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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2015-3月号 (Vol.66, No.2)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2015-3

特集:「未来に向けたヘルスケアソリューション」

本特集では,未来に向けたヘルスケア事業の活動や事例,クラウドで提供するヘルスケアソリューションの開発,および海外での取組みをご紹介します。


特命顧問
合田 博文
特命顧問 合田 博文 写真

未来に向けたヘルスケアソリューション特集に寄せて(PDF)

富士通は,最先端の研究機関や医療現場と連携し,ICTを最大限に活用した新たな事業を創出する「未来医療開発センター」の活動を2013年に開始しました。今後も国民が健康で暮らしやすい社会作りを目指して,富士通グループ一丸となってヘルスケア分野のビジネスイノベーションを推進していきたいと考えております。

特集:未来に向けたヘルスケアソリューション 目次〕

総括

  • 未来のヘルスケアビジネスへの挑戦~未来医療開発センターの取組み~

ヘルスケア新規ビジョン・将来ビジョン

  • 健康・医療戦略におけるICT政策動向
  • 治験・臨床研究分野におけるICTを利活用した新ソリューションへの取組み
  • Windows 8タブレットを用いた健康調査システム~東北大学 東北メディカル・メガバンク機構様事例~
  • 臨床研究中核病院におけるICT活用の展望
  • 救急医療情報支援ソリューションへの取組み

日本再興戦略―Japan is BACK―を実現するためのソリューション群

  • 地域医療連携クラウドソリューション:HumanBridge~予防医療から地域包括ケアまで~
  • 中小規模病院向けクラウド型電子カルテシステム:HOPE Cloud Chart
  • 地域包括ケアシステムの構築に貢献する介護クラウドソリューション
  • 次世代医療を支える生体シミュレーションの取組み
  • 次世代医療を支えるバイオITの取組み

海外市場動向・取組み事例

  • ベトナムにおける地域医療情報ネットワークの導入検討
  • EUのヘルスケア分野における成長戦略

特集:未来に向けたヘルスケアソリューション


総括

富士通は,1970年代の中頃から医療分野のICT化に先駆的に取り組み,国内初の医療機関向けパッケージソフトウェアを開発・提供し,お客様とともに歩んできた。昨今では,超高齢化社会の到来を背景とする疾病構造の変化なども生じる中,医療技術とICTの目覚ましい革新に伴う大きなパラダイムシフトが起こりつつある。また同時に,ネットワーク社会の到来により,地域医療連携の範囲も拡大傾向にあり,個人の生活全般がネットワークと融合したヘルスケア分野の情報利活用時代が近づいている。
本稿では,富士通の医療分野におけるこれまでの取組みと現状,そしてその先の健康長寿社会の実現に向け設立した未来医療開発センターの取組みについて具体例を交え紹介する。

中野 直樹, 下邨 雅一

ヘルスケア新規ビジョン・将来ビジョン

超高齢化社会を迎えた日本は,毎年1兆円規模で増加する医療費の適正化や疲弊する医療提供体制の維持などの社会課題に直面しており,健康・医療分野における抜本的な構造改革が急務となっている。このような環境下,政府は国家成長戦略である「日本再興戦略(2014年6月改訂)」において,国民の「健康寿命」の延伸を目標に掲げ,社会保障の持続可能性の確保・質の高いヘルスケアサービスの提供・健康産業の活性化の同時実現を目指すとしている。また世界最高水準の技術を用いた医療の提供,経済成長への寄与を基本理念とする健康・医療戦略推進法を整備するとともに,具体的な施策を盛り込んだ「健康・医療戦略(2014年7月)」を策定した。健康・医療戦略では「世界最高水準の医療の提供に資する医療分野の研究開発等に関する施策」「健康・医療に関する新産業創出及び国際展開の促進等に関する施策」「健康・医療に関する先端的研究開発及び新産業創出に関する教育の振興・人材の確保等に関する施策」「世界最先端の医療の実現のための医療・介護・健康に関するデジタル化・ICT化に関する施策」が掲げられており,とりわけ医療のICT化の重要性が指摘されている。
本稿では,政府の「健康・医療戦略」を中心に,健康・医療・介護分野における最新のICT政策動向について述べる。

御魚谷 武, 武富 麻里子, 藤井 宏紀, 根岸 大夢

富士通は,電子カルテソリューションを長年にわたり医療機関に提供してきた。電子カルテが普及する中,蓄積された診療データの診断支援への活用や,電子カルテ情報と治験・臨床研究業務との連携が望まれるようになってきている。こうした研究分野では,大学病院などの大規模医療機関を中心とした臨床試験・臨床研究分野におけるICT化,医学部などの研究分野における遺伝子(ゲノム)情報管理など,診療現場への知見のフィードバックが今後期待される。富士通は,長期にわたり蓄積された電子カルテの診療データ活用を可能とすることを目的に,新たなソリューションの提供,およびビジネス化に取り組んでいる。
本稿では,次世代の電子カルテに期待されるアプローチ,更に今後目指すべきPHR(Personal Health Record)への展望を通じて,研究分野との連携,臨床試験・臨床研究におけるICT化状況について述べ,将来的な位置づけを確認する。

