管理会計の今後の動向を考察「AIやRPAが与える5つの影響とは?」 その1

2019年12月20日更新

AIやRPAが、実際の業務の中に活用され、私たちの仕事を効率化したり意思決定を支援したりしてくれるようになりました。AIが人間の仕事を奪うという議論も活発におこなわれています。AIやRPAは、私たちの仕事と今後も密接な関係性を築くことになるでしょう。本記事では、AIやRPAとは何か、そして、AIやRPAが管理会計に与える影響を5つの切り口で解説します。

AI、RPAとは何か?

AIやRPAが管理会計にどのような影響を及ぼすのかについて解説する前に、まずはそれぞれの用語について解説していきます。

AIとは?

AIは、「Artificial Intelligence」の略称です。人工的な(Artificial)、知能や思考(Intelligence)と訳すことできるため、日本語では「人工知能」と呼ばれることが多くなっています。

AIは、ゲームを通じた人間との戦いがきっかけとなり注目されるようになりました。1997年にIBMが開発したAI「Deep Blue」が、当時の世界チャンピオンに勝利したことは、世界に衝撃を与えました。2017年には、チェスよりはるかに選択肢の多い囲碁において、グーグルの「アルファ碁」が人類最強棋士に勝利したのです。将棋の世界においても、もはや人間がコンピューターに勝つことは不可能だといわれるまでにAIは進化しています。

このように進化を続けるAIですが、4つの段階があるといわれています。ここで、AIの4つの段階について押さえておきましょう。

AIのレベル1

単純な制御プログラムの段階です。「if-then-else」で記述されるプログラムで、定型的に動作します。エアコンや冷蔵庫の自動温度調整など、すでに身の回りの多くの電化製品において実用化されています。

AIのレベル2

レベル1のIF分岐のパターンを増やし複雑化したもので、エキスパートシステムとも呼ばれます。部屋の中を自動できれいにするお掃除ロボットや、クイズに答えるロボットなどはレベル2に分類されます。

AIのレベル3

大量のデータに基づき、学習することで対応パターンを増やしていくことができるAIのことです。いわゆる、機械学習はレベル3に該当します。検索エンジンや顔認識などはレベル3に分類されます。

AIのレベル4

人間が大量のデータを与えなくても、自らが特徴を見出して学習できるAIです。「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれることもあります。「アルファ碁」はその代表例といえるでしょう。

RPAとは?

RPAは、「Robotic Process Automation」の頭文字をとった用語です。RPAを使えば、オフィスにおける定型的な業務を自動化することができます。従来は、生産現場で進んだ機械による自動化を、ホワイトカラーがおこなうオフィスワークにまで拡大したものと捉えてもよいでしょう。

生産性を向上させ働き方改革を実現するためのツールとして、RPAへの注目度は高まっています。RPAは、提供する機能によって3つのクラスに分けられています。

RPAクラス1

単純な定型業務を自動化するRPAはここに分類されます。あらかじめ定めたルールに従い、従来は人間がおこなっていた業務を自動化します。

RPAクラス2

AIを活用することで、非定型的な業務をおこなうことができるRPAが分類されます。売上予測やログの分析をおこなうことができるようになります。

RPAクラス3

機械学習やディープラーニングを駆使したより高度なAIを使い、意思決定を支援したり、意思決定を自らおこなうことができるようになります。例として、日本語の対話ができるAIを活用し、対話をするだけで必要なデータの入力や、プロセスが完了するものが挙げられます。

AIやRPAが管理会計に与える影響

進化を続けるAIやRPAですが、管理会計には具体的にどのような影響があるのでしょうか。ここでは、AIやRPAが管理会計に与える影響について解説します。

影響1「業務系システムへの入力業務を削減できる」

管理会計システムは、多くの場合、会計システムと販売管理などの業務系システムとを連携させることが求められます。こうした業務系システムと連携することで、商品別売上や顧客別売上といったセグメント別に財務データを分析することができるのです。場合によっては、販売管理システムに入力する日報データを取り込み、訪問回数と売上高の相関性を分析したり、天気や曜日と相性の良い商品を分析したりといった、非財務データをも考慮に入れた管理会計システムが求められるかもしれません。

