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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2014-9月号 (Vol.65, No.5)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2014-9

特集:「産業・流通ソリューション」

本特集では,社会や環境の変化を踏まえ,製造・流通分野のビジネス・イノベーションに向けた課題を考察するとともに,その解決施策となるソリューション・サービスに向けた取組みを中心に紹介します。


執行役員
産業・流通システム事業本部長
佐藤 勝彦
執行役員 産業・流通システム事業本部長 佐藤 勝彦 写真

産業・流通ソリューション特集に寄せて(PDF)

富士通は,産業・流通分野のお客様へのシステム・インテグレーションを通じ,お客様との共創によるビジネス・イノベーションを推進し,その活動を通じてお客様とともに豊かな社会づくりに貢献してまいりたいと考えています。

特集:産業・流通ソリューション 目次〕

新たな研究開発を生み出すオープンイノベーション

  • 日本型医薬品開発オープンイノベーションへの取組み

ものづくりを支える製品ライフサイクル管理

  • 知財ビッグデータ活用による事業貢献
    ~オープンイノベーション時代の知財活用~
  • ものづくり上流工程プロセス・イノベーション
  • 製造分野におけるSCMイノベーション
    ~グローバル経営への変革~
  • 製造業における保守業務改革への取組み
    ~「守りの保守」から「攻めの保守」へ~

社会との共通価値創造を支えるコーポレートガバナンス

  • グローバル経営管理ソリューションへの取組み

サプライチェーン変革への対応

  • 食・農バリューチェーン市場への取組み
  • オムニチャネル時代のマーケティング戦略
  • 企業活動を支える物流への取組み

グローバル展開・支援

  • グローバルソリューションデリバリー基盤「富士通COE」の拡充

イノベーションへ向けたモダナイゼーション

  • 富士通の考えるERPモダナイゼーション
  • イノベーションに向けたSOAの全面適用
    ~山崎製パン様基幹システム再構築において~

ソリューションを支えるアーキテクチャー

  • ビジネスを加速する情報システム

特集:産業・流通ソリューション


新たな研究開発を生み出すオープンイノベーション

従来の医薬品では根治できなかったガン,アルツハイマー病,精神疾患,脳卒中や心筋梗塞などに代表される老人病などの疾患に対応するため,欧米ではアカデミア発のバイオベンチャーが開発したバイオ医薬品が主流となった。しかし,日本ではバイオベンチャーの育成が不十分であり,日本の製薬企業は,遅れを取り戻すため海外の製薬企業やバイオベンチャーを積極的に買収している。現在,日本は世界に先駆けて超高齢化社会を迎え,バイオ医薬品などの輸入超過がますます危惧される中,バイオ医薬品に次ぐ新たな医薬品開発が日本再生の重要テーマとなっている。このような状況の中,日本の製薬業が世界的な競争を勝ち抜くには,アカデミアや医療機器分野に進出する製造業を巻き込んだオープンイノベーションが求められている。富士通は,長きにわたって薬事法規制対応で培ったFUJITSUライフサイエンスソリューションtsPharma/tsClinicalの品質を生かし,アカデミア主体の臨床研究にも適用することで,スムーズな医薬品開発への移行と期間短縮に貢献できると考えている。
本稿では,日本型医薬品開発スキーム実現に向けた富士通の取組みについて述べる。

嘉斎 英男

ものづくりを支える製品ライフサイクル管理

我が国の知的財産(知財)立国が提唱されてから10年が経過し,企業では事業戦略や研究開発戦略と知財戦略の三位一体の活動への取組みが続いている。また,昨今のオープンイノベーション戦略では,自社技術に加えて外部の知財をいかに自社の競争優位に取り込んでいくのかも重要な課題となっている。しかし,多くの企業では知財を事業戦略や研究開発戦略に活用しきれていないのが実情である。このような中,富士通においても知財活用による事業貢献は大きな課題であり,その解決策として数年前より「知財ビッグデータ」を活用した事業支援に取り組んでいる。
本稿では,著者が実際に事業部門を対象に知財ビッグデータを活用して実践した「知財ポートフォリオ活動」を紹介する。また,具体的な活動事例として,ある事業部門で発見した知財リスクを回避し,自社の強みに転換した成功事例についても紹介する。更に知財ビッグデータ活用のためのICTや富士通のソリューションの活用方法も併せて紹介する。

