ワークエンゲージメントとは?「尺度、意味、定義や経営に与える影響」
2019年11月8日更新
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企業が競合に対する優位性を保ちながら長期的な成長を維持するためには、良質な人的資源が欠かせません。しかし、少子高齢化に伴う労働力人口の減少や人材の流動性の高まりから、多くの企業が良質な人的資源、つまり従業員を確保し続けることに頭を悩めています。このような経営環境を反映し、ワークエンゲージメントという考え方を取り入れることで、会社と従業員の関係性を良好に保つ取り組みが注目されています。本コラムでは、近年注目度が高まっているワークエンゲージメントについて解説します。
ワークエンゲージメントとは
従業員との関係性を強固に保つための概念として期待が高まるワークエンゲージメント。それでは、ワークエンゲージメントは、具体的にどのように定義され、その注目度が高まる背景にはどのよう要因があるのでしょうか。
ワークエンゲージメントの定義と従業員満足度との違い
ワークエンゲージメントとは、会社と従業員が相互に結びつき互いに貢献しながら成長するといった、いわば「相思相愛」をあらわす概念です。ワークエンゲージメントでは、より個人に焦点をあてて、個々の従業員の働き方やキャリアアップに対する希望を最大限に取り入れながら、組織的な凝集性を高めることを目指します。
ワークエンゲージメントと似た概念として、ES(Employee Satisfaction、従業員満足)が挙げられます。ESの場合は、従業員の満足度を上げるためのアンケート調査に主眼が置かれ、高めた組織の力を企業の業績向上に結び付けようとする試みは積極的におこなわれませんでした。実際に、従業員満足と企業の業績には明確な相関性は少ないという調査結果もあります。これに対し、ワークエンゲージメントでは、その目的を企業の業績向上というように、明確に定めている点で異なります。ワークエンゲージメントは、単に従業員満足の向上にとどまらず、従業員それぞれの貢献意欲を高め、組織の力を底上げして会社の業績向上につなげようする概念です。個人に焦点をあてるワークエンゲージメントに対し、個人と組織に焦点をあてる従業員エンゲージメントという考え方も注目されています。
ワークエンゲージメントの達成度合いを評価するために、数値化したのがエンゲージメントスコアです。日本では他の各国と比較してエンゲージメントスコアは低く、世界で最低レベルにあるといわれています。
日本のワークエンゲージメントが低い傾向にあることは、終身雇用・年功序列に代表される日本型の雇用形態と無関係ではありません。たとえ企業に愛着がなくとも、我慢して働き続けていれば年を追うごとに給料が上がることが約束されていたからです。企業の側も、従業員に対する手厚い待遇により、優秀な人材を確保し続けて成長することができました。しかし、バブルの崩壊による市場の成長鈍化や、働き方改革への注目度の高まり、情報技術の進歩など、劇的な経営環境の変化により終身雇用・年功序列は過去のものとなり、低いエンゲージメントスコアを放置できるような状況ではなくなっているのです。
ワークエンゲージメントが注目される背景
ワークエンゲージメントが注目される背景には、人材の流動化が進んでいることが挙げられます。転職市場では売り手市場が優勢となり、複数の会社を渡り歩きながらキャリアアップを図る従業員は増加傾向にあります。人材の流動性が高まることに加え、構造的な人手不足が深刻化していることも見逃せません。人手不足が原因で会社が倒産するという、「人手不足倒産」も現実的な経営課題となってきました。今後も少子高齢化により労働人口は減少を続けることが予想されています。従業員の定着率を高めて人手不足を回避することは、企業にとって大きな課題となっているのです。
若手を中心に、働く意識が変化していることも見逃せません。従来であれば、従業員は一つの会社に長く務めることが当たり前でした。会社の中で強固な人間関係性を築き、昇進昇格を前提としたキャリアアップを目指していたのです。しかし、近年では、一つの会社に長く務めるという意識は薄れ、自分がやりたい仕事をするために、複数の会社を渡り歩きながらキャリアアップを目指す人が増えています。
働き方についても、マインドの変化が顕著になってきました。残業が美徳とされた考え方は過去のものになり、就業時間内に成果を上げることを目指すようになっています。副業を解禁する企業も増加傾向にあり、企業と従業員が強固な関係性を維持することが困難になっているのです。
従来型の企業と従業員の関係性のもとでは、「飲みニケーション」や社員旅行に代表される、従業員同士のコミュニケーションが重視される傾向にありました。しかし、近年の従業員のマインド変化の中では、単純に従業員同士のコミュニケーションを促すだけでは、企業と従業員の関係性を強化できません。企業の側が優秀な従業員をつなぎとめるためには、ワークエンゲージメントを意識して、会社の魅力を高める活動が重要となっているのです。従業員一人一人のニーズや目指すキャリアプランに寄り添いながら、企業と従業員が相思相愛の関係性を築くことが求められているのです。
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ワークエンゲージメントの尺度
