管理会計とは?管理会計の基礎・意味・歴史と財務会計との違い、経営にあたえる影響

2019年7月19日更新



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「管理会計」という言葉を耳にしたことはあっても、具体的に何をすればいいのかわからないという経理担当者も多いでしょう。管理会計の意義や目的、歴史など基礎知識を紹介します。

管理会計とは何か?管理会計の定義と意味

管理会計を理解するポイントは、「経営のための会計」ということ。ここでは管理会計の定義と特徴、実施する目的などについて解説します。

管理会計とは経営改善に生かすための「攻めの会計」

管理会計は企業会計のひとつで、簡単に言うと社内向けの会計です。どうやって売上を増やすか、コストを削減するか、経営者が経営改善や企業の成長について考えるための判断材料となる会計です。
企業会計にはもうひとつ、株主など外部のステークホルダーに向けた「財務会計」があり、こちらは法律によって、全ての企業にその実施が義務付けられています。一方、管理会計は義務ではありません。義務ではないので、実践するかしないかは企業が自由に決められます。ここが管理会計の大きな特徴です。
管理会計は英語で「Management accounting」と言います。この「Management」をそのまま「管理」と訳していますが、「経営会計」と訳した方が実情に合っています。経営のための会計、それが管理会計です。

管理会計の大きな目的は、「売上」を増やすことと、出ていくお金「コスト」を減らすことです。実施することで企業の弱点を知ることができます。さらには、その過程で得たデータを活用して、企業をさらに成長させることもできます。いわば、「攻めの会計」と言えるのです。

管理会計の基本は「予実管理」

それでは、実際に管理会計を実施する場合、どんなことからはじめればいいのでしょうか。まずは「予実管理」でしょう。

予実管理は予算と実績の管理なので、記録さえきっちりと取っていれば簡単にできそうと思うかもしれません。ところが、実際には、例えば、商品別の実績はシステムに記録されていても、予算については営業部全体の予算は立てていても、商品別予算までは細かく立てていないので、「商品別の予実管理ができない」というケースもあります。

また実績に関しても、正確に把握するには時間がかかるということがほとんどです。売上を管理しているシステム、原価を管理しているシステムが別個で、システム間のデータ連携は人の手で転記している企業もまだ多いでしょう。そうなると、データの転記作業に時間がかかり、ミスも発生しやすく、実績としてのデータが出るのに1カ月くらいかかってしまうこともあります。このように、タイムリーな予実管理はじつはなかなか難しく、経営者の判断が鈍ることにもなりかねません。

こうした細々したデータの記録と管理をきちんとして予実管理ができるようにすることが管理会計のファーストステップともいえます。

管理会計では「事業を分解して部門ごとの利益を把握する」ことが重要

管理会計を実施するにあたり、予実管理の次のステップは「分解」です。
財務会計にはルールがありますが、管理会計には決まったルールや形式はありません。データの収集や報告の方法、フォーマット、期間なども自由で、会社ごとのルールで実施できます。そのため、「当社は管理会計を実施している」という企業でも、例えば「今月の売上は100万円」とざっくりとした数字しか出さず、細かい内訳は省略しているケースもあります。コストについても同様で、コストの構成や、変動費なのか固定費なのかについて分解していない企業も多いのが実情です。

一方、管理会計を実施していない企業では、経営者が直感的に判断をするケースが多いです。これは決断が早くてコストがかからない一方、経営が属人化したり、判断に客観性を欠いたりするおそれもあります。最終的な判断を下すのは経営者ですが、判断材料が多い方がより正確で客観的な判断ができるでしょう。その判断材料を提供するのが、管理会計なのです。

つまり、管理会計を実施していても「細かい内訳は省略している」ケースもあれば、そもそも管理会計を実施していない企業も多く、いずれの場合でも、正確な経営判断に必要な情報が不十分になりがちです。

それらの視点から、管理会計を実施するにあたっては「分解」が重要となります。自社の事業を細かく分解し、さらに、それぞれの事業ごとに、「予算」、「実績」、「売上」、「コスト」を分解します。とりわけ、コストについては、固定費なのか変動費なのかも細かく分解していくことが大切になります。



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予算・実績・売上・コストを分解し各事業を「評価」する

管理会計の実施にあたり、予実管理、分解に続く次のステップは「評価」です。
予実管理とは、先述の通り、経営目標などで計画した予算に対して、実績としてどこまで達成できているかを管理することです。ただし、予算を達成したか未達かだけを管理するのではなく、前年と比較してどのくらい成長したか、あるいは後退したのかもあわせて確認します。つまり、予算達成か未達か、さらには「前年比較」を実施して「評価」することが大切になります。

この前年比較については、「前年との比較だけでいいのか」という問題を指摘する向きもあります。前年がたまたま逆風だったから業績が悪化していただけ、今期はV字回復中というケースもあります。最低でも3年間は比較した方がいいという考え方もあります。

また、管理会計に決められたルールはないとはいえ、その基本となるデータは「売上」と「コスト」です。企業における事業部ごと、商品ごとの売上と、それに伴うコストを把握すること、とりわけコストについては固定費か変動費かという視点で細かく分解していくことで、この商品では利益がどのくらい出ているのか、成長している部門はどこか、逆にボトルネックとなっているのはどこかを「評価」することができます。つまり、正確なデータをもとに経営判断を下すことができるようになるのです。