平塚 信行

近年,国内の製造業においては,グローバル市場における事業戦略の再構築が進められている。また,先進国市場の成熟化と新興国市場の拡大や,中国に代表されるアジア諸国におけるものづくり競争力の向上など,ここ数年で国内の製造業を取り巻く環境変化は激しく,厳しい状態が続いている。その中でも市場のグローバル化に伴う生産拠点の現地化は急速に進んでおり,現地対応要員のスキル不足などにより量産立上げの遅れや,生産準備におけるコスト増が大きな課題となっている。この課題解決にはPLM(Product Lifecycle Management)が必要不可欠になってきている。富士通のPLMソリューションは,製品の企画段階から設計・開発,ものづくり現場,販売,サポート,廃棄,リサイクルに至る次世代の開発設計・製造環境を構築していくための戦略的統合ソリューションである。本稿で紹介する統合設計情報管理ソリューション「PLEMIA」はこのPLMのコアとなるソリューションであり,製品のライフサイクル全体の製品関連情報をICTで一元管理し,設計の上流工程からものづくりを支援し,市場環境の変化に柔軟に適応できるものづくり環境構築を強力に支援する。
本稿では,PLEMIAによる統合設計環境の構築と上流工程・設計完了後の工程とのデータ共有のプロセス・イノベーションについて述べる。

関口 利宏, 北島 満樹

国内市場が成熟した現在,新興国経済の急速な発展に伴う需要増加など,海外市場の重要性は一段と高まっており,日本企業は事業の国際化を展開/拡大し続けている。このようなグローバルな市場環境の変化に伴い,サプライチェーンも最適化など改革が必要になってきている。
本稿では,SCM(Supply Chain Management)システム構築の視点で日本のものづくりを支える製造業が置かれている複雑なサプライチェーンの現状とその課題を考察し,SCMシステムを構築する上で考えられる課題(部品の共通化,データの一元管理,様々な情報の把握)についてICTを活用した対応方法を述べる。また,お客様のグローバル経営への変革やビジネスイノベーションの実現に向けた次世代SCMの概要やその特長を紹介する。

岡澤 明

グローバル環境に置かれた日本の製造業は,新興国との競争が更に激化し,サプライチェーンの見直しによるコスト削減も限界にきている。また,技術革新が進み,製品機能も均一化しており,製品単独での差別化が難しい。こうした市場環境に対応するには,製品のライフサイクル全体で新たな付加価値を生み出すことによって,市場競争力を高め収益性を向上させる必要がある。
本稿では,製造業のアフターサービスの領域に着目し,付加価値の創造と保守コストの削減を両輪で変革する「守りの保守」から「攻めの保守」への取組みについて論じる。アフターサービス領域で付加価値を創出し,収益性を向上させた複写機業界の事例,および安定稼働とサービス品質を向上させた富士通の取組みについて述べる。また,M2M,ビッグデータ,スマートデバイスによる新たなICTを活用した近未来での保守の姿と,「アフターサービスの高度化」を支える富士通のソリューション・サービスを紹介する。

山内 康彦

社会との共通価値創造を支えるコーポレートガバナンス

富士通のグローバル経営管理ソリューションは,短納期,低コストで海外グループ会社に負荷をかけずに,全社的な経営判断に資する情報を提供できる仕組みを構築するサービスである。その特徴は,グローバル企業が海外グループ会社のシステムを統一することなく,経営情報を本社に集約することで達成できるものである。グローバル企業は,本社から離れた海外グループ会社をいかにガバナンスするかが課題となっている。その課題解決のためには,従来人手に頼ってきた管理手法をシステム化し,管理の高度化・効率化を図るソリューションが求められている。その期待に応えるため,富士通は,GLOVIAグローバル経営管理ソリューション(GMS:Gloval Management Solution)を立ち上げ,実践を開始した。
本稿では,グローバル企業の抱えている課題を明確にし,それを踏まえてグローバル経営管理システム構築方式の考え方,「データ統合アプローチ」を実現するためのシステム構造,グローバル経営管理ソリューションの現状と今後の課題,および解決策について述べる。