企業がワークエンゲージメントを評価指標として、継続的なPDCA活動をおこなっていくためには、定期的に従業員のエンゲージメントスコアを計測し解析することが欠かせません。しかし、会社に対する思い入れや愛着といった抽象度の高い概念を数値化することは簡単なことではありません。会社と従業員の理想的な関係性の構築方法は、会社の数だけ存在し、どのような方法を使えば効果的なエンゲージメントスコアを計測できるのか、明確な答えは明らかにされていません。
それでもエンゲージメントスコアを計測する上で、重要性の高い切り口は明らかになってきました。それが、「活力・熱意・没頭」です。仕事に対するポジティブで充実した心理状態を保つために、重要な要素が、「活力・熱意・没頭」の3要素であり、エンゲージメントスコアの重要な要素であると考えられているのです。それでは、「活力・熱意・没頭」は、具体的にどのような点から評価されるのでしょうか。
- 活力
仕事に対して前向きに取り組む姿勢や、困難な状況を乗り越えるための粘り強さ。活力があると、やる気に満ち溢れ、仕事上のトラブルや失敗対しても前向きに対応することができます。 - 熱意
仕事そのものや、自分のキャリアに対してプライドを持ち、挑戦意欲を持っている状態。熱意があると、仕事や自分のキャリアに興味を示し、積極的な姿勢で努力することができます。 - 没頭
仕事に対して集中し、時間が経つのが早い状態。没頭することで、仕事のミスをしにくくなり、仕事の品質は高まります。また、作業の速度があがり、効率性も改善します。
エンゲージメントスコアは、アンケート調査を一度とって、調査・分析するような単純な方法では正しく計測できません。エンゲージメントスコアでは、「活力・熱意・没頭」といった心理的な要素を計測するため、その日の気分や天気、季節などによっても異なります。このため、エンゲージメントスコアを正確に計測するためには、繰り返しアンケートをおこなう必要があります。
ワークエンゲージメントの取組みは、エンゲージメントスコアを把握するだけでは十分ではありません。エンゲージメントスコアを可視化し、組織ごとに適切な改善活動に落とし込んでいく必要があります。可視化したエンゲージメントスコアを従業員と共有し、改善策をともに考える姿勢を示すことが重要となります。
ワークエンゲージメントを高めるには
個人の視点としては「いかにエキサイティングな仕事ができるか」、会社としては「その機会をどこまで提供できるかどうか」にかかっているでしょう。
個人のワークエンゲージメントを高める方法
自分が興味を持ち、やりたいと思ったことをしていると、いつの間にか時間が経つのを忘れていたという経験を少なからず皆さん経験していることでしよう。また、その過程で目的達成の手段として自主・自律的にスキル、ノウハウ、知識を身につけていたこと、また、身に着けることが楽しいと思った経験があると思います。
仕事も根本的には同じです。自分がやりたい、やってみたいことをいかに自分の仕事としていくのか、そのためには絶えず自分自身を内省し、経験から学び、自分の強みを理解し、周囲にその強みを理解してもらうことにより、よりエキサイティングな仕事ができるのではないでしょうか。そのためには、自ら仕事を取りにいくという前向きな姿勢がより必要になってくるでしょう。
会社(組織)のワークエンゲージメントを高める方法
組織力の強化は強い個を作ることです。但し、メンバーは個性、特徴があります。
メンバー個人の特徴や強み、キャリアの方向性を認識した上で、どのようにジョブアサイメントをするのかが、キーになってきます。
また、いつその機会、仕事を提供すべきなのか、どんなメンバーと協働したら更に成長できるのか、個を踏まえたマネジメントがより必要とされてきています。マネージャーには、成長のための機会・場をどうデザインし、計画的にアサイメントすることが求められます。
当社の取り組み
当社では多様な人材にやりがいをもって働いてもらうため、多様な働き方を選択できるような制度、仕組みとして、テレワーク勤務制度や柔軟な働き方を実現するコアのないフレックス制度を導入してきました。また、当社で働く社員全員が目指すべき会社のあり方や方法性を共有するため、ビジョンを策定し、ボトムアップで一人ひとりがそのビジョン実現のために行動するための活動を進めてきました。一つの取り組みの例として、トップ自ら全国の事業所を訪問し、ビジョンに込めた想いを語り、また、実際に現場で起きている問題、課題について、また働き方や地域戦略について経営トピックスについて従業員と直接会話を行う機会を設け、現場の声を経営に生かす取り組みを継続して行い、方向性、価値観の共有をはかりました。
また、先ほど述べた、個を生かすマネジメントに欠かせないものはコミュニケーションであるという原点に立ち返り、コーチングをベースとしてコミュニケーションスキル研修を全マネージャーに実施、1on1ミーティングを仕組み化し、メンバーの成長を促し、メンバーが自ら発想、行動し、内省するように継続的に支援することを行っていきます。
以上、ワークエンゲージメントの意味や定義、尺度についてご紹介しました。次回のコラムでは、ワークエンゲージメントが経営に与える3つの影響についてご紹介します。
ワークエンゲージメントとは?「経営に与える3つの影響」 >>
著者プロフィール
富士通Japan株式会社
コーポレート本部 人事部 担当部長 佐山 幸嗣
2014年株式会社富士通マーケティング入社。
入社後、新卒・キャリア採用業務に従事、2018年より人事(労政、制度企画)・ダイバーシティ担当
※本コラム中に記載の部署名、役職は掲載日現在のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。
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