いずれにしても、販売管理システムに入力データがたくさんあるほど、会計システムに入力された財務データと連携させ、様々な角度から現場の見える化や、課題の把握をおこなうことができます。入力データが豊富であるほど、意思決定に役立てることができる管理会計システムを構築することができるのです。

その一方で、販売管理システムなどの業務システムに、現場の従業員がたくさんのデータを入力させることは簡単なことではありません。入力するデータの量を増やせば増やすほど管理会計システムの精度は高まりますが、現場の従業員の作業量は増加します。働き方改革の重要性が高まる中、残業で対応する必要があるかもしれません。場合によっては、従業員のモチベーションが低下し、離職率に影響を与えかねません。

このようなケースで威力を発揮するのが、RPAツールです。RPAツールを使えば、販売管理システムなどの業務システムへの入力の手間の削減に繋がります。紙の請求書などのデータ入力についても、取引先や商品を読み込んで販売管理システムに入力するといった一連の作業を、RPAツールが代行してくれます。近年では、OCR処理にAIの機械学習を組み合わせて、処理をすればするほどOCRの精度が向上する機能も実装化されています。非定形の請求書であっても、取引先や商品を正確に読み取ることができるOCRソフトも登場しています。RPAツールをAIと組み合わせることで、業務系システムへの入力業務を削減することができるのです。

しかし、なんでもRPAに代行させるという考え方は避けたほうがよい場合もあります。管理会計システムの場合、販売管理システムと会計システムの連携が求められますが、システム間連携をRPAに仲介させると、処理スピードの問題やエラー発生時の業務停滞といった問題が発生します。システム間連携が必要な場合は、RPAを仲介せず、システムが持つデータ連携機能を使ったほうが、迅速かつ確実に処理を実行できるでしょう。

影響2「付加価値の高い業務に専念できる」

オフィスワークにおいては、処理は複雑であるものの、一度ルールを決めて定型化してしまえば、機械が代行できる業務がたくさんあります。たとえ、複数のシステムをまたぐなど、作業工数が多いものでも、定型化できてしまえばRPAツールが、人間よりも正確に、そして素早く処理することができるのです。人間と違って夜間も継続して動作することが可能なため、生産性は飛躍的に向上します。

その一方で、判断を伴う業務やクリエイティブな発想を伴う業務は、RPAツールはもちろんのこと、AIを使ってもまだ難しいのが実情です。人間は、機械ではまだ難しい、付加価値の高い業務をおこなうべきなのです。

この考え方は、管理会計においても同様です。管理会計システムの導入により、様々なデータが必要になるからといって、従業員の貴重な工数をデータ入力に費やすことは本末転倒です。このような定型的な業務は、RPAツールに代行させることを検討する必要があります。

管理会計システムにおける面倒なデータ入力を、RPAツールやAIにより自動化することで、人間は管理会計システムを使い、意思決定をおこなうことや戦略の立案に時間をかけることができます。生産性を向上させるだけではなく、仕事の質を向上させて、企業の持続的な成長に貢献できるのです。

以上、AIやRPAが管理会計に与える影響を2つご紹介しました。次のコラムでも同様に、AIやRPAが管理会計に与える影響をさらに3つご紹介します。

管理会計の今後の動向を考察「AIやRPAが与える5つの影響とは?」 その2 >>

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著者プロフィール

富士通Japan株式会社
ソリューション事業本部 GLOVIA会計・人事給与事業部 会計ビジネス部 プロジェクト課長 稲田 智

2000年、富士通株式会社入社。業務パッケージGLOVIAシリーズの設計・開発に従事。
2010年より株式会社富士通マーケティング。経営管理、会計の製品企画や拡販に従事。
現在は次世代ERPであるGLOVIA iZの構想立案・製品企画に取り組む。

※本コラム中に記載の部署名、役職は掲載日現在のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。

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