大槻 敬久

マーケティング・イノベーションのためのビッグデータ活用

企業内外に存在する多種多様で膨大なデータ,いわゆる「ビッグデータ」をうまく活用し,多様化する消費行動を読み解くことで,新たな商品・サービスの開発や顧客の効率的な獲得や育成といった企業活動に大きな価値をもたらすことが期待されている。
本稿では,富士通が行っている二つの業種におけるビッグデータの取組みを紹介する。一つ目は,多様な接点情報(オムニチャネル)による消費者囲込みが急務になっている小売業の取組みである。爆発的に増加する多様でアドホックな顧客の消費行動情報を解析し,ある顧客群のニーズを可視化するICT基盤と,現場が情報を活用し施策につなげる場(ワークショップ)を提供するサービススキームについて説明する。二つ目は食品メーカーのマーケティング領域での取組みである。前述したように,小売業のオムニチャネル化も絡めてネット購入層が拡大し,それに伴ってテレビCM中心のプロモーションからネット広告などへプロモーションチャネルが多様化している。このように,食品流通業は,ビッグデータをキーワードに激しく変わろうとしている。その上流に位置している食品メーカーでは,これまで以上に精緻なターゲッティングによる効果的なマーケティングを目指し,データとデータ解析を活用する機運が高まっている。

宮澤 哲也, 鈴木 飛龍

サプライチェーン変革への対応

食の安全に関する消費者の目が厳しくなる中,農家は「安全で質の高い農産物の生産」という課題を抱えている。一方で,食品メーカーは「原料としての高品質な農産物の安定調達」という課題を抱えており,これらの課題解決に向けて食品メーカーが農家を囲い込む形で農業生産に新規参入する動きが活発化している。富士通は,この動向に対し,高品質な農産物の生産から調達~加工・販売までの連携を実現するICTによる「食・農バリューチェーン市場」の構築に取り組んでいる。
本稿では,FUJITSU Intelligent Society Solution 食・農クラウド Akisai(秋彩)と食品業向け統合ソリューション FUJITSU Enterprise Application GLOVIA smart FoodCOREとの連携による農産物の栽培,品質の見える化,収穫時期・収穫量の予測,品質・規格の均一化,農産物の生産コスト削減,品質保証による消費者への安心・安全の提供の各サービスを紹介する。

小西 豊

近年,各種メディアで「オムニチャネル」という言葉の頻出度が高まっている。この言葉の浸透スピードがほかに比べても驚くほど速いのは,EC(eCommerce),いわゆるネットでの購買が急速に普及してきているからにほかならない。また,従来から展開しているリアル店舗への誘客や,その後のネット店舗への相互再送客が,企業にとってマーケティング戦略上不可避となってしまったという理由もある。購買者がスマートデバイスを常時携帯し,どこでも情報を収集・発信する時代となった。更に近年は,高齢者層のネット購買比率まで急増してきている。
本稿では,消費者起点でのネットと店舗サービスのあるべき姿を明示し,企業が消費者に提供すべきCX(Customer Experience:顧客体験)の価値向上施策について詳述する。オムニチャネルという言葉は,このCXの価値向上という考え方がマーケティング戦略と一体化することによって生まれたものである。更に本稿では,多様な顧客接点(=オムニチャネル)において,「個」の顧客に,最適なタイミングで最適な体験価値を提供する最も重要なマーケティング施策について,その全容を紹介する。

小林 泰, 原田 崇史

流通業の販売額低下,商圏狭小化やネット社会化により,今や顧客との接点は企業拠点(店舗)のみならず家庭,更には消費者(個客)へとシフトしつつある。このような社会変化において,より最適化したコスト・タイミングで「モノ」をシームレスに届けることが,社会・市場で個客が志向する「コト」を実現する上で非常に重要である。物流分野においても,これまで以上に効率化・コストダウンが求められる時代となり,その業務を支えるICTの利活用も重要性が高まっている。富士通はこれまで各種物流ソリューションを提供してきた。現在,より速い経営判断,これに基づくオペレーションの改善に向けて,ソリューション間の連携性を高め更なる機能強化・拡充を進めることが重要であると認識し,Logifitシリーズとして物流ソリューションの刷新を推進している。Logifitシリーズは,物流関連の各ソリューションを統合基盤上に構築することで,市場やお客様の変化に柔軟に対応するものである。
本稿では,物流業界の状況を踏まえた課題を抽出し,それらを解決する業務系ソリューションを中心に述べる。

