管理会計とは?管理会計が経営にあたえる5つの影響

2019年8月2日更新




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前回のコラムでは管理会計の意義や目的、歴史など基礎知識を紹介しました。
経営者は、管理会計の情報を経営上の意思決定に活用します。具体的に、管理会計の情報は経営判断にどのような影響をあたえるでしょうか。

管理会計が経営に与える5つの影響

管理会計は経営判断に様々な影響を与えます。その影響を5つご紹介します。

経営への影響1:伸ばす事業と撤退する事業が明確になり、正しい判断ができる

管理会計では事業部や商品別に売り上げやコストを分解して出すので、利益が出ている事業と出ていない事業が一目瞭然で分かります。売り上げの分解については、商品別の売り上げがデータとして基幹システムに入っているので比較的容易です。ところがコストの分解、またはコストの配賦とも言いますが、何を基準にして分解するのか、社内合意を得るのが難しいという問題があります。

例えばチェーン展開しているスーパーマーケットの場合。自社倉庫から1台のトラックを使ってA店、B店、C店と回って配送したコストを、各店舗でどのように振り分けるのか。荷物の重量を係数にして分割するのか、距離を係数にするのか決めた上で、コストを分解する作業が必要になります。

ビルの電気代も同様です。全社的に見れば月500万円でも、事業部ごとの電気代を算出するにはどうしたらいいのか。フロアの面積比率で算出したり、人数比率で算出したりする方法もあります。企業ごとに最適の方法を見つけるのが難しいところですが、このコスト分解をきちんと行うことによって、事業ごとの利益を把握することができます。

またコストには、「変動費」と「固定費」があります。固定費は事業に関係なく常に出ていくお金のことで、人件費や電気代、ビルの賃貸料など。一方の変動費は、売り上げと連動して増減するコスト。出荷費用や運送費用などで、売れば売るほどかかるものです。コストを変動費と固定費に分けることを「固変分解」と言います。

固変分解した上で、売り上げから変動費を引くと「限界利益」が出てきます。この限界利益は、管理会計において重要な指標です。限界利益分も儲けがなければ、この事業や商品は撤退した方がいいという判断になります。

このように、事業ごとに売り上げとコスト、利益を把握することで、儲かっていない事業や商品を縮小あるいは撤退し、儲かっている事業に注力するという経営判断が可能です。また、利益はまだ小さいけれど、前年との比較で見ると伸びているので、もう少し様子を見ようという判断もできます。

経営への影響2:投資利益率(ROI:Return On Investment)を見て、投資対効果がどの程度あるか把握できる

投資利益率(ROI)は、投資した資本に対してどのくらい利益が得られたかを見る指標で、これを重視している経営者は多いです。売り上げと利益と投資した額が事業部別に分かれば、事業部ごとのROIを出すことができます。
たとえ売り上げが大きくても、その事業のために大量の営業費用を投入していれば、利益が出にくいということもあり得ます。投資に見合った利益が出せていないイコールROIがよくないことが分かれば、投資を減らしたり、事業そのものを縮小するといった判断が可能です。逆に売り上げの規模は大きくなくても、ROIがよければ優良事業ということになり、投資を集中させてさらに成長させることもできます。このように、分解して事業ごとにROIを見ることで、事業の選択と集中が可能になるのが大きなポイントです。

また新製品や新サービスの場合、利益が低いので内訳を見たら、新発売時の広告宣伝に費用がかかっていたということもよくあります。その場合、今は赤字だけど少し様子を見るという判断も可能です。このように、さまざまな経営判断の材料になるのがROIです。




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経営への影響3:既存事業の未来予測をする判断材料になる

経営者は、既存事業の売上予測も行います。現在の状態で推移すると最終的にどのくらいの売り上げになりそうか、予算は達成できそうかなど、未来予測の判断材料として管理会計の情報が役立ちます。売上予測の出し方は、業界によって異なります。例えばシステム開発会社のように、受注から売り上げが出るまでの期間が長い場合は、受注データを見込み値にする場合があります。

また、投資回収計画を作成する際の判断のベースにもなります。例えば新しい製品を投入すると一気に売り上げが伸び、そこから少しずつ落ちていくという過去の傾向が分かっていれば、その傾向を見据えて何年後にはプラスに転じると予測し、その予測に基づいてどのくらいで投資が回収できるか計画を立てることができます。

経営への影響4:新規事業や新規企画を続けるかどうかの判断材料になる

既存事業と類似した分野で新規企画や新規サービスを立ち上げた際、既存事業の管理会計データを参考にして、新規事業を続けるか撤退するか判断できる場合があります。
例えばクラウドは、ユーザーを集めることで徐々に黒字にしていくというビジネスモデルなので、立ち上げた当初は赤字のことが多いです。月額料金をユーザーから徴収することで、まず固定費分を回収するところからスタート。そこから収益化するのに5年かかったとしたら、今後新しいサービスをクラウドで提供する時に、利益を出すのに5年くらいかかるという前提で予算や投資計画を組むことができます。ビジネスモデルが近ければ、既存事業だけでなく、新規事業の未来予測も可能ということです。

経営への影響5:競合他社と比較して、自社の状況を客観的に判断することができる

財務会計では事業別まで出すことは義務付けられていませんが、株主向けに事業別まで公開している企業もあります。そういった他社の会計情報と自社を比較して、競合している事業分野でどちらが利益率がいいかなどを把握することができます。

比較することで、自社の業績が悪化していれば自社だけが悪いのか、業界全体が伸び悩んでいるのか知ることができ、正しい経営判断を行うことができます。
このように、競合他社と比較して、自社の競争力を高めるための経営判断を下す材料を提供できるのも管理会計のメリットです。ただ、全ての会計ソフトが他社と比較する機能を提供しているわけではないので、他社との比較機能を搭載した会計ソフトを選ぶことも重要になります。

以上のように、経営者がさまざまな経営判断を行う上での材料や指標を提供するのが管理会計です。予算を立て、売り上げやコストなどを事業部ごとに分解し、予実管理や前年比較などを行って事業評価や人事評価を行うというポイントを押さえておけば、あとは難しく考える必要はありません。

管理会計に決まったルールはないので、その方法は多種多様です。業種や業態、業務フローなどに合わせて、自社に最適な管理会計の仕組みを構築するようにしましょう。

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著者プロフィール

富士通Japan株式会社
ソリューション事業本部 GLOVIA会計・人事給与事業部 会計ビジネス部 プロジェクト課長 稲田 智

2000年、富士通株式会社入社。業務パッケージGLOVIAシリーズの設計・開発に従事。
2010年より株式会社富士通マーケティング。経営管理、会計の製品企画や拡販に従事。
現在は次世代ERPであるGLOVIA iZの構想立案・製品企画に取り組む。

※本コラム中に記載の部署名、役職は掲載日現在のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。

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