山口 智久

東北大学 東北メディカル・メガバンク機構様は,東日本大震災からの復興を目的に,被災された地域住民を対象とした長期健康調査事業を担うシステムを構築されている。その一つとして,富士通はWindows 8タブレットを活用した基本調査,視力検査,色覚検査,口腔内検診,口腔問診,臨床心理検査,認知心理検査を行う各健康調査システムを開発した。本システムは,アクセシビリティやユーザビリティといったWebシステム開発で培ったノウハウを活用し,Windowsストアアプリ形式の各健康検査専用アプリをインストールして使用する方式を採用している。本システムでは従来の紙による運用と比較し,検査結果の正確性向上や取得できるデータの精細化,検査結果のデジタル化までの期間の短縮,作業プロセスの簡略化による人的資源の効率化といった効果が得られている。
本稿では,まず構築したシステムの構成について述べ,次に各健康調査システムの特長を述べる。

藤田 剛志, 塚田 克也, 山田 弘明

富士通では,ヘルスケアの取組みの一つに,医療機関における医薬品・医療機器開発の促進を支援する治験・臨床研究分野を対象とした医薬業際連携ソリューションの開発を掲げている。現在,電子カルテをはじめとする診療情報システム群であるHOPEシリーズや,臨床実地側での治験管理を支援するFUJITSU ヘルスケアソリューション HOPE NMGCP(New Medical Good Clinical Practice)などの既存ソリューションのほかにも,製薬業界向けに展開してきたtsClinical DDworks21シリーズをヘルスケア製品ラインナップに加え,医療連携を強化した体制を構築している。富士通の医薬業際連携ソリューションは,治験業務管理にまつわるGCPマネジメントシステム,症例情報収集のためのEDC(Electronic Data Capture)システム,副作用情報の管理を行う通知システムを医療機関へ適用することで,医薬品・医療機器開発の業務を効率化しスピードを加速させると同時に,この分野において重要視され,必須要件にもなる品質保証(バリデーション)も強力にサポートする。
本稿では,臨床研究中核整備事業を中心とした世の中の情勢を交えながら,富士通の医療機関における治験・臨床研究分野を対象とした医薬業際連携ソリューションの展開とその役割,効果,および今後の展望について述べる。

赤堀 光希

病人やけが人を救急車で搬送しても,受入先病院が見つからず,患者が死亡する事案が近年発生している。更に,救急車の現場滞在時間が30分以上になるケースも増えており,今後もますます増加が予想されることから,こうした受入不能案件の解決が急務である。
本稿では,これまでの救急医療制度の変遷と救急医療情報システムの課題について述べる。また,これらを解決するための富士通の取組みとして,救急隊と医療機関の情報共有による搬送時間の短縮を実現する救急医療情報共有システムや,地域医療ネットワークを活用した最適な病院選定,および搬送先での早期受入れ準備を実現する高齢者救急医療支援システムなどの救急医療情報支援ソリューションの事例について紹介する。

園田 武治, 石灰 健児

日本再興戦略―Japan is BACK―を実現するためのソリューション群

2011年にクラウド型ソリューションとして提供を開始したHumanBridge EHRソリューションは2014年7月時点で400近い病院で診療情報連携機能を導入いただき,地域医療ネットワークも普及期に入ってきていると考える。その中で従来の病診連携だけでなく,様々な運用シーンでの利用が検討され,それに向けた機能開発およびソリューションの提供を行ってきている。
本稿ではそれら運用シーン(救急医療,遠隔診療支援,在宅介護連携,医薬連携,広域医療連携,地域疾病管理)におけるHumanBridgeで提供される機能およびソリューションを活用事例を交えながら紹介する。

田中 良樹, 渡辺 響, 柳原 毅志, 瓶子 和幸

電子カルテは,医師・看護師をはじめとする医療スタッフが患者の診療情報の共有および業務の効率化を促進するとともに,患者に安心・安全な医療を提供するための役割を果たす。また,電子カルテを地域医療ネットワークで活用することにより,近隣医療機関とも患者情報を共有することができる。富士通は,600以上の医療機関のシステム導入で培ってきた運用ノウハウを基に標準的な診療業務プロセスを確立し,電子カルテシステム「FUJITSU ヘルスケアソリューション HOPE Cloud Chart」を2014年7月にリリースした。HOPE Cloud Chartは,クラウド型サービスであり,投資コスト低減・運用負荷軽減・短期導入といった効果をもたらす。
本稿では,HOPE Cloud Chartの特長,システムイメージ,導入手法,導入効果について述べる。

山岡 弘明, 守本 拓人, 田中 佑介, 時岡 政彰

日本では,世界に類を見ないスピードで高齢化が進んでいる。内閣府の平成26年版高齢社会白書によると,2013年10月の65歳以上の人口は3190万人であり,2042年に3878万人でピークを迎えると推計されている。このような状況の中,厚生労働省は,高齢者が尊厳を保ち住み慣れた地域での自立した生活を支援する地域包括ケアシステムの構築を目指している。また,各種法整備も進めており,2014年6月には医療介護総合確保推進法も成立している。在宅介護を必要とする高齢者が年々増加していく中,地域包括ケアシステムの構築に当たっては,介護サービスの質を維持しながら,業務の効率化に向けた仕組みの確立,医療・介護サービスなどを提供する関係者間の連携や情報共有といったニーズが高まっている。
本稿では,介護現場をサポートする富士通の介護事業者様向けソリューションをベースにした地域包括ケアシステムに対する取組みについて述べる。

