3つの項目
働き方改革の進展や深刻な人手不足により、人事システムの重要性は増しています。それでは人事システムを導入する際には、どのような点を比較しながら選定を進めればよいのでしょうか。
比較項目1:散財しがちな人事情報を集約できる
企業によっては、従業員にまつわる情報がいろいろな部署やシステムに散在していることがあります。例えば、総務部門では社員の基礎情報や給与データを保有し、人事部門では、資格取得情報やこれまでの昇進・昇格や部署の異動履歴を持ち、営業部門では、営業成績や様々なKPIとその達成度合いといったデータを持っているというようにです。
戦略的な人事を遂行する上では、こうした各部署に散在する情報を一元的に集約・管理し、従業員や組織を細部にわたるまで「見える化」することも重要です。変化の速い経営環境の中では、いつどんな視点で従業員や組織の情報を分析する必要に迫られるか予測は困難です。だからこそ、人事システムには、いつ、どんな分析が求められても、要求に応えることができるように、従業員に関する様々な情報を集約・格納できる機能が必要となるのです。従業員に関する情報が、各部署に散らばっていて、活用できなければ何の意味も持ちません。
比較項目2:分析に必要な基礎情報の蓄積
人事上の基礎情報を蓄積できる機能は、人事システムに求められる最も基本的であり重要な機能です。性別、役職、雇用形態に加えて、勤続年数、異動履歴、昇格履歴、教育受講歴、有給休暇の取得状況、勤務実績など、様々な情報を管理しなければなりません。
基礎情報といっても、管理するべき項目は、企業によって異なります。従業員満足を向上させるために男性の育児休暇を奨励するのであれば、性別と家族構成、育児休暇取得状況といった管理項目は欠かせません。企業の目指す戦略に応じて、柔軟に管理項目を設定できることが求められます。管理項目が膨大になったとしても耐えうるデータベースの能力についても注意を払う必要があります。
比較項目3:経営環境や戦略の変更に応じて管理項目を変更できる
管理するべき基礎情報は、企業によっても異なりますが、経営環境や戦略の変更に応じて変更や追加、削除に対応できる必要があります。従来は会社として重要視してこなかった介護離職のリスクを把握したいのであれば、従業員の両親の年齢や、配偶者の両親の年齢も新たに基礎情報に加えて従業員から収集する必要があります。時代の変化に追随できる人事システムが求められているのです。
このような人事システムの変更設定を、人事部門で完結できるかどうかも重要な要素となります。前述のように、人事システムは他の従業員が閲覧することが許されない個人情報が多分に含まれます。このため、情報システム部門に依頼することなく、人事部門で必要な設定変更をする必要があります。クラウド型のシステムを採用し、人事部門の負担を減らすことも検討する必要があるでしょう。
以上、人事システムを導入する際に比較すべき3つの項目についてご紹介しました。次回のコラムでは「人事システムの選び方」についてご説明します。
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著者プロフィール
富士通Japan株式会社
ソリューション事業本部 GLOVIA会計・人事給与事業部 人事給与ビジネス部
プロジェクト課長 武田 幸恵
富士通ERPシステムであるGLOVIA iZシリーズの企画・開発・拡販に従事。
人事総務部門の業務効率化や人材データの効果的な活用法などシステム面から顧客の企業価値を高める活動に注力している。
※本コラム中に記載の部署名、役職は掲載日現在のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。
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