末續 肇, 松浦 英一, 勝間田 泰, 山口 智也

グローバル展開・支援

お客様事業のグローバリゼーションは拡大の一途をたどっており,富士通もICTを活用しグローバル規模で支援するために,様々な業種・業務ソリューションを提供している。また,海外事業の拡大に加え,M&Aによる企業の買収や統合も盛んに行われており,そうした企業の中でICTガバナンスをスムーズに発揮する必要がある。業務システムを共通化させるために,世界中の至るところで同一仕様のソフトウェアソリューションやサービス,プラットフォームが当然のように要求される。加えて,日本の「ものづくり」精神のもとで,「日本品質」にこだわるお客様が増加しており,特に日系企業にとっては,日本と同等の製品や高いサービスレベルの提供が,グローバルパートナーとしてお客様の成長を支える必要条件となってきている。
富士通は,お客様のICT導入計画立案や実行の支援に向け,グローバルに均一で高品質なソリューションとサービスを提供するデリバリー基盤「富士通COE」を全世界に強力に展開・整備していく。

河野 伸明, 西 善宏

イノベーションへ向けたモダナイゼーション

昨今の速いビジネス環境の変化に対応するため,お客様のニーズをより早く,より正確にキャッチし,的確なタイミングでお客様に商品を提供する必要がある。そのためには,ICTを活用し,単なる効率化・コスト削減のためだけでなく,お客様システムのリアルタイム性,双方向性,運用保守の容易性と革新の両立を追求し,お客様の企業競争力を強化する必要がある。更に,お客様の企業競争力強化への活用(イノベーション)が求められている。既にこれらの先進的な取組みを実施しているお客様事例も出てきている。その中で,基幹システムの根幹を担う主流ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)であるSAPを取り上げる。SAPは従来の業務アプリケーションによるERPから,インメモリによる高速化・ユーザーエクスペリエンス向上・クラウド提供など,大きく枠組みを広げている。また,導入後10年以上経過したシステムも数多く存在し,運用保守を含めたシステム運用基盤全体を見直す時期にきている。
本稿では,SAPの新ソリューションと富士通の新ソリューションを活用し,ビジネスイノベーションに向けた富士通の考えるERPモダナイゼーション全体像を適用シーン,実践などをピックアップしながら紹介する。

大石 理絵, 尾上 豊, 木村 高士, 多東 正人, 畠山 敦史

企業が安定して存続していくためには,日々変化する世の中の動向に柔軟に対応できるかどうかが鍵を握っている。時には,小規模な変更ではなく,従来のビジネスモデル自体を変える必要もあり,業務運用の変更と合わせてこれまで使用していた業務システムに対しても作り直しや大きな変更が発生し,関連システム・機能も含めて多大な影響を及ぼしてしまう。安定して動作しているシステムを変更するのは企業としてもリスクの大きい作業である。山崎製パン株式会社様においても,市場の変化へのシステム対応は,スピード面,コスト面の課題があった。その課題に対して富士通が提案・構築したのが,SOA(Service Oriented Architecture:サービス指向アーキテクチャー)基盤である。本稿で紹介するSOA基盤を中心としたシステムでは,様々なシステムの変更はSOA基盤が全て吸収できるため,関連システム・機能への変更をなくすことにより市場の変化に対して迅速かつコスト低減の実現を可能とした。また,SOA基盤は拡張性にも優れていることから,今後はSOA基盤の活用により柔軟なビジネスイノベーションへの対応が可能になる。

石井 尊充, 加峯 祥司

ソリューションを支えるアーキテクチャー

進行する少子高齢化,アジア・中東諸国の経済発展,国内市場での異業種参入の活発化といった社会・経済・経営環境の変化は,業種を問わず国内の企業に影響を与え始めている。このような変化の要因には,今日のICTの急速な発展も含まれている。ICTの活用レベルが高い先駆的な企業は,業務効率化のためのICT適用といった一般的な活用レベルをいち早く脱却し,ICTによりビジネスをドライブする,より戦略的な活用によって,消費者動向のリアルタイムな把握や迅速なオペレーション,新たな顧客価値の創造を実現し,海外や異業種市場に進出している。
本稿では,ICTの発展が及ぼす社会・経済・経営環境の変化を踏まえて,企業がどのようにICTを活用して新たな顧客価値の創造や競争力強化に取り組むべきかの考え方を示す。また,既存ビジネスとビジネスイノベーションを両立させ,顧客価値の創造や競争力強化を支える情報システムのあるべき姿と,富士通の取組みを紹介する。

中村 記章, 来海 清, 恩地 正裕


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