内田 晋一, 黒木 輝秀, 星野 秀一, 大橋 繁

大規模なスーパーコンピュータは,今や学術的な研究への活用にとどまらず,ものづくりや気象・気候変動の予測など,幅広い分野で活用されている。しかし,医療分野におけるICTの活用は,医療画像診断装置など最新の医療機器,および電子カルテなど医療支援にとどまり,スーパーコンピュータ,特にコンピュータシミュレーションの活用はあまり進んでいない。筆者らは,医療分野でもコンピュータシミュレーションが活用できる可能性は大きいと考え,生体シミュレーションの研究開発を進めている。
本稿では,東京大学大学院の久田俊明特任教授,杉浦清了特任教授らの研究グループと2007年より共同研究を進めている心臓シミュレータを例に,生体シミュレーションへの取組みを紹介する。まず,心臓シミュレーションの概要を述べ,更にシミュレーションのためのプレ処理,可視化システム,および適用事例を説明し,最後に実用化へ向けた課題と今後の展開について述べる。

門岡 良昌, 岩村 尚, 中川 真智子, 渡邉 正宏

富士通では,科学分野におけるコンピュータ利用技術,シミュレーション技術の一環としてコンピュータで医薬品候補となる化合物情報を創出するIT創薬の研究開発に取り組んできた。2011年度からは,東京大学先端科学技術研究センター様,および製薬企業との共同研究を実施し,医薬品候補として有望な結合活性を持つ,これまでにない新しい化合物を実際に合成することに成功した。この背景には,スーパーコンピュータ「京」をはじめとする計算能力の向上と,それらを活用したシミュレーション技術の改良がある。一方,次世代医療の実現に貢献すべく新たな取組みも始めている。その一つが,細胞1個というごく微量のサンプルからそこに含まれる物質を測定・分析し,健康状態のチェックなどへの活用が期待される一細胞分子診断システムの開発である。もう一つは,将来の個別化医療の実現において重要と考えられているゲノムデータなどの解析技術の開発である。いずれも,大学や研究機関との共同研究により技術開発を進めていこうとしている。
本稿では,富士通のバイオITの技術開発への取組みについて紹介し,これからの医療のスタイルを変える可能性を示す。

山下 辰博, 紙谷 希, 朝永 惇, 松本 俊二

海外市場動向・取組み事例

富士通は,富士通総研とベトナムのグループ会社であるVNPT-FUJITSU Telecommunication System JSCとともに,2013年度に経済産業省の事業を活用してベトナムにおける地域医療情報ネットワークの導入に向けて検討を行った。ベトナムでは,医療資源の不足に伴う地域医療の改善が重要な課題となっており,ベトナム保健省は国内の医療機関の医療情報を連携し,医療資源を効率的に活用する「地域医療情報ネットワーク」に高い関心を示されている。また,ベトナムの医療機関には一定の信頼性を持つ通信回線が整備されており,地域医療情報ネットワークに対するニーズもある。
本稿では,ベトナムの医療機関の地域医療情報ネットワークに対するニーズを紹介し,ベトナムにおける地域医療情報ネットワークの全体像を示した上で,地域医療情報ネットワークの導入に向けたスキームやステップを述べる。

坂野 成俊

現在,EU(European Union:欧州連合)では進む高齢化や失業者の増加などの長期的問題から脱出するための成長戦略Europe2020のもと,ヘルスケア関連の研究・技術開発施策に対して巨額の投資をしている。その中では,主に高齢者に多くみられるような慢性疾患などの疾病の理解,医療システムの効率化や創薬などの課題の解決,パーソナライズ医療や遠隔医療といった一人ひとりに適した医療を届けるための方法論や,ツール,技術の開発などの領域で研究が行われてきた。2014年1月より開始された新たな研究枠組み計画Horizon2020では,これまでの研究を更に進めた最先端医療に加えて,高齢者の自立支援や患者の自己管理,統合ケアシステム,新しい診断支援方法などのICTの活用に関する公募が多く見られる。このような取組みは,データに基づく医療の高度化や個人に向けたケア,在宅での医療といった方法による医療費の削減に加え,新規事業の創出による就業率の改善を目指していると言えるだろう。EUのヘルスケア成長戦略に関連した富士通研究所の最近の取組みとして,富士通アイルランドとともにアイルランドにおいて,日常の健康情報を疾病予防や予後管理に活用する共同研究を推進している。
本稿では,最近のEUのヘルスケア成長戦略に関連する研究プログラムの構造と概要をまとめ,筆者らが現在取り組んでいるアイルランドでの共同研究プロジェクトを紹介する。

駒場 祐介, Anthony McCauley, 猪又 明大, 柳沼 義典


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