管理会計と財務会計の違いと比較表

管理会計と財務会計の5つの違い・比較表

管理会計は企業会計のひとつで、簡単に言うと社内向けの会計です。どうやって売上を増やすか、コストを削減するか、経営者が経営改善や企業の成長について考えるための判断材料となる会計です。
企業会計にはもうひとつ、株主など外部のステークホルダーに向けた「財務会計」があり、こちらは法律によって、全ての企業にその実施が義務付けられています。一方、管理会計は義務ではありません。義務ではないので、実践するかしないかは企業が自由に決められます。ここが管理会計の大きな特徴です。
管理会計は英語で「Management accounting」と言います。この「Management」をそのまま「管理」と訳していますが、「経営会計」と訳した方が実情に合っています。経営のための会計、それが管理会計です。

管理会計の歴史「管理会計の歴史を年表を交えて紹介」

管理会計の歴史を知れば、その意義に関してもさらに理解が深まるでしょう。ここでは、管理会計の歴史と登場した背景について解説します。

コスト把握による原価計算が管理会計の原点

1830年代、産業革命を経たイギリスでは鉄道ができ始め、蒸気機関はアメリカに渡り、大量生産が始まりました。産業革命による技術革新によって、これまでの手工業から機械を使った工場制生産へ変革しましたが、それに伴いコストをどう把握するのかが重視されるようになりました。というのも、製品1個あたり「いくらで売れば良いか」がわからないと経営が成り立たないからです。

産業革命前のように、単純に仕入れて売るとか、手工業で製造して売るだけだったらコストを細かく考える必要はありませんが、機械が登場したことで設備投資も膨大になり、減価償却もコストに跳ね返ってくるので、製造するためにかかった原価を計算することが必要となりました。この原価計算が、管理会計のスタートといえます。

「予算」「計画」など未来志向の概念を経営に

1920年、シカゴ大学で開講した「マネジメント・アカウンティング」の講座で、マッキンゼー教授は、企業の経営を「予算管理」という考え方で行うべきであると提唱しました(注1)。それまでの産業の多くは、とにかく大量に作って大量に売って、これだけ儲かった、と全て「過去の数字」を追いかけていました。

こうした「後追い」ではなく、未来志向で目標と計画を立て、それを実績と比較しながら組織を管理する「予算」という考え方がマッキンゼー教授によって示されたのです。

予算では、まず販売予測を行います。どのくらい売れるか予測を立ててから、在庫分を考慮しつつ製造量を調整していきます。
予算は原価計算より分かりやすく、計画がどのくらい達成できたか分かればモチベーションも上がります。予算が達成できれば次はさらに高い目標を立て、達成できなければどこに問題があったか反省して改善するなど、未来に繋げることができるのも重要です。組織を動かすには、この予算を立てて実績を見るやり方が適していると気付いた経営者たちは、経営に取り入れるようになり、それから100年、予算は経営の常識となりました。

(注1)出典「会計の世界史-イタリア、イギリス、アメリカ500年の物語-」(田中 靖浩 著)

管理会計のさらに詳しい歴史については、公認会計士、東京都立産業技術大学院大学 客員教授「田中靖浩氏」著書、「会計の世界史-イタリア、イギリス、アメリカ500年の物語-」が参考になります。難しい会計用語や複雑な数字などを使わずに、管理会計の歴史についてわかりやすくご紹介されている名著です。



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「分解」の考え方が登場。予算やコストを事業部ごとに把握

原価計算と予算の次に登場したのが、分解です。それまでは、ひとつの商品をひたすら大量に作っていただけなので、売り上げを細かく分けて管理する必要はありませんでした。ところが商品の種類が増えると、売り上げを商品ごとに分解しなくてはなりません。
分解が必要なのは売り上げだけでなく、製造に伴うコストも同様です。製造するのにかかった時間やコストを割り出し、この商品はどのくらいの利益が出ているか把握することが求められるようになりました。

さらに予算を事業部ごとに分解し、予算をどのくらい達成できたか事業部ごとに把握することも求められます。そうすることで、その事業が成功しているか停滞しているか評価することができます。こうして、分解から事業評価・人事評価へ繋がる流れが生まれました。

このように、原価計算と予算からスタートし、分解、評価へと繋がるのが管理会計の歴史の流れです。そして予算と分解と評価の3要素は、現在でも管理会計の根幹となっています。

以上、管理会計の基礎(定義や意味、歴史)についてご紹介しました。


次回コラムでは管理会計が経営に与える影響について詳しくご紹介します。管理会計は経営に5つの大きな影響を与えます。

管理会計とは?管理会計が経営にあたえる5つの影響 >>

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著者プロフィール

富士通Japan株式会社
ソリューション事業本部 GLOVIA会計・人事給与事業部 会計ビジネス部 プロジェクト課長 稲田 智

2000年、富士通株式会社入社。業務パッケージGLOVIAシリーズの設計・開発に従事。
2010年より株式会社富士通マーケティング。経営管理、会計の製品企画や拡販に従事。
現在は次世代ERPであるGLOVIA iZの構想立案・製品企画に取り組む。

※本コラム中に記載の部署名、役職は掲載日現